纏う彼女らと寄生する俺   作:相変わらずな僕ら

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はい、本当はエビの下りやりたかったんですけど、なんかひねりが無いかなと思って別のにしてみました。


それと活動報告でモブの募集を随時行なっています、時間があれば見てやってください。


それではどうぞ。


Self-introduction《自己紹介》

 

 

 

 

 

ゆったりとしていて…暖かい、

 

 

 

 

心地いい感覚にゆっくり目を開ける、…私は…死んだのか?…ここは天国…?

 

 

 

 

 

次第にまぶたは開いていき、私は周りを確認する。ピッピッと規則正しく流れる機械音、消毒が行き届いているのか少し独特な香りを放つ家具、それに…

 

 

「…うっ…」

 

 

何とか起き上がろうとすると脇腹に痛みが走る、その痛みで私の意識ははっきりと覚醒した。ここは病室…二課の息がかかった病院か…私を…二課の風鳴翼を、名も知れない病院には入れる事などあるまい…だがそれよりも…

 

 

「私は…助かったのか…」

 

 

ふぅ、と息を吐き、またベットに背を沈める…外は晴れ模様だ…昼下がりの日差しが薄いカーテンの隙間から漏れ、鳥のさえずりが心地いい…

 

 

「…ぐすっ…!…うぐっ…」

 

 

不意に目尻が熱くなり、涙が出てきた。連日のノイズとの戦闘により麻痺していた日常の感覚、それをあの時味わった死の恐怖と絶望の後で噛みしめるとこんなにも…こんなにも安心するッ…

 

 

「…私は…まだ生きていていいんだな…」

 

 

ずずっと鼻水をすすり、腕で目を覆い、ゆっくりと呼吸する…

 

 

「そういえば…あの時の犬は…」

 

 

そうだ。あの時、絶望の淵にいた私のそばに居てくれたあの犬…確かあの犬に顔を舐められて……その後から記憶があやふやだ。あの時犬が喋ったような幻聴を聞いたが、あれは何だったのだろう…あいつは逃げる事が出来たのだろうか…あの時、あの犬がいなければ、私の心はもう元には戻らなかったかもしれない、あの雑種犬には感謝しても仕切れないな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《良いって事よ》

 

「!!!?!?!?いっっ痛ッッ!!」

 

 

突然私の耳元、というか頭の中に響くような声が聞こえた。思わず飛び起きようとしたが、怪我がそれを許すはずもなく、あまりの痛みにベットへトンボ帰りだ。

 

 

「〜〜〜〜っっつ…!な、なんだ今のは!確かに声がしたぞ!し、しかし今のは…き、きっと何かの幻聴だろう!そ、そうに違いない!…ああ、それにしても痛っ…」

 

 

そうだ、先の戦闘で酷くやられてしまったのだ。その後遺症だろう。そうだろう、決してお化けとかそんな類が怖いとかそういうわけではない。うん、そういうわけではないのだ…うん、そうだ…

 

 

──コンコン──

 

 

そうやって一人芝居をしていると、ノックの音が部屋に転がった。ドアを開けて入って来たのは、私のよく知る顔だ。

 

 

「失礼します、翼…さん…」

 

「緒川さん…?」

 

 

私の病室に入ってきたのは緒川さん・・・緒川慎二さんだった。私と共に二課に所属しているエージェントだが、私の表の顔であるアーティスト《ツヴァイウィング》のマネージャーでもある。公私共にお世話になっている人だ。

 

 

「良かった…翼さん、意識が戻ったんですね。何よりです。体の加減はどうですか?」

 

「ええ…少し痛みますが、何とか…」

 

 

そう私が返すと緒川さんはにっこりと笑って、ただ、良かったと呟いた。

 

 

「…咎めないのですか?」

 

 

私は緒川さんの方を見ずに聞いた。当然だろう。私は命令違反をした挙句に通信機を捨てて、独断専行し見事に負けた。その場の感情に身を任せ、その結果無様に敗北したのだ。下手をしたらあの時…違うな…ほぼ確実にあの時死んでいたのだ。それが神の悪戯か、こうして生き残った。激怒されても、何ら可笑しくはないのだ…

 

 

私のそんな子供じみた疑問に緒川さんは優しい笑みで答えた。

 

 

「確かに怒りたいです、でもそれよりも翼さんが無事でホッとしたんです」

 

 

まるで聖母のような笑顔で緒川さんは続ける。

 

 

「翼さん。あなたが怪我をして、増して死にかけたりすると・・・心を痛める人がいるという事を忘れないで下さい、奏さんが不在で不安なのは理解しているつもりです」

 

「…はい」

 

「それでも二課のみんなが、司令が、了子さんが、僕がいるんです。倒れそうなら遠慮なく頼ってください、いいですね?」

 

「…はいッ…!」

 

みっともないところを見られまいと先程止めた涙がまた溢れ出す。それは止まる事を知らず、泉のように流れ続けた。

 

 

「それに…」

 

 

そんなみっともない私をまだ気にかけるように緒川さんは声をかけてくれる、私はここまで慕われているのか…、天使の笑顔の緒川さんは…

 

 

「あの人が僕の分まで叱ってくれますから♫」

 

 

全く目が笑ってなかった。

 

 

「おっとそろそろですね、あぁ、今こちらに来てますね」

 

 

え?え?何が?、緒川さんはあらぬ方向へ顔を向けて呟く、向こうに何が…

 

 

 

──ドドドドドドドドドドッ!!──

 

 

「こっ!この地鳴りは!?」

 

「あと2キロも無いですね」

 

 

 

──ドドドドドドドドドドッ!!──

 

 

─きゃあ!何なのあの人!─

 

─困ります!あー!困ります!ここは病院ですよ!何してんですか!?─

 

─ドクター!赤いワイシャツ着た男が院内を爆走してます!翼ァァァァって叫んでます!─

 

─その男、今18階で見たぞ!?なン秒で人間が駆け上がれるわけないだろう!?取り敢えずRed bu◯でも投げつけろ!!翼が欲しいんだろ!?─

 

 

「あと5秒でしょうか?」

 

「あ、…あ…」

 

 

この病室の外で起きている阿鼻叫喚の事態にに頭を抱えたくなる…いや、こうして原因を作ったのは私だが、それでも…十中八九あの人なのだろうが…、まさか緒川さんが言った叱ってくれる人と言うのは…

 

 

 

──ガラッ!!バンッ!!──

 

 

「翼ァァア!!」

 

 

ドアが壊れるのでは無いかと思うほど…いや、あれは壊れているな。バッキバキにヒビが入ってる。そんな音を轟かせて、二課の総司令官である《風鳴 弦十郎》は、叔父様は入ってきた。

 

 

「それでは僕はこれで」

 

「えっ!?ちょっと待っ!?」

 

 

軽く会釈をした緒川さんはいい笑顔をしながら一瞬で消えてしまった…またNINJUTHUか、いくら鍛えど未だに緒川さんの影すら追えないとは…違う違う!今は叔父様が…

 

 

「風鳴翼!」

 

「はっ、はい!」

 

 

叔父様は私をまっすぐ見据えながら名を呼ぶ。この人のいろんな表情を見てきたが、私の知る限り今まで見たことのない怒りと悲しみが見てとれた。

 

 

「…翼、お前は命令を無視して許可なく絶唱を使おうとした。しかも独断専行で敵に突っ込み、その結果自分の体とギアに多大なダメージを負わせた…お前はシンフォギア装者としての自覚がないのか!お前のワガママで振り回される人達の身にもなってみろ!」

 

 

「…はい…申し訳ありませんでした…」

 

「だが!それよりも…ッ…!」

 

 

叔父様はおもむろに手を出してくる。一発顔にお見舞いされるのかと一瞬体がビクッと震えて目を瞑ってしまう。だがいつまでたっても衝撃は訪れない。そのかわりに私の頭と背中に暖かくて大きな手が回された。

 

 

「…ぇ…?」

 

「良くッ…!…良く戻ってきてくれたッ…!…心配したんだぞ…!!」

 

 

叔父様は泣いていた、いつも豪快で前向きでノイズが相手で無ければ世界最強とまでうたわれるこの人が…。

 

それと同時に私の目からも再び涙が溢れる。奏が失踪してからと言うものの、誰かの温もりというのを久しく忘れていた。それを無理やり埋めるために訓練やアーティストとしての活動を続けていたのだ。そんな私の冷めた心を、叔父様は優しく包みこんでいった。

 

 

─────

────

───

──

 

 

「で、二人共落ち着いた?」

 

「う、うむ。情けないところを見せた、了子くん」

 

「お、お恥ずかしいところを…」

 

「良いのよ、可愛い二人も見れたし……私は弦十郎くんに抱きしめてもらった事無いのに…」

 

 

あの後、叔父様と抱き合ってるのをお見舞いに来てくれた了子さんにバッチリ見られてしまい、慌てて離れるもニヤニヤした了子さんに弄られることに…、べ、別にやましい事は無いのだが、何故か了子さんの私を見る目が笑ってないと言うか、少し怖いというか…

 

 

「ま、弦十郎くんが自分の姪を抱いていたのは後で話すとして」

 

「言葉に棘が無いか?了子君?」

 

「気のせいよ、それで翼ちゃん?アナタ少しくらい歩いても問題ないくらい回復してるわよね?」

 

「ええ、そうですね。激しい運動は厳しいですが少し走るくらいなら…はっ!」

 

 

そこで私は気がついた。自分は一体どれだけ寝ていたのか?、病室に備え付けてあった電波時計で慌てて日付を確認する…え?

 

 

「気がついた?翼ちゃん、アナタは倒れてから1日で回復したのよ」

 

「やはり…にわかには信じ難いが…」

 

 

電波時計が示していたのは、私がノイズに敗北してから1日しか日付が変わっていないという事実だった。何故だ?自慢ではないが、私はあの時酷くダメージを受けていた、ギアは元よりこの体も傷一つない…私の体に何が起きている?

 

 

「不思議なのは私達も同じなのよ。だから、今から検査するの」

 

「了子君、翼は回復しているとはいえ昨日まで意識不明の状態だったんだ。あまり疲れるような…」

 

「はいはい、弦十郎くんの抱き締めるほど大事な大事な翼は優しく扱うから、といっても何日かに分けてするつもりだから。翼ちゃんも少し休んだ方が良いわ…、体のダメージもだけど、それ以上に心のダメージもケアしなきゃね?」

 

「やっぱり言葉に棘が無いか?了子君」

 

「無いったら無いの。ほら翼ちゃんは着替えてから検査するんだから、さっさと出て行かないと」

 

「う、うむ。翼、何かあったらすぐ連絡しろよ?」

 

「あ、はい叔父様、了子さん、ありがとうございます」

 

「いいのよ、じゃあ後でね♫」

 

そう言いながら二人は病室を後にする、二人が居なくなった途端に再び頭に疑念が浮かぶ。

 

 

私はどうなったのか……そしてこれからも剣を振れるのか…

 

 

 

 

振る資格が逃げ出した私にはあるのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《知らねえよ》

 

 

 

 

私の体のどこかでそんな声が聞こえた気がする。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

叔父様と了子さんがお見舞いに来てくださった日から私の検査が始まった。基本的な身長体重、X線やうんざりするほどの検査を続けて、やっと今日が最後の検査だと了子さんは言う…長かった、何が辛いかと言うと、いつも強烈な空腹感に苛まれていると言う事だ。消化の良いものを作ってくれるスタッフには申し訳ないとだが、どうしてももっと食べたくて仕方がない。この前内緒で叔父様に何か食べ物をねだったら、◯屋の牛丼の特盛りを買ってもらって了子さんにバレて二人してお説教を貰ってしまった事もあった。

 

 

だがそれよりも深刻な悩みが私には出来ていた。

 

 

 

声が聞こえるのだ

 

 

 

先の病室で目覚めてからが最初だった。初めは弱い心を持つ私の深層意識が創り出した幻聴だと無理やり信じ込んでいたのだが…

 

 

 

《ああ゛、検査は面倒だな》

 

 

 

まただ。最近はどうでも良い事にもこの声は反応する。しかも私の心の内を全て見透かした言動も増えてきてた気がして成らない…この声の事は私が我慢すれば良い事だ。叔父様と了子さん、二課の方々をこれ以上心配させるわけにはいかない。そうして私は周りには黙っていることにした。

 

 

そして今日は最後の検査だということで病室に迎えに来てくれた了子さんと共に廊下を歩く…ああ、またお腹が空いてきた…何か食べたいなぁ…

 

 

 

「これで…最後なのですね…?」

 

「大丈夫、最後よ……何もなければ、ね・・・」

 

「不安になるような事言わないでください!」

 

 

私はげっそりした顔で了子さん曰く最後の検査を受けるために、了子さんと二人で検査室へ向かう。そうだ。今日が最後ならこのまま退院出来るかもしれない。そうしたら回転寿司に行こうそうしよう。沢山食べるんだ。防人としての誇りを取り戻すためにも先ずは身体の調子を戻さねばな!、鯵鮃鮭鮪いくら鰤鰆秋刀魚出汁巻卵雲丹鱚鮟鱇ネギトロ鰯et cetera…まずい、ますますお腹空いてきちゃった…

 

 

「了子さん、今日の検査は…」

 

「あら、言ってなかったかしら、大丈夫ただのMRIよ、心配しなくてもすぐ終わるわ」

 

「はは、ありがとうございまs」

 

《やめろ!!》

 

 

くらっ

 

 

(くっ!!またか…!もう良いだろう!消えてくれ!)

 

「ちょっと翼ちゃん!?大丈夫!?」

 

「は、はい、少し立ちくらみしただけです」

 

 

危なかった。急に頭の中に響く声に思わず意識を持って行かれそうになってしまった。しかし何故今になって検査を嫌がるのだ?これも私の深層意識の本音なのか?

 

 

《仕方ねぇ、この手は使いたくなかったが…身を守る為だ、恨むなよ》

 

(?、何を言っていr)

 

 

 

 

──ぐぎゅるるるる──

 

 

「う゛ぼッ!?!??」

 

「つ、翼ちゃん!?今女の子が出しちゃいけない音と声がしたわよ!?」

 

「い、いえ、問題n」

 

──ぐぎゅるるるるろろろろろろらら──

 

「ぬ゛あ゛あ゛!?」

 

 

お、お腹がああああああ!?な、なんだ突然!あの声が消えた瞬間に、うぐっ!、きょ、強烈な腹痛と…あと……その…し、下の方が緩く……//////

 

 

──ごろろろろぴーーー!──

 

 

あ゛あ゛あ゛便意だ!便意がまずい事になっているぅぅぅうああ!!こ、これはまずいッ!今は腹に力を入れて我慢しているが、いつまで持つか分からない!ぐうぅ!幸い手洗いまでそんなに遠くない!こ、ここはなんとか了子さんに事情を説明し、この人としての危機を乗り越えなけれb、うお゛お゛!!

 

 

「つ、翼ちゃん?」

 

「り、了子さん、す、少しばかり腹痛gおおおおおおお!?」

 

「わ、分かったから早くお手洗いに行ってらっしゃい!今のあなたとんでもない顔してるわよ!?検査は今日はキャンセルするから!」

 

「そ、それでは行ってきます!」

 

 

──ダダダダダッ!!──

 

 

了子さんの了承を取るや否や、出来るだけ肛門に刺激を与えないように全力で廊下を走り出す。あまり刺激が強いと危うく下の口が絶唱してしまう!それだけは避けなければ!

 

 

《早くしないとケツから女子力垂れ流しになるぞ?》

 

(こんな時までぇええぇえ!話しかけるなぁあ!!)

 

 

 

 

ま、間に合ええええぇぇええ!!

 

 

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

ピッ

 

ジャーーー

 

 

 

《良かったな、危うく廊下のど真ん中で脱糞生ライブするところだったな》

 

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ」

 

 

トイレの個室で俯き呪詛のように呟き続ける私に、またあの声が語りかけてくる。何度振り払おうとしても依然としてこいつは私に話しかける。本当にこの声は…

 

因みにあの後私は恥も外聞も捨てて全身全霊で手洗いに駆け込んでなんとか…………まぁ、なんとかなった。多少まだお腹が痛いが…だがそれよりも、今はこのふざけた声を止めるのが先だ。

 

 

《おい、そんな態度良いのか?でお前の傷を治療したのは誰だと思ってる?》

 

(…もしかしてこいつが?私の傷を?)

 

《あぁそうだ。俺が治した》

 

 

っ!!こいつ私の頭の中が読めるのか!?だとしたら下手なことは考えない方が良いのか・・・しかし、こいつは私の中の深層意識のはず。なんでこんなにも私に話しかけてくる?

 

 

《バカが、俺様がそんなチャチなもんな訳が無いだろ、取り敢えず便器から立って個室から出ろ》

 

「わ、分かっている!指示するな!///」

 

 

わ、私はこれでも年頃の乙女なのだ!そんな事をいちいち指摘されなくとも!

 

 

──ガチャ──

 

 

「はぁ、なんなのだ…」

 

 

トイレの個室からようやく出た私は手を洗うために鏡付きの洗面台に近づく…手を洗い、乱れた髪を整えようと鏡を覗き込むと…おぞましい顔、少なくとも私の顔とは似ても似つかぬ顔が写っていた。

 

 

 

そして、あの日私と奏を襲った怪物にとてもよく似ていた。

 

 

 

 

《よう、風鳴》

 

「ひっ!」

 

 

思わず飛びのいて鏡から距離を取るも事実は変わらない。鏡の中には漆黒の躰に暴力的な歯がズラリと並んだ裂けた口、そして黒目の無い吊り上がった大きな目が私を見ている!

 

「な、なんなのだ貴様は…っ」

 

《俺は…ヴェノムだ、お前は俺の乗物だ》

 

 

乗物だと!?こいつは何を言って…

 

 

《どうせなら口に出して喋ったらどうだ?、お前の事はなんでも知ってるぞ、風鳴 翼?》

 

「き、貴様の目的はなんなんだっ…!?」

 

 

強気にコイツへ睨み返すが、心の中に生まれた恐怖はとどまる事を知らない。幾度もノイズと相対してきたがこれは…絶対にコイツには勝てないと心が悲鳴をあげているっ…!

 

 

《目的…目的か…取り敢えずは暫くお前の体に住まわせてもらう…あと1日だけお前の体を借りたい。大丈夫だ、何も誰かを殺しに行ったりはしねぇよ》

 

 

一瞬戸惑うようなそぶりを見せた化け物だが……、思っていたよりもマトモな提案をしてきた。

 

 

「そ、それだけ?」

 

《ああ、それだけだ》

 

 

分からない。コイツは私の体を治療したと言った。その逆を返せば、私の体を壊すこともできると言っているような気がする。それよりも本当にコイツが私を治療したと言うのなら、私はコイツ…ヴェノムに大恩があるのでは無いか…だが、しかし…あのライブの日に遭遇した化け物と似すぎている。

 

 

《悩むのも良いがな。俺はお前が無理なら他の奴に寄生して、そいつを使うだけだ。まぁ、そいつの安全は・・・保障出来んがな?》

 

「!、私を脅してるのか?」

 

《さぁな。で、どうするんだ?》

 

「…一つ聞かせろ」

 

《なんだ》

 

 

ゴクリ、と喉を鳴らして気になっている疑問をぶつけた。

 

 

「…お前と似た奴は他にもいるのか…?」

 

《あぁ、お前が負けたライオットの事か?》

 

「き、貴様の仲間の所為で!奏は!」

 

 

──バリンッ!──

 

 

怒りに駆られた私は拳を鏡に叩きつける。普段から鍛えていたせいか、鏡にヒビが入り、ヴェノムの顔にもヒビが入った。だがヴェノムは、私の行為をあざ笑うかのように話を続ける。

 

 

《そう怒るな。ライオットと俺は仲間なんかじゃない。この前まで、アイツに捕まってたしな。そもそも、俺たちシンビオートは仲間意識が薄いんだよ》

 

「その言葉、真実だろうな?…もし嘘なら…!!」

 

《嘘を言ってどうする?俺とお前は一連托生だ。信頼を得るために嘘は言わない》

 

「……信じて良いのか?」

 

《それはお前の勝手だ。だが、一つお前に教えてやるよ。お前の知りたがってる事だ》

 

 

?何をだ?私が知りたい事?

 

 

ヴェノムは口角をニィッと上げて続ける。

 

 

《恐らく、お前の相棒は生きてるだろう》

 

「!!!っ…なんの根拠があってそんな…奏が…」

 

《ライオットは合理的な性格だ。使えるなら生かす、使えないなら殺す。そんな奴が喰い殺さずにわざわざ捕まえていったって事は、利用価値があるって事だろうよ》

 

 

ヴェノムの言う通りなら、確かに筋の通った話ではあるが…奏が拐われてからもう随分時が経った。自分の中では実は奏はもう生きていないのでは無いかと、不安が大きくなっている…

 

 

「…だが、もう既に利用価値を見出されず、切り捨てられていたとしたら…」

 

《はぁ、とことんマイナス思考だなお前・・・いいか?俺たち共生生物【シンビオート】の強さは、宿主の身体能力(スペック)に依存する。お前みたいにシンなんとかで戦ってる強い人間なら、それ相応にシンビオートは宿主を守ろうとする。使い勝手の良い宿主なら尚更だ。お前の片割れも普通の人間よりも強いなら、ライオットが手放す理由がない》

 

 

こちらを下に見るように喋り続けるヴェノム。だが、コイツの物言いが真実なら…奏は私と同じようにこのシンビオートとか言う生物に寄生されている。ヴェノムの言うライオットと言う化け物に…寄生されている…。

 

 

《で?お前が同意するなら、俺はお前のプライベートには極力顔を出さない。だが出来るだけ早くお前の体を貸せ》

 

 

……正直に言うと、展開がいきなり過ぎて理解があまり追いついていない。そもそもコイツがどんな生命体なのか、真っ先に叔父様たちに知らせた方が良いのではないかと考えがよぎる…。

 

 

 

───だが

 

 

 

「…いいだろう、貴様の口車に乗ってやる」

 

《いいねぇ、そりゃ…》

 

「ただし条件がいくつかある」

 

《あ?》

 

「まず、私が傷を負ったら直ぐに治す事」

 

《当たり前だ。そうしないと俺も死ぬ》

 

 

そうだ、コイツを出来る限り利用しよう。奏が生きているという可能性がまだあるのなら、私が諦めるわけにはいかない。奏を取り戻すその日まで傷を負っていては、ライオットとやらから奏を奪い返せない。その為にはヴェノムの回復力が必要になるかもしれない。それから…

 

 

「二つ目、私の心を出来るだけ読むな。必要なら話しかける」

 

《…仕方ねぇな》

 

 

これは、もしもの保険として提案した。もしもヴェノム個人が気にくわない事が起きた場合に、私の意思と違った事をされては困る。具体的にヴェノムが何か出来るとは思わないが…、そして最後に!最も大切な事!

 

 

 

「三つ目に!」

 

「なんだ、まだあんのか?」

 

「…さ、さっきの…その…手洗いの……///」

 

《ああ、下痢糞攻撃か?お前の体の中の消化管をいじって起こしたんだよ》

 

「あれはもう二度とするな!!」

 

《分かったよ、大声出すなって》

 

 

あぁ、思い出したくもない。さっき我慢できたから良かったものの、天下の往来でアレをされたら…考えたくもない。アーティストの活動は終わって、寄りにも寄って脱糞芸人にシフトチェンジするのは絶対に嫌だ!

 

 

「…以上だ」

 

《そうか。俺はまぁ、それでも構わない。こっちの条件飲むんなら、そのくらいの事はしてやるさ》

 

「…ならば」

 

《ああ》

 

 

鏡の中の不気味な顔はニヤリと笑い、それにつられて私も口角が少し上がる。そして自然と手が鏡に添えられて、ヴェノムも同じように大きな手を鏡の中から添えた。

 

 

 

《決まりだな、風鳴》

 

 

「足を引っ張るなよ、ヴェノム」

 

 

 

 

こうして、私はヴェノムに寄生されるのに同意した。実は奏がいなくなってから、全てのことに対して投げやりになってしまっていたが、大切な片翼を取り戻せるならと覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私がトイレの中で独り言を大声で喋りながら鏡を叩き割ったと、二課のみんなに可哀想なものを見る目で見つめられた。

 

 

 





はい、翼さんブッチッパになりかけましたね、ウチの翼が汚くてごめんなさい、許してください、翼が何でもします。

皆さんの感想や評価がとても励みになってます。マーベルモブのリクエストや質問などなど、どんどんして下さい!!


それでは次回もまた翼と地獄に付き合ってもらおう
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