OVERLOAD 人類最終試練(凍結)   作:嵐川隼人

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4話目、どうぞ

※5月9日、一部編集しました

※8月19日、一部編集しました


カルネ村での再会

『ね、ぇ………』

 

 青年に抱きかかえられた少女が、青年の頬にやさしく触れながら掠れた声で話しかける。

 

『喋るな、傷が広がるぞ』

 

 腹部から血を流している少女に無理をさせまいと青年が忠告するが、少女は口を開き続ける。

 

『拓未…は………私の、こと……ずっと、好きでいて、くれる?』

 

『…あぁ。だから、それ以上口を………』

 

『……フフ、フ…………嬉しい、わ…………私も、好き…よ………大好、き』

 

 涙を流しながら話す少女の瞼が、徐々に閉じてゆく。

 

『わかった………わかったから、もう喋らないでくれ……………』

 

『本当に………………拓未のこと……………………………………』

 

 頬を伝う一筋の涙。その一滴が地面に落ちた瞬間、彼に触れていた少女の手が力なく倒れる。

 

『お、おい………頼む………君がいなくなったら、俺は…………だから、頼む………』

 

『……………………………』

 

 目の前の現実を認められない青年は、何度も少女に話しかける。しかし少女は幸せそうな顔で瞳を完全に閉じたまま、二度と彼に反応することは無かった。

 

『………っ、逝くなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

 

 

 

 

「っ⁈…………はぁ……………はぁ…………はぁ…………」

 

 森の中でステアーは目を覚ます。神童拓未(かつての自分)の時の悪夢にうなされたせいか、酷い表情になっている。

 

「…………大丈夫?あなた、今物凄く酷い顔になってるわよ」

 

「番外席次…………」

 

 彼の隣で寝ていた番外席次が心配そうに声をかける。

 一回深呼吸して、ステアーは冷静になった。

 

「あぁ、大丈夫。昔の悪い夢を見ただけだ」

 

「ふぅん………まぁ、深くは聞かないことにするわ」

 

「そうしてくれると助かるよ」

 

 空を見上げると、太陽が昇っている。どうやら朝のようだ。

 

「それにしても、昨日は色々驚かされたわ。どこからか持ってきた木の人形の鼻を触ったら私に化けたり、空間に変な穴が開いたと思って通ったらなぜか森にいたり、貴方本当に何者?」

 

「マジックアイテム模倣人形(ダミードール)と、【転移門(ゲート)】のことか。模倣人形(ダミードール)というのは、鼻に触れた生物と全く同じ強さ、同じ姿に変身するアイテムで、一度使えば戦闘で倒れるまではずっと変身した状態を保つんだ」

 

「へぇ、結構便利なのね」

 

「ところがどっこい、この模倣人形(ダミードール)には弱点がある。模倣人形(ダミードール)の鼻は特殊なセンサーになっていて、触れた生物の情報を瞬時に解析し、データとして人形そのものに登録することで初めて機能するんだけど、そのデータって容量が凄く大きい上に人形が倒れて元に戻っても消去されないよう何重にも保護される。それ故、何度も使用することができる代わり、登録したデータ以外の生物には一切変身できなくなるんだ。しかもこれ、俺の創造者(クリエイター)でしか作成出来ない上に、必要な素材が多すぎるから、大量生産も出来ない。だから、意外と扱いづらいし、むやみやたらに使うこともできないんだ」

 

「ふーん、そうなの」

 

「そして【転移門(ゲート)】、こいつは転移魔法の1つだよ。失敗率0%で距離は無限、一定時間場所と場所を行き来できる空間の門を作り出す便利な魔法だ。多分君だったら、頑張れば使えるようになると思う」

 

「そんな魔法があるのね………知らなかったわ」

 

「ハハハ…………本当は場所を指定しないといけないけど、ぶっちゃけ地理とか全然わかんなかったから“とりあえずスレイン法国からめっちゃ遠いところ”ってした結果、こんなところに来てしまったんだけどね」

 

 まぁ、番外席次を誘ったらあっさり承諾されたから、偽装工作としてパーマ○のコピーロボット使って番外席次のコピー(ちなみに意思疎通は出来るので、異常事態が発生しない限りバレないとは思うが)を置いてきて、彼女を外に出すことができたから良しとしよう。

 

「それで、この後どうするの?」

 

「そうだな…………とりあえず、ミレアと合流するか。幸い、ミレアが通った道の途中のようだし」

 

 不思議の地図(ミステリー・マップ)を広げながら、予定を話す。

 先ほどいたスレイン法国からかなり北まで飛んできたようだ。

 だが一直線に塗られた地図の一部の途中にいることから、すでにミレアが通った道だと推測できる。

 

「ミレア?」

 

「あー、そうか。説明してなかったな。ちょっとややこしいんだが、ミレアっていうのは俺のかつての同志が従えている吸血鬼が召喚する眷属の一人を俺が借りた子だ。間接的には俺の眷属ってなるか?」

 

「吸血鬼?貴方の知り合いにそんなのがいるの?」

 

「あぁ。他にも色々いるけどその辺りはあっちに着いてからでも遅くは……………ん?」

 

 遠くのほうで何かの気配を感じる。

 かなり多いが、おそらく人間その他の生命の気配だろう。

 方向はミレアが走っている方向と同じだが、距離はかなり遠くだ。

 

「どうしたの?」

 

「…………人間の気配を感じた。しかし、何か不自然だ」

 

「気になるの?」

 

「あぁ……………番外席次、少しこっちに」

 

「え、えぇ…………」

 

 番外席次をこちらに近づかせる。

 そして俺は彼女の背中と足に腕を当て、所謂お姫様だっこをさせてもらった。

 

「あら、お姫様だっこなんて、大胆♪」

 

「変なことを言うな。後何で楽しそうなんだ?」

 

「こういうの、ちょっと憧れてたから、つい」

 

「君ってちょいちょい乙女になるよね?………まぁ、いいか。とにかく俺は今から飛ぶ。その間はこうさせてもらうぞ」

 

「仰せのままに、ご主人様♪」

 

「まだ従者の契約とかその他諸々やってないだろ……………」

 

 何か外に出た途端ラフになってないか、番外席次のやつ。

 まぁいいや。とりあえず番外席次を抱えた俺は、翼を広げて生命の気配を感じた場所へ一気に飛んで行った。

 

 

 

 

~数十分後~

 

「…………………………」

 

「あれは、戦闘でもしているのかしら?」

 

 気配を感じた方向に向かって飛んでいると、煙のような物が見えてきた。

 更に近づくと、そこには村らしき集落があった。

 

 ……………兵士たちが村人を虐殺している真っ只中の。

 

「虐殺、だな」

 

「あの鎧は、おそらくバハルス帝国の兵士のものね。中身はどうか知らないけど」

 

「……………」

 

「それにしても結構派手にやってるわね。村人が一方的にやられてるわ」

 

「……………」

 

「……急に無言になって、さっきから変よ?」

 

 番外席次がステアーに声をかけるが、彼は一切反応しない。

 彼の視線は、村で起こっている虐殺の光景を見つめたままだ。

 

「(最初は不思議に思った。元いた世界で起こっていたら不快な気持ちになるはずなのに、そんな気持ちには一切なれない。何というか、他人事のように思える。異形種になったことで、人間種に対する感情が変化しているみたいだ……………だが)」

 

 ステアーが村の入り口と思われるところに目を向けると、小さい二人の女の子が騎士達に追いかけられ、必死に逃げているのが見えた。どうやら騎士達は、相手が子供だろうと容赦する気はないらしい。

 

 助けても何の意味もない。ただの自己満足にすぎない行動だと頭が判断している。

 しかし彼の心には、先程の夢で見た光景が鮮明に浮き出ていた。

 

『本当に…………拓未のこと………』

 

 神童拓未が守れなかった、大切な人の死。

 その死を沸々と思い出させる彼らの行動を見た瞬間、何か太い糸がブチりと切れる音が彼の心で響いた。

 

「…………伝言(メッセージ)。ミレア、俺の声が聞こえるか?」

 

『もちろんです、ステアー様。どうされましたか?』

 

「俺は今、訳あって君が進んでいる方向の先にある村の上空にいる。ナザリックを捜しているところ申し訳ないが、もう一つ頼みがあるんだ」

 

『何なりとお申し付けください、ステアー様』

 

「何、簡単なことだ……………この村にいる兵士どもを全員始末しろ。ただし村人は殺すな、彼らからはいくつか情報を聞き出すつもりだ」

 

『はっ。始末の方法は、私の自由でよろしいでしょうか?』

 

「あぁ。強いて言うなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()殺せ。できるか?」

 

『………御心のままに、ステアー様』

 

 ミレアに連絡し、この村にいる騎士どもを任せる。

 その間、ステアーは先ほど逃げていた女の子たちの所へ向かうことにする。

 

「俺に怒りを覚えさせたらどうなるか、その身をもって教えてやる。但しその時には、お前達は八つ裂きになっているだろうけどな」

 

 

 

 

「はぁはぁ」

 

「頑張って!」

 

 カルネ村に住んでいる少女、エンリ・エモットとその妹のネム・エモットは、正体の分からない騎士達から必死に逃げていた。

 

「(何で………こんなことになったんだろう。さっきまではいつもと変わらなかったのに。決して豊かじゃないけど、お父さんとお母さん、ネムと村の皆と生きていくには困らない生活をしていた……………なのに、どうして私達は逃げているんだろう?)」

 

「きゃ!」

 

「ネム⁈」

 

 倒れた妹に駆け寄るエンリ。その直ぐ後ろから四人の騎士がおってきた。

 

「やっと追い詰めたぞ、ガキども」

 

「悪く思うなよ……………これも任務なんだ」

 

 そう言って、騎士たちがネムに斬りかかる。エンリはネムを抱きしめて庇い、背中に傷を負った。

 

「せめて一瞬で終わらせてやる」

 

「い、いや……………お願い…………誰か……………」

 

 妹を抱きしめ、必死に願う。

 騎士が振り上げた剣を無言で振り下ろし、

 

 

 

「………………?」

 

 攻撃が飛んでこない。

 騎士を見てみると、エンリに攻撃が当たる直前のところで何故か止まっていた。

 よく見てみると、他の騎士達も同じような状態になっていた。

 

「な、何だ………身体が、言うことを、聞か………」

 

 騎士の体は、何かにとりつかれたかのように全く動かない。

 一瞬何が起こったのか分からなかった。

 その時、目の前を一枚の羽が舞い降りてきた。

 太陽の光で輝く、真っ黒で神秘的な羽だ。

 ゆっくりと顔をあげる。空中に、背中から真っ黒な翼を生やした金髪の青年と、彼の左腕に捕まる白黒の女性がいた。

 

「第六位階魔法【寄生する人形達(パラサイト・マリオネット)】─────自分よりレベルの低い相手の体に魔法の糸を人形のように貼り付け、思うが儘に操る一種の洗脳魔法。思ったより効果は絶大みたいだな」

 

「な、何だ、貴様ぁ!」

 

「これから死ぬ奴に名乗る気はない………さて」

 

 青年、ステアーは彼らを糸で繋いだままエンリ達のところへ降りていく。

 エンリは不思議に思った。

 何故自分は、此処まで彼に安心を感じているのだろう。

 見るからに人間ではない。ゴブリンと同じ悪い魔物の可能性だってある。

 なのに、恐怖を一切感じない。それどころか、むしろ安心を感じていた。

 何故かはわからない。分からないのに、この人は私達の味方だと、そう強く確信している自分を疑問に思った。

 

「大丈夫か、君たち?」

 

「は、はい………」

 

「うん」

 

「よしよし。一体何があったのか、お兄さんに教えてくれるか?」

 

「え、えっと、それが私達にもわからないんです。さっきまではいつもの日常だったのに、突然騎士達が私達を襲ってきて………お母さんと、お父さんが、私達を逃がして、くれて………」

 

「………そうか、二人とも辛かっただろうによく頑張ったね。後はお兄さんに任せなさい」

 

「お、おい!天使、風情が、俺達人間様に、手を出し、て………ただで、済むと思」

 

ーバンッー

 

 操られてもなお口を開き続ける騎士の首が突然爆散する。近くにいた騎士たちはその返り血を浴び、悲鳴を上げた。

 

「何もできない雑種の分際で、減らず口を叩くんじゃない」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃ⁈」

 

「お、お助け………」

 

「助けて、とでも言う気か?ふざけるな」

 

 ステアーが右手を少し強く握る。すると口を開いた騎士二人の全身が一瞬で綺麗に切り刻まれ、ミンチ状になった。

 残った最後の一人は、この先に待ち受ける死に対し恐怖で声が出せなくなっていた。

 

「あ……あぁ…………」

 

「怖いか?怖いだろうな。だが恨みたいなら自分を恨め。俺が今お前達にしていることは、お前達がこの二人、そして村人にやってきたことと同じことだ。お前達は無力な村人を虐殺した。だから俺も、無力になったお前達をこうして殺している。因果応報、ってやつだ」

 

 右手を複雑に動かすと、先程頭が爆散した騎士の体が立ち上がり、剣を取った。

 

「ひいぃ!し、仕方なかったんだ!これは上からの命令で、従うしかなかったんだ!もうこれ以上は誰も殺さない!今すぐこの村から出て行く!それで許してくれないなら、何でもする!何でもするから、どうか命だけはぁ!」

 

「……へぇ、()()()?」

 

「あ、あぁ!本当だ、何でもする!だから……」

 

命だけは助けてくれ、そう言いかけた兵士に対し、ステアーは不気味な満面の笑みを浮かべ、手を動かし無慈悲に言葉を放った。

 

「じゃあ、()()()()()()()()()()()。異論は認めない」

 

 死体は残った騎士に剣を向け、本物の人形のように不気味な動きで斬りかかった。

 

「や、やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 騎士は叫ぶ。しかしその声もむなしく、騎士は死体に一刀両断され、真っ二つに切れて絶命した。

 

「何でもするだなんて言うからだよ……って、聞こえてないか」

 

 エンリとネムは一瞬恐怖した。番外席次は、強者然とする彼に内心興奮していた。

 当の本人はというと、

 

「にしても……うわぁ、思ったより死体の動き方気持ち悪いな。これはアカン、子供たちに見せていいもんじゃない」

 

 どこぞのホラーゲームのような動きをした死体に対し、エンリとネムの二人の前で見せたのは失敗だったと、自分の行為を反省していた。

 それ以前に子供の前で人間の頭を爆散させ、更に二人賽の目切りにした時点で気づかなかったのだろうか。

 

「えっと………怖かったよな?ごめんね」

 

 振り返り、二人に怖がらせたことを謝る。

 エンリとネムは、彼の優しくなった表情を見て、すぐに安心する。

 

「い、いえ、大丈夫です」

 

「そうか。なら良かった」

 

 二人の安心した表情を見てそう言った時、魔法の発生を感じ取る。

 エンリとネムの後ろに目を向けると、大きな空間の穴《転移門(ゲート)》が出現し、中から彼の良く知る人物が現れた。

 

 

 

「あれ、もしかしてステアーさん⁈」

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