アポクリファ世界線での第四次聖杯戦争(妄想100%) 作:ゆきうさ
アーチャーの
マスターに気を配っていた、守るべきものを心に決めていた、生前弓による狙撃を多く見てきた、経験から勝った瞬間こそが一番無防備だと知っていたーーーいくつかの要因はあれど、この攻撃に対処できたのは半ば偶然のものだった。
本人ですら、再びこれと同じ事をしろと言われてもできないだろうと思っていた。
だが、それでも対応できた。
あるいは、それこそが英雄と呼ばれるに相応しい資質なのかもしれない。
外せない一瞬、決めなければならない一刹那。そういった時にこそ真価を発揮する人間、それこそが英雄だ。
ゆえにこそトロイア戦争の大英雄、ヘクトールは気づくことができた。
アーチャーによる狙撃、自身のマスターの危険。ならば後は体を動かすだけ。
「危ねえ、マスター!」
強引にではあるが、槍でもってマスターの体を引き寄せ、矢の軌道から遠ざける。
一瞬後、ケイネスの頭があった位置を矢が通過する。
ケイネス自身は何があったかを理解しておらず、すわランサーの反逆か!? などとズレた考えをしていたが、地面に突き刺さった矢、そしてそれに込められた神秘を目の当たりにしてさすがに口を噤んだ。
ランサーに遅れて反応したサーヴァントが
セイバーとアサシンは争うのをやめ、セイバーは身を隠し、アサシンは自分のマスターの安否を確かめに行く。
一方で奇襲を避けたランサーとケイネスは狙撃の射線を切れるよう物影に隠れ、反撃の策を練っていた。
「ちと手荒になっちまったが、大丈夫だったかい。マスター?」
「あ、ああ。よくやったぞ、ランサー。
しかし、
「たぶん敵さんはアーチャーだろう。威力的に宝具をいきなり切ってきた感じだな。
それでどうする、マスター。やられっぱなしってわけにはいかないだろう?」
「もちろんだ。しかしどうすれば……。」
「マスターが許可するなら、敵さんの次の一撃に合わせて俺の宝具でもって吹き飛ばすことはできるぜ?」
宝具は、英霊の持つ最大の切り札。
ヘクトールの場合は
あらゆる物を貫くとまで言われる、ヘクトールの投槍。一撃必殺という言葉が相応しい一撃だが、今それを使うとなればこの場にいる他の二騎にランサーの真名がバレてしまう。
だから、ケイネスはあらかじめ宝具は使わないように言い含めていた。
しかしそれを貫く場面では無くなっているかもしれない、との思いがケイネスの頭をよぎる。
もとより、ヘクトールには真名がバレたところで生じる不利益はあまりない。
この場に
ならばこそ、自分を害しかねない相手を倒すためならば使ってもかまわないのではないかという葛藤が生じる。
同時に、一つの疑問が生じる。
アーチャーからの追撃が、ない。
現状、戦況を支配しているのはアーチャーだ。サーヴァントですら一撃で沈めかねない威力の一撃を放てるアーチャーが、そうそう手を出せないほどの遠くにいる。そしてこちらは、アーチャーの正確な位置すら掴めていない状況。
一方的とまでは言わないが、アーチャーにとって有利な状況であるのは間違いない。にも関わらず、最初の一撃以外、こちらに攻撃が飛んでくることはない。
なにが起こっているのかが分からず、ランサー陣営、アサシン陣営ともに動けずにいると、埠頭に赤いコートを纏った白髪の男性が降り立った。
他のマスターは知る由もなかったが、彼がアーチャーである。
そしてもう一騎、アーチャーをこの場に追い立てた張本人が登場する。
「ふははは! 全員剣を収めよ! 王の御前であるぞ!」
轟ッ! とチャリオットの音を響かせて登場したのは筋骨隆々の偉丈夫。
「我が名は征服王イスカンダル! 此度はライダーのクラスをもって現界した!」
「何をーーー考えてやがりますかこの馬ッ鹿はああああ!」