OVERLOAD 人類最終試練(凍結)   作:嵐川隼人

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オリジナル展開って、思ったより書くの難しいですね……



新キャラ一名、登場します。

そして今後登場する新キャラの名前が多数出てきます。

※8月23日、『虚無の指輪』に関する設定を大幅に変更しました。


幻影の真祖(ウプイリ)

〜第九階層・ステアーの部屋〜

 

「はぁ…………疲れた」

 

 NPC達による忠誠の儀を終え、今後のナザリックの方針を伝えたステアーは、アズリエルを連れて自室に戻る。

 死と隣り合わせの激戦を終えた直後のような表情をした彼は、そのまま倒れるようにベッドに体を沈めた。

 

「貴方、そんなに疲れるようなことしてたかしら?」

 

「いや、肉体的疲労は感じてないよ。ただ、精神的疲労がなぁ……」

 

 この世界に来た時、シャルティアの眷属である吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・プライド)のミレアを召喚した時の彼女の反応から、ナザリックのNPC達は自分を含むギルドメンバーに対する忠誠が高いことは薄々予想はしていた。が、彼等の忠誠心はその予想を遥かに上回っていた。

 過ぎたるは猶及ばざるが如し、という言葉がある。これは、『やり過ぎることは、やり足りないことと同じで、例え良いことであってもやり過ぎることはかえって害になる』という意味である。

 NPC達が、それだけ自分に忠誠を誓ってくれている、ということは良いことだ。しかし、余りに忠誠心が高すぎると、自分が何かやらかした時に彼等を失望させてしまうのでは、という不安も芽生えさせる。その不安が、現在のステアーの精神的な疲労となってしまっている。

 

「まぁ………仕方ないか」

 

「何が仕方ないんだ、(あるじ)?」

 

「どおわぁぁぉ⁈」

 

 突然耳元に声をかけられたステアーは、素っ頓狂な叫び声で驚き、ベッドから地面に落下する。

 振り返ると、いつの間にいたのだろうか、一人の少女がこちらを見ていた。

 

 美麗で長いゴールドヘアーに、それを結ぶ黒い大きなリボン。

 ネクタイを付けた黒のシャツの上から赤いレーザージャケットを羽織り、拘束具が付いた白いスカートを履いている。

 身長はアウラかマーレと同じか少し高いくらいで、真紅の瞳を持つ端整な顔立ちは人間の少女を思わせる。

 

「に、ニークスか。ビックリしたぁ……」

 

「すまない、隣の彼女は私に気付いていたものだから、主も気付いているものだと思っていたのだが」

 

「えっ、そうなのアズリエル?」

 

「さっきここに来た時、目の前にいたわよ。気付かない方が驚きだわ」

 

「まじかぁ…………俺どんだけ疲れてるんだよ………」

 

 自分で自分に呆れるような声を出しながら、目の前の少女に目をやる。

 

 ニークス・アクトレス。

 ヴァルプルギス幹部の一人で、設定では“ナザリック地下大墳墓総料理長”を務めている幻影の真祖(ウプイリ)の少女だ。

 幻影の真祖(ウプイリ)というのは、二重の影(ドッペルゲンガー)真祖(トゥルーヴァンパイア)の二つの特性を持つ種族なのだが、取得しているのはユグドラシルでは彼女しかいない。

 何でそう断言できるのかって?答えは単純、この種族を手に入れられるのは人類最終試練(ラスト・エンブリオ)、つまり俺以外いないからだ。

 

 人類最終試練(ラスト・エンブリオ)のチート能力の1つ、種族統合化(ヒュージョン・オブ・レイス)

 簡単に言えば、レベルが最大になった複数の種族を特定の組み合わせで統合し一つに纏める、というもの。

 例えばレベル15の天使とレベル15の悪魔を統合すると、俺の種族堕天使(アスタロト)に進化する、と言った感じだ。

 

 さて、突然だがここで一つ算数の計算をしよう。

 レベル15の天使とレベル15の悪魔、合わせてレベルはいくつになるか?

 無論、答えは30だ。

 つまり、統合した堕天使(アスタロト)の最大レベルは30になる!…………と思うだろ?それが違うんだ。

 実際はレベル2()0()、つまり計算から1()0()も低くなっている。その残りの10はどこ行ったのかというと、空欄として存在している。空欄ということはつまり、新しい種族又は職業を加えることが可能になる、ということだ。

 

 …………強すぎる能力って、案外説明しにくいな。

 まぁ、この種族統合化をより詳しく説明すると、まず組み合わせられる種族は決まっている。そして種族統合化後に作成された種族は、

 

 最大レベル=15+(組み合わせた数-1)×5

 

 という計算の元一つに纏められる、というのがスキルの能力だ。

 そして種族統合化したものは、進化する前の種族の最大レベル時の能力をそのまま引き継がれる。つまりレベルは20だが、実質レベル30時と同じ強さになっているわけで、空欄部分に新しい種族又は職業を設定しレベルを最大にしたことでレベル100に達成した場合、それはほぼレベル110になったことと同じになる。

 

 要は組み合わせ次第では半無限にレベルをあげることが可能になる。これが種族統合化のチート能力だ。

 

 この能力を知った時、『いや運営さん、チートにもほどがあるぞ!』って思わず突っ込んだよ。

 だって半無限にレベルが上がるんだぜ?無双できないようパワーバランスが保たれているユグドラシルでこんなの作ったらダメだろって本気で思ったからな。

 でもこれで終わりじゃないぞ?言っただろ、()()()()()()()()って。人類最終試練(ラスト・エンブリオ)にはこれ以上にチートな能力沢山あるんだから、もう驚きを通り越して呆れたわ、うん。

 

「…………って、誰に説明してんだ、俺」

 

「急にどうしたの?」

 

「いや、何でもない、気にするな」

 

 話を戻そう。

 

 先程説明した通り、ニークスは総料理長という役職に就いており、こと料理に関して右に出る者は今まで一人もいない、というのが設定だ。つまり、ナザリックで一番料理がうまい。

 見た目は高貴な貴族出身のお嬢様っぽいが、一応シャルティアと同じアンデッドで、確か年齢は150歳から数えていない……だったか?

 とても大人びた口調と落ち着いた雰囲気の礼儀正しい少女で、料理人である一方情報収集が得意で、暗殺能力を中心とした先手必勝タイプの超攻撃的ビルド構成になっている。また生物から吸い取った血を元に変幻自在に変身する能力を持っており、女優(アクトレス)の職業にふさわしい演技力を持っている、という設定になっている。

 

 尚シンと同じく彼女も俺が作ったNPCではなく、元々NPC販売というユグドラシル版奴隷販売で不良品のレッテルを張られて売り出されていた彼女を俺が買い取って仲間にしたNPCだ。

 そもそもNPC販売というのは、野良で彷徨っていたNPC、又はプレイヤーが作成しビルド構成に失敗したとして捨てられたNPC等を中心に、初心者などに高値で売りさばくというユグドラシルでは違法スレスレの商売であり、正直俺は大嫌いだった。NPCであれ、命を金でやり取りするような行為自体、見るたびに胸糞が悪くなる。

 しかしそんな俺にもある時NPC販売を見に行く機会があり、その時に出会ったのがニークスだった。

 彼女は元々ある初心者ギルドのマスターが作ったNPCだったらしいが、ある時ギルドが攻め落とされ、その報酬として買収されたという説明を受けた。

 マスターは平和的なプレイヤーだったのだろう、当時の彼女は料理職の非戦闘員的ビルド構成になっていた。その為、戦闘では全く使えないと言われ全然売れなかったという。俺が見に行った時の販売で売れなかった場合、販売者は彼女のデータを消し去るつもりだと言っていた。

 

 そしていざ彼女のオークションが始まったのだが、プレイヤーは全く手をあげない。販売者は値段を徐々に下げていくが、挙がる気配は一切なかった。そしてオークションが終わろうとしたその瞬間に、俺は咄嗟に手をあげた。

 自分で言うのも何だが、俺はユグドラシルで一番NPCという存在に愛着を持っているプレイヤーだと自負している。だから、彼女が消えるということがどうしても納得できなかった俺は、彼女を保護という名目で自分のものにしたいと考えた。今思うと変な人にしか思えないが、後悔はしていない。勿論、クエストとかで稼いだ綺麗な金貨で手に入れたから、安心しろ。NPC一人、金貨3億枚なんて安いもんだ。

 

「ところで、主の隣にいるハーフエルフは何者だ?敵ではないようだが」

 

「あぁ、紹介するよ。彼女はスレイン法国漆黒聖典元番外席次、今はアズリエル・フェイティを名乗ってもらってる。簡単に言うと、現地協力者だよ」

 

「成程、現地協力者か」

 

 そう言うとニークスはアズリエルの前に立ち、彼女に握手を求めた。

 

「初めまして、私の名はニークス・アクトレス。ヴァルプルギス幹部にして、このナザリックの総料理長を務めている。ニークスで構わない」

 

「よろしく」

 

 アズリエルも特に怪訝そうな顔をすることもなく普通に握手する。

 

「それで………何でニークスが俺の部屋に?」

 

「あぁ、宴の準備が出来たから、呼びに来たんだ」

 

「宴………そういえばシンが言ってたような」

 

 忠誠の儀のことで頭がいっぱいだったから、宴の存在をすっかり忘れていた。というか、アインズさん誘うのも忘れてた。どうしよ、今から連絡入れるか?

 

「その必要はない。アインズ様の所にはフィアが向かっている。おそらく今は、宴の説明を受けているはずだ」

 

「何で俺の考えてることわかったんだ?」

 

「何年君と一緒にいたと思っている」

 

「そうか」

 

 アインズさんの件は、ニークス達が処理してくれたようだ。

 それにしても、宴か。現実はそんな楽しそうなイベントと全く無縁だったから、凄い楽しみだな。というか、そもそも俺飲食できるのか?一応人類最終試練(ラスト・エンブリオ)は職業扱いになってるし、堕天使(アスタロト)は確かアンデッド扱いじゃなかったから大丈夫だとは思うけど。

 

 …………ん?待てよ。

 よくよく考えてみたら、宴ってことはつまり、この後ヴァルプルギスのメンバー全員と顔を合わせるってことだよな。

 あ、やばい、そう考えたら何か急に緊張してきた。

 シンとニークスはともかく、エリナとミーティアとは電話越しでしか話してないし、他のメンバーが俺にどんな反応をするのか全然予想できないんだけど。

 ……いや、大丈夫だ。忠誠の儀に耐えた俺だ、こうなったら気合で乗り切ってやる!

 

 そんなことを考えていると、アインズさんから伝言(メッセージ)が送られてきた。

 

「アインズさん?」

 

『どうも、ステアーさん。さっきぶりですね』

 

「そうですね。それで、どうしました?」

 

『いや、実はですね、ステアーさんのNPCの……フィア・ジークフリート、でしたっけ?さっき彼が私のところに来たんですよ。何でも、ステアーさんが帰還したことを祝って宴をするとか』

 

「えぇ、そうらしいですね」

 

『らしいって、ステアーさんが提案したんじゃないんですか?』

 

「違いますよ。さっき電話をかけてきたエリナが僕のこと失われる世界(ロストワールド)の皆に話したらしくて、ヴァルプルギスの幹部……僕のNPC達が僕のために色々考えてくれたみたいです」

 

『えっ、そうなんですか?ということはこの“試作型疑似受肉装置”ってアイテムは、ステアーさんが俺の為に作ってくれた訳じゃないと?』

 

「“試作型疑似受肉装置”?」

 

『はい。フィアによると、【スケルトン族限定で、装備した者に疑似的な生身の身体、つまり受肉をさせ、一時的に食事を可能とする】アクセサリーらしいです。何でも宴をするにあたり、アンデッドの俺も普通に食事ができるよう、レイ・オーグマーが突貫で作ってくれたとか。心当たり無いですか?』

 

「全くありませんね。そもそもこの世界に来てから、フィアとレイのどちらとも会ってませんし。というか、試作型ってどういうことですか?」

 

『さぁ……それはわかりませんね』

 

「ふーん……そうですか」

 

 ってか、今更だけど俺のNPC達って、自分の意思で色々行動する奴多くないか?

 いや、確かに全員の設定に“言いたいことははっきりという”みたいな自我が強くなりそうなことは色々書いてけどさ。

 

『まぁ、装置の話はもう置いといて、話を戻します。その宴なんですけど、もしよろしければステアーさんの疑似人形(レプリカドール)を何体か貸してほしいんです』

 

疑似人形(レプリカドール)って、僕の創造者(クリエイター)で作れる模倣人形(ダミードール)の時間制限があるバージョンのやつですよね?良いですけど、何に使うんですか?」

 

『階層守護者達と、戦闘メイドプレアデスのメンバー全員に使おうかと。何か、俺だけ参加するのもあれですし、彼らも参加させてあげたいなぁ、っと思って。でも全員参加させたら、ナザリックを防衛する人がいなくなるじゃないですか。だから、ステアーさんの疑似人形(レプリカドール)で彼らの分身体を作って、宴の間だけ本人たちに代わって防衛を任せたいんですよ』

 

「そういうことですか。わかりました。それじゃあ……ニークス、ちょっとお使いを頼めるか?アインズさんに疑似人形(レプリカドール)を届けてほしいんだ。結構な数になるけど」

 

「わかった。任せてくれ」

 

「ありがとう。という訳なので、ニークスに人形を届けてもらいますので、受け取っといてください」

 

『わかりました。ありがとうございます。では、宴の会場……失われる世界(ロストワールド)で』

 

「はい……って、アインズさん、失われる世界(ロストワールド)の行き方知ってましたっけ?」

 

『いえ、全く。フィアが途中まで案内してくれるみたいなので、大丈夫だとは思います』

 

「そうですか。じゃあ、また後で」

 

 メッセージを切ると、俺は空間の穴に手を突っ込み、疑似人形(レプリカドール)を取り出した。

 疑似人形(レプリカドール)の効果は、模倣人形(ダミードール)とほぼ一緒。一つ異なるのは、疑似人形(レプリカドール)は最大10時間しか活動できないという点だ。

 その代わり、模倣人形(ダミードール)よりも必要な素材が少なく、手軽に作成することができるのが利点だ。

 

「それじゃあこれ、頼んだ」

 

「承知した」

 

 13体の疑似人形(レプリカドール)を手渡すと、ニークスは俺の部屋を出て、アインズさんの部屋に向かった。

 

「さて……それじゃ、俺達も出発するか、アズリエル……って、ごめん、めっちゃ待った?」

 

 そろそろ出発しようとアズリエルに振りかえると、相当暇だったのだろう、部屋の壁にもたれて宝物庫にいた時のように一人でルービックキューブを始めていた。

 

「やっと?」

 

「うん。いやホント、ごめん」

 

「別にいいわよ。それで、貴方が言っていたその失われる世界(ロストワールド)って場所、そこに今から行くわけ?」

 

「そうだよ。ただそこはナザリックで一番特殊な場所になっていてさ、基本的に直接転移することは出来ないんだ。だから、ちょっと歩くことになるけど、構わないか?」

 

「ええ、いいわよ」

 

「よし。それじゃあ行くか」

 

 そう言うと、アズリエルは俺の腕にしがみつく。

 それを確認した後、俺は失われる世界(ロストワールド)への入り口が存在する階層に転移した。

 

 

 

 

「行き先は、ナザリック地下大墳墓第五階層─────()()()()だ」




前書きにも書きましたが、オリジナル展開って本当に難しいです。

次回もかなり遅れて投稿することになるかもしれません。
出来る限り早く投稿できるよう頑張ります。

※2022年4月28日、統合進化を種族統合化に変更、性能についても修正を加えました。
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