アポクリファ世界線での第四次聖杯戦争(妄想100%) 作:ゆきうさ
「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。」
最後に現れたライダーが、王としての風格を漂わせながら言い放つ。
「うぬら各々が聖杯に何を期するのかは知らぬ。
だが今一度考えてみよ。その願望、天地を喰らう大望に比してもなお、まだ重いものであるのかどうか。」
「どういうことだ?」
「うむ、噛み砕いて言うとだな。
ーーーひとつ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか?
さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する愉悦を共に分かち合う所存でおる!」
それぞれが聖杯に託す願いを諦めて、自分に下れという傲岸不遜な物言い。
当然、そんなことを呑む主従はここにはいない。
「僕は、僕の願いを諦めない。どんなことかあってもだ。」
「それは私も同じでね。……それに、仕えるとしても貴様ではない。」
と、アーチャー陣営が突っぱねようとし、
「この私が、誰かのもとにつけと? 笑えない冗談だ。それともなにかね、これは君なりの私に対する侮辱なのかな、ウェイバー・ベルベット君?」
「生憎、マスターに勝利をもたらすって決めてるんでね。この命が散るまで、誰かに屈するつもりはないさ。」
と、ランサー陣営が一笑に付そうとし、
「戦う前に負けを認めるなど、武人として恥ずべき事。一考の余地もない。」
「誰かに仕えるちゅうんは性に合わん! わしは自由に人を斬るのが好きじゃが!」
と、アサシン陣営が拒絶しようとし、
「なるほど、なるほど! さすがは音に聞くプトレマイオスの父、大神ゼウスの子たるファラオだ! いやはや、その雄姿、その威光は七代後まで語り継がれたほど。
その軍門に加わるなどという栄誉、平時であれば心の底から喜んでその末席を賜るところだ。」
と、それら三組に先駆けて、セイバーがその弁舌を振るう。
自然に、そして流暢に。他の者が口を挟みづらいよう計算された言葉。
かつて政治の世界で培われてきたその弁舌に誰もが聞き入ってしまった。
「まあ、これは他のマスターすべてに対して言いたいことなのだが……私は今回の聖杯戦争、勝ち残るつもりなど無いのだよ。
なに、我がマスターの事情というやつでね。マスターはこの冬木の地で魔術師同士の争いによって悲劇が起こることを憂いている。いないとは思うが、万が一サーヴァントの力でもって悲劇を起こすような者がいたとき、ただの魔術師ではそれに抗する術をもたないからな。だからこそ、サーヴァントを呼び出し不当に被害を拡大させるような輩を討ち取るよう命じたのだ。」
そこでセイバーは口上を途切る。
「そんな事を言えば……見逃してもらえるとでも思っているのか?」
と、ふと誰かが零した問いが全員の耳に入る。セイバーは待っていましたと言わんばかりに再び口を開き、信じられないような提案を言い出した。
「その通り、こちらにはそちらと争う理由は無いが、そちらにはある。なにせこれは聖杯戦争。他の六騎を倒さねばならないのは誰もが同じ。
だから、こんなものを用意した。」
そう言って、何枚かの紙を取り出すと、それぞれが見えるように放り投げた。
「これは……!」
「セルフギアススクロールだと……!」
「内容は、『サーヴァント及びそのマスターが冬木の地で意図して間桐雁夜に対し敵対行動をとらない、もしくは一般人に被害を出さない限り、間桐雁夜及びそのサーヴァントは対象のサーヴァントに対して敵対行動をとらない。
加えて、残るサーヴァントが二騎になった時点で間桐雁夜は所持しているすべての令呪をもって自らのサーヴァントに自害を命ずること。』だ。
どうだ? 悪くない提案だと思うのだが。」