※一部編集しました。
~村の倉庫~
「君で最後か?」
「は、はい!」
最後の村人が倉庫に避難するのを確認する。全員避難したと判断し、倉庫の扉を閉めた。
「これで避難は完了っと。時間的にもそろそろですね」
「そうですね。行きますか?」
「うん…………あ、いや、ちょっとタイム」
ガゼフさんのところに向かう直前、アズリエルを見て思い出す。そういえば相手はスレイン法国だから、アズリエルのことがバレるのは非常にまずいな。ここで待ってもらうか?
いや、無理だな。見るからに俺についてくる気満々だし………仕方ない、この仮面使うか。
「アズリエル、これ付けて」
「何これ?」
「ただの仮面。スレイン法国に君のことがバレると色々面倒だから、つけておけば大丈夫かなと」
「………そういうことね。わかったわ」
俺の言葉通りに仮面を付けるアズリエル。とりあえずこれで外に出ても大丈夫だな。後は………
「ミレア、君はここに残ってくれるか」
「ハッ。しかし、何ゆえに?」
「今から俺達はガゼフさん達と入れ替わる。その際、彼らの治療を頼みたい。彼らに死んでもらっては、本末転倒だからね」
「なるほど、わかりました。どうか、お気をつけて」
「うん。それじゃあ行ってきまーす!」
朝起きてすぐ学校に行くような感覚でミレアに告げると、俺とアインズさん、アルベドとアズリエルは村の倉庫からどこかの荒野へと転移した。
目の前には金髪の変なおっさん一名、モブ系兵士数十名、そして大量の
「うわぁ、こうしてみると圧巻だな。流石はスレイン法国の陽光聖典、と言ったところか」
「………何者だ?」
「おっと、失礼。僕はラグナレク・ステアー・テンペスト。近辺に住む
「初めまして。アインズ・ウール・ゴウンと言います。親しみを込めて、アインズ、と呼んでいただいて結構です」
「後ろにいるのはアルベドとアズリエル・フェイティ。僕達の同伴者です。以後お見知りおきを」
失敬失敬、初めての人に挨拶するのを忘れてたよ。常識なのにさ。
…………まぁ、別にこいつらにしなくてもいいんだけど。
「さて…………早速ですが本題に入ります。僕達と、取引をいたしませんか?」
「取引?」
「簡単なことです……………………無駄な抵抗をせず、皆さんの命を僕達に差し出してください。そうすれば、苦痛なき死を与えましょう。拒否するというのであれば、愚劣の対価として絶望と苦痛、それらの中で死に絶えてもらいます」
「何?…………フ、フフ、フハハハハ!何を言い出すかと思えば、我々の命をお前達のようなただの
俺の言葉に、陽光聖典の兵士たちは馬鹿にするように笑い始める。その様子を見たアルベドは、今にも手を出しそうなのを必死に我慢していた。切れると思ったけど、頑張るなぁアルベド。
「愚か?それは私達の言葉ですよ。はっきり言って、皆さんでは私達に勝つことは不可能です」
「無知とは哀れなものだ。その愚かさのつけを、お前達は今から支払うことになるぞ?」
「さぁ、それはどうでしょう?実のところ、私はガゼフ殿を通して全て観察していました。その私がここに来たというのは、必勝という確信を得たから。もし皆さんに勝てないようだったら、あの男は見捨てたと思われませんか?」
「ほう」
アインズさん、それ物凄い正論。相手も結構納得しちゃってるよ。
「ですが……………期待外れですね。ここまで弱い奴らが、私達が救った村を襲っていたとはな」
「大きく出たな、
「それはこちらのセリフです。僕たちがここまで忠告してあげているのに一切逃げようとしないとは。天使たちを召喚しすぎて、頭おかしくなったんですか?」
いや、実際頭はおかしい、というか悪いと思うけど。
「戯言はそこまでだ。それより、ストロノーフをどこへやったのか教えてもらおうか」
「………要するに
「無論。我々陽光聖典は全員、第三位階魔法を習得した精鋭の
「凡人、ねぇ…………」
第三位階魔法程度でエリートとか、そっちのほうが凡人だよ。ユグドラシルじゃ、そんなの基本魔法、いやそれ以前の雑魚魔法だぞ。
というかこれがエリートなの?ないわー。
「…………アインズさん」
「何ですか、ステアーさん?」
「すみません、二人と一緒にちょーーーーっと後ろに下がってもらえませんか?あいつら、僕一人で片づけるんで」
~アインズside~
笑顔で拳をボキボキ鳴らしながらアインズに下がるようにステアーが言う。
この瞬間彼は察した。あぁ、陽光聖典は終わりだな、と。思わず、心の中で彼らに合掌した。
「わかりました。ですが、手加減はしてくださいよ?」
「大丈夫ですって。死なない程度に殺すだけですから」
それどっちですか、というツッコミはあえてしない。アインズ自身、今の彼を刺激するのは何かまずいと本能が判断しているのを感じていた。
アインズ…………鈴木悟は、リアルで神童拓未と同じ職場で働いていた。その為、ギルドメンバーの中では人一倍彼のことを知っている。それゆえに、今の彼は危険だと即座に理解できた。
ステアーは笑顔のまま、静かに陽光聖典に向かって歩き始める。
「ほう?逃げることなく向かってくるとはな。面白い、その勇気に免じて、一瞬で終わらせてやろう………やれ」
二体の
「ステアー様!?」
危ないと思ったのか、アルベドが危険を知らせる。しかし、それは杞憂だとすぐに理解した。
天使の剣が彼の赤いチャック柄のTシャツ──正確には彼が作った神器級アイテムのローブなのだが、見た目はどう見てもそれにしか見えない──に当たった瞬間、飴細工の花瓶で叩いたように粉々に砕け散った。
「なっ⁈」
「ん?何か当たったのか?後君達ちょっと邪魔」
何事も無かったような反応をした後、
「くっ…………ぜ、全天使で総攻撃を仕掛けろ!」
さすがに困惑したニグンが、天使達全員で攻撃するよう命令する。ガゼフたちにとってこの天使達はかなりの強敵だった。その強敵が大量に襲い掛かってくる。この世界の人間にとってはまさに地獄のような光景だ。しかし…………
「数で攻めようとするのは、戦い方を知らない馬鹿の証拠だ。【
驚くどころか、呆れたような声で魔法を発動する。すると光を反転してような黒い光の波動が発生し、瞬く間に天使達をかき消した。
「………あり、ありえない…………」
突然の出来事に、陽光聖典の兵士たちが慌て始める。それでもゆっくりと近づいてくるステアーに遂に恐怖し始めた兵士たちは、次々に魔法をステアーに放ち始める。しかしその魔法は全て、彼のローブによって完全に無効化された。
「俺の
「ひぃぃ、ば、化け物が!」
一人の兵士がステアーに向けてボウガンを放つ。そろそろ鬱陶しく感じ始めたステアーが何かしようとすると、突然アズリエルがステアーの前に出てきて、矢を弾き返した。返された矢は真っすぐ飛んで行き、ボウガンを放った兵士の頭と身体を分離させた。
「………何で出てきたんだ、アズリエル。俺一人で片づけるって、さっき言っただろ?」
「知ってるわよ。ただ、貴方相手にあんな玩具を使う兵士が、最低すぎて殺意を抱いただけよ」
どうやらステアーという圧倒的強者に対し、ボウガンという下らない道具を使った事に怒り、思わず手が出てしまったようだ。
「くっ…………【
今度はニグンが、自身の召喚した
それに気づいたステアーは、アズリエルに下がるよう指示する。彼の前に立った(正確には浮かんでいるが)
「はい、さようなら。【
ステアーが人差し指を向けると、その指先から小さな炎が放たれる。吹けば消えそうなその黒い炎はゆっくりと進み、
瞬間、
「嘘だろ………」
「上位天使を………たった一撃で」
上位天使が消滅したことで、無数の混乱が生じる。
ニグンも、目の前で起きたことに驚きを隠せないでいた。
「どうしたんだ?もうネタ切れか?」
打つ手なしと見たステアーが、彼らを煽る。
すると、我に返ったニグンが懐からクリスタルを取り出し、大きく掲げた
「こうなれば最終手段…………最高位天使を召喚する!」
「「「「「おぉっ!!」」」」」
ニグンの言葉に、兵士たちは歓喜の声をあげる。どうやらまだ奥の手があったらしい。
「(あれは、魔封じの水晶…………
まぁ何にせよ、天使である限り問題はない。
そう考えているうちに、ニグンの持つクリスタルが破壊され、強い光が発生した。
「見よ!最高位天使の尊き姿を!【
それは、光り輝く翼が集合した聖なる存在だった。
彼らにとって至高善の存在。それを前に陽光聖典の兵士たちは喝采をあげた。
なんという神々しさ!なんという美しい天使だ!
そんな声が上がる中、ステアーはその存在を見て呆気にとられた。
「(…………嘘だろ。こいつが最高位天使?)」
予想の斜め上を行く存在が召喚されたことに、思わず心の中でずっこけた。
「…………なぁ、一応聞いとくぞ。最高位天使って、
「その通りだ!そしてこの
ステアーの後ろに立つアインズを指さし、ニグンは堂々と胸を張って宣言した。
「はぁ…………第三位階魔法を使えることが精鋭だと聞いた時から何となく予想してたけど、まさかここまで低レベルだったなんて…………」
「て、低レベルだと!貴様!最高位天使を前に何故そのような口が利ける!」
「逆に何で
完全にお手上げ、といった動作で呆れたような言葉を言うステアー。
最高位天使が降臨したにもかかわらず、何故態度を一切変えないのか。
魔神にすら勝利した存在に勝てる存在などこの世に存在しないはずだ。
「そ、そうか!はったりだ!そうだ、そうに違いない!
人間が到達できない、第七位階魔法を発動した瞬間、勝利を感じた。
しかし、目の前にいる青年、ステアーはその攻撃を受けても平然としていた。消し飛ぶことも、地に伏すこともなく、ただ両足で普通に立っていた。
「【
「ば、馬鹿な…………最高位天使の一撃を耐えただと!」
「気は済んだ?もうこれいらないよね?【
攻撃を受け終わった後、何事も無かったかのようにステアーは
「…………き、貴様………いい、一体何者だ。最高位天使を一撃で葬り去るような
「何者、か………そうだな、答え合わせがてら改めて自己紹介しよう」
そう言ってステアーは両腕を前に広げる。
そして背中に意識を集中させると、体内に隠れていた漆黒の翼が姿を現す。
翼を大きく広げると、ゲームのラスボス感を全開に出し、名乗りを上げた。
「俺は
アインズさんとアルベドさんの活躍、全部ステアーさんとアズリエルがもっていっちゃいましたね。活躍を見たかった方、ごめんなさい。