OVERLOAD 人類最終試練(凍結)   作:嵐川隼人

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二月にインフルにかかってしまい、それから暫く体がだるくなった上に話の内容が思い浮かばず、気が付けば四月になっていました。

投稿が遅れてしまい、本当に申し訳ございませんでした。



今回は少し長いです、どうぞ。



気楽な二番目

~ナザリック地下大墳墓 玉座の間~

 

 喜色満面。

 この玉座の間にて、至高の存在アインズ・ウール・ゴウンに跪く従者達の今の感情を示すにふさわしい言葉だ。それほどに、彼の存在はこのナザリック地下大墳墓において大きかったと言うべきか。

 

 “アインズ・ウール・ゴウン”副ギルドマスター、ラグナレク・ステアー・テンペストの帰還。

 

 それがモモンガことアインズ・ウール・ゴウンの口から出た瞬間、戦闘メイドプレアデスを含む階層守護者達は、思わずナザリックの支配者の御前で声を叫びたくなるほどに満ち溢れた喜びを抑えるのに必死になっていた。

 

「…………来たか」

 

 暫くすると、アインズが徐に立ち上がる。

 それの意味を察した階層守護者達は、伏せていた顔をあげ、アインズに視線を向ける。すると、守護者とアインズの間に、それは姿を現した。

 

「はい、到着っと」

 

 美しく輝く神秘的な漆黒の翼。

 透き通った青い瞳を映えさせる短髪のゴールドヘアー。

 それらが視界に入った時、守護者達は「おぉ…」と思わず声を漏らした。

 

「おっ、驚いてくれてるようで何より」

 

「あのさ主君、あたかもドッキリしようとしてました感出してるけど、実際何にも考えずに飛んだよね?」

 

「バレたか」

 

「「バレるわ」」

 

「おぉ、まさかの息ピッタリな反応…………」

 

「登場して早々、いきなりボケるのやめてくれませんか、ステアーさん」

 

 ナザリックの支配者然とした言動をとるアインズとは反対に、場を茶化すというか、超が付くほどマイペースかつ軽い口調で話すステアー。彼の左に付く彼の従者にさえ、砕けたを通り越すような口調で突っ込まれている。しかしその話し方は、むしろ守護者達に彼を本物だと示すには十分すぎるほどのものであり、守護者達が最も安心するものであった。

 

「いや~、すいませんアインズさん。いつもの癖でつい」

 

「癖って……まぁ、そこがステアーさんのいい所なんですけどね」

 

「アハハ………さて、と。んじゃ、場の空気がちょっと緩んだところで」

 

 先に言っておこう、空気が緩んだと彼は言っているが、実際何にも考えずにその場の状況を話しただけであって、深い意味は全くない。だが、ナザリックで一番頭がいいデミウルゴスは、ナザリックの至高の存在に対し絶対ともいえる忠誠を誓っているがゆえに、そんな何気ない言動さえも99%の確率で深読みしてしまう。

 

「(おぉ、成程。ラグナレク・ステアー・テンペスト様は、我々に対し対等な会話をすることを望まれる御方。しかし、至高の存在に対し絶対なる忠誠を誓う我々にとって、それは死に値する愚行かつ失礼に値する行動……そんな我々の緊張を和らげるためにあのような行動を行った、という訳ですね!)」

 

 自分で勝手に深読みし、その上さらに彼らに対する忠誠が強まる。そんなことを、アインズとステアーは知る由もなく、何事もなかったかのようにステアーは口を開いた。

 

「“アインズ・ウール・ゴウン”至高の42人が一人にして副ギルドマスター、人類最終試練(ラスト・エンブリオ)、名をラグナレク・ステアー・テンペスト。本日今を持って、このナザリック地下大墳墓に帰還したことを宣言する!…………うわ、これ思ったより恥ずかしいな

 

 せっかくカッコよく決まろうとしていたのに、この男最後の最後で本音を吐き台無しにする。一体何がしたいんだ、と思わずツッコミを入れたくなる。

 

「もー、主君ってば!せっかくカッコ良かったのに~、勿体ない」

 

「えっ、もしかして声出てた?」

 

「まさか心で喋ってたつもりだったの⁈めっちゃ駄々洩れだったよ!もしかしてボケ?ボケ狙ってるの?」

 

「狙ってるか!素だよ、素!」

 

「それはそれで恥ずかしいよ!」

 

「というか、貴方本当に人類最終試練(ラスト・エンブリオ)なのよね?何だかただのドジな堕天使にしか見えなくなってきたのだけど」

 

「馬鹿と天才は紙一重って言うだろ?俺はそれだから!」

 

「「それ君(貴方)が言う⁈」」

 

「騒々しい!静かにせよ!」

 

 これ以上は歯止めが利かなくなると本能で感じたアインズは、スッと立ち上がり、大声でカッコつけながら命令口調でその場を静かにさせる。さすがのステアーも、この時のアインズに少しびっくりしたようだ、翼が力なく地面に垂れてしまった。

 

「吠えたら吠え返すみたいなことしてたら、いつまで経っても本題に入れませんから。次やったら割と本気で怒りますよ」

 

「すいません………」

 

「全く…………コホン。取り乱してすまなかった、守護者達よ。改めて言おう。我が右腕にして至高の42人が一人、ラグナレク・ステアー・テンペストさんがこのナザリックに帰還した。ではステアーさん、ナザリックに帰還するまでの間、何があったのか詳しく教えてください」

 

「わかりました」

 

 ステアーは、この世界に来てから今に至るまでの経緯を、一つずつ丁寧に守護者達に説明した。内容はアインズに伝えたこととほぼ同じ。同時並行で、アズリエルの紹介もした。

 

「……という訳だ。不可抗力だったとはいえ、みんなの前から急に姿を消すような事になってしまって申し訳ないと思ってる。迷惑をかけて、本当にごめん」

 

 説明を終えると、ステアーは守護者全員に頭を下げ、謝罪の言葉を述べた。

 頭を下げられた守護者達は、彼の行動に驚愕した。それもそのはず、至高の42人の一人にしてナザリック最強とも謳われる存在が、自らに起きた不慮の事故を自身の汚名とし、謝罪の意をシモベである彼等に示したのだから。

 

「そして、宣言するよ。もう二度と、ナザリックから、みんなの前から姿を消さない、何があっても絶対にここに帰ってくると!」

 

 絶対に帰ってくる………そうステアーは宣言した。その言葉に守護者達は喜びの声を上げたが、何故かアルベドだけは少し怪訝そうな表情を浮かべていた。

 

「……俺の話は以上だ。それとさっき説明したように彼女、アズリエル・フェイティはこの世界の協力者であると同時に、スレイン法国最重要秘匿事項とされている存在だ。今は模倣人形を使って騒動なく連れてきているが、いつ何処でバレるかわからない。そこで彼女をナザリックで保護したいと思っている。構いませんよね、アインズさん」

 

「えぇ、ステアーさんの協力者なら構いません。さて、では改めてお前達に問う。ステアーさんの帰還に異論がある者はいるか?いるならば、その場で立ちあがって意を示し、理由を述べよ」

 

 至高の存在の帰還に、異論を持つ者などいるはずがない。それはこの場にいる全てのシモベ達に共通する考えであった。

 

「……異論はないようだな。ではこれより、ステアーさんに対し『忠誠の儀』を行う。私の時と同じように思ったことを全て言えばいい。まずはシャルティア!」

 

 アインズに呼ばれ、シャルティアは何かに満ちた表情で顔を上げた。

 その何かとは、決意。一度姿を消したと思われた存在が今こうして此処に戻ってきた事に対し、忠誠の儀に全身全霊をかけようという、強い思いだった。

 

 

「この世のあらゆる種族を超え頂点に立たれた、真の最強の存在でございます。創造と破壊の化身といっても過言ではないでしょう」

 

 シャルティア・ブラッドフォールン。

 エロゲ愛好家ペロロンチーノが作ったNPCであり、第一・第二・第三階層の三つを守護している真祖(トゥルーヴァンパイア)。見た目は14歳程の幼い少女に見えるが、その戦闘力は階層守護者の中でトップクラスという恐ろしい子である。

 

 創造と破壊の化身かぁ……強ち間違いではないけど、彼女はなんか盛りすぎてるような気もする(二つの意味で)。

 

「コキュートス」

 

 

「絶対ナル強者デアリナガラ尚上ヲ目指シ、何事ニモ全力デ取リ組マレル、正々堂々トサレタ武人ノ鏡ト呼ベル存在カト」

 

 コキュートス。

 ザ・サムライこと武人建御雷が作ったNPCで、第五階層を守護する蟲王(ヴァーミンロード)。ライトブルーの外殻に身を包む2.5mの巨大な二足歩行の蟲で、背中からは氷柱のような鋭いスパイクが無数に飛び出しており、そのせいか常に冷気を纏っている。武人として誇り高い性格の持ち主で、武器を持たせればナザリックの守護者で右に出る者はいないとさえ言われている。

 

 確かに何事にも全力は出してるけど、絶対なる強者と武人の鏡というのは大げさだな。まぁ、コキュートスらしいけど。

 

「アウラ」

 

 

「強く、優しく、そしてアインズ様のように大変慈悲深く、どんな相手にも怯むことなく立ち向かう勇敢な御方です」

 

 アウラ・ベラ・フィオーラ。

 ペロロンチーノの実姉、ぶくぶく茶釜が作ったNPCの一人で、右目が緑、左目が青のオッドアイを持つダークエルフ。いつも元気で明るい女の子で、ぶくぶく茶釜さんの趣味により男装させられている。

 

 何度見ても違和感が全くない。そして勇敢というのは、1500人のプレイヤー達をヴァルプルギス幹部と一緒にボコボコにしたことを言っているのかな。確かに今思えば、あれは無謀に近かった行動だった。懐かしいな。

 

「マーレ」

 

 

「も、物凄く優しくて、か、カッコいい御方だと思います」

 

 マーレ・ベロ・フィオーレ。

 同じくぶくぶく茶釜が作ったNPCで、アウラの双子の弟。同じオッドアイだが、色は姉と逆になっている。臆病で言葉使いも戸惑いがちな男の子で、姉同様製作者の趣味で女装させられている。ちなみにこの双子、共に第六階層の守護者である。

 

 アウラもそうだったが、マーレも違和感のない見た目をしている。おかげでぶくぶく茶釜さんに言われるまでずっと女だと思っていた。

 

「デミウルゴス」

 

 

「領域守護部隊<ヴァルプルギス>を率いておられ、自由奔放と見える全ての行動がナザリックの貢献へと繋がる、冷静で聡明かつ瞬時の判断力に長けた御方でございます」

 

 デミウルゴス。

 ナザリックのメンバーで最も「悪」に拘ったウルベルト・アレイン・オードルのNPCで、人間らしい姿とは裏腹に、人を陥れ苦痛や絶望を与えながら破滅させることを喜びとするTHE・悪魔。第七階層の守護者で、ナザリックトップクラスの頭脳を持っており、防衛時のNPC指揮官という設定を与えられている。

 

 何かデミウルゴスの忠誠の次元違くね?高評価にも程があるぞ、それ。

 

「セバス」

 

 

「どのような種族にも分け隔てなく平等に接され、アインズ様と共に最後までこのナザリックに残ってくださった、慈愛に満ち溢れる慈悲深き御方です」

 

 セバス・チャン。

 正義感溢れるたっち・みーが作成したNPCで、彼は階層守護者ではないがその実力は守護者に匹敵している。戦闘メイドプレアデスのリーダーを務めている紳士な執事で、実は個人的に好きなNPCでもある。

 

 ていうか、さっきからこの高評価の嵐何なの、マジで?流石にこれは予想してなかったよ。

 

「最後になったが………アルベド」

 

 

「至高の御方々から絶大な信頼を受けられ、そして私の愛するアインズ様の右腕と呼ばれるに相応しい強大な力を持った素晴らしい御方でございます」

 

 アルベド。

 人間らしい姿をベースに腰から生えた黒い翼と頭の白い二本の角が特徴的な、純白のサキュバスにして、ナザリックの守護者統括である。彼女は設定魔のタブラ・スマラグディナによって作られたNPCの一人で、ナザリック一番の防御力を誇っている。現在はアインズがちょっとした出来心で『ちなみにビッチである』を『モモンガを愛している』に変えてしまったことで、アインズに対する愛情がヤバイ子になってしまっている。

 

 それが原因だろうか、彼女の言葉には何か本心が隠れているように感じる…………その内ハッキリさせといた方が良さそうだな。

 

 まぁ、それはさておき、何この高評価?信頼してくれてるってレベルじゃないんだけど。もしかして、アインズさんも同じようなこと言われてたのか?

 

「そうか…………君達の忠誠は確かに理解した。それじゃあ話が終わる前に一つ、アインズさん」

 

「えぇ」

 

 アインズは玉座からゆっくりと立ち上がり、ギルドの証………スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持って床を叩き、守護者に向け宣誓した。

 

「忠実なる我が部下達よ!これよりお前達の指標となる方針を厳命する!」

 

「「「「「「「っ!!!」」」」」」」

 

 ナザリックの至高の存在からの直々の命令、それを聞いた守護者達は一字一句聞き逃すまいとアインズとステアーの言葉に耳を傾けた。

 

 

「我等アインズ・ウール・ゴウンの名を世界に轟かせ、永久不変の伝説とせよ!!」

 

 

「俺達がこの世界で為すべきこと、それは“世界に存在する全ての英雄を塗り潰す”!!」

 

 

「今はまだ手探りの状態だが、(きた)る未来に向け準備をせよ。このアインズ・ウール・ゴウンこそが、世界で最も偉大な存在であることを知らしめるために!!」

 

 

「この世に神がいるというのなら、天の座から引きずり下ろす!俺達以外に魔王がいるなら、噛み殺せ!邪魔をするものは、力と知恵と権力と数でねじ伏せてやれ!」

 

 

「光と闇、天と地、正義と悪、その全ては我らのもの!何物にも覆せぬ絶対的な存在は、我等アインズ・ウール・ゴウン以外必要ない!」

 

 

「俺達は栄光のギルド、アインズ・ウール・ゴウン!これよりその誇り高き名を、この世界の過去・現在・未来の全てに刻み込め!」

 

 

 アインズ・ウール・ゴウンの名を、この世界に刻み、永遠の伝説とする。

 アインズとステアーの宣誓に、守護者は全員神に祈りを捧げているような姿勢になった。

 今まで誰もやったことがないデカいことに対し、守護者は勿論、ステアーとアインズも心臓を高鳴らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…………以上だ。では私は部屋に戻るとしよう。ステアーさんはどうされますか?」

 

「僕も一旦、自分の部屋に戻ろうと思います。アズリエルも一緒に来てくれ。シンはさっき俺達が宣誓したことをヴァルプルギスのメンバー全員に伝えてくれないか?」

 

「えぇ、わかったわ」

 

「了解、主君」

 

「オーケー。んじゃ、戻ろう」

 

 短い会話を終えると、ステアーはアズリエルを連れ、アインズと同時にそれぞれ自室へと転移した。

 二人+αが転移したのを確認すると、シンも同じように失われる世界(ロストワールド)へと転移しようすると、立ち上がったアルベドがそれを止めた。

 

「待って、シン。今から貴方にも伝えなくちゃいけないことがあるの」

 

「伝えなくちゃいけないこと?」

 

「えぇ…………デミウルゴス、アインズ様とお話しした際の言葉を皆に…」

 

「畏まりました」

 

 極めて真剣な表情のデミウルゴスは立ち上がり、守護者達の前に出た。一体何だろうとシンはデミウルゴスの言葉に耳を傾ける。

 

「アインズ様が夜空をご覧になられていた時です。あの御方は私の前でこう仰いました、『世界征服………なんて面白いかもしれないな』と……」

 

「「「「「「「っ!!!」」」」」」」

 

 デミウルゴスの口から伝えられる、至高の存在の言葉。それを聞いた途端、守護者達の瞳は一変した。

 それを確認したアルベドは、守護者統括として宣言した。

 

 

「皆聞いたわね。守護者統括として命じます、ナザリック地下大墳墓の最終目的は、アインズ様とステアー様に巨大な宝石箱を…………この世界をお渡しすることと知りなさい!」

 

『オオオオォォォォォォォォォォ!!!』

 

 至高の二人の目標を再確認すると、下部達は玉座の間に響き渡るほどに明白な雄叫びを上げた。

 全ては、ナザリックのために、と心で誓いながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…………うん、アルベド、それ多分意味違う、絶対違う。というか、アインズ様と主君、行動するたびに勘違いされてるような気がする………聞かれたら、正直に伝えよう)」

 

 至高の存在に対する忠誠が強すぎるがために盛大に深読みし、歓喜をあげる守護者達を他所に、シン・シルエスカ・ヴァーミリオンは一人、自らの主とナザリックの支配者に対し心で合掌を送った。




次回はオリジナル回になると思います(予定は未定)。
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