アポクリファ世界線での第四次聖杯戦争(妄想100%) 作:ゆきうさ
道場の中、一人の剣士が刀を持って佇む。刀身は鞘にしまってあり、居合いの構えをとる。
一陣の風が吹くと同時、チンッと甲高い音が鳴り響く。
素人であればその剣士が動いたことすら認識できないような素早い動き。一つの道を修めた者でなければ到達できない境地。
だが、その剣士は自らの剣閃にいまだ不満があるのか納得のいかない顔をしている。
「足りぬ。まるで足りぬ。人の身を越えるための魔術を以てして、決して人を逸脱すること叶わず、か。剣の道を志して三十年になるが、剣の道は修められども修羅の道は修められず。
やはりかくなる上は聖杯戦争に参加し、英霊と合間見えるべきか。」
壮齢の剣士、名を
富嶽家は剣を通して人の身を越え、根源へと至ることを目標とした魔術の家計である。その六代目当主富嶽武斬は人の身を超えるためには、ただ修練を重ねるだけでは駄目だと考えていた。
人を超えた存在と刃を交わすことこそが、人の身を越えるための第一歩と考え、死徒の討伐などにも参加してはいたが、結局は彼の望む戦いは得られず。
人理における最高峰の使い手たる英霊とならば自らが求める戦いができると考え聖杯戦争に参加しようとしていた。
「噂に聞くところであれば、北欧で行われた聖杯戦争ではケルトの誇る大英雄クーフーリンと竜殺しの大英雄ジークフリートが合間見えたという。
そのような戦いに私も身を投じてみたいものだ。……しかしそうすると、さすがに五体満足どころか命があるまま帰れるかも分からんな。なかなか難しいものだ。
一応、自分で呼び出したサーヴァントに相手になってもらうという手もあるが。」
そうして、武斬はサーヴァントを呼び出すための触媒を考え始める。
土蔵に足を踏み込むと多種多様な刀剣や火縄銃などが置いてある。
富嶽家は魔術師としての歴史こそ江戸の終わり頃からだが、武家としての歴史は徳川幕府が始まる頃まで遡れる。
そのころからの物品が土蔵には詰まっているので日本の英雄に限定はされるもののサーヴァントを呼び出すための触媒には事欠かない。
おそらく探せば織田信長や徳川家康といった超有名どころの英雄に縁のある品もあるだろう。
他の参加者と違い選ぶ余地があるが故、彼は悩んでいた。
「知名度で言えば織田信長あたりが頭抜けてはいる。が、やはり個人の武勇で有名になったわけでは無い以上本人の戦力が低い可能性がある。
ならば、むしろ近代の強さで名が知れた者を選ぶべきか……?」
そうして土蔵を漁っているうちに、武斬は一本の刀を見つけた。
刀から感じる血の匂い、かつて数多くの命を殺めたことを感じさせるその一振りに、武斬は引き込まれるかのように手に取った。
「これは……肥前忠広!? これは幕末に失われていたと聞いているが、どうしてうちの蔵に? いったいご先祖様はなにをしでかしてくれたのか。」
肥前忠広は幕末の時代に、とある人斬りに使われていた刀である。坂本龍馬からその人物に贈られたものであるために、龍馬を呼ぶ可能性も無いわけではないが、これを触媒とすれば十中八九あの人斬りを呼び出すことだろう。
かくして、武斬はその刀を用い英霊召喚を行った。
「おう! よう、わしを呼び出した!わしは剣の天才じゃき、この戦争勝ったも同然じゃ! なんじゃと? アサシン……そんなもん知らん。わしのクラスは『人斬り』じゃ。」