それではどうぞ。
プロローグ
◆
我輩は転生者である。
待って待ってまだ帰らないでください、あんまりにも酷い出だしなのは謝ります、だからまだプラウザバックしないでください!!
いやね?ちょっと前に死んだ俺はどこにでもいるアメコミ好きの普通の社会人で夜中にコンビニ行ったら玄田さんみたいなコンボイトラックに轢かれたわけですよ、一瞬で意識飛んで「あ、死んだのか」って理解して目を瞑って地獄に落ちる準備してたのにいつまで経ってもなんもないんで目を開けたらまぁ…自分は赤ん坊になってました、しかも出産したての新鮮な状態で。
「おぎゃあ!おぎゃあ!(なんじゃこりゃぁぁあ!)」
なんて松田優作したら前世の俺の両親に似た人ってかそのまんまの両親に
「ようし!元気だなぁ!私の子は!お前は仁!◯◯仁だ!」
と声高々に言われました、いやまぁ前世の名前まんまなんだけども。
◆ ◆ ◆
ところ変わって俺が取り上げられてから6年後、あれから凄まじく神童だなんだともてはやされながら育ってきました、あったりまえだろこちとら元社会人やぞこら、と違う違う。
あれから6年経ってダディとマミィに愛された俺はすくすくと育ちつつあったがある時ニュースを父さんに抱き抱えられてみていたら
《またもやノイズ発生、死者は数百人に》
というテロップが、おいおいおいおい知らねーよそんなスーパーナチュラル!という具合で前と今の世界の違いがようやくわかってきた、どうせならもっとワイルドスピードとか300とかの世界に行きたかったよ、訳の分からんまっくろくろすけじゃなくてさ…
まぁあんなのに出くわさないように生きていけば、学校でいい成績とって彼女つくってヤリまくって、結婚して子供とワイフと幸せに生きていけるだろうと、この時思ってた。
◆ ◆ ◆
翌年
「仁、いいかい何があろうと振り返っちゃダメだぞ?お父さんとの最後の約束だ」
父さんの足はノイズが食らいつき段々と炭化してきてるそれでも笑顔でを俺に向けてくれて
「走っておまわりさんのいるところまで行きなさい、お父さんもお母さんも後で行くからね?」
母さんはさっき炭になった。
「さ、行っておいで、仁」
自分が死にたくなくて、どうしようもなくて、涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃになってる、ものすごく怖かったってのもある精神年齢社会人のくせに怖くて父さんに背を向けた、自分みたいなズルしてる奴をずっと無償の愛情を注いでくれて、どんな時でも一緒にいてくれた両親を見捨てたのは人生で最悪の選択だと思った。
その後保護された俺は親戚の家に回される予定だったが、両親は駆け落ち夫婦だったらしい、そのせいか親戚全て俺を目の敵にするようにして、やれ「こんなガキより父親が戻ってくるべきだった」とか言われるようになった。
7歳にして俺は天涯孤独になりました。
それを救ってくれたのが近所の仲の良い一家だった。
身寄りもない俺を自分たちの子として迎え入れてくれたのだ、新しい両親に祖母、そして妹が俺に出来た。
かくして俺の名前は《立花仁》になった。
戦姫絶唱シンフォギア?なにそれ?スティーブ◯セガール出演してんの?
◆ ◆ ◆
そして今は…
チュンチュン…
パァン!!
「オラァ!おはようございますの時間ダァ!」
朝7時半、ドアを蹴破り部屋に入ったにもかかわらず部屋の主は眠り続けている、俺はもうとっくに朝飯を食べ、身なりを整え、髪をバックにキメているってのに…
「…んにゃぴ…お兄ちゃん…それはバランだよぅ…たべられないよぅ…」
「おい響、それは俺がバランを食ってる夢か?それとも俺がお前に今からバランを食わせてやろうか?あ?」
「んぇ?」
寝ぼけた眼をぐしぐしと擦り焦点の定まってないまま俺を見上げるこいつが《立花響》だ、因みにバランってのはお弁当に入ってる草の形したビニールの仕切りみたいな奴のこと…知らない人はいないと思いますが。
今俺は小学6年で響は5年で学校に通ってる、実際ここまで育ててくれた立花一家にはとても感謝している、こうしてアホな妹がいることさえも喜びになってる。
「お、おお、お兄ちゃん!勝手に部屋に入らないでっていつも言ってるのに!」
「知るかよ、早く着替えて飯を食え、未来がもう来てんぞ」
「え゛!?すぐ着替えるから!」
「おう」
パッと毛布をめくり急いでパジャマを脱ぐ響、がパジャマの下を脱いでボタンを全て外したところで動きが止まる。
………?
なんで響はもじもじしたまま顔を赤らめてんだ、熱でもあんのか?
「…って」
「あ?もっとでかい声で喋りんさい」
「着替えたいから!出てって!」
「うわ、おま、投げんなやめ!」
ブンブンとお気に入りのぬいぐるみを俺に投げつける響だが、全てキャッチアンドリリースし部屋を出る。
バタン
「なんでぇ、小学生が色気付きやがって、フルカラーか」
「そういうお兄さんも小学生ですよ?」
ふと横から声がかけられる、横には響のクラスメイトで俺と響の幼馴染に該当する《小日向未来》がいた。
「よく言われる、行動がおっさん臭いって」
「ふらわーに行ったらいつもおしぼりで顔拭きますもんね」
「良いだろ、スッキリすんだから」
たわいもない会話を続けるが、スッと未来の目が座って見つめて来た。
「で?お兄さん、首尾はどうですか?」
「バッチリよ、あのアホ全く気づいてねぇ」ニ゛ッゴリ゛
そう言いつつ俺はコロンブスもかくや、マジキチスマイルを浮かべて胸ポケットに忍ばせたスマホを取り出し動画を再生する。
ピッ
『…って』
『あ?もっとでかい声で喋りんさい』
『着替えたいから!出てって!』
ピッ
「はぁ…響ぃ」
俺と響のやり取りを録画した動画にうっとりとした目つきで顔を綻ばせる未来、それを見て軽く引く俺。
「流石ですね、お兄さん」
「褒められたことじゃねぇ上に業が深いよな俺ら」
「私の気持ちを知った上で協力するお兄さんの方が深いと思いますよ?」
目のハイライトが脱走してるよこいつ
そうだ何を隠そうこいつ、小日向未来は響に性的欲情するクソッタレズピアンなのだ、しかも俺はそれを知りつつ協力してる。
いや、分かってますって、手前ぇの妹をなにサイコ野郎に差し出してんだって言われるのは、ですけどね!あんな可愛い妹をどっかの野糞にくれてやるくらいならこのサイコにやる方が何倍がましってなもんでしょーが!!あなたには分からないでしょうねぇ!!
ガチャ!
「ごめんおまたせ!お兄ちゃん!と…未来…」
「おはよう響、ねぇどうして寝坊しそうになってるの?ずっと前から約束してるよね、お兄さんにあんまり迷惑かけないようにって?ねぇなんでまた起きなかったの?」
「こ、ごめんなさい……ふぇぇ、お兄ちゃん、未来が怖いよぅ…」
サッと俺の後ろに隠れて顔半分をひょこっと出してる、響。
ちなみに響の部屋の目覚ましを鳴らないように細工したのは俺で、もちろん未来と相談して今朝の動画を撮るために画策したのだ。
こうして響を正論で説教して未来は悦に入ってる、ドン引きです。
「ひびきー?早くご飯食べちゃいなさーい!」
「あ、はーい」
「よし、さっさと飯食ってこいよ、玄関にいるから」
「うん!ありがとうお兄ちゃん!未来!」
そう言ってリビングに行く響を見送り、俺らはそのまま…
「ところで未来、今響の部屋に入れば脱ぎたてのパジャマ他があると思うんだが。」
「そこに気づくとは、やはりお兄さんは只者じゃないですね、早くいきましょう、響の熱が逃げてしまいます。」
◆ ◆ ◆
「ごめん!待った?」
「そのセリフは自分が待たせてないと思ってる証拠だな」
「10分は待ってましたね」
「あう、ごめんなさい」
「いいから行くぞ、慎ましくな」
ネオ隊長のセリフを言って俺たちは通学路を歩く、他愛もない会話をしながらテクテクと歩いていく、だが。
ーー見て、あそこの子、ノイズ事件の生存者よーー
ーーあいつの元の親、あいつを生かそうとして周りの人殺したらしいぜーー
今日もこれだ、俺はあの時のノイズの事件でただ一人残った生存者だったらしい、それが最初は同情的な目で見られてたが、やがて陰口やいじめを受けるようになった。
まぁ、表立ってやる人間はいない、家に石を投げんだり落書きもされてないが俺はいつも思ってた。
やっぱり世界で一番恐ろしいのは人間だ。
◆ ◆ ◆
そんでもってあのクソッタレな事件でなにもかも変わっちまった。
◆ ◆ ◆
この日俺と響と未来で【ツヴァイウィング】とか言うアイドルのコンサートのチケットを取ったから行こう!、と響と未来に誘われた俺は会場で死にかけてた。
原因はご明察、ノイズのクソッタレどものせいですはい。
逃げ惑う人波に押されて響とはぐれてしまった、未来はさっき会場に行くのに遅れると連絡があったからいいものの、妹の危機に相当焦っていた。
「クソクソクソクソクソッ!!FUCK!!」
周りが瓦礫まみれの会場をノイズに追っかけられながら走る、やっぱ体鍛えといて良かったナニが起こるか分かんないしな!
「…あ」
そう考えてると視界に目的物が映る、ウチの妹とオレンジ色したコスプレ女がいた。
コスプレ女は響を抱き寄せ「生きるのを諦めるな!」とかなんとか言ってるが知った事じゃない、そういうのは周りの安全を確保してからやれってんだ。
その女に抱えられてる響は気を失ってるらしく胸からから血を出して倒れてる、変なコスプレした女がいるけどシカトだ、俺は妹が助かればいい。
「響ぃ!!」
「あっ!おいお前!!」
自分でも驚くほどの速さで響をぶんどった俺はすぐにコスプレ女に背を向け走り出した。
「危ねぇ!!横見ろ!」
オレンジコスプレ女が叫びで俺はノイズがすぐそこまで来てる事に気付いたが構わず響を左腕で抱え、少しでも響からノイズを離すべく右腕を突き出した。
「ぬ゛ぁあ゛ああ!!」
瞬間、右腕に焼ける感覚が走った、一瞬で消えたその痛みに耐えとっさに右腕を戻そうとした…。
「…知ってたさ、父さんもこうなってた…。」
俺の腕は綺麗にノイズに食い千切られ、肩の肉まで炭化していた。
幸い痛みはあまり無い、このままだと抱えた響まで食われる、ジリジリと詰め寄るノイズを無視し全力で走った。
「おい!お前!くそっ、翼はどこだ!」
後ろでオレンジがなんか言ってるがただがむしゃらに走る事しか頭になかった。
タッタッタッタッ
どれだけ走っただろうか、もうそろそろ体力が限界だ…もう、立てない…
ドサッ
倒れた俺は必死に首を動かして周りを見る、腕に抱えた響は頭から血を流したままピクリともしない。
ここは、駐車場か…どうにかして助けを…
「君は生存者か?」
音もなく力尽きた俺の頭の前に誰かが立った、倒れているから顔は見えないが男の声だ。
「お、お゛願いします…妹を病院に…」
「…ふむ」
男は響の方へ回り込むとしゃがんで鏡を取り出し響の脈を測る。
「脈はある、ほっといても治る」
「…医者なんですか?」
「近しい者と言っておこう少年、それより腕はどうした?奴らか?」
もう言葉を発することさえ億劫なのにで軽く頷くと男はしゃがみこんで俺の耳元で喋り始めた。
「もしも新しい腕と金がいるならここに連絡しなさい、待ってるよ」
そう囁くと男はスッと俺の胸ポケットに何かを入れ立ち上がる。
待ってほしい、本当に響は大丈夫なのか、せめて助けを…
「支部長、支度が終わりました、サンプルも入手済みです、残りはライオットが駆逐しました。」
「ご苦労、ラボに戻るぞ」
「はい」
男の部下なのだろうか、別の声に連れられ男の足音は去って行く
「待っ…て」
手放した意識の中、遠くでサイレンの聞こえる音がした。
◆ ◆ ◆
結果だけ言えば俺と響の命は助かった、俺たちの命だけ助かってしまった。
ツヴァイウィングのコンサートに来ていた観客は全員助からなかった、当のツヴァイウィングの二人は助かったらしいが怪我をして療養中とのことだ、そんなことどうでもいいし俺は響と同じ病室で、よく戻ってきてくれたと泣く母親と祖母の優しさに包まれていた。
俺が意識を取り戻してから、俺は響が思ってたより重症だと医者から聞いた。なんかの破片が心臓あたりに食い込み摘出は不可能に近いと、それでも響は目を覚ましてくれた。
始めは意識が朦朧としていたが会いにきた俺の右腕が無いのを見て何があったか思い出したらしい、響の体はしばらくはリハビリが必要なようだが女の命の顔は免れ普段の生活に戻るのも時間の問題だそうだ。
それからは検査をして俺たちは退院した、しかしあれから利き腕を無くした俺の生活は困難を極めた。
物を持つのも一苦労、箸もロクに持てずストレスが溜まる毎日、そんな俺に響はずっと寄り添ってくれた。
学生鞄のほかに荷物があると
「お兄ちゃん私が持つよ」
家族での夕食後に洗い物をやろうとすると
「お兄ちゃん私がやるよ」
情けない限りだ…困難でまた今まで通り生活していけるのか、将来はどうなるのかが不安だ…でも。
ストレスが溜まるけど、とにかく助かって…響が助かって良かった。
◆ ◆ ◆
助かって良かったなんで思ってた俺がバカだった。
あれから数ヶ月、中学校に登校するのにも身体的な問題が無くなってきた頃、最悪な事が起こり始めた。
響と立花一家に世間の怒りが爆発した。
響と俺はライブで生き残ったたった二人の生存者だ、そんな俺たちに世間はノイズにぶつけられない怒りの矛先を向けた。
もちろん俺もいじめの対象だが昔からそういうのはあったから余り気にならない、だがそれ以上に響と家族に被害が出るのを許せなかった。
家に石を投げ込まれ、覚えのない人殺しという落書きを家の壁に書き殴られた。
こんないじめは直ぐに終わると母と祖母は言ってくれたが、買い物に行くにも一苦労でかつては仲の良かった近所の住人も非難と軽蔑の目を隠そうとしなかった。
そして半月後決定的な綻びが家族に襲いかかった。
親父が蒸発したのだ。
なんの前触れもなく、時間になれば父は帰ってくると信じ続ける響たちだが俺は何となく悟っていた、もうアイツは帰って来ないと。
流石の母と祖母も精神的にキているのか、やつれたようにも見える、それよりも酷いのは響だ、響は俺の腕と親父の蒸発、そして家族が苦しむのは自分の責任だと思い始めた。
そしてあの日以来、響の心を支えてるのは残った立花一家と友人の未来だけだ。
響が立ち直るのは時間がかかるだろう、あらゆる面で疲弊してきた一家は精神的に肉体的にも、そして金銭的にも苦しくなっていった。
◆ ◆ ◆
ある日のこと…俺はトボトボと傷だらけの体を引きずって街を歩いていた。
今日も今日とて嫌な日だ、響が精神的にやられてこの前は近所のクソどもに祖母が怪我を負わされた。
勿論どこに住んでるか追い回して落とし前をつけさせたが多人数相手、俺もボロボロだ。
手の皮は破れ、顔は痣だらけな上歩き方もどこかぎこちないがなんとか歩ける、片腕だろうが意外にやれるもんだなと思う。
足を引きずりながらそのまま商店街に行きボコった奴から巻き上げた金で家族にシュークリームを買った。
一つその場で食べたけど、血の味しかしなかった。
ーーーーーーー
カパッ
やっと家に着いた、体は流石に痛いし目もチカチカする、それでも俺はうちに届く手紙を確認するため郵便受けを開けた。
請求書請求書催促状カミソリの入った手紙携帯の料金の手紙、ろくなものがない。
「はぁ、カミソリ入れるなんて古いんだよ」
ため息とともに手紙を抱えた俺は玄関の扉に手をかける
ガラガラ
「っし、母さんたちは留守か」
キョロキョロと玄関で確認してそっと忍び足で家に入る、今のカッコを家族に見られたらまずいしこのまま…
「仁…帰ったの?」
いきなり声をかけられビクッとした俺の後ろに母さんはいた、椅子に腰掛けて存在を消すように座っていた。
「うん、ただいま母さん」
「また、誰かを殴ったの?」
母さんはゆっくり近づき俺を抱きしめる。
「正しい事をしたんだ。」
「正しさなんて関係ないのよ仁、あなたが傷つくたび私たちは苦しいの」
「俺たちを苦しめるのは世間だ、ノイズよりクソな人間だろ」
「それでもよ、あなたの手は誰かを傷つける為にあるんじゃないの」
「…ありがとう母さん、響の様子見てくるよ」
「あっ…仁」
母さんから逃げるように…逃げて俺は汚れた体を綺麗にして響の部屋の前に立った、スッと息をして声をかける
「響?シュークリーム買ってきたぞ」
「…お兄ちゃん?」
「ああ俺だ、入るぞい」
ガチャ
部屋は薄暗く夕陽がさす部屋をカーテンが遮っている、いつから窓を開けていないのか空気も淀んで、ベットの上には響が毛布に包まっている。
響は少し前から不登校にされた、周りの連中のいじめ、祖母の怪我、父親の蒸発、母の心労、そして俺の右腕の責任は自分にあると思い、家族との接触も減った。
そのままベットの端に腰掛けて毛布越しに頭を撫でる。
「どうだ?具合は?」
「…時々痛いけど…良くなったよ…お兄ちゃんは?…」
そう言って毛布を頭から被ったままの響が俺に擦り寄り、右腕を失って宙を泳ぐ俺の袖を掴んだ
「最高だよ、今じゃ片腕でジャグリングも出来る」
「ふふっ…嘘、嘘ばっかり」
ギュッ
ワザとおどけてみせるが逆効果、響は苦しそうな顔をしたまま俺に抱きついた、中学生とは思えないほど体の凹凸が激しくなって来た響、妹だからと割り切ってるし今更欲情なんてしない、そんな事知ってか知らずか響は温もりを求めるように両手を俺の背に回し縋り付いてくる。
「怖いよ…お兄ちゃん、もうやだよ…なんで私たちばかりこんな目に遭わないといけないの…?」
「響…」
「お父さんもいなくなっちゃった…おばあちゃんの怪我も私のせい、今じゃ一緒にいてくれる未来とお兄ちゃんもいじめられてる、…このままだとみんな…みんな私の前からいなくなっちゃいそうで…」
「響」
ぐっ
響の顔を左手で掴み俺の方に向ける。
「約束する、俺はどこにもいかない、お前が苦しいなら俺に頼れ、俺が苦しい時にはお前が慰めてくれ、お前には母さんと婆ちゃんに未来、そして俺がいる、一人じゃない、忘れるな」
「…うんっ…ぐすっ…うん」
それからしばらく響の頭を撫で続け、泣き疲れた響は寝ちまった。
◆ ◆ ◆
響の部屋を後にした俺は自室にこもって郵便受けの請求書の山を見ていた。
「やっぱ金か世の中」
ぼそりと呟いた事実を飲み込み、あの日あの男から渡された紙切れを見つめる
【ライフ財団】
この名前は前世から覚えのある名前だ、俺はアメコミのヒーローが好きでいつも映画やコミックを読んでいた。その中にマーベルユニバースという世界設定がある、その中に登場する会社の中にライフ財団は名を連ねていた。
コミックの中では弱い立場の人間を実験台にして得られた結果を世の中に提供し莫大な資金を得ている悪徳企業とあったが、この際どうでもいい、あの男は金と腕を保証してくれるという、ある程度の金があれば家族をこのゴミ溜めから引っ越しさせる事が出来るし、何よりこの世界がマーベルコミックの世界だとは限らない、時々ニュースで報道される会社もこの世界では一般企業でヒーローが存在しない世界かもしれない、それならライフ財団は安全かもしれない。
そんなあやふやな理由をつけて俺はライフ財団へダイヤルを回した。
◆ ◆ ◆
「…はぁ」
私はお兄ちゃんが部屋から出て行った後、お兄ちゃんが言ってくれた言葉を頭の中で繰り返してた。
ずっとそばにいる
ただそれだけの言葉なのに私にとってはとても暖かい言葉だった。もともと私がお兄ちゃんを無理矢理ライブに誘ったのに私を守ってくれた。私たちが救助された時の話では、お兄ちゃんは私を片腕で抱きかかえて会場の外まで走って力尽きていたらしい、その話を聞いた時は胸が熱くなって涙が止まらなかった、私を想ってくれた嬉しさと私のせいで無くなった兄の右腕への罪悪感でずっと泣いていた。
そんな私をそっと抱きしめて優しい言葉を掛け続けてくれるお兄ちゃんに私は妹が抱くべきじゃない感情を募らせてた。
いけないと分かっているのに体は正直、私の手は下腹部よりも下の女性の部分に触れる。
くちゅ
言い訳の出来ないほどの水温を響かせ私はお兄ちゃんを頭に思い浮かべて行為に夢中だった。
「あっ…んあっ!…んん!」
私の妄想の中の兄は私を抱きしめてくれて、添い寝しながら私の女を弄る。
「あっあっ!んんん!ん!」
顔を枕に埋めてひたすらに指を動かす、とめどなく溢れる淫水で手をべちょべちょにしながら私は達してしまった。
「はぁ…はぁ…はぁ…お…にいちゃん…」
私の目の前で糸を引く濡れた手を眺めながら私は愛しい人の事を思いながら闇に落ちるように眠っていった。
翌日、兄は失踪した。
最後なんで官能者書いたんだろって思いました。
ちなみにこのバースは映画ヴェノムとコミックとマーベルシネマティックユニバースのごちゃ混ぜです。