6話目、どうぞ!
※5月9日、一部編集しました。
~カルネ村~
無事モモンガさん改め、アインズさんとアルベドの二人と再会を果たした俺は、ミレアと
無論、村人の死体も沢山あった。その中にはあの姉妹の両親も………
俺達が村についた時はすでに二人とも息を引き取っていた。母親のほうは姉妹の姉の方とよく似た顔をしていたのですぐにわかった。最初は姉妹に同情し、手持ちの蘇生アイテムで二人を生き返らせようと思った。しかしこの世界についてあまりにも情報が少ない今、使用した場合のデメリットがあまりにも大きすぎると判断した。それに、たとえ生き返らせれたとしても、正常に蘇生、つまり100%間違えなく生き返らせれるかどうかも確証できない。彼女達には申し訳ないが、今は自分達の命が助かっただけで我慢してもらうことにしよう。
彼女達で思い出したが、どうやらこの世界ではアバター、つまり今の俺達の姿や種族は、設定文そのままの存在として認識されているらしい。村に着く直前、姉妹の反応から予測した俺は、アインズさんに嫉妬マスクを装備してもらい骸骨の部分を隠してもらった。すると、生き残った村人たちは彼を人間の
話を戻そう。村を救った後、アインズさんと俺は村長夫妻からこの世界について色々教えてもらった。まずここはリ・エスティーゼ王国のカルネ村で、俺が転移したスレイン法国からかなり離れた場所にあった。
次に金銭だ。ユグドラシルの時に使っていた金貨を見せたところ、村長夫妻は見たことがないといった。村長夫妻が持っていた金貨を見せてもらうと、予想以上に歪で価値の低いものだった。
その後、冒険者や他の街等について話してもらったが、どれも聞いたことのない常識と単語で、アインズさんは少し混乱していた。俺?俺はちゃんと頭の中で整理しながら聞いていたから大丈夫。
暫く村長夫妻から情報をもらった後、村の葬儀が行われたので俺達も参加した。そこにはあの姉妹、エンリとネムの姿もあった。
葬儀が終わった後、今後の方針について話し合うため一度ナザリックに帰ろうとした時、何かがこの村に近づいてくる気配を感じ取った。ミレアに確認させると、先程とは違う鎧を装備した騎士団がこちらに来ているとのこと。今回の襲撃について何か関係があるかもしれないと思った俺は、アインズさんと一緒にその騎士団に接触することにした。
やがて村の中央の道に数体の騎兵が現れた。確かにさっきの生ゴミとは違う鎧だ。それに武器の形などが個人で微妙に違っている。しかしその統一性のない見た目とは裏腹に、陣形は見事に整っている。相当な熟練者のようだ。
騎兵達のリーダーと思われる筋肉隆起の男が俺たちに話しかけてきた。
「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣で村々を荒らし回っている帝国の騎士達を討伐するべく、王の御命令で村々を周っている者である」
「王国戦士長⁈」
男の名を聞いて、村長は驚きの声を上げた。それほど凄い人物なのだろうか。
「(なぁアズリエル、ガゼフって知ってる?)」
「(噂は聞いたことあるわ。かつて王国の御前試合で優勝を果たした人で、王直属の精鋭兵士達を指揮している、王国最強の戦士らしいわよ)」
「(王国最強の戦士…………ふーん)」
「この村の村長だな。横にいるのは一体誰なのか教えてもらいたい」
村長が俺たちのことを説明しようとすると、アインズが前に出た。
「それには及びません。初めまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。この村が騎士に襲われていましたので助けに来た
「同じく、
「おぉ、そうでしたか!」
話を聞いたガゼフさんは馬から降り、俺達に頭を下げた。
「この村を救っていただき、感謝の言葉もない」
どうやらわざわざ礼を言うために降りてくれたようだ。王国戦士長という身分でありながら、俺達を疑って攻撃するどころかこうも真摯に礼を言ってくれるとは…………悪い人じゃない、いい人だ。
礼はいらないと言おうとした時、また違う気配を感じ取った。今度のはこの村を中心に囲んでいるようだ。
「戦士長!周囲に複数の人影を確認。村を囲むような形で接近しつつあります!」
「何っ⁈」
「………どうやら状況は思わしくないようですね。ガゼフ殿、ここは一旦村長の家に入りましょう」
「…………わかりました、テンペスト殿。そうしましょう」
ガゼフ率いる部隊の一人の報告を聞き、俺達は村長の家に入った。家の窓から遠くを覗いてみると、複数の
それと同時に、彼らの上空に多数の『天使』も確認できた。
『ステアーさん、あれって【
『そうですね』
ガゼフの話によると、どうやら彼らは“陽光聖典”という、スレイン法国最強の戦闘集団、六色聖典の1つだということがわかった。ちなみにアズリエルの話では、“漆黒聖典”もその六色聖典の1つに入るらしい。まぁ、それはどうでもいいか。
「しかし凄い数だな…………我々だけで抑えられるか、どうか」
「王国最強の戦士であるガゼフ殿でも、勝てる見込みは低いと?」
「……えぇ。お恥ずかしい限りです」
「でも、逃げる気はないんですよね?」
俺の言葉に、ガゼフは反応する。
彼の瞳からは、恐怖ではなく闘志を感じ取る。
自分と相手がどれほど戦力差があるのか理解したうえで、それでも尚戦うつもりらしい。
「勿論ですとも。私は王国を背負う者の一人、こんなところで諦めるわけにはいきません」
「…………成程。勇敢な方なのですね。ではガゼフ殿、もし
「なんと⁈」
突然の質問に、ガゼフは驚きの表情を見せた。後ろにいるアルベドとミレアも驚きの声をあげた。
「実を言うと、僕とアインズさんは暫く辺境の地に住んでいたもので、この辺りについてはほとんど知らないんです。そこで、ガゼフ殿が知っていることを色々教えていただきたいのです。それと、少額でいいので報酬をいただければ十分なので」
「そ、そんなことで構わないのか!」
「えぇ。それと条件というのは、村人たちを安全な場所に移すことを最優先に動かせてもらうということです。ガゼフ殿の戦闘に参加するのは、それが終わった後です。それまでは………」
「……なるほど、我々が敵をひきつけ、村人たちの逃げる時間を稼ぐ訳か」
「そういうことです。どうでしょう?」
「断る理由もない。是非そうさせてくれ!」
そう言って勢いよく頭を下げるガゼフ。自分で言うのも何だが、彼にとってこれほど好都合な商談はないと思える。
「商談成立ですね。アインズさんも、構いませんよね?」
「えぇ、私は構いませんよ。こういう時のステアーさんは誰にも止められないってわかってるし」
「何か言いました?」
「いえ、何も…………おっとそうだ。王国戦士長殿、出発する前にこれを」
懐からアインズさんが出したもの、それは木で出来た小さな彫刻だった。
「これは?」
「お守りのような物ですよ。受け取ってください」
「おぉ!貴方からの贈り物だ、ありがたく頂こう!では私はそろそろ行きます。万が一、我らが負けたとしても村人たちのことを頼む!」
「勿論です。この私、アインズ・ウール・ゴウンと彼、ラグナレク・ステアー・テンペストの名に懸けて、村人たちを守りましょう」
そう言ってアインズさんはガゼフと握手する。俺もガゼフと握手すると、彼はそのまま馬に跨り、笑みを浮かべながら出て行った。
ガゼフと彼の部隊の背を見送った後、アルベドが俺に質問してきた。
「ラグナレク・ステアー・テンペスト様。お聞きしたいのですが…………」
「何故ガゼフに協力することを提案したのか、だろ?」
「っ‼……はい。ラグナレク・ステアー・テンペスト様は…………」
「一々フルで呼ばなくていいよ。ミレアにも言ったけど、俺のことはステアーでいい。そっちの方がしっくりくる」
「も、申し訳ございませんラグ…………ステアー様。ステアー様は、ナザリックにおいて最も
「アハハ、確かにアルベドの言う通り、あのガゼフさんに協力することは少々のデメリットがある。それは間違いないね」
「では何故?それを理解した上で、どうして?」
「それ以上にメリットがあるからさ。ガゼフさんは王国最強の戦士長。彼との繋がりを作ることで情報が多く手に入る、資金は…………まぁ、それはあったら嬉しいなぐらいの気持ちでいいかな。金より情報目的の方が印象もいいしね。それに…………」
「それに?」
「さっき村を救ったんだ。今回を含めて二回もこの村を救ったとなれば、俺達はこの村にとって英雄のような存在になる。とすれば、ナザリックから誰かをここに派遣して監視させたとしても怪しまれることは無い」
「そ、そこまでお考えになられた上であのような提案を即座に思いつかれ、実行されたのですね!ステアー様の深きお考え、このアルベド感服いたしました。ステアー様のお考えを読み取れなかった愚かな私をお許しください」
俺の言葉に跪くアルベド。上司に対して尊敬しているのはわかるけど、ここまでされると逆に俺が話しにくくなる。
「もう、一々大げさだって。そんなことで俺が怒る訳無いの、知ってるでしょ。それに、俺と話す時はもっと肩の力抜いて、気楽に砕けた感じで話していいよ」
「し、至高の御方であるステアー様にそのような口を聞くなど…………」
「俺が良いって言ってるんだから良いの」
「は、はぁ。わかりました……至高の御方であるステアー様の御命令というのであれば…………」
少しぎこちない感じで話すアルベド。その様子を見ていると、アインズさんから
『ステアーさん』
『何ですかアインズさん?』
『本音は、どうなんですか?』
『本音って………さっきも言ったようにメリットがあるからで…………』
『
『………………………』
彼女の名前を言われ、アインズさんに目を向ける。骸骨となった彼の表情には変化は全く見れないが、その瞳には何か真剣な思いが込められている。
『……ハハハ、やっぱりバレちゃいましたか』
『リアルで何年も一緒にいたんですから、流石にそれぐらいはわかりますよ』
『そっか…………えぇ、その通りですよ。多分朝に彼女の夢を見てしまったからかもしれませんね』
『静葉さんの夢…………もしかして、
『そうですよ。だから、この村を救いたいって、あの姉妹を救いたいって思ったんです…………勝手なことをしてしまって、本当にすみません』
『いえ、構いませんよ。静葉さんのこと、ステアーさん…………いや、
『以後気をつけます』
そう言いながらも、俺の心の中には、やはり彼女の姿が浮かび上がってしまう。そして自然に、彼女なら、って考えてしまう。彼女はもういないと分かっているのに………分かっているはずなのに……
「(……………静葉)」
この世にいない人物の名前を心で呟きながら、俺はアインズさんと一緒に村人を村の倉庫へ避難させた。