たった一人のマスターへ   作:蟹のふんどし

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感想を書いていただいた方、ありがとうございました。
立花派と達海派の方がいて本当のカルデアみたいだな、と思いました。

未だにゼパる(動詞)、笑ってます。


妄執の夢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

 

勝った、んだよな?

 

灰になった肉片の残滓を見つめながら思う。

僕は余りにもあっけない勝利に戸惑っていた。

 

いや、あっけないってことはないのだけど。

彼女の猛烈な攻撃にはそれなりの魔力を持っていかれた。

ちゃんと充分量の対価は払っている。

 

ただ戦闘の流れがあまりにも一方的すぎた。

 

今までにここまで圧勝した戦いがあっただろうか?

僕らの戦いはいつだって敗北と紙一重の勝利だった。

ここまで乱れがない戦いだと、まだ何かあるのではないかと身構えてしまう。

まだ、何か来るのではないか?

だって相手はビーストだぞ?

 

落ち着きなく僕があたりをきょろきょろ見渡していると、ジャンヌがこちらを見た。

少しだけ乱れた息を整え、剣を鞘にしまっていた彼女はそわそわしている僕を見て呆れ顔をした。

 

「何やってんのよ、あんた」

 

ため息をつきながらこちらに歩いてきた彼女に僕はたどたどしく返事をした。

 

「いや、まだ何かあるんじゃないかと思って……」

 

僕の言葉に彼女は目の端を少し上げた。

 

「はあ?」

 

あ、怒らしちゃった。

 

「なに?あんた?私のとどめが信用できないってわけ?」

 

僕は慌てて返事をした。

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

額に汗がうかぶ。

 

「そうじゃないなら何よ」

 

「いや、その…」

 

僕の煮え切らない態度に彼女は顔をゆがめた。

 

「面倒臭いわね!文句があるならはっきり言いなさいよ!」

 

怒鳴られた…

 

「わかりましたよ」

 

馬鹿らしいからあんまり言いたくなかったんだけど…。

 

「こういう時って映画とか漫画だと油断した人がよく死ぬじゃないですか。だから落ち着かないんですよ…」

 

有体に言って、僕は圧勝することに慣れていないのだ。

 

感覚的にはあれだ。

何か良いことがあった時、この後とてつもなくひどいことが起きるんじゃないかって怖くなるじゃん。

あんな感じなのだ。

 

僕の言葉を聞くと、彼女はお腹を抱えて笑い始めた。

 

「あ、あんた、バッカじゃないの!そんなことで不審者みたいにきょろきょろしてたの!」

 

文字化したら語尾に笑笑とかwwwとかが付くんじゃないだろうかってぐらいに笑われた。

 

「だから言いたくなかったんですよ」

 

いいじゃないか、別に。

フランス人は知らないかもしれないけど、日本には「勝って兜の緒を締めよ」ってことわざがあるんだぞ。

慎重なくらいがちょうどいいんですよ。

 

「まあ、あんたがどうしようとどうでもいいけど」

 

彼女は笑いすぎて出てきた涙をぬぐう。

 

いや、笑いすぎでしょ。

 

「文鎮みたいな敵もまだ残っていることですし?」

 

そう言って彼女は広大な地下室の奥を見る。

結界内ではだらしなく地に這っていた魔神柱は、どう動いたのか魔力炉心に巻き付いていた。

使った魔力を回復しようとしているのだろうか?

 

まあなんにせよ、不気味な沈黙を貫いたままだ。

戦闘が終わるまでも一貫してアクションを起こさなかった。

何なんだ?あの敵は?

 

「ですが…」

 

彼女はこちらに視線を戻すと僕を馬鹿にするような声で言った。

 

「勝ったなら驕りなさい。敵を心から見下しなさい。そうすれば少なくとも隣人愛に目覚める必要はないでしょう」

 

彼女は愉快そうに笑う。

 

「クソ野郎になれば、聖人にならずに済みますからね」

 

彼女は自罰的につぶやくと、魔神柱の方を向いた。

 

「さあ、首を刈りましょうか。あの化け物に首があるかは定かではありませんが」

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

圧倒的だ。

彼らの戦闘はその一言に尽きた。

 

私が行うような紙一重の攻防でもなく、作戦前に綿密な計画を練り、破綻した部分を臨機応変に修正していく場当たり的な戦いともまるで違った。

 

これまでに培ってきた技と力によって、敵を正面からねじ伏せる。

敵に反撃の隙すら与えなかった。

 

これが本来のサーヴァントの戦い方なのかもしれない。

達海は魔術師として王道を歩いている。

魔術回路もあれば知識もある。

あいつのスキルとサーヴァント本来の力が噛み合えばこうなるのは当たり前なのだろう。

 

サーヴァント3人に協力してもらって、それでも無様に負けた私とは月とすっぽんだ。

 

本来喜ぶべきことだ。

戦力が増えたのだから。

 

でもこの時、私が感じたのは不安だった。

居場所がなくなるとか、優劣が逆転するとか、そういうことじゃない。

 

ただ達海に前線に出てもらう、そのことが不安なのだ。

私は怖いのだ。

また一人になるのが怖くて怖くて仕方がないのだ。

 

あの時と同じだ。

 

お父さんとお母さんが去り、達海一人に守ってもらっていた時と変わらない。

 

嫌だ。

また後ろでただ見ているだけに戻るなんて嫌だ。

 

 

ズキッ

頭にそんな痛みが走った。

 

 

 

 

 

 

────私は一人になった。

 

≪どうしてよ。こんな、こんなことの為に私はここまで…≫

 

震える手でコフィンに触る。

手に伝わってくるのは無機質な冷たさだけで、以前のような温かみのある反応は帰ってこなかった。

 

≪なんで…≫

 

ポトッポトッという音を立てて、涙が何度もコフィンに落ちる。

 

≪お願いだから、なんとか言ってよ≫────

 

 

 

 

 

ハッとする。

真っ白だった目の前が次第に色を取り戻す。

 

またか。

まるで白昼夢だ。

 

リアルすぎる。

勘弁してほしい。

 

前を見ると既に戦闘は終わっていて、達海はジャンヌと何かを話していた。

 

良かった。

取り敢えず二人とも無事みたいだ。

みんな無事、今はその事実さえあればそれでいい。

 

「あとはあの魔神柱だけだね」

 

隣のエミヤに向かって言った。

 

「…」

 

だが返事は帰ってこない。

 

「エミヤ?」

 

不自然に思って彼を見上げる。

彼の顔には険しい表情が浮かんでいた。

 

「どうしたの?」

 

「…………………まさか」

 

彼はただ二人の方を見て、何かを考えている。

 

「エミヤ……?」

 

「いや、そんなはずは…」

 

 

彼がそんなことを呟いたときだった。

 

 

 

地震が起こった。

 

「な、なに⁉」

 

慌てて体勢を整えながら前を見る。

視界の先には召喚を行ってから今まで何ら動きのなかった魔神柱が蔓のような足を暴れさせ、周りを破壊していた。

 

「何を…」

 

今更になって暴れだした?

万策尽きた末の悪あがきだろうか?

 

なんにせよあの魔神柱はビーストを呼び出し、あれだけ行使したのだ。

魔力だってたいして残っては…

 

「あ…!」

 

もう一度、魔神柱の姿を見る。

魔神柱は最初と同様にプロメテウスの火に巻き付いていた。

 

しまった…

あまりに状況が混乱して当初の目的を忘れていた。

プロメテウスの火を奪取すること、それが私たちの作戦の目的だった。

 

先の戦闘で結界が完全に壊れてしまっている。

あのままでは魔力炉が壊される!

 

「死に損ないが…!」

 

エミヤはそう吐き捨てると、とっさに先ほどの弓を構えた。

右手に青い雷がほとばしり、矢の概形を描いたが具現化しないまま霧散してしまった。

 

「くそっ!もう魔力が…!」

 

アーチャーにいくら単独行動のスキルがあったとしても、それは一時的なもの。

ここまでの長期戦は戦えない。

 

私はその姿を見て、右手を掲げる。

 

「令呪をもってめい…⁉」

 

そう言いかけた私の目に入ってきたのは、令呪の跡がうっすら残っているだけの右手の甲。

 

そうだった!

魔神柱が召喚儀式を行う直前に、3画全てを使ったんだ。

 

やばっ。

 

焦る私の視界に入ったのは、左手に旗を持ち、右手に剣を掲げるジャンヌだった。

 

え?

まさか、あの火力で魔神柱を吹き飛ばすつもり⁉

 

「待って!ジャンヌ!」

 

私は叫んだ。

 

「貴方の全力じゃ、後ろの魔力炉まで破壊しちゃう!!」

 

私の叫び声に反応した彼女は少しだけ振り向き、横目でこちらを見た。

その横顔はイラついているような、呆れているような表情だった。

 

「生憎と、私はピンポイントで狙えますので」

 

そう言った瞬間、彼女の眼前がゴウッと轟音を立てて、爆発した。

いや、爆発じゃない。

炎がものすごい勢いで燃えだしたのだ。

 

「ああ!……あれ?」

 

炎は彼女の眼前を燃やし尽しそうな勢いだった。

だが違った。

 

プロメテウスの火全てを燃やしているかのように見えるそれは、よく見ると炎が螺旋状になっている。

 

あの炎は魔神柱が巻き付いている部分だけを的確に燃やしていた。

 

「すごい……」

 

あの威力の攻撃をあの精度でコントロールできるなんて。

 

「どうやって……」

 

「おそらく過程をうまく分担しているのだろう」

 

私のつぶやきを聞いたエミヤが隣で答えてくれた。

 

「達海が常に必要量の魔力を過不足なく彼女に渡すことで、彼女は流す魔力量を気にせずに、攻撃範囲にだけに集中できるようにしている」

 

魔力が切れて体が重そうであったが、彼の目はしっかりと観察していた。

 

「急場の契約でよくあそこまでできるものだ」

 

彼にしては珍しく本気で感心しているような口ぶりだった。

私も彼につられるようにして達海の方を向く。

あいつはジャンヌの後方で冷静に魔神柱の方を見ていた。

 

「…」

 

目に入る達海の背中。

魔神柱を前にあいつの後ろでただ見ている。

 

妙な()()()があった。

あいつの背中を見ていて無性に悲しくなった。

 

そうだ、あの時も…

あの時?

あの時っていつだっけ?

 

いや違う。だからあの…

 

 

 

≪────!────!≫

 

魔神柱から声がした。

 

≪────!────!≫

 

妙に頭に響く。

 

「おい⁉」

 

≪────!────!≫

 

「マスター⁉」

 

うるさい。頭に響く声を出すな!

 

「しっかりしろ!マスター!」

 

≪────!────!≫

 

 

頭に鋭い痛みが何度も走った。

 

 

 

 

 

 

 

────世界はいつも通りだった。

 

誰も彼もが日常を謳歌している。

 

穴が開いてしまったのは私だけだった。

 

誰よりも世界の為に動いてきた私たちが異物だった。

 

なぜあんなことを考えてしまったのだろう。

 

戦争や飢餓で多くの人はいつも理不尽に死んでいる。

 

画面の中に映る大量の人の死を、私は他人事のように眺めていたはずだ。

 

そんな私が、目の前で後輩が死んだ程度でなぜ救わなくちゃなんて思ってしまったのだろう。

 

なんで人の命を秤にかけなかったのだろう。

 

≪なんで世界を救わなくちゃなんて思ってしまったのだろう≫────

 

 

 

 

 

────≪なぜ、勝手に召喚システムを使ったんだ?≫

 

≪一人でサーヴァントを何体も持つなんて許されないぞ≫

 

≪交流措置が必要だ≫

 

≪いいや、処分するべきだ≫

 

≪だいたい人類史が消えるなんて、そんなことあるのかね?≫

 

≪召喚を行ったのだからこれは我々の管轄だ≫

 

≪我々も出資をしている。ある程度の取り分がなくては納得できない≫

 

≪記録に関してはこちらに一任して頂く≫

 

≪そもそもカルデアは国連の管轄で…≫

 

 

どいつもこいつも自分のことばっかりだ。

私たちの戦いを否定して、何もしないことを美徳みたいに言う。

やれ倫理だ、法律だって。

既得権益を守るのに必死なだけなのに。

 

こんな世界の一体どこに価値があるのだろうか────

 

 

 

 

 

────()が降り注いだ。

 

人々の悲鳴が聞こえる。

 

誰もが知らないふりをして、日常を謳歌していた。

 

そんな当たり前が白紙になった。

 

正直、すっとした。

 

私の中で何かが報われるようだった。

 

そう思った。

 

だけれど私の周りの穴は埋まらなかった。

 

世界は白紙化しただけなのに、私の周りは穴だらけだ。

 

こんな世界二度も救う価値があるのか?────

 

 

 

 

────世界の命運を託された。

 

世界に救う価値を見出さない私に、こんなものを託してどうなるというのか?

 

いっそ全部壊してしまおうか?

 

そんなときだった。

 

≪だったら()()()()()()()()()を救えばいいじゃないか≫

 

そんなことを言ったやつがいた────

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

そうだった。

そうだったんだ。

 

危うく()に溺れるところだった。

 

ありがとう。

 

()()()

 

 

 

 

§

 

 

 

 

≪キィィィィ!キィィィィ!≫

 

炎にあぶられて、魔神柱が悲鳴のようなものを上げている。

 

≪キィィィィ!キィィィィ!≫

 

何度も何度も。

 

≪キィィィィ!キィィィィ!≫

 

まるで断末魔だ。

 

「うっさいわね。さっさとくたばれっつーの」

 

もはや炎にあぶられて、嬲られているだけにしか見えない。

魔神柱はこちらに攻撃することもなく、ただ蔓のような足をばたつかせいるだけだった。

 

何がしたいんだ?こいつ?

 

≪キイィィィィィィ!!!!≫

 

魔神柱がひときわ大きな悲鳴を上げた。

 

「チッ」

 

ジャンヌは顔をゆがませて、舌打ちをした。

 

「宝具、使うわよ」

 

そしてそんなことを言った。

宝具?

 

「いや、こいつは攻撃してこないし、魔力は温存しておいた方が…」

 

「『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』!!!!」

 

彼女は僕の言葉を聞くこともなく、宝具を放った。

 

体から大量の魔力が抜ける感覚がする。

 

その感覚の後、彼女の足元から爆発と間違えるくらいの轟音がして黒炎が湧き出す。

彼女から湧き出た黒い炎は蛇のように地面を伝うと、そのまま魔神柱の体を走り抜けた。

そして炎を追うように現れた無数の黒槍が魔神柱の体を何度も貫く。

 

≪キイィィィィィィ!!!!≫

 

これが本当の断末魔となった。

黒炎が魔神柱の体全てを炭にした。

 

そして黒槍が刺さった部分からぼろぼろと崩れだした。

 

「ハアハア」

 

そんな奴を前に、ジャンヌは肩で息をしていた。

 

「…ったく、手間かけさせるんじゃないわよ」

 

そんなに焦らなくたって、あのまま攻撃を続けていれば倒せたんじゃ…

そんなことを思いながら彼女の背中を僕は見ていた。

 

 

足元のツタ部分が崩れ、魔力炉に巻き付いていた魔神柱は音を立てて崩れた。

炭と化した魔神柱の体が粉塵となって舞い上がり、砂煙を作る。

 

 

 

 

「終わった…」

 

 

 

何ともあっけない終演に僕はただぼーっとしていた。

 

これで終わりなのだろうか?

これで未来から来た彼らの頼みは完遂できたのだろうか。

 

僕がシャドウ・ボーダーで目覚めたとき、ペンドラゴンさんは僕に

 

「マスターを助けてもらいに来た」

 

と言っていた。

 

これで助けたことになったのだろうか…

 

 

…おっとこれじゃ駄目なんだっけ。

さっきジャンヌに言われたばかりだった。

えーっと心から敵を見下せ、だっけ。

 

「弱い!弱すぎる!この貧弱者が!」

 

こんな感じだろうか。

 

さすがにこれを言うのは恥ずかしいな。

やっぱやめよう。

 

 

そんな風にふざけている間に砂煙が晴れてきた。

黒い粉塵が薄くなっていき、微かに先が見え始める。

 

どこかで既視感のある光景だった。

いつだったかな?

 

ああ、そうだ。

僕らが旅を始めたときだ。

管制室で爆発が起こってあちこちに瓦礫が広がっていた。

 

その瓦礫の崩落に巻き込まれた()()()を助けようとしたことが僕らの旅の始まりだった。

 

ノスタルジックな気持ちに包まれながら、粉塵の先を見ていた時だった。

僕の目に入ってきたのは炭化した魔神柱の体とぼろぼろに崩れた炭、そして…

 

 

()()()()()()()だった。

 

 

体中に悪寒が走り、僕は知らないうちに駆け出した。

 

「な⁉馬鹿!勝手に走るんじゃ…」

 

ジャンヌが後ろで何かを言っていたが全く耳に入らなかった。

 

焦燥感が体中を駆け抜ける。

 

少し前の会話を思い出す。

 

────そんな状況でマスターを連れてきたところで、おそらく英霊を呼び出すことすらままならない。

 

ダ・ヴィンチさんはそう言っていた。

たしかにそうなのかもしれない。

でもだったら、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だってダ・ヴィンチさんもホームズさんもサーヴァントじゃないか。

それなのに彼らはこちらに来ていた。

 

だとすれば僕らのサポートに最もふさわしい人物がいる。

僕らとともに旅を続け、いつもそばで僕らを守ってくれた()が。

 

大きな盾で常に恐怖と戦ってきた、誰よりも優しくて勇敢な()が。

 

 

────じゃあ、あれはキリエライトさんが使っている盾、ですか?

 

────…………ああ、その通りだ

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

宝具の扱い方を一番知っているのは本人だ。

彼女を連れてくる方が安全に決まってる。

 

 

 

 

────未来から来た人物が、過去でその本人や近しい人物と出会うということは危険だ

 

────過去の人物と会うことは世界の理を乱す行為。

 

 

だったらダ・ヴィンチさんやホームズさんはなぜ僕と接触したんだ。

もし僕に過去を変えてしまうほどの影響力がないから彼らが僕に会っているんだと仮定したら、彼女と僕を会わせる事だって問題ないはずだ。

 

 

頭のなかに色々なことが駆け巡る。

魔神柱はなぜカルデアの地下室にピンポイントで現れたのか?

魔神柱はなぜ攻撃を仕掛けてこなかった?

魔神柱はなぜ何度も同じように叫び声をあげていた?

 

 

焦りで頭が空回りしているはずなのに嫌な連想ばかりが浮かんでくる。

違う。

そんなはずはない。

そんなはずがない!

 

僕は黒変した足の手前まで来ると上に覆いかぶさっている魔神柱の遺骸を両手でどけた。

下には先ほど舞い上がった粉塵よりも荒い粒が覆いかぶさっていた。

 

違う。

違うはずだ。

僕の勘違いだ!

 

僕はその場に膝をつき、必死に灰を掘った。

両手でかいて、掘って、かいて、掘って、かいて、掘ってかいて、掘って、かいて、掘って、かいて、掘ってかいて、掘って、かいて、掘って、かいて、掘ってかいて、掘って、かいて、掘って、かいて、掘ってかいて、掘って、かいて、掘って、かいて、掘ってかいて、掘って、かいて、掘って、かいて、掘って……

 

僕の右手が何かにぶつかった。

ハッとする。

 

右手が震える。

現実を見ようとする理性と逃避する心が拮抗する。

 

それでもなんとか振るえる手で灰をかいた。

 

 

そこにあったのは

 

()、だった。

 

ところどころが炭となり、美しい肌だった場所はガサガサの皮膚となっていて、艶やかな髪はぼさぼさの糸みたいになって、それでもわかる見慣れた顔だった。

 

 

 

 

 

「……マ……シュ……?」

 

僕は震える声で、呟いた。

 

その声に反応するかのようにかさかさの瞼がピクリと震えると、目を開いた。

 

その目の中心には彼女の美しい色彩はなく、灰色で埋められてた。

こちらが見えているかも分からなかった。

 

下の灰が動き、そこから割れて肘までしかない左腕と辛うじて指が2本残っている右手が出てきた。

 

左腕が何かを探すように動き、震える右手の人差し指が僕の頬に触れた。

感触を確かめるように何度か僕の頬をつつくと、灰色の目から涙が垂れた。

 

「……や…っと…………や……と……会えた」

 

僕は無意識に人差し指と薬指しか残っていない真っ黒な右手を両手でつかんだ。

わずかに手のひらが崩れ、右手に亀裂が入る。

 

 

「……せ…ん…ぱい……せん……ぱい……」

 

 

彼女の割れた頬にわずかにえくぼができる。

 

「ごめん……なさい…せっかく……ここまで…きた…のに」

 

えくぼに耐え切れなかったのか、頬から右目にかけてパキッという音と共に亀裂が入る。

 

「もう……なにも……でき……そうに……ない……です……」

 

 

何も声が出なかった。

 

「せ…かく………さずか…っ…た……こ…も…うん…で……あげる……こと…も……」

 

挙げていた左腕が肩から折れて、灰の上にぼさっと乗った。

 

「……できなく…て……」

 

彼女の目からは涙が流れ続けた。

涙で水がしみ込んだのか、辛うじて動いていた唇が割れた。

 

「…お…えん…あさい…おえんあさい……」

 

彼女はただ虚空を見て泣いていた。

 

「えめて…あやありた…かった…んえす…」

 

両手が震える。

 

「いっか…さんあ……あるくあり…ません……わたし…あ…あるいん…で……す」

 

空の喉で嗚咽を吐いていた。

 

なんで…どうして……

 

 

 

 

 

 

カキンッ!!!!

 

後ろで甲高い金属音がした。

 

僕は呆然としたままゆっくりと振り返った。

 

そこにはマシュの体に剣を振り下ろそうとしている()()()()と、それを杖で抑えている()()()()()()がいた。

 

「邪魔よ。どきなさい」

 

ジャンヌの顔に感情はなかった。

無表情だった。

 

「申し訳ないがレディ。それはできない」

 

カタカタと震える金属音と共に鍔迫り合いは続く。

ジャンヌが無表情で力を強め、ホームズさんが押され始める。

 

彼の頬に汗が伝った瞬間、ジャンヌが後ろに跳んだ。

 

バゴンッ!!!!!!

 

さっきまでジャンヌがいた場所に何かが落ちてきて、砂煙を巻き上げた。

落ちてきたものの影を見る。

それは大きな拳に似ていた。

 

あれは…ダ・ヴィンチさんが背負ってた6本指の…

 

僕の目前を、舞い上がった灰塵が覆う。

 

「ごめんね。達海くん」

 

前の人影から声がした。

 

「私たちに謝る資格なんてないけれど」

 

灰塵が晴れる。

 

「それでも言っておかなくちゃならない」

 

僕の前に影が差した。

 

「なんで…ここに…」

 

僕の前には未来から来た二人、ホームズさんとダ・ヴィンチさんが立っていた。

 

「ごめん」

 

彼らは僕らを守るようにこちらに背を向けていた。

 

そして彼らの視線の先にはジャンヌがいる。

 

「来たわね。偽善者2人組」

 

彼女の表情は気だるげなそれに戻っていた。

 

「そうだろうとは思ったよ」

 

ダ・ヴィンチさんは言った。

 

「あのとき君が私を睨んだのは、君がこちら側の世界の英霊だからだね?」

 

こちら側?

彼女の要領を得ない言葉にジャンヌは軽蔑のまなざしを取った。

 

「英霊?少なくとも今の私はそんな高尚なものじゃありませんが」

 

彼女は不機嫌そうに二人を睨む。

 

「それはあんた達が一番わかってることでしょう?」

 

そういうと彼女は振り返った。

 

「ねえ?そう思うでしょ?()()()()()?」

 

…藤丸?

 

彼女の後ろから声がした。

 

「やっぱり来たんですね。2人とも」

 

コツコツとこちら側に誰か来る音がした。

ダ・ヴィンチさんはその人物に向けて、口を開いた。

 

「うん。君を止めに来たんだ」

 

 

「立花ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 







やあ!みんな!


僕の名前はシリアスブレイカー、理性焼却英霊アストルフォさ!

こっちは僕の相方シリアスキーパー、高貴な雰囲気が余計にエッチなメイドデオン!

次回予告はじめるよ!

とうとう最終局面を迎えた達海たち!

そして交錯する様々な人間の思惑!

そんなとき一人の男が現れる!

「…筋肉が最高のソリューション」

達海は無事マッチョになれるのか⁉

次回、地獄の筋肉トレーニング‼

君たちもパンツを下して待機だ!ぶふぉあ‼‼(きりもみ回転して吹っ飛ぶ)



どうもデオンです。

御免ね。この子、病気なんだ。

次回もさらに謎が解明される予定だからよかったら見てくださいね。




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