たった一人のマスターへ   作:蟹のふんどし

25 / 38
過去話を話数で数えるのも味気ないのでそれぞれサブタイをつけました。

前回で続きはよ書けや!と言ってくれた方ありがとうございました。
すごい嬉しかったです。
そしてすみませんでした。
はよ書けませんでした。
次は頑張ります。


潜む影

 

 

 

 

「僕が思うにおそらく君にとって先輩と言える人がいれば、それは人間としてごく自然な“人”なんじゃないかな」

 

私の横で座る彼はそんなことを呟いた。

 

「人間として、ごく自然な……」

 

「当たり前に喜び、悲しみ、怒り、他人との感情の間できちんと生きることのできる、そんな誰か」

 

無菌室の壁を眺めながら話す彼の目は、なぜか夢を語る子供のような無邪気さが宿っていた。

そんな彼の瞳に私は言いようのない感情を覚えた。

その感情は何かむず痒いもので、得体の知れない“それ”を鮮明にしたくて口が動いた。

 

「コミュニケーション…生き方の先輩、ということでしょうか?」

 

「そうだね。そしてその先も見ることのできる人かな」

 

「その先?」

 

「うん」

 

彼は頷いてこちらを見る。

 

「博愛、友好、人を思いやる心。理由はなくとも自分ではない誰かのために行動する」

 

彼の言葉は自分のヒーローを語るような静かな興奮があり、その目には具体的な人物が映っている。

そう見える。

 

「僕はこれを人間特有の長所だと思っている」

 

利己的ではなく、利他的。

意思を持って損をすることができる存在。

それは非常に興味深いと、彼は言っていた。

 

私には、それを知識として納得し、頭に入れておくことしかできないものであった。

しかしその知識は言語化できなかったあの感情を明確にしてくれた。

 

今なら間違いなく分かる。

私が彼の横で覚えた感情は“憧憬”だ。

 

目を輝かせ、希望を語るように人物像を話す。

そんな彼の姿に私はあこがれを覚えたのだ。

私には、脳裏に描くほどに願える人なんていなかったから。

 

でも今の私には彼の言っていたことがはたして正しいのか、よく分からない。

 

“他人との感情の間で生きることができる“。

これはごく自然な人なのだろうか?

 

“理由はなくとも自分ではない誰かの為に行動する”。

これは人の長所なのだろうか?

 

私は他人との感情の間で苦しむ人を見た。

私は誰かのために行動することで自分を壊していく人を見た。

 

 

「ごめんなさい。許して」

 

一人ぽつんと部屋に座る背中がそうつぶやいたとき、私はそう思った。

私にとって、先輩と言えるようなごく自然な“人”は、何が正しいかに悩み、自分がとった行動に苦しみ、自らの責任に苛まれる、そんな人だった。

 

人とサーヴァントの間で揺れる私だからこそ、そう思ったのかもしれない。

彼の苦悩は他人事に思えなかった。

私にとっての先輩はいつしか()になっていた。

 

 

 

§

 

 

重い瞼を開く。

 

「今のは………」

 

夢?

いや、あれは記憶………?

 

頭の上で何かが動く気配がする。

そうだった。

私はハッとして上体を起こした。

 

視線の先にはベッドの上に寝かされているマシュがいる。

 

一定の間隔で彼女のお腹が上に動き、息の吐く音と共にお腹が下がる。

彼女の動きと共に、静かな呼吸の音が私の耳に届く。

 

すぅすぅと健やかな響き奏でるそれは、彼女の命がここにあることを確かに示していた。

 

私は安堵の息を吐き、体から力を抜いてパイプ椅子に背中を預ける。

そしてゆっくりと首をそらし天井を見上げた。

 

「彼女はもう大丈夫そうだね」

 

私の視界にある人物の頭が入り込んだ。

 

「うわっ⁉」

 

驚いて咄嗟に頭を上げる。

 

「おっと」

 

彼は頭を引いて私が起こした頭を避けた。

 

「びっくりした……」

 

「だいぶ前からここにいたんだけどね」

 

私が椅子を回し、彼の方を向くと彼は肩をすくめていた。

 

「いたなら起こしてよ………」

 

「これからまたしばらくまともな睡眠はとれないだろうから、寝られるうちは寝かしといてあげたかったんだ。気に障ったなら謝るよ、マスター」

 

そう言われると何も言えないからずるい。

拗ねる私に彼は苦笑いで一言加えた。

 

「でも、ここで寝ないでちゃんと休んでだほうがいい」

 

細身の体躯、黄金色の髪、碧眼をもつ青年が私にそう言う。

 

「………大丈夫。こうしていたほうが楽なの」

 

私は体を彼の方へ向けてしゃべる。

 

「ありがとね。ジキル」

 

「そっか」

 

彼は私の言葉に笑顔で答えた。

そしてスクラブを着たままベッドの足元にある席に座る。

 

「医学をかじっているとはいえ、まさか僕が呼ばれるとは思わなかった」

 

苦笑いする彼の顔には疲労が見えた。

19世紀のロンドンで医者をしていたヘンリー・ジキル博士。

それが彼だ。

 

精神を病んだ父を思い、人間の善と悪を分離する薬を開発した人物。

イギリスの都市で長年医者として働きながら研究まで行っていた人間が、医術をかじっていただけとは謙遜のしすぎだ。

そんな謙遜も彼の優しさの一部なんだろうけど。

 

「ジキルがいてくれてよかった」

 

私はさっき見た光景を思い出す。

 

 

「脈拍弱くなってます!ドクター!」

 

「気管挿管!チューブを持ってきてくれ!」

 

「出血止まりません!」

 

「出血箇所の特定は!」

 

「量が多すぎます!」

 

「IVR!ミハエル!CT!」

 

「準備終わってます!造影剤持ってきて!」

 

 

医療部の職員たちがマシュを取り囲んで手を動かし怒号を交わし続けていた。

あの連絡を聞いて、駆け付けてまず見た光景がそれだった。

血の気が引いた。

 

レイシフトの中で感じた恐怖とは別のものが私の顔面を真っ白にした。

 

マシュの手をもう一度握ろうと両手を上げた。

そこで気づいた。

未だに私の両手は震えていた。

乾いた笑いが自然と出てくる。

 

「情けないね、私。何もできなかった」

 

振るえる両手を握り合わせ、震えを止めようとする。

だが力入れれば入れるほどに震えは大きくなっていく。

 

思えばいつもそうだ。

戦闘でも、日常でも、私はただ見てることしかできない。

 

私には戦うための力がない。

高度な魔術を扱うための知識があるわけでもなく、かといって機材のメンテナンスを行えるようなスキルがあるわけでもない。

私は英霊たちを現界させつづける楔にすぎない。

カルデアに必要なのは楔であり、私自身ではない。

 

最近は順調に物事が進んでいたから、こんな当たり前のことを忘れていた。

自分の思い上がりを戒めるように握った両手の甲に爪を立てる。

 

「それは違う。マスター」

 

うつむく私にジキルは言った。

 

「君がいてくれるから、僕はいまここにいる」

 

彼は優しい。

でも同情は今の私にはつらい。

ああ、あの時の所長はこんな気持ちだったのかな。

 

「それはそうだけどさ、でもそれは私じゃなくてもよかった」

 

気を遣ってくれる彼に私は言った。

 

そう。

このポストは別に私である必要はないのだ。

 

「本当だったら私よりも優秀なマスターが47人もいたんだよ。私の役目は彼らになら軽々とこなせたはずだもの」

 

私は数合わせの一般枠。

たいして彼らの多くはその類稀なる能力から引き抜かれた選抜メンバー。

この場所に座るべきは誰だったか、そんなものは自明の理だ。

 

「私は選ばれたわけじゃない。偶然よ。偶々、本当に偶々私が生き残っただけ」

 

甲に爪を立てた部分から痛みが走る。

それから爪の先端が少しだけ赤く染まる。

 

「たまたま生き残ったから私がマスターをやっているだけなのよ………」

 

別に今までやってきたことを否定しているわけじゃない。

悲劇の人物を演じたいわけでもない。

ただ事実は冷静に見つめる必要がある。

私でなければいけない、そんな事実は存在しないと。

 

「マスター」

 

近くに聞こえた声に私が顔を上げると、目の前に彼の顔があった。

 

「僕たちが見るべきは必然性でも運命論でもない。僕たちが歩んできた道だ」

 

「道なんて………」

 

「誰だったらできるか、じゃない。誰だったらやれたか、でもない。重要なのは誰がやったか。それだけだ」

 

「……」

 

「それだけが事実であり、不変の真実だ」

 

レンズの向こうの目は冷静に私を射抜く。

 

「どれだけすごいことをできるだけの能力があったって、何もしていないんじゃ能力がないのと変わらない。行動をすること。それがこの世界で僕らに許された唯一のあがきだ」

 

彼はそう言うと軽く息を吐いて、顔を離した。

そして眼鏡を取り、スクラブの首元にかけた。

 

「確かにその47人のマスターならより良い戦果を出せたかもしれないね。こんな状況でも自身で彼女の治療をできたかもしれない。でも彼らはいない。絶望的な状況でそれでもあきらめずに進んだのは君だ」

 

確かにそうかもしれない。

でも……

 

「自分が歩いてきた道を誇ればいいんだよ。たらればじゃなく、ここまで来たのは自分だと、その自負を持って進めばいい」

 

分かっている。

私が歩んできた道は胸を張って誇れる道程だった。

そう思わなければ力を貸してくれたみんなに失礼だ。

それでも、こう思ってしまう。

 

「私がもっと技術や知識を持っていたら………」

 

「一人で全てをなそうと思ってはいけない」

 

とても冷たい声だった。

彼の目は睨むように細くなっていたが、その視線が見るものは彼の瞳にしか映らないような何かに見えた。

 

「一人の人間ができることなんてたかが知れている。だから人は手を取り合うんだ」

 

「……」

 

「君ができないことは僕らがやる。僕らができないことはカルデアのみんながやる。カルデアのみんなができないことは君がやる。それでいいのさ」

 

何でもできて、みんなに頼りにされるような人間になろうとすることは悪いことだろうか。

私の表情を見て何を思ったか、彼は冷たい瞳を私にも向けた。

 

「完璧な何かを作ろうと思ってしまえば、その先に待つのは自滅の道だ」

 

自滅………

 

「僕は生前、人間の悪性をすべて取り去って、善性だけを残せば平和な世界が出来上がると思っていた。だから人の悪性を取り除く薬を作ることに躍起になった。そんなバカげたことの為に人生を費やして、僕が生み出したのは結局化け物だった」

 

彼は生前、人の悪性を切り離す薬を開発、服用したことで自らの悪性に自由を与えてしまった。

切り離してしまったがゆえに、手が付けられなくなった悪性は彼のもう一つの人格となり、悪逆の限りを尽くした。

周りの人間を殺し、親しかった人物を凌辱し、欲のままに動いた。

そしてその罪に耐え切れなくなった彼は自死の道を選んだ。

 

「平和のために作ったものはそれと真反対のものに寄与してしまった」

 

そんな彼が言うことに反論などできるはずもない。

 

「つまりね、人間は不完全だけれど、それこそが自然なんだ。その不完全性を崩そうと思えばどこかに(ひずみ)ができる」

 

彼の目にはいつしか冷たさが消えていた。

 

「だけど君は自然だ。どこまでも人間らしい。自分の無知や無力を知って、だからこそ人の手を借りて他人との感情の間でちゃんと生きていくことのできる自然な人だ」

 

「そんなこと…」

 

「それは誰にだってできることじゃない。だから君は君ができることをやればいい。結果的にそれは君にしかできないことになっていくはずだ」

 

私ができることが………私にしかできないことになる。

単純にそう考えていいのだろうか

 

「そうだね…うん、そうだよね」

 

 

 

「だからよぉ、マスター。お前はもう少し周りを見た方がいいぜ」

 

彼の言葉を反芻していた時、彼の口調が荒々しくなった。

思わず彼の顔を直視する。

その瞳は真っ赤に染まっていた。

これは………

 

「貴方は、もしかしてハイド?」

 

私が質問すると彼は鼻で笑った。

 

「俺のことはどうだっていい。こいつがさっきからペチャクチャ話してやがる綺麗事はさらにどうでもいい。便所の糞レベルでどうでもいい」

 

彼は椅子から立ち上がり、そして私の胸ぐらをつかんだ。

 

「だが、あんな()()()()を野放しにしておくのは我慢ならねえ!」

 

鼻と鼻が付きそうな距離まで引っ張られ、目の前で怒鳴られる。

 

「てめぇが死んじまったら俺が暴れらんねぇだろうが!」

 

彼は一体何を言っているんだろう?

 

「…化け物?」

 

「いるだろうがよ。俺と同じように()()()()()()()()()()()()()()()()()クソみてぇな野郎が」

 

自分の中に、もう一匹?

 

「こりゃあ同族嫌悪ってやつかぁ⁉そいつが近くにいるだけでぶっ殺したくなるんだよ!」

 

彼は私を離し、眉をしかめる。

 

「いや、同族なんて言っちまったら悪いか。なんせあいつときたら入れてるもんが人間じゃあねえしな!ひゃはははは!」

 

人間でない?

何のこと………?

 

「ああ?なんだ?そのアホ面は?」

 

私の反応に彼は怪訝な表情をする。

 

「てめぇ………まさかとは思うが………」

 

彼がそう言いかけたとき、彼の体は不自然な止まり方をした。

よく見ると震えている。

まるで何かと何かがせめぎ合っているように見えるその拮抗はしばらくすると彼の叫び声に変わった。

 

「ハイド!」

 

彼の瞳の赤色が薄くなっていた。

だがしばらくすると瞳の濃さが滲んで元に戻っていた。

 

「うるせぇ!ジキル!お前は引っ込んでやがれ!」

 

彼はそう叫んだあと、肩で息をしていた。

彼らがせめぎ合うことは体にも負担がかかるのだろうか。

 

彼はそのあともしばらく荒い呼吸を繰り返していたが、ダルさを振り払うようにしてこちらを睨んだ。

 

「おい。お前のそのアホ面がくせぇ演技じゃなくてただのアホ面だっていうんなら教えてやる」

 

「う、うん」

 

「ジキルより()()()()が紛れてるぜ、ここに」

 

「ジキルよりひどい………?」

 

彼は額に汗を流しつつも、愉快そうに笑う。

 

「ああ。こいつも大概いかれているが、そいつはもう()()()()()()()()()()()()()()()。あと一押ししてやったらおもしれぇことなる」

 

そいつ?終わっている?

 

「いったい誰の話をしているの?」

 

私が質問すると彼は何が面白いのか三日月のように口を曲げた。

 

「そいつの名前は………………」

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

「っ………クソっ。めんどくせえ奴が来ちまった。」

 

集中治療室の扉の向こうからコツコツと足音が聞こえてくる。

 

「うるせえなあ。分かったよ、ジキル。こういうのはてめえの十八番だ。俺はとんずらする」

 

そういうと彼は私に背を向けた。

 

「マスター、忠告はしたぜ。死ぬんじゃねえぞ、俺はまだ殺し足りねえんだからな」

 

そして彼の体が透けていき、消えた。

霊体化したのだろう。

 

 

その直後、医務室の扉が開いた。

そしていくつかの書類を抱えたドクターが入ってきた。

 

彼の顔には疲労のせいか少し影が落ちていた。

私の姿を見て、眉を上げた。

 

「あれ?立花ちゃん。まだここにいたのか」

 

「う、うん。マシュの横にいないと心配で」

 

「そうか」

 

彼はこちらを見ると心配そうな目つきをした。

 

「……大丈夫かい?」

 

え?

 

「ひどい顔だよ」

 

無意識にペタペタと自分の顔を触る。

 

「まあ、無理もないけどね。あまり自分を追い込んじゃだめだよ」

 

ドクターはそう言ってベッドの横まで歩いてくると、彼女に繋がれている医療器材とカルテを確認し始めた。

病棟のベッドには患者の状態がすぐに分かるようにベッドにカルテが備え付けられている。

スタッフの人数は少ないから患者の状態が共有されないことはほとんどないけれど念のため、とドクターが言っていたことを思い出す。

 

機器のモニターを見ては何かを書き加えるその横顔に私は質問した。

 

「マシュはもう大丈夫なの?」

 

私が質問するとドクターは顔をこちらに向けた。

 

「ああ。彼女のバイタルは大分安定してきた。しばらくすればICUからは出られるだろう」

 

「そっか。よかった」

 

「……」

 

「……」

 

「ドクター、マシュがこうなった原因は………もうわかってるの?」

 

私の質問は機材を操作する彼の手をぴたりと止めた。

 

「……それについて話すために君も呼ぶつもりだった。一緒に来てくれるかい?もう何人か待たせている」

 

彼はこちらを見ずに機材の操作に戻りながら言った。

こちらからはその顔色は見えない。

 

「………分かった」

 

私は一言だけ返した。

 

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

ドクターに連れてこられたのは管制室の裏手にある倉庫だった。

なぜこんなところに。

 

私の前にいるドクターが扉の前に立つと扉が自動で開いた。

横にスライドして、部屋の中が見える。

 

「すいません。お待たせしました」

 

ドクターはそう言って中に入った。

私も追随する。

 

中にあったのはサロンのような場所だった。

開けた空間があり、中心に円形になったソファが置かれている。

一番奥の上座が所長。

左側にはレフ教授。

右側には達海が座っていた。

 

そしてソファから少し離れたところにダ・ヴィンチちゃんが腕を組んで立っている。

皆一様に険しい表情だった。

私が入ると奥の所長が視線をこちらに向けた。

 

「たいして待っていません」

 

しかめっ面のまま口を開く。

 

「それで、マシュの容態は?」

 

「全身からの出血、さらに輸血に伴う急性呼吸窮迫症候を併発し、一時は大変危険な状態でしたが緊急治療とマスターである立花ちゃんの介添えもあって持ち直しました」

 

ドクターは歩きながらマシュの状態を離す。

私も彼の後ろを歩く。

 

「予断を許さない状況ではありますが、今は安定しています。」

 

「………そうですか」

 

ソファの横に着くと所長が視線を私たちの横のソファに向けた。

座れ、と言っているのだろう。

 

「失礼」

 

ドクターがそう言って座った後、私も静かに腰を下ろした。

 

「正直に言って、彼女がデミサーヴァントでなければ助かる見込みが限りなく低いといえるほどの危篤状態でした。現状は安定していますがそれは留意していただきたく思います」

 

「………分かりました」

 

所長が頷いた。

一呼吸置くと彼女はそう質問した。

 

「それで、このメンバーだけを招集したのは一体どういう意図があるの?ロマニ・アーキマン」

 

ドクターはしばらく沈黙していた。

意を決したかのような表情で口を開いた。

 

「ここには今回マシュ・キリエライトの消耗と混乱に際し、直接的に話を通せる人員だけを呼びました」

 

消耗と混乱?

私は彼の言葉に疑問を覚えた。

 

しかし私より早くレフ教授が疑問を口にした。

 

「直接的に話を通す?それは一体どういう意味だい?ロマニ」

 

「彼女の現状に対し、総合的な視点で建設的かつ倫理的な主張ができるという意味で発言したつもりです」

 

総合的な視点で建設的かつ倫理的?

抽象的すぎて何を言っているかが分からない。

 

だが私とは反対にレフ教授は納得したようだった。

彼は笑みを浮かべてなるほど、と言った。

 

「彼女の現状?」

 

「はい、それなのですが………」

 

所長の疑問にドクターは抱えている書類の中から大きな白黒の写真のようなものを取り出した。

そしてソファに囲まれ中央に鎮座している円卓に置いた。

 

「これを見てください」

 

みんながその写真に視線を向けた。

数秒後に所長が呟いた。

 

「これは………エコー?」

 

「その通りです」

 

ドクターは同じような写真を何枚か取り出し机の上に並べた。

 

「これはマシュの子宮を超音波検査で確認したときの写真です」

 

子宮?

 

彼は並べられた写真の中の一枚を指さす。

 

「そしてこちらを見てください」

 

彼が指さした部分には灰色で映っている体の部分の中に黒い色で映った空洞のようなものがあった。

 

「この写真中央よりやや左にある黒い部分。これはおそらくですが胎嚢です」

 

「……なんですって」

 

所長が驚愕の表情を浮かべる。

 

胎嚢………?

 

「それはつまり………」

 

「はい。マシュ・キリエライト、彼女は妊娠しています。そしてそれこそが今回、彼女が臥した原因ではないかと私は推測しています」

 

 

 

 

 

 

 

 






イベント楽しかったですね。
私は兄と二人で行ったのですが、兄が財布を忘れてしまい物販代、昼飯代、全部私が出しました。
公式に予定の2倍貢げました。
やったね。

ダ・ヴィンチちゃんはそのおかげで来てくれたんだと思います。
皆さんもぜひ2倍貢いでください。


さっさと続き書けやと思ってくれた方は右下メニュー、もしくは下の欄で評価、感想をしていただけると蟹がふんどしを脱ぎます。
そして続きを書きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。