こちらはゆっくりですが…付いてきてくれたら嬉しいです。
「ギリギリセーフ!」
「いや…アウトだろ」
「その通りね」
一閃…教室へと入った三ノ輪と俺を襲ったのは、出席簿という凶器だった。割とガチで痛い。てか転校生なんだけど…俺…
『痛い……』
「二人とも…遅刻、これはどういうことかしら?」
「それはこっちの台詞だよ…安芸姉…しってるか?頭ってのは一回叩かれただけで約五千万の脳細胞が死滅するんだ。つまりあんたは…」
またまた一閃、この人ホントに容赦ないわ…。(めっちゃ痛い)
「ここでは先生と生徒よ。安芸さん?」
「あなたも安芸なんですが……すいません何でもないです」
「え!?てことは…もしかして!」
「はぁ…三ノ輪さんそれよりも席につきなさい」
そう言われた三ノ輪は思ったよりも素直に席に着く。今さら気づくがクラス中の視線が俺に注がれていた。
(居心地…悪…)
少し、間をおいてから…安芸ね…安芸先生(笑)が状況の掴めていないクラスのために説明を始める。
「皆に転校生を紹介するわ。今日からこのクラスの一員になる、安芸影人君です」
「あーよろしくお願いします…」
するとクラスの全員が『えっ?もしかしてそれで終わり?』って言いたげな顔をしていた。(寧ろ喋ることなんてあるの?)
そのまま俺は安芸先生(笑)の指示に従って、指定された席に座って椅子へと腰を下ろす。
(確か…乃木と鷲尾って奴も…)
そんな事を考えながら…周りを見渡すと見るからに真面目そうな女の子と目が合った。
「…?…」
「………………」
えー………めっちゃ睨まれて目反らされたんだけど…あっちが目線を向けてきた癖に…。
(まぁ…聞いてた感じ的に…あいつが鷲尾って奴かな…んで…)
目線の先には…朝から机の上に突っ伏しながらすやすや寝てる少女がいる。
(あれが…乃木かな…?)
「つまり…俺の役目は…あいつらの防衛か…」
俺は…そう小声で呟いた。
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「はぁ~………」
放課後…私は帰り支度をしながらあることを考え溜め息をついた。
学校は色々な個性を持った人間が集う場所だ。クラスになれば苦手な人というのは必ず出てくる。現に私…鷲尾須美にもそれはあるわけで……。
(三ノ輪さんと乃木さんに続いてもう一人……)
今朝紹介された転校生…安芸影人という少年。名前と朝のやり取りを見る限り…先生と何かしら関係性があるのは間違いないだろう。
(二人とは違うけど…多分私が気にかけすぎてしまうタイプの人だ…)
なんとなくなのだが…彼は自分の頭の中で苦手な人の部類へと変換されていた。
(それでも…あの二人よりは絡むことは少なそうだからよかった。二人とは大事なお役目もあるから必然的に話すことは多いだろうけど…)
一人で考え込んでいると…教室にいたその場にいる全員の動きが完全に止まった。それだけではなく、空に舞っていた葉っぱなどのすべての時間が止まったのだ。
「来たのね…お役目を果たす時が…」
時間の停止はお役目開始の合図。事前に聞いていた通りだった。
「お?鷲尾さんも動けるということは…これって…お役目の時間ってやつか…」
「三ノ輪さん…」
「ふにゃ~」
二人に緊張感が走る中、脳天気な声が聞こえた。
「ねみゅい…ああ…あと少し……むむ?あれれ?」
彼女はゆっくり周囲を見渡すと…
「夢か~~……………むにゃ」
『寝るなーー!!』
「はぅあ!?」
再び眠りにつこうとした乃木さんを三ノ輪さんと同時のタイミングでつっこんだ。
次の瞬間…辺りをまばゆい光が包み込み、あらゆるものが樹木とかした空間に私達は立っていた。
「これが…神樹様の力による、大地の樹海化…」
「なるほど…これがか」
「え!?」
「は!?」
「あれ~?」
予想もしていなかった声が聞こえて動揺する。私だけでなく二人も驚いていた。(乃木さんは…よくわからない…)
「なんで、あなたが!?」
「か、影人!?動けるのか!?」
「は?聞いてないのか?」
「ん~?何を~?」
「はぁ…まぁいい……」
すると彼は目線を私達から外し、手元にあった鞄から何かを取りだすと…それを自身の肩へと嵌め込んだ。
「…力貸せ…」
彼はそう呟くと…肩に嵌め込まれた何かを拳を握りしめて強く叩いた。先ほどのようなまばゆい光が…視界を包み込む。
(何が……)
ゆっくりと目を開けると…そこには、鎧が立っていた。右手に持ち手の四角い大剣のようなものを握っている。その姿はまるで…騎士のようだった。
「おー!すげぇーー!!」
「わぁ~鎧さんだぁ~」
「…あなたは…一体…」
「お前ら…勇者にならなくていいのか?」
鎧から声がする。顔が覆われていて見えないが…それは安芸影人のものだった。正直色々起こりすぎて頭が付いていけてない。
「影人のいう通りだな!そろそろいくか!二人とも!!」
三ノ輪さんの声でなんとか思考を叩き起こす。乃木さんも表情が先ほどより…引き締まっているように見えた。
(…動揺している場合じゃない…お役目を、果たさなくては!)
三人でスマホをタップすると…私達の周りを光が包み込んだ。
三ノ輪さんは赤い装束。
乃木さんは紫の装束。
私は青い装束へと姿を変えたのだった。
「よし!初実戦だな!」
「合同訓練がない状態で…少し不安だわ…」
「大丈夫だよ~四人で力を合わせればきっとどうにかなるって~ねー鎧さん!」
「何言ってる?俺はお前らの『防衛装置』だぞ?つまりは『道具』だ。そんなのと連携をとる必要があるのか?」
『?』
彼の言葉の意味が分からず…三人の頭の上に?マークが浮かぶ。
「どういう意味だよ?それ?」
「そうか、聞いてなかったんだな…俺はお前達勇者の『防衛装置』として呼ばれた。だからお前らは俺のことを盾にするなり、囮に使うなり…『道具』として使ってくれて構わない」
「そ、そんなことするかよ!」
「そうだよ~一緒に戦おうよ~」
「…やっぱり…面倒なことになったな…」
「え?」
それだけ呟くと…彼は大橋の方へと跳躍した。その姿をみて三ノ輪さんが自分の髪の毛を荒々しく手で掻いた。
「んぁ~!なんなんだよ、影人の奴!二人ともあいつ追いかけよう!」
「うん!行こう行こう~」
「ちょっと二人とも!待ちなさい!」
私の中には…不安しかなかった。どこか緊張感のないこの二人と…突然現れた鎧を身につけ自分を『道具』というあの少年のことでだ。
(…ダメよ…須美、落ち着きなさい。まずはお役目を果たすことを考えないと!)
胸の中でそう呟き、三人を追って大橋の方へと跳躍した。
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大橋の少し手前の辺りで化け物を見つめながら肩に剣の先をのせる。
『そんなことするかよ!』
『一緒に戦おうよ~』
先ほどの少女達の言葉を自分の頭の中で思い浮かべていると…自然と言葉が漏れた。
「…どうだかな…」
小さく、そう呟く。目線の先に見えるのは世界を壊そうとする化け物…。でも正直世界が壊れようが俺にはどうでもいい話だった。寧ろ壊れてしまえばいい…。
『…君が僕の代わりに___…お願い…__…』
「…忘れねぇよ…」
突然呼び起こされた記憶に対してそんな言葉を吐く。化け物に対して剣を構えた。
「…来いよ…相手してやる…」
少年は感情の籠っていない無機質な目を鎧の中で化け物に向けながら…跳躍した。
思いつきで進んでいく小説(笑)