纏う彼女らと寄生する俺   作:相変わらずな僕ら

3 / 5
コミコン2018行ってきました!今年もレベルの高いコスプレの方々や、ハリウッドスターの方々が勢ぞろい!もちろん私もストームトルーパー(サンタ帽+ポーグ)のコスプレをして行ってきました!

しかもホークアイを演じられたジェレミーレナーさんとの写真とサインまで!最高でした!こんな事ここで書くことでは有りませんが、興味を持った方、是非来年の東京コミコンへ行きましょう!私ももちろん行きます!来年こそはマーベル関連のコスプレをするつもりです!


ふぅ、それでは3話目をどうぞ




Parasitism《寄生》

 

 

まずい、思いのほかまずい、どのくらいまずいのかと言うと、野原◯ろしの靴と密室に閉じ込められるくらいまずい。

 

 

ベチャ

 

 

仁は新たな身体であるスライム状の身体をガラスにくっつけながら考える。

 

ヴェノムと同化して一週間ほど経つ、実験やらなんやらされたがまだ生きてる、初めはこのスライムの体になって色々戸惑ったが流石に慣れてきた、どうやらシンビオートとしてかなり特異な変化を俺はしたようだ。

 

まず地球の酸素条件下でも単独で生きられるようになった、この実験室に新たに配属されて、俺の宿主になる女性が来たが…なんか寄生するのが気が引けてしまった、だって女の人に寄生するなんてどうやっていいか分からんもん…、話が逸れた、そうやって部屋の隅に縮こまっていたら普通のシンビオートは数時間で死ぬが俺は死ななかった。

 

 

ちなみに悪人は問答無用に寄生して内側から食い殺した、俺が死なないためだ…人間だった時は人を殺すなんてとんでもないと思っていたが、この身体になって精神構造も変わったらしい、自分の為に他者を犠牲にするのが簡単に出来るし、益々コミックでのヴェノムの性格に近づいている。

 

 

次にシンビオートの最大の弱点である火と音についてだ、コイツはありがたい事にかなり耐性がついた、流石に核弾頭は耐えれないがそこらの火事くらいじゃ死なない、音についてはあまり実感が無いが、まぁ飛行機が通りかかったくらいじゃ死なないくらいはなんとか…

 

 

だがデメリットもある、一番のデメリットはいつも腹が減ってる事だ、研究員とエイジャックスのバカは液体栄養素しか寄越さない、たまには肉…せめて魚肉を固形で欲しい、スライム態からなんとか頭だけ作り出せるが、やはり完全な人形になるには宿主が必要だと痛感している、頭だけで会話も出来るが喋ると腹が減るんだよなぁ…

 

 

バタバタバタバタ!

 

 

「…危険過ぎます!アレを売るなんて!」

 

「知った事かクライアントと話はついてる、お前は俺の言う通りにすれば良い」

 

 

なんだ騒がしいな、部屋の外から声が聞こえる、シンビオートになってから五感が研ぎ澄まされて遠くからの音や気配に敏感にもなってる、スパイダーマンが持ってたスパイダーセンスみたいに、しかし…この声はエイジャックスか?

 

 

ガチャ

 

 

「おー!元気そうで良かったよクソッタレ、喜べ、お前の買い手が見つかったぞ」

 

「待ってください!社長には…」

 

ガッ!

 

「黙れ、この私が何でこんなところにあると思う?あのぽっと出の小娘に頭を下げてると思う?コイツを売り払えばこんな糞みたいな国を出ていけるんだよ、今ここで死にたいならそうさせてやろう、じゃないなら黙ってろ。」

 

 

ドアが開くや否や部下の研究員を壁に叩きつけ首を絞め上げるエイジャックス、それに買い手が見つかる?なんだってんだそりゃ?この俺を売るだと?

 

 

「ああ、心配するな寄生虫、正式に手続きを踏んで売ってやる、値段が知りたいか?6000万ドルだぞ?これで私も大手を振ってアメリカに帰れるってもんだ」

 

 

ベチャ!!

 

 

クソッタレめ!と怒りのあまりガラスに黒い体をベットリ張り付けてやるがこいつは何処吹く風だ。

 

 

 

「おっと怖い怖い、取引は明後日だ場所はワシントンD.C.、飛行機のチケットはとってある、ああ、お前の分じゃないお前は人間じゃないしなw」

 

 

俺は頭を出して抗議しつつ、あのクソッタレを喰いちぎりたいが我慢する、しかしこのままだとどっかのアホに売りつけられる、もう少しこの身体に慣らしておきたかったが仕方がない…

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ニュルルルルルル

 

 

『案外ザルだな、ライフ財団』

 

 

ライフ財団日本支部が垂れ流す排水溝の金網からニュルルっと俺は這い出た、なんか簡単に脱走したと思われるけど、中では結構デンジャラスだったがなんとか洗面台から脱出したんだ、単独で行動できるようになって本当に良かった、本来のシンビオートなら宿主がいないと二、三時間でお陀仏だからな…

 

 

『これからどうすっかな…先代は宿主を大事にしろと言ったが…その肝心な宿主がいねぇんだよな…こんなナリじゃ家にも帰れねぇし…』

 

 

ガサガサッ

 

 

 

スライムのまま悩んでると近くの茂みから音が聞こえる、まさか…

 

 

「ハッハッハッハッ」

 

『犬かよ』

 

 

俺の前には首輪のない雑種犬が飛び出してきた、敵意はないらしいが…なんで俺をそんな見てんだ!

 

 

「ヘッヘッヘッヘッ!」

 

ベロベロベロベロ

 

『うお!やめ!舐めんな!タコ!』

 

 

犬は俺に興味津々でベロベロ舐めまわして来やがった、うお!やめろください!

 

…待てよ、この際だ、コイツには足になって貰おうかな…

 

 

びゅ!

 

 

『おら!』

 

「きゃいん!」

 

 

自前の身体を舐め回してくる犬に一気に覆いかぶせる、そして犬の体表からゆっくりと身体に染み込ませていく、犬ならまぁ人間よりは早く走れるし、だいたい大丈夫だろう…

 

 

『ふう゛、完了と、なんだろう人間よりも快適な気がする』

 

 

犬の意識を完全に乗っ取ると雑種犬の目は黒く濁る、うわ、四つ足ってのはやっぱ慣れないな、…まぁ取り敢えず…

 

 

『帰るか、家に…響と約束したしな…』

 

 

 

ヴェノム犬となった俺はまず近くの町に行くことにした、流石にこのままあてもなくウロウロするとすぐ餓死しちまう、とっとと家に帰らないと…

 

 

タッタッタッタッ

 

 

 

暗い夜道、目が濁った犬が尻尾をブンブン振りながら走っていく、この時俺はただ家に帰ることしか考えなかった、自分が自分で思うより変わってしまっているのに気が付いていなかった…

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

どこかの街、人が寝静まる深夜にこの街は混沌に満ちていた。

 

 

数時間前に発生した特異災害ノイズによって住人の生活は一瞬にして奪われ、多くの罪もない人々が炭になった。

 

 

それでもなお、残りの人々を救おうと戦うひとりの少女がいる。

 

『翼!応答しろ!』

 

「大丈夫です!民間人の避難は!?」

 

 

街の大道路の真っ只中、風鳴 翼はノイズと切り結んでいた、一匹また一匹と切り殺していくが数の暴力で追い込まれている、ギアにはヒビが入り、体は汚れ、それでも戦う。

 

 

『避難は終わっている!翼、地形を利用しつつ撤退しろ!』

 

「なっ!敵に背を向けろと!?…絶唱なら!」

 

『莫迦もん!許可できるわけないだろ!お前は病み上がりなんだぞ!』

 

「耐えてみせます!避難が終わったのなら被害を気にする必要はない!」

 

『翼!』

 

 

二課本部にいる絃十郎の静止も聞かずに翼は耳に付いたインカムを無視してノイズに向き直り天羽々斬を構える。

 

 

「行くぞ、下郎ども」

 

 

スッと息を吸い、翼は高らかに決意の歌を歌い始める、これが決まればノイズは消え去り、これ以上の被害を防ぐ事が出来るだろうと…だが…

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

そう、彼女は見てしまった、ノイズの群れがひしめき合った隙間から瓦礫に足を挟まれつつも必死に足を抜こうとしている少女を…

 

 

 

「だめだ……逃げろぉぉおぉ!!」

 

 

ズガッ!!

 

 

「ぐうっ!?」

 

 

少女を守る為に駆け出した翼に意識の外から攻撃が来た、平時であれは簡単に凌げる一撃だが、今は違った。

 

 

満身創痍になりながら一人で戦う孤独、罪なき人々を守るという『防人』としてのプレッシャー、そして何よりも自分の心の拠り所出会った天羽奏の不在は彼女の戦闘力を著しく下げてしまっていた。

 

 

「こんなっ、この程度でっ…!」

 

 

チャキッ

 

 

吹き飛ばされた翼は天羽々斬を杖にして立ち上がり、再度構えるが膝は笑い、視界も霞つつある。

 

 

(…今のはいいのを貰ってしまった…ギアの防御もそろそろ限界…奏…!!)

 

 

心の中では既に敗北を悟ってしまっていた、己がプライドにかけて敵の前では無様な姿を晒さないと心に決めている翼だが、奏がいない今彼女の心はとても脆くなっていた。

 

 

「それでもッ!私はァッ!!」

 

 

ボロボロの体の中からありったけの力を振り絞りながら歌い、劔を構える、それが引き金になったのか周りのノイズが一気に翼に飛びかかる。

 

 

ザシュッ!!

 

 

「私は!生きるのを諦めない!」

 

 

 

 

蒼い一閃をを解き放つ孤独な歌は群がる泥に飲み込まれていった。

 

 

 

(奏…私に力を貸して!)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

とある街、とある電柱に犬が用を足してるがそれは…

 

 

ジョロロロロロ

 

 

『あ゛あ゛〜、快感…』

 

 

俺です。

 

 

犬に寄生して3日、俺は正にゴミを漁る生活をしていた。

 

 

甘かった、犬の身体でなんとかなると思っていた自分の浅はかさを呪いたい…、ライフ財団を脱走してこの街に来たものの、土地勘も無く全く知らない街に来たのだそりゃ迷う。

 

 

ある時はゴミを漁り、ある時は帰りのJKに媚び売って食いもんもらったり、またある時は他の野良犬とボスの座を巡って殺しあったな…勝ったけど。

 

 

『!!、なんだ?この感じ』

 

 

身体中の毛が逆立つ感覚がいきなり俺を襲う、この感覚は…そうだ、何か危険を察知した時に走る感覚だ…場所は…

 

 

 

 

ウウーーーーウ!

 

ウウーーーーウ!

 

 

『ゔっ!クッソ、耳障りな…』

 

「ノ、ノイズだぁぁあ!ノイズが出たぞおぉぁ!!」

 

 

 

今じゃどんな街にも設置が義務づけられている特異災害発生を知らせるサイレンが鳴り響き、高音が苦手なシンビオートとしてはホント嫌になるが、死にそうって訳でもない。

 

 

だが問題は…

 

 

「きゃあああ!!」

 

「たっ、助けて!助けてくれぇ!!邪魔なんだよお前ら!」

 

「退きなさいよ!私が先よ!」

 

 

ノイズが発生を報せる警報が鳴り響いた途端に人々はパニックに陥った。俺は急いで裏路地に入り込み、我先にと走る人間に潰されないようにしていた。

 

路地のゴミ箱の上で逃げ惑う人間を観察するが…やはりおぞましい、ある男は赤子連れの親子を引き倒して走り、ある女は年老いた男性を突き飛ばして自分の逃げ道を確保する。昔、まだ人間だった頃は倒れた人が居ればすぐに駆け寄って手を差し伸べていたが…今の俺は犬だ、ただの雑種犬がノイズに対して何ができる訳でも無い…ただ見てるしか出来ない自分に昔の俺なら吐き気を催すが、今は違った。

 

 

『苦しいだろうな、恐ろしいだろうな…それを乗り越えてもお前らに待つのは生きる苦しさだ…』

 

 

俺はもう他人がどうなろうとどうでも良かったのだ、ああいった「今日自分が死ぬはずがない」と思っている奴らが俺や響、母さん達を苦しめたのだ。ああやって必死に逃げて生き延びても、今の世の中ノイズ被害者にゃあクソみたいな世界だ、この世界は殺しにかかってくるだろう、精々絶望にまみれて死ね…、そう思うとノイズに喰われていく奴らを見てドス黒く、清々しいモノが胸の内に溜まっていく。

 

 

『クククッ…そうやってclever気取ってるからそうなるんだよ』

 

 

ああ、なんて気持ちがいい、思わず隠れていたゴミ箱の中で笑ってしまう、他人の死は蜜の味だぁな…ん?

 

 

「〜〜〜♪」

 

『歌だと…?どこの馬鹿だ?』

 

 

俺(犬)の耳、というかシンビオートの鋭敏化された感覚に届いたのはこの屠殺場に似つかわしくない歌だった、しかもそれは何処かで聞いた事のある歌声…あの日、俺の運命が狂ったあの日に聞いた二度と聞きたくないこの声は…アイツらか…!!

 

 

『…クソが…あの時と同じ…!耳障りなんだよっ…!』

 

 

ダダダッ!!

 

 

なんだってこんなとこで、こんな時に連中の歌が聞こえるか知らなねぇが、取り敢えず耳障りな上に、あの日アイツらは変な格好になってノイズと戦っていた、という事は奴らをバックアップしている組織があるはずだ、みそっかすのアイドル風情がニュースに晒されずにまたドンパチやってるのは国の上の方の連中が絡んでるのかもしれないが、今はそんな事どうでもいい…

 

 

『クソ!クソ!!鬱陶しいんだよッ!!』

 

 

この時俺の頭にあったのはがむしゃらに四肢を動かして走る事と…

 

 

 

 

 

耳障りな歌を消す事だけを考えていた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

ーー

 

 

ズル……ズル…

 

 

酷い悪臭と虫やネズミが住まう下水道に…血と泥と埃にまみれて、今にも倒れそうな歌姫が壁伝いに足を引きずりながら歩いている…何かに縋るように…

 

 

 

ズル…ズル…

 

 

「はぁっ……くっ…はぁ…はぁ」

 

 

あの後に私、風鳴翼は死力のかぎりノイズと戦った、己の防人としての全てを奴らにぶつけて戦った。だが結果はギアは半壊しだらんと下がった腕に持つ天羽々斬を振るう力も露ほども残ってはいない…だがそれよりもッ…!

 

 

ドサッ

 

 

ついに体力の限界がきた私は前のめりに倒れてしまう、倒れた私の眼前には私を食事だと思っているのか、黒い害虫と鼠どもが目を輝かせているように見える。

 

 

「うっ!……くっ…来るなッ…!」

 

 

改めて実感した死の恐怖と生理的な嫌悪感でなんとか体を起こして壁にもたれ掛かる…それでも小さいハイエナどもは私から目を離さない…

 

 

ぽた…ぽた…

 

 

私の体の至る所から溢れる暖かい血、頭から額、頬、顎を伝い冷たいコンクリートに滴り落ちる、それに…ひどく寒い…

 

 

「…ゔっ…ううっ…ううう…」

 

 

私は涙を流していた、自分の情け無さに、私は防人として己を剣として鍛えてきたつもりだった。だが今までは相棒の奏や絃十郎の叔父様がいざという時に助けてくれると思う甘えからだと、今になってやっと気づいた…

 

その証拠に私は地上でノイズと戦っている時、ズタズタにされて吹き飛ばされた私はゆっくりと私にトドメを刺そうとするノイズに恐怖し、近くのマンホールへ汚く這い寄りこの下水道へ逃げたのだ。

 

 

「…何が防人だ…何が剣だ…私は…ただの小娘では無いか…」

 

 

もう…私には防人を名乗る資格も無い…これでは叔父様も失望させてしまっただろう、ニ課の人達も私に愛想を尽かしてしまったのかもしれない、そんな考えが私の頭を占領していく

 

 

 

………奏は今の私を見たらなんて言うだろう…

 

 

 

「…うぐっ…奏……奏ぇ…」

 

 

一度奏の事を考え出したらもう止まらなかった、今まで幼い頃から私を支え続けてくれた片翼の事を思えば嗚咽が止まらず、涙は更に溢れ出してきた。

 

 

「…けて…!…助けてよ…奏ぇ…こんな死に方なんて…嫌ぁ、…嫌だぁ…!!」

 

 

防人からただの負け犬に成り下がった私は泣き続ける、誰にも看取られることもなく、私の死肉を貪りに来た虫どもの餌になりながら死ぬ、そのことに耐えきれない私は恥を捨てた。

 

 

「ぐすっ…!嫌ぁ!助けてよ!誰がい゛な゛い゛の゛ぉ゛ッ!?…私は…ぐすっ…私にはまだ…私はまだ歌いたい…歌いたいよ…誰かぁ……!!」

 

 

もう私には何も無い…防人の誇りも、歌姫としての矜持も、なにもかもかなぐり捨て泣き喚いた、しかし、泣けど喚けどここは下水道、まともな人間ならここに入ることはまず無い、ただ己の声が反響して虚しく響くだけ…

 

 

ペタペタ…

 

 

「…っ」

 

何か歩いてくる…だが今の私に何が出来るでもない、今しがた惨めに泣き叫んで体力を使い果たしたところだ…でも…でも…

 

 

ペタペタ…

 

 

「…嫌…誰かぁ…」

 

 

…怖い、怖いよ…私は自分がこんな弱いなんて知らなかった…今も死ぬことが怖くて怖くて堪らない、なんで…私は…

 

 

まだ生きたいよ…まだしたい事が沢山ある…初恋も、出来れば結婚もしたかったし、子供も欲しかった……防人であるが為に自分には必要無い物と思ってたけど………死にたくないよ…

 

 

 

 

 

寂しいよ…

 

 

 

 

ペタペタ…ペタ。

 

 

 

 

 

『ワンッ』

 

 

 

「…え…?」

 

 

血だまりが更に大きくなっていく、その時私の目の前に現れたのは、一匹の雑種犬だった。

 

 

「…ぁ…」

 

 

ペロペロペロペロ

 

 

私の目の前に来た雑種犬は私の顔を舐め始めた。血のついた頬や顎を暖かみのある舌が綺麗にしていく…

 

 

「…ふふ…ぁ…りがとう…」

 

 

不思議とさっきまでの恐怖が和らいでいく、死に際に人でなくとも、心を通わせることの出来る動物なら、こんなにも心が安らぐ…

 

 

 

「…お前は…ごほっ…側にいてくれるか…?」

 

 

 

『わんっ』

 

 

私の言葉を理解するように犬は吠えて返す。

 

 

 

死ぬのは怖いけど……でも…

 

 

…少し安心したかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生きたいか?』

 

 

 

 

意識を手放しかけ、朦朧とする頭の中に声が響く、もし…もし私の勘違いでなければ今…この犬が喋った…?

 

 

『お前が生きたいなら生かしてやる、多少のデメリットはあるがな』

 

 

これは私の幻聴だろう…混濁した意識の中で変なモノが聞こえるんだ……

 

 

 

 

 

 

 

でも…私は…

 

 

 

 

「…生…きたい」

 

 

『なら決まりだ』

 

 

ベチャッ

 

 

その瞬間私は軽い衝撃と共に意識を失った、最後に感じたのは身体中に生暖かいモノが纏わりついて浸透していく感触だった。

 

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

ダダダダダッ!!

 

 

『ああクソ、腹が減った…衰弱したバカに寄生するんじゃなかったぜ』

 

 

そう言いながら俺は…俺たちは下水道を走る、道すがらそこいらのネズミやゴキブリを手を触手にして捕まえて食べる、ゴキブリは酷いがネズミは思ったより美味い、ライフ財団で与えられた実験用マウスよりも栄養が良い。自前の頰の上まで裂けた大きな口を活用してネズミを口いっぱいに頬張り何本も生えた鋭い歯でもぐもぐ食べりゅ…あ、やべ、ちょっと溢れた。

 

 

ダダダッ…

 

 

まずここから出るか、そしてどこでも良いから腹ごしらえだ…人間を喰ってもいいが、それだとポリスメンを相手にしないといけない、まぁ負ける気はしないが、前科持ちになるのは流石に避けたいしな…

 

 

ピタッ

 

 

とりあえずは……

 

 

 

『腹が減ったァァァァア!!』

 

 

バギャン!!

 

 

マンホールをぶち破り、高々と飛び上がった俺…達は新鮮な空気を吸って辺りを確認する。ここは大通りらしいが…いかんせん周りは瓦礫と瓦礫と瓦礫しか無い、パニック起こした人間の二次被害なんだろうが、まだノイズがいるなら救急隊なんてのは期待出来ないしな、…まぁ新しい宿主の試運転には丁度いい…

 

 

というかシンビオートになってから人型になったのは初めてだ、外見は前世で見たコミックの『ヴェノム』まんまだが胸のスパイダーマークが無い、まぁスパイダーマンに寄生して無いしな俺…、体長2メートル超、腕や足は常人の太さを超えて黒い筋肉がまさに肉々しく詰まってる、顔は口が頬まで裂け、人間の可動域を超えた大きな口と顎、オマケに鋭い牙が何本も生えている、目は凶暴に白くとんでもなくツリ目になってる、正に《ヴェノム》だ。

 

 

ザワッ!!

 

 

『んあ?』

 

 

シンビオートセンス…まぁ第六感とも言うけど…まぁシンビオートセンスが何か脅威を捉えた、気配がする方を向くと建物の隙間からノイズが出て来やがった…オタマジャクシみたいだな…数は…なんだ一匹か…まぁ逃げ切れるだろう、だがその前にこの身体の戦闘能力を把握しないとな…

 

 

バッ!!

 

 

30メートルは距離があるのをひとっ飛びでノイズに近づく、向こうも俺に気づいたのかこっちに向かってきた、どうやら俺も奴らにとっては駆逐対象らしい…

 

 

グオッ!

 

 

『はんっ…なまっちょろいな、欠伸が出るぜ!』

 

 

ヒュッ!ヒュッ!

 

 

ノイズの繰り出す攻撃をことごとく避けていく、体を捻らせて、手を触手に変えて電柱に飛びつく、果ては身体を半分流体にしてかわすことも出来た。逃げようとお前ばいつでも逃げれるが、ここいらで身体能力を試したかったのだ。

 

 

『HAHAHA!!ノロマな奴め!ナメクジよりもすっトロいな!!』

 

 

ガッ!

 

 

『あ』

 

 

ドサッ

 

 

油断が先か後悔が先か、奴の体当たりをバックステップで避けたのは良いが背後にあった倒れた電柱に気付かず、思いっきり後ろ足を引っ掛けて、見事にすっ転んでしまった、ああクソ!

 

 

グオッ!

 

 

『!!』

 

 

チャンスと見た奴さんは俺に飛びかかる!マズイ!いくらこの身体でも炭化は防げない!

 

 

『shit!!』

 

 

ガードする間も無く、目を瞑って炭にされる覚悟をした俺…………

 

 

 

 

トンッ

 

 

 

『あれ?』

 

 

だがいつまで待っても昔味わったあの間食は来ない…そのかわり軽い衝撃が来ただけ…まさか…

 

 

【ーー!??】

 

 

俺を食おうとした当の本人も状況が読み込めてないらしい、…なら…コイツはどうだ!!

 

 

ブンッ!!

 

 

『ふんっ!』

 

 

遠心力に足を任せて軽く背後回し蹴りを繰り出す、ハズレなら俺の足は消し炭に…アタリなら…!

 

 

ドッ!

 

 

【ー!!!】

 

 

バリィイン!!

 

 

見事に俺の足はオタマジャクシノイズの横っ腹にめり込み、奴をショーウィンドウに叩き込んだ、ガラスが辺りに飛び散るのも気にせず俺は得た確信に歓喜していた。

 

 

『クククッ……HAHAHAHAHAHAHAAAAAッッ!!』

 

 

 

どうやら俺は今ノイズに対して触れる上に炭にもされない!なら…!

 

 

『食事はどうかなァ!?』

 

 

バッ!!

 

 

ショーウィンドウの中でぐったりしているオタマジャクシに飛びかかり、大きな両手で奴を捕まえる。さて…顎を限界まで開いて、よだれを滴らせ、長い舌が自然と動いてしまう。

 

 

『いただきます!!』

 

 

バクッ!!

 

 

【ッ!!ーー!?】

 

 

もぐもぐ、もぐもぐ、ごっくん

 

 

ノイズの中心部とおぼしき水晶のような部分ごと思いっきり齧り付く、……なんだろう、グミみたいな食感だが、妙に旨味がある…ソテーにしたらワンチャン…違う違う、そうじゃない、とりあえず《喰う》事も出来るみたいだ…ああ、でもまだ足りない…

 

 

『残したらダメだよなぁ…あれ』

 

 

サァァァァァ

 

 

ノイズは俺の手から消滅しちまった…やっぱりあの水晶見ないな奴が心臓って事か…お!?

 

 

ザワッ!!

 

 

シンビオートセンスに反応だ、振り返ればかなり向こうからノイズが大量に近づいてくるが…

 

 

ぐうぅぅぅ

 

 

『…じゅるり…』

 

 

どうにも食欲には勝てそうに無い、奴らの俺に対してのアドバンテージは既に逆転した、しかも食べれるとなれば、クソッタレのノイズを殺すと同時に腹ごしらえまで出来ると来た、コイツァもうやるしか無いだろう…やばい、昔響達と家族で行ったビュッフェスタイルのレストランに来た時みたいにワクワクしてる…というか!もう我慢できねえ!!

 

 

ダッ!

 

 

俺はノイズの群れに一目散に駆け出した、そして口を大きく開けて飛びかかる!!

 

 

 

『いただきます!!』

 

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

 

『あー食ったなぁ、そこそこ満足だ、ゲフッ』

 

 

 

あれから食い千切っては投げ、食い千切っては投げの連続で次のやつを買おうとしたらいつのまにかもう食べれる奴はいなくなってた、シンビオートセンスにも反応は無いしここいらのノイズは全部買っちまったらしい、まぁ何日かはこの栄養だけで持つだろう、後は宿主に任せるか…ん?

 

 

 

『?、誰かいるのか?』

 

 

 

少し集中すると瓦礫に仰向けで下敷きになっている爺さんを見つけた、この距離でも呼吸音はまだ聞こえる…仕方ねぇ、流石にほっとけねぇしな。

 

 

 

『おい!爺さん!聞こえるか?』

「…うぐぐ…お、お前は…」

 

 

白髪を生やし自分のお気に入りなのか、サングラスをかけた爺さんはあたまと上半身を出して腰から下は瓦礫に組み伏せられている……見たところ白人だな、日本人には見えない、旅行者か何かだろう。

 

 

 

『おい、踏ん張れ、すぐ退かしてやる、そらっ!』

 

 

グイッ!

 

 

俺は爺さんを潰してた瓦礫を軽々と引っぺがす。

 

 

『おら、大丈夫か爺さん?立てるか?』

 

「ああ、大丈夫じゃ、ありがとよ黒いの」

 

 

爺さんに手を貸して引き起こす、しかしこの爺さん俺の姿を見ても一向にビビってない、なんでだ?

 

 

「ん?ワシはお前みたいな奴は沢山見てきたからな、緑色の奴とか蜘蛛みたいな奴とか、果てにゃ喋る木だって見たことあるわい」

 

『ハッ、心が読めるのかよ爺さん』

 

「聞きたそうなツラしてたからの、改めてありがとうよ、黒いの」

 

「おい、助けを…」

 

「大丈夫じゃ、さっきサンドイッチになっとるとき呼んだわい、それにお前さんもここに居てもいいのか?警察にパクられるぞい」

 

 

…抜け目のない爺さんだ、まぁ、言うことは最もだ、この宿主《風鳴 翼》の目ももうすぐ覚める、どっかの道路端に置いとけば発見されるだろう、それまでこいつの記憶を覗かせてもらうとしよう…

 

 

『ああ、あばよ爺さん、体に気をつけな』

 

「あ、待て!黒いの!」

 

 

何処か適当な所に行こうと踵を返した俺を爺さんが呼び止める。

 

 

「お前さん、名前はなんと言うんじゃ?ツイッターにあげたいんじゃ」

 

 

 

俺の名前?…間違っても《立花仁》なんて名乗れない、…まぁ先代に習ってあの名前を使わせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

『俺達…いや、…俺はヴェノムだ』

 

 

 

 

 

 

 




はい、防人さんアニメと比べるとクッソ豆腐メンタルに仕上げました、翼ファンの方はごめんなさい、許してください、翼が何でもします。

最後に出てきた爺さんはもちろんあの方です、マーベル映画にはほとんどカメオ出演されているあの方です。
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