纏う彼女らと寄生する俺   作:相変わらずな僕ら

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メリークリスマス(地獄で会おうぜ)、皆さんクリスマスをいかが過ごしましたか?、私は友人達とターキーを貪りながらデッドプール2 を見ていました。

あと、知っている方もいると思いますが、この作品でシンビオートが周りに聞こえる声で喋るのが『』で、宿主にしか聞こえないのが《》です。

それではどうぞ、今回は短めです。


stage one《初期》

ヴェノムという寄生虫に取引を持ちかけられた私、風鳴翼は、ヴェノムに寄生されてから数日、現場復帰を渋々許可され、アーティスト【風鳴 翼】の活動も再開した。

 

 

その後のある日に、私はあるテレビ局のバラエティに出演する事となり、撮影後は周りの共演者からもいい反応をもらえた…が、当の本人は撮影後は楽屋の机に突っ伏してため息をついていた。

 

 

 

「はあ…」

 

《なんだ、体力無ぇな》

 

 

 

そう言いながら私の背中から、おぞましい頭部を持った触手が伸び、鋭い歯を並べながら私に話しかける。私の中にいるヴェノムは、二人きりになるとこうやって面と向かって話しかけてくるようになった。それは良いのだが、今私が意気消沈してるのはこの寄生虫の所為なのだ。

 

私はガバッと起き上がり抗議の視線をヴェノムに向ける。

 

 

 

「元はと言えばお前のせいだろう!ヴェノム!」

 

《良いだろ、ちょっとばっかし生け簀に飛び込んでロブスター喰うぐらい》

 

 

 

そう。今回のバラエティは料理番組で、内容は私(&ヴェノム)と共演者が高級レストランへ行き、出された料理の値段を当てる、というシンプルなもの。だがそこで、事件が起きた。

 

 

 

「貴様があの時エビを食べたかっただけだろう!」

 

《良いじゃねぇか、美味かったんだからよ》

 

「良くない!お陰で番組の終わりには『捕食歌姫』なんて物騒で不名誉なあだ名を貰ってしまったのだぞ!?」

 

《ああ、オンエアが楽しみだな♪》

 

 

 

私が怒鳴ってもどこ吹く風なヴェノム…実はヴェノムが番組の撮影中に腹が減り、ちょうどこれから調理されるであろうロブスターの入った水槽に目を付けたのだ。

 

私が元々少食で、夜の9時以降は食べないタイプなせいか、ヴェノムはあまり栄養が取れなくなっていた。そのツケが番組の収録中に帰って来ることになり、ヴェノムの飢餓は私に伝染。食欲の権化となった私はスリットの入った綺麗なドレスのまま水槽に飛び込んで、ロブスターを生のままへし折って殻ごと丸かじりしたのだ。

 

『翼ちゃん何してんねん…』

 

と、共演者の方々にはドン引きされるが、番組的には美味しかったのか、撮影は続行。なんとか最後まで収録する事が出来た。あの時のスタッフ達の目は一生忘れられそうに無いが…

 

 

 

「全く…緒川さんを誤魔化すのにも限界があるのだ。少しは我慢というものをだな…」

 

《お前がもう少し喰えば良い話だろうが。それに、俺がスタイル維持出来るようにしてるんだ。だからもっと喰え》

 

「それは…ありがたく思ってるが…」

 

 

 

私はヴェノムに寄生されてから様々な恩恵に預かれるようになっていた。身体の内外問わず傷を治すのは言わずもがな、身体能力の全体的な向上、五感の鋭敏化、そして特筆するのがヴェノムが私の体を覆う事で、シンフォギアを纏わずとも代わりにノイズと戦えると言うのだ。しかしデメリットもあり、ヴェノムは特定の高周波音が苦手らしい。それを聞かせると衰弱してしまい、最悪死に至るそうだ。検査最終日にMRIを断固拒否してあの恐ろしい攻撃を行ったのも、MRIがその高周波音を発するからだと言っていた。

 

まぁ、私にとって一番便利なのがヴェノムが言った通り、多少食べても太らなくなったという点か…

 

 

ため息をつきつつ私は楽屋の椅子から立ち上がる。時計を確認し、今日のスケジュールが終わったのを確認。

 

 

 

「はあ…今日の収録は、これで終わりだ。緒川さんに家まで送ってもらう。それから…ご飯にs…」

 

《掃除だろ、約束したよな?》

 

「う゛っ!だ、だがな?そろそろ良い時間だし…」

 

《まだ6時だろうが!はっきり言って、俺はもう耐えらんねぇよ!あんな汚物の空間にいるのは生物として終わってる!》

 

 

 

頭の中でヴェノムに叱られる私だが、心当たりが全く無いというわけでは無い。少し…ほんの芥子粒程だが、ある事にはある。最初にヴェノムを寄生させたまま家に帰った時は、それはもう酷かった。物凄くヴェノムに叱られた上に、無理やり身体の主導権を奪われ、怪人態になったヴェノムはそのまま掃除をしだしたのだ。私の私物や、し、下着なども全て洗濯機に放り込み、ゴミをまとめて、掃除機をかけて、風呂を洗い、洗濯物を干したのだ。全く、それくらい私にも…

 

 

 

《出来てねぇから俺がやったんだろが!しかも俺が寝てたら次の日にゃ汚い部屋に元通りって、マジでどうなってんだお前!?》

 

 

むぅ、そこまで言うなら…仕方無い。奏から教えてもらった《奥の手》を使う時が来たようだ…。

 

 

「て…」

 

《て?》

 

「てへっ♡///」

 

 

ウィンクしながら舌を出し、傾けた頭にコツンと握り拳を当ててみる…奏が言うには、『()がやれば、大概の人は許してくれる』とか…と、というか、かなり恥ずかしいなこれは///

 

 

 

《よっしゃ、戦争だな。よ~く分かったから取り敢えず地獄を楽しみな

 

─ぎゅるるるるるるるる─

 

「ぐ、ぐあああ!!わっ、悪かった、私が悪かった!だからそれはやめろぉ!!」

 

 

 

そういうや否やヴェノムは身体の中から私に攻撃してきた。因みにこれはヴェノムが傷を治すのを応用したもので、体に害は無いらしい…だが。

 

 

(べ、便意がまずい事ぃぃぃい!)

 

 

ヴェノムがしたのは私の消化系を弄って、便意を増強させるという汚らしい技だ。

 

 

 

《汚らしいのはお前の部屋だろ。で?掃除するのか?》

 

「す、するから!するから!これ以上はやめてぇ!」

 

《SAKIMORI語が抜けるほどヤバいのか》

 

「お、お願いヴェノム!こ、これ以上は…そ、掃除するから!」

 

《言ったな、言質とったぞ》

 

 

 

ヴェノムが満足そうに言うと、腹痛と便意は嘘のように消えた。多少掃除が出来ないくらい、そんなに言われる程の欠点とは思わないが…

 

 

 

《いいからマネさんに電話しろ、あと帰りにコンビニ寄ってチョコ買ってくれ》

 

「はあ…、こんなだったら寄生させるんじゃなかった…」

 

 

 

私は本日何度目かのため息をつきながスマホを取り出し、緒川さんの番号にダイヤルして、帰路につくのだった。

 

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

 

ガチャ…

 

 

 

「た、ただいま」

 

《お帰り》

 

 

 

ふらふらと千鳥足になりながら私は部屋のドアを開け、少し…ほんの少しだけ、すこーーしだけ!散らかってる室内を掻き分け、部屋着に着替えた私はそのままベッドにポスンと倒れこむ。

 

 

 

「うぅ~…あんなにも緒川さんに叱られるとは…」

 

《ヤバかったなマネさん。目が完全に人を殺す目だったもんな》

 

 

 

撮影後の車内で私(達)は緒川さんに酷く叱られた。もちろん、今日の収録でのロブスターの件の事でだ。…叱られたというか、追求をされたというか…淡々と据わりきった目で、「何故あんなことをしたんですか?」とか、「何か悪い物でも食べましたか?」とか・・・いや、食べたと言うか、食べさせられたと言うか、寄生されたと言うか…そんな冷めた目で私を見る緒川さんに対して、私は小さく縮こまる事しか出来なかった。

 

 

 

「すぅ…はぁ…」

 

《おい》

 

 

 

ああ、ベッドが心地いい…明日は学校も仕事も休みだし、もう寝ちゃっても…

 

 

 

《おい、掃除しろ、掃除》

 

「……明日と言うのは…?」

 

《あ?またトイレに駆け込みたいのか?何なら30分は出られないようにしてやっても良いんだぜ?》

 

「う…やれば良いんだろう、やれば…」

 

 

 

渋々横になっていた私はベッドの端に腰掛ける。すると、背中からヴェノムが顔を出してきた。

 

 

 

『まずは床に散らばった物を片付けろ』

 

「……了解だ」

 

 

 

…まあ、いつもいつも緒川さんに片付けてもらうわけにもいかないか…

それに、明日は休みだ。少しだけ掃除して、明日は軽い鍛錬と休養日としよう。

 

 

よし、と勢いよくベッドから立ち上がり、気合いを入れ直す。ここら辺で私はやれば出来ると言うところを緒川さんとかヴェノムに見せつけてやろうではないか!

 

 

 

 

 

──数十分後──

 

 

 

 

 

『バカか!飲みかけのペットボトルは中身とラベルを剥がしてから分別しろ!』

 

『バカか!カビ生えたパンを一緒くたにするな!お前がソレ食ったら俺までダメージ入るだろうが!』

 

『バカか!色物と普通のは一緒に洗うな!つか何で食器用洗剤を洗濯機に入れようとしてやがる!洗濯のはそっちの粉のやつだ!』

 

 

 

こうるさい寄生虫に小言を言われながら掃除する事小一時間。あれ程汚かっ…こほん…少しばかり、ほんの少し散らかっていた部屋が、見違えるほどに綺麗になった。玄関に積まれたゴミ袋の山が、私の激闘具合を物語っている。だが、このほんっとにうるさい阿呆が怒鳴るせいで、私は憔悴しきっていた。

 

 

 

『よし、何とかなったな。あとは、この状態を一週間キープだ』

 

「…なん…だと…?」

 

『いや、どんだけ絶望に満ちた顔してんだ。嫁の貰い手が無くなるぞ』

 

 

 

一週間だと!?そんなに長く常人が維持できる訳があるまい!と、言い返したかったが、精神的な疲れと『嫁の貰い手が無くなる』という言葉でダメージを受けた私にそんな余裕は無く、さっきと同じようにベッドへ倒れ込む。そんな私にヴェノムは追い討ちをかけるように話しかけてきた。

 

 

 

『おい、次は飯だろ。起きろ。お前が喰わないなら俺がお前の肝臓を喰うぞ?』

 

「………私はこれから霞を食べて生きる。だから、どうか寝かせてくれ…」

 

『ったく、仕方ねェな・・・オイ、ちょっと身体貸せ』

 

「え?何を!うわっぷ!」

 

 

 

とっさに抵抗しようとしたが、後の祭り。ヴェノムは私の身体を覆い、怪人態へと姿を変えた。

 

 

 

『な、何を!』

 

「飯作ってやるんだよ。身体だけ貸せ。お前は休んでろ。それに今日は、お前にしちゃ良く頑張ったからな」

 

『う、うむ…それならその言葉に甘えさせてもらおう…』

 

 

 

一瞬、身体の主導権を奪われて冷やっとしたが、コイツは結構話が分かるというか、世話焼きというか……醜い姿だが、労いの言葉を忘れないコイツを憎む事が出来ないのは確かだ。

 

 

 

「米とバター、あとサフラン・・・うわ、この肉めっちゃいい肉じゃねぇか。腐りかけだけど」

 

『ああ、この前番組のクイズで当たったのだ、使ってくれ』

 

「ったく、切り落とさなきゃいけねぇじゃねェかよ、勿体ねェ。こんな良いもん腐らせんなよなぁ…つかお前歌姫って言うより、もはやバラドルだよな最近は」

 

『やめろ!最近気にしてるのだ!やめろ!』

 

 

 

うう、最近気にしてるのにぃ…こんな姿を奏に見られたら私…

 

 

 

「付け合わせに玉ねぎと南瓜で良いな。あとは、サラダを適当に作って・・・と」

 

『おい、あまりカロリーの高い物は…』

 

「気にしなくても俺が消化してやるよ。だからお前は、ただ味わって喰えば良いんだ」

 

『…うん』

 

 

 

互いに軽口をかわしながら、ヴェノムはテキパキと調理を進めていく。端から見れば、キッチンに2メートル超えで全身真っ黒の筋骨隆々な口裂けの化け物がそのゴン太い腕と背中から生やした触手を振るって料理をしている、と言ったかなりシュールな絵面だ。しかし悔しいことに、コイツの料理は中々美味い。

 

手早く肉の下処理を終え、米をバターで炒めて味を整える。サラダを作り、醤油ベースのソースを作ったら、野菜と肉を焼いて、適度に火が通ったら皿に移して盛り付け。仕上げのソースを掛ければ完成したようだ。

 

 

 

「よし。バターライスと牛ロースのステーキ、サニーレタスのサラダだ」

 

『お、おお・・・コレは、なんと…』

 

 

 

ヴェノムを通じて感じる料理の芳しい香りに、思わず口の中に涎が溜まる。は、早く食べたいなぁ…

 

 

 

「待て待て、手を洗わせろ。肉捌いた後だしな」

 

『…』ぐぅぅう…

 

 「腹で返事するなよ。器用な奴だな」

 

 

 

水道で軽く手を洗ったヴェノムは、いよいよ料理を食べさせてくれる…案外、コイツに寄生されるのも悪くないかもしれないな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやってヴェノムの姿のまま、テーブルに移動しようとした時だった。

 

 

─ガチャッ!─

 

 

「翼さん!お休みのところすみません!司令から緊急の呼び……出し…」

 

「あ」

 

『あ』

 

 

 

 

いきなり入ってきた緒川さんにバッチリ見られてしまった。

 

 

 




今度から出来るなら4000から6000字程で話数を区切ろうと思います、その方が何かと読みやすいでしょうし、読みにくかったらごめんなさい、許してください、翼が何でもします。


あと、あのマーベルキャラクターを出して欲しい!というリクエストがある方は活動報告にお願い致します。


それではまた次回。


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