OVERLOAD 人類最終試練(凍結)   作:嵐川隼人

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3話目、どうぞ。



※12月14日、一部修正しました。


お前が………欲しい!

~ナザリック地下大墳墓・上空~

 

「世界征服………なんて面白いかもしれないな」

 

 満天の星空の下で、漆黒の鎧を装着した骸骨が呟く。

 その後ろには、蛙のような顔で背中に蝙蝠のような羽を生やした悪魔が飛んでいる。

 

 守護者達から熱烈な高評価を受けたモモンガは、彼らの信頼度に精神的な疲れを感じ(本当は疲れなど感じるはずはないが)、気分転換に一人で散歩しようと漆黒の鎧で身を隠し、お忍びで外に出ようとした。

 

 しかし、自分でナザリックの警戒態勢を限界にまで引き上げたことを忘れており、入り口である第一階層を警備していたデミウルゴスとその配下三名に出会ってしまい、すぐにバレる。

 だがデミウルゴスはモモンガの何気ない行動に対し、何か意味があるのではと勝手に深読みしたらしく、結果デミウルゴスだけモモンガの付き添いとして同行することを許可する形になって、今に至る。

 

「(まぁ、そんなこと出来る訳ないけど)………ん?」

 

 ズドドドという大きな音が下から聞こえる。

 視線を下げると、マーレがナザリック周辺の土を盛りあげて動かしているのが見えた。

 偽装工作頑張ってるなー。

 

「デミウルゴスよ。私は今からマーレの陣中見舞いに行こうと思っている。彼に褒美を与えたいのだが………何がいいと思う?」

 

「モモンガ様がお声をかけられるだけで十分かと………」

 

「うむ、そうか……」

 

 NPCの忠誠心を見れば、確かにそれだけで十分かもしれない。

 けど、あっちが誠意を見せてくれているのに、こっちが誠意を見せないというのは後味が悪い。

 ………あ、あれがいいんじゃないか?

 

 プレゼントを考えた俺は、再び仮面を装備し、マーレのもとに降りた。

 するとマーレがこちらに気付き、向かって走ってきた。

 

「モモンガ様!どうしてこちらに?もしかして僕、何か失敗でも………」

 

「違うとも、マーレ。お前は何も失敗していない。ナザリックの発見を未然に阻止するお前の仕事は最も重要なものだ。そのことに対し、私がどれだけ満足しているのか知ってほしいと思ってな」

 

「は、はい!モモンガ様!」

 

「うむ。ではこれを………」

 

 マーレに見えるように手をひらき、一つの指輪を出現させた。

 するとそれを見たマーレが、びっくりして慌て始めた。

 

「リ、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン⁈」

 

 この指輪は、『ナザリック内のほぼ全ての部屋に自由に出入りすることができる』という効果を持つもので、プレイヤーである俺達しか装備していない便利なアイテムだ。

 

「こ、これは、至高の方々しか所持することを許されない物!う、受け取れるはずが………」

 

「冷静になるのだ、マーレ。お前の働きは、信頼に値するものだ。この指輪は、お前の今までの行動と、これからの仕事を効率よく行えることを考え、判断したものだと思ってほしい。これからもナザリックのために貢献してくれ」

 

「は、はい!」

 

 マーレは恐る恐る指輪を手に取り、ゆっくりと自分の薬指にはめた。

 ん?どうして薬指にはめたんだ?マーレは確か男の娘だったよな?

 うん、きっと偶々だ。深い意味はないはずだ。

 

「あ、ありがとうございます!モモンガ様のご期待にそえるよう、これからも精進します!」

 

 どうやら喜んでもらえたらしい。

 オッドアイをキラキラと輝かせてお礼を言ってくれた。

 

「あの、ところでモモンガ様、どうしてそのような格好を?」

 

「ん、んん、それは、だな」

 

「簡単よ、マーレ」

 

 突然のマーレの質問にどう答えればよいか一瞬考えると、後ろ上空からアルベドがゆっくりと降りてきた。

 ナイスタイミングだ!

 

「モモンガ様は、下部である私達の仕事を邪魔しないように、とのお考えなの。モモンガ様がいらっしゃるとわかれば、我々は手を止め、敬意を示してしまいますから。そうですね、モモンガ様?」

 

「………さ、流石はアルベド、私の真意を見抜くとは」

 

 本当はただ、お忍びで散歩したかっただけだったとはとても言えない。

 ここはアルベドの考えを肯定しておこう。

 

「守護者統括として当然のことをしたまで。たとえそうでなくとも、至高の御方であるモモンガ様の御心の洞察には、自信がございます」

 

「な、なるほど………」

 

 納得したようにマーレが腕を動かす。すると月の光で指輪が光った。それもアルベドの前で。

 あ、これはまずいと一瞬恐怖した。

 俺からマーレにこの指輪を渡したことが分かれば、俺を愛してるって設定にしたアルベドは絶対キレて、

 

「あら、マーレ。それはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンかしら?」

 

「は、はい!モモンガ様が僕にくださったんです!」

 

「そう。よかったわね」

 

 キレて………ない?

 視線を下げると、彼女の右手になぜか同じリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンがはめられていた。

 いつの間に持ってたんだ?というか、俺渡した記憶はないんだけど。

 

「アルベド、その右手にある指輪は?」

 

「こちらは至高の御方が一人にして、“アインズ・ウール・ゴウン”副ギルドマスターであるラグナレク・ステアー・テンペスト様が私に授けてくださった、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンでございます」

 

「………すまないが、少し見せてくれないか?」

 

「モモンガ様のご命令とあらば」

 

 特に嫌な顔を見せることなく、アルベドは指輪を外して俺に渡してくれた。

 確かにこれはステアーさんのリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだ。

 でもこの指輪、もしかして………

 

「ステアーさんは、この指輪について何か言っていたか?」

 

「はい。この指輪を渡すということは、君のことを信頼していることの証明になる、と」

 

「そうか………大切にするのだぞ」

 

「勿論でございます。至高の御方であるラグナレク・ステアー・テンペスト様が授けてくださったこの指輪に対する信頼を裏切ることがないよう、この身をかけてより精進していく所存でございます」

 

 ステアーさんの指輪をアルベドに返す。

 様子を見る限り、()()()はまだしていないようだ。

 でもステアーさんがこれを渡すってことは、本当にアルベドを信頼しているんだな。

 

「………では、私はそろそろ戻るとしよう。デミウルゴスは、また次の機会に」

 

「ハッ。このデミウルゴス、至高の御方で仰せられるモモンガ様の信頼を得られるよう、これからもより尽力いたします」

 

「うむ」

 

 ある程度気分転換もできたので、俺は転移魔法で自室に戻った。

 そしていつものローブ姿に変身し、部屋を出ようとしたとき、小さいテーブルの上に置かれた写真盾が目に入った。

 そこには俺とステアーさん、そして一人の()()()()()()()が、家族写真のように写っていた。

 

「………」

 

 無意識に手が伸びる。

 この写真に写っている女性は人間種。つまり、俺達のギルドの人ではない。

 ギルドの人ではないが、ギルドにとっては少し特別な人だった。

 そう、俺達、いや、()()()()にとって特別な………

 

「………っと、こんなことをしている場合じゃなかった」

 

 写真を元に戻し、俺は部屋を出た。

 

 

 

 

~同刻、スレイン法国~

 

 番外席次と出会ってから、どのくらい時間が経ったんだろう。

 彼女との会話が続く中、俺は彼女がどんな人生を歩んでいたのかを知った。

 

 まず最初に驚いたのは、彼女には名前が無かった。

 話によると、彼女の出身はこの国ではなく、エルフの王国らしい。

 何でも、エルフの王国とこのスレイン法国は元々友好的な関係を築いていたが、何らかの理由でエルフの王国が裏切り、長年戦争状態だという。

 しかしスレイン法国は600年前に現れたぷれいやー達が残した遺産(おそらくユグドラシルの装備品やマジックアイテムと思われる)により圧倒的軍事力を保有しており、結論から言うとエルフの王国には勝ち目がない。

 その時、エルフの王は『自分より強い子供の軍団を作れば勝てるんじゃね?』などというゴミ以下の考えをするようになり、片っ端からエルフ族の女性に子作りを強制するようになったという。

 だが、誰一人として、王の強さの半分にすら到達できたものは生まれなかったらしい。

 

 それから長い月日が経ち、それでも尚その軍団が完成することを夢見ていた王は、ある強行手段にでた。それは、当時スレイン法国の切り札とされた女性を攫い、その者に自身の子供を出産させる、というものだった。

 要するに、『自国民のエルフ女性は弱いから、強い個体が生まれない………そうだ、隣の国から強い女拉致って、そいつに産ませたらいいんだ!』ということだ。もはや表現できないぐらいクソすぎて、怒りを通り越して呆れる。

 そして王は、法国の切り札とされていたその女性をなんと攫うことに成功し、自分の子供を作らせた。

 しかし現実は常に残酷。出産を直前に控えたある日、法国のスパイによってその女性は奪還され、結局子供を手に入れることは出来なかった。

 一方その女性を奪還した法国は、女性とその子供の存在を最重要秘匿事項とし、秘密裏に出産を行うことを決めた。

 そうして生まれたのが、今の番外席次らしい。

 

「おかげで強くはなれたけど、外には出られないし、やることも宝物庫の警護かルビクキューしかない日々………最高につまらなかったわ」

 

「そうか………それで、君の母親はどうしたんだ?」

 

「私を産んだ後、突然姿を消したらしいわ。国は総力をあげて彼女を捜索したみたいだけど、手掛かりは一切掴めず、結局行方不明ってことであきらめざるを得なかった。そして私に物心がついた時、漆黒聖典の番外席次として宝物庫を警護することを命じられたの。多分、私が逃げないように監視するためでしょうけど」

 

「ふぅん………その人を恨んだことは?」

 

「何度もあるわ。今度会ったら絶対にその首を跳ね飛ばしてやるって思ったこともある」

 

 母親への怒りを思い出し、笑みを無くす番外席次。

 しかしすぐに笑みを取り戻し、だけど、と続けた。

 

「だけど、こうしてあなたと話していると、その人は私を守るために姿を消したんじゃないかって思えてきたの」

 

「………なるほどな。エルフの王との間に生まれた君を、エルフの王が狙わない訳がない。だからあえて秘匿とされた自分が国から去ることでエルフの王の矛先を自分に向けさせ、更に自分が去ったことで自動的に国は君のことを何が何でも外へ出さないようにする。それが結果としてエルフの王から君を守ることにつながると考えた、というわけか。確かにそれなら筋は通る」

 

 最初はひどい母親かと思ったが、そう考えると実はいい人なのかもしれない。

 しかし、だとすればその人は今どうしているのだろう。

 法国の元最強だから、同じように捕まったりはしてないと思うが………

 

「………フフッ」

 

「どうかした?」

 

「あなたとは初めて会ったはずなのに、不思議なくらい心が安心するの。自分でいうのもあれだけど、私って結構異常者なのよね。“自分を倒せるような強者との間に強い子供を作りたい”とか、普通言わないでしょう?だというのに、今の私はあなたと普通の人のように話せている。唯一の会話相手だった隊長さんにも、こんな風に話したことは無かったから、新しい自分を見つけたみたいで面白くて」

 

「………………」

 

 この数時間で、俺の中での彼女に対する印象が変わっていることに気が付いた。

 最初は彼女のことが少し()()()に思っていた。

 こんな真っ暗な部屋で一人黙々とルービックキューブで遊んでいて、しかも戦闘狂。ペロロンチーノさんが萌え属性だとか言っていた“ヤンデレ”というそれなのでは、とさえ思った。

 しかしいざ彼女と話し合ってみると、不気味要素が一切ない()()の女性だった。

 一般の目から見れば普通じゃないかもしれないが、俺にとっては普通に見える。

 人類最終試練(ラスト・エンブリオ)という()()()()()()()()()種族になったせいで、感覚が狂っているのかもしれない。

 

 ふと、彼女の笑顔を見た時、()()()()の顔がそれと重なった。

 

「っ………」

 

 ほんの一瞬だけだった。しかしその一瞬を感じた瞬間、俺の中である考えが浮かんだ。

 

 

──────この人を連れて行こう。

 

 

 スレイン法国には申し訳ないが、俺は彼女という存在に興味を持ってしまった。人間である彼女を、ここから連れ出したいと思った。

 

「…………番外席次」

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺と一緒に来る気はないか?」




ステアーさんは結構大胆なことをするようです。

※アルベドの指輪の位置、よく考えたら左手の薬指はまずいと思い、急遽右手に変更しました。
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