Starlight of story 作:藺草影志(OVERBLOOD)
ー 私は、夢の中で舞台をみていた。
見ている先には、一人の同じ歳くらいの女の子がいた。
「小さな星を摘んだなら、貴方は小さな幸せを手に入れる。
大きな星を摘んだなら、貴方は大きな富を手に入れる。
その両方を摘んだなら、貴方は永遠の願いを手に入れる。
星摘みは罪の赦し。星摘みは夜の奇跡。」
女の子は私を見つめて、微笑みながら泣いていた。
そして、後ろを向いてこう言った。
「お持ちなさい。あなたの望んだその星を…」
私は、その女の子が助けを呼んでいるようにみえて、今まで出したことのないくらい
大きな声で叫んだ。
「ねぇ!待って…‼」
でも、
その瞬間赤く輝く光と共に私の夢は覚めていた。
−−−−−−−−−−−
「ここが、希望ヶ丘音楽学院___!」
目の前に見えるのは、大きな金色の鐘が特徴的な赤レンガで造られた建物。
この建物こそが、私の新たなスタート地点となるのだ。
「私、輝きます__!」
そう言って、私は新たなスタートラインをきる。
「失礼します。あ、あの…」
私は、学校の地図を頼りに職員室に辿り着き、ノックをして扉を開ける。
「おっ、来たね。おはよう。立花さん。
私は、あなたのクラスの担任の滝川 朱里。
これから、よろしくね。」
そう言って、明るく微笑む滝川先生。
「はい!よろしくお願いします。」
「うん。それじゃあ、行こうか。」
滝川先生は、廊下に出て行くのを私は追う。
向かって行く先は、多分私が所属することになるクラスだと思う。
そして、『俳優育成科』と書かれている茶色の扉の前に立つ。
扉の前となると心臓の鼓動が早く なって、自分が緊張しているのがわかる。
「私が今から入るから、後に続いて入って来てもらったらいいから。」
「は、はいっ!」
先生は、扉の取手に手を掛けて入り、教壇に立つ。私も先生の隣に立つ。
目の前には、たくさんの生徒がいる。一つだけテキストが数冊重ねて置いてある席がある。
おそらくその席が私の席なんだろう。でも、その席以外に窓際の一番後ろの席だけが空いていた。
欠席なのかな…、そんなことを考えていると、
「おはよう。今から、転入生を紹介します。自己紹介、どうぞ。」
「はじめまして。立花 想楽です。よろしくお願いします。」
皆が拍手をする。私は、これからこの場所で…
「ということで、皆よろしく頼むよ。 あと、次、移動教室だから。
今日の日直…、矢崎さん!立花さんに案内よろしく。」
「はい!」
矢崎さんと呼ばれた子は、一番前の廊下側の席から立って、
深緑色の髪を揺らしながら笑った。
皆は、次の授業の準備で少し慌ただしくしている中、矢崎さんと呼ばれていた女の子が近づいてきた。
「はじめまして。想楽ちゃん。私は、矢崎 蓮。よろしくね。」
「はい。よろしくお願いします!」
「ストップ、ストップ!私、堅いのは苦手だからさ…?出来れば、敬語なしでお願い!」
「う、うん!よろしく、蓮ちゃん。」
「そう、それだ!やっとビビッときた! じゃあ早速なんだけど、特別教室に行こうか?」
蓮ちゃんは、どうやら堅い雰囲気が苦手らしい。
私と蓮ちゃんは教室を出て、さっきまで歩いてきた廊下を歩いていく。
「1時間目は、主にダンスを中心としたレッスンをするんだ。想楽ちゃんは、今日は見学
の形で見てもらうから。」
歩いていくうちに、特別教室に着いた。
蓮ちゃんは、レッスン着に着替えてくるから先に入ってていいよ、とのこと。
私は、教室に入る。
「…失礼します。」
教室内には、たくさんのクラスメイトが見ている中、2人の女の子が迫力のあるワルツを踊っていた。
男性パートとしてリードしているのは、深紅色の髪の女の子、女性パートをしているのは、深紫色の髪の女の子。
2人ともが、それぞれの個性を引き出しているようで、とても魅力的だった。
「はい、そこまで!」
先生の声により、2人のワルツは終わる。
皆は、先生の前に集まっていく。
私の横には、更衣室で着替えてきた蓮ちゃんがいる。そこで私は、2人の事について聞いてみる事にした。
「蓮ちゃん、あの2人って…?」
蓮ちゃんは、すぐに答えてくれる。
「あの2人は、うちの学年のトップ2人組。
男性パートを踊ってた子が、主席の天羽 咲。女性パートを踊ってた子が、次席の三雲 せつな。
2人とも優しいから、気軽に話しかけて見たらいいよ。」
「うん。ありがとう!
あの2人が学年のトップ…。私も頑張らないと…!」
「じゃあ、私も負けずに頑張ろうかな…!
出席番号 26番 矢崎 蓮。入ります!」
その後の授業もほとんどが移動教室のレッスンで、舞踊、殺陣、ボイトレとあってレッスンの合間で、何人かの子とも話せた。
「想楽!中庭でご飯食べよ。」
「うん!」
そして、草木に囲まれた中庭に足を運ぶ。そこには、2人の女の子がいた。
「おーい!舞、遥、お待たせ。」
「あっ!れっちゃん!と、そーちゃん!」
「そ、そーちゃん…?」
「ごめん、ごめん。舞は、すぐあだ名付けたがるんだよね…。」
「えー。そっちの方が話し易いでしょ?」
中庭に着いて早々、亜麻色の髪の舞ちゃん(?)に馴れないあだ名で呼ばれる。
「そういう問題なの?舞ちゃん…。」
「もぉー、はるはるまでぇー‼」
舞ちゃんの横に座る琥珀色の髪の女の子は、少し困ったような表情でツッコミを入れる。
私としては、あだ名で呼ばれたことは無かったから、ぜひ呼んで欲しいと思い伝える事にする。
「わっ私は、あだ名でいいですよ。舞ちゃん!」
思いを伝えたけど、やっぱり初日から名前呼びは、良くなかっただろうか?
目の前にいる舞ちゃんは、フリーズしてしまっている。
「舞…ちゃん…。
そーちゃん!今、舞ちゃんって呼んだ⁉ 呼んだよね!いやぁー舞ちゃん、もう覚えてもらった
よー!嬉しい!舞ちゃん嬉しいよー!」
一時フリーズしていた舞ちゃんだったけれど、嬉しさのあまりのフリーズだったらしい。
「こらこら、舞。喜ぶのはいいけど、はしゃぎ過ぎって…。まぁ、早く座ってお昼ご飯食べよ?」
嬉しさが止まらない舞ちゃんを蓮ちゃんは、冷静に止める。
〈そーちゃん〉。初めてのあだ名は、私もとても嬉しかった。
舞ちゃん達との昼食、午後の授業を終えて時は放課後。
私は、蓮ちゃん達とは別れて、学校を探索していた。
「どうしよう…。私、迷っちゃったかな…?」
夕焼けの光が差し込んでいる中、私は廊下にただ1人立ち尽くしていた。
しかし、誰かと合わない限り解決しないから私はとにかく歩き進んでみることにする。
距離の長い校舎の廊下を進み、一番端にエレベーターを見つける。
おそらく、大道具等を運ぶ時に使うのだろうと思う。
エレベーターを眺めていたその時のことだった。
♪ピリリリ…
「わっ…‼」
自分の携帯から聞き慣れない初めて聞く着信音が流れ出した。画面上にはキリンのマークの円が回り続けている。
私はその鳴り響く音を止めようとあたふたとする中、エレベーターと廊下の間にある段差につまずき、エレベーターのボタンを押してドアが開く。
その瞬間、誰もいなかったはずの背後から誰かの手でエレベーターの中に突き飛ばされた。
「だ、誰…!?」
そのままエレベーターは閉まり下へ勢いよく急降下していく。
例えるならば、ジェットコースターが上から真っ逆さまに落ちていくときのような感じだ。
ジェットコースターが苦手である私にとってはそれは恐怖そのものだった。
急降下して止まり、扉が開くと前には“theater”とかかれた入り口を見つける。
私の意思は決まっていた。
「第76期生 立花 想楽、入ります…!」
光沢のある取手に手を掛け、扉を開ける。
客席に囲まれ、スポットライトに照らされた舞台。
私はその舞台に見覚えがあった。
無意識のうちに私の足は舞台へと歩いていく。
「あなたは、このオーディションに参加しますか?」
「えっ…?キ、キリン…⁉」
背後から声が聞こえてきて振り返ってみる。
そこには一頭のキリンがいた。
キリンが喋る、なんて事はあるのだろうか。
「わかります…。で、どうされます?
オーディションで、もっともキラめいたレヴューを見せてくれた方にはトップスタァへの道が開か
れるでしょう。
しかし、キラめきには代償を伴います。」
「…参加、します!」
答えはただ一つだけだった。
見覚えのあるあの舞台には何かしらの運命を感じる。
一つの賭けでもあったけれど、それでも私はあの女の子を助けに行きたい。そう思う。
「大いにわかります…。それでは、あの塔から続く道を辿ればよいでしょう。」
私は再び歩き出し、塔の中へ入る。光が差す方へ向かうとステンドグラスが輝くドーム状の場所が目の前に広がる。
そして、目の前には輝くステンドグラスの光に照らされている1人の女の子。
「待ってた。貴女が来るのを。」
そう言って彼女は微笑んだ。
−−−−−−−−−−−−
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