県内高校に通う若干オタク気味の少年、比嘉大介くん
彼の朝は早い。その早さが彼の人生を決めた

少し興が乗ったので少しだけ。
楓さんから離れられないから、いっそのことあえて美代常務と交際させようか(脳無)
まあ嘘ですが。
今回はノリで書いたんでプロットなんてない。
故に短編
今ある脳内設定とその場のノリ、長編始める気がない。
今回はいままでと少し趣向を変えて、ネタほぼなし。
書きにくいのなんの。

キャラとしては少し分からないかもしれませんが、ぜひ調べて見てください。私も詳しいことがよくわからないので性格が変わってしまったら素直にごめんなさい

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曲は、きみのためなら死ねる、ガチャガチャきゅ~っと・ふぃぎゅ@メイトの2曲をお送りします。

時間をかけたとはいえかなり出来が悪かったり
誤字があればよろしくお願いします。


私と君を繋げる水平線

とある初夏の昼。気温も上昇し始め、学生は夏服に、社会人はクールビズへとクラスチェンジする。

かくいう私は学生なので夏服に着替え始める。少し暑がりな私だから早めな衣替えではあるけれど、これがちょうどいいのだ。

とあるニュース番組でのじゃんけんに負け、星座占いも最悪ときた。天気も予想では一日中曇り。環境汚染を嘆いているのだろうか。

それはともかく朝起きてご飯を食べる。やはり白米は日本人の至高だなと思いながら10分使って完食する。

現時刻は7時30分。通学している高校は徒歩10分。足が周りの人に比べてかなり速い私は5分で着くだろう。

 

「いってきます。」

 

「いってらっしゃーい」

 

家族にしばしの別れを告げ学校を目指す。外へ出ると控えめな太陽が様子を伺うかのようにこちらを覗く。部活動はできるか半々といったところだ。

登校中いつも通り車が渋滞している十字路を見ながら歩道を進む。この時間帯にもちらほら登校する者がいる。見慣れた景色は安心感をくれる。

 

私の名前は比嘉大介(ひがだいすけ)。今日も一日頑張ろう。

 

――――――――――――――

 

7時40分

野球部の朝練の掛け声を聞きながら自教室でのんびりと佇む。精神統一の一種だ。これで気力を回復できる。

すると、教室のドアが急に開いた。いつもこの時間帯に登校しているということは一人しかいない。

 

「おはようございます…」

 

「お、おはよう」

 

瀬名詩織さん。高校生とは思えない色気と雰囲気をもつ彼女はクラス1、もしくは学年1の美人だといえるだろう。黒髪ロングで艶もある髪。優し気な目。The・清楚な彼女である。

故に高嶺の花扱いされていたり、女子とは交流をあまり持てずに一人でいることが多いのだが。

彼女がこの時間に登校する理由は知られていない。まあ知っていてもなにかが分かるわけではないし、知ったところでどうしたとなるだけだ。

こちらが挨拶を返すと小さく頷いて、自分の席へと座る。たったこれだけの関係である。

悪い気はしないので私は満足しているのだが。

 

さあ、学校の始まりだ。

 

――――――――――――――

 

午前中の授業を切り抜け、今はお昼ご飯である。私は弁当を持参しているのでいつも一緒に食べているメンツの集まりへと歩を進める。いつもの3人に加えて私は少しオタクというものが入っているメンツだ。

その3人+私で今日も他愛もないことを駄弁りながら、箸を進める。

 

「今日のアレ見た?」

 

「あーあれか?765プロのやつ」

 

「そうそれ。あれよかったなあ。」

 

一(はじめ)が問いかけたその問いに陽光(ひかり)が答える。一はどちらかというとアイドルオタク。陽光はアニメオタクといったところ。もう一人の漣汰(れんた)は陽光と同じでアニメオタクだ。

私はそのどちらにも該当しない、ゲームオタクというやつではあるが、なぜかネタが通じる関係だ。

一は言葉を紡ぐ

 

「いや~なによりね千早ちゃん!クールでかわいいのは反則だっての!」

 

「一の千早さん好きは嫌というほどに聞いているので結構です。」

 

「え~語らせてくれよ~頼むよ~」

 

一の悪い癖、自分の推しの話となると一気に盛り上がる。どのファンにも当てはまることだけれど、それを毎日1時間以上聞かされるこっちの身にもなってくれよと思わず苦笑いして、それに漣汰が突っ込むまでがが1セットだ。

何気ない日常。やっぱりこの空気が好きだなと思わされる12時の太陽は今は照れて隠れてしまっているようだ。

太陽も如月千早さん推しなのだろうと勝手な推測をして昼休みは閉幕となった。

 

――――――――――――――

 

午後の授業も終わり、私は運動場へ向かう。

放課後は部活動。私はソフトテニス部に入部している。恥ずかしながらお世辞にも上手とは言えず、今日も四苦八苦しながら上達を試みる。初めて半年以上も経つが他の部員との4か月の差はなかなか埋まらない。

私自身インドア派なのになぜ部活動をしているのか疑問に思われたことがあるが、理由は大したものでない。テレビで見た錦鯉圭介のプレーがとても魅力的に映ったからだ。そしてその年にテニス漫画を読んでハマったからというのもある。

テニス漫画といっても某テニヌではなく、何も知らない主人公が一からテニスを始めて成長していき、トップを目指すという物語。

私のプレーはそこが原点だ。某テニヌは物理を超越したなにかので流石にこれはやろうとは思えなかった。

とまあ、あの漫画の主人公のように努力はいつか才を上回ると信じて。今日も一心不乱にラケットを振るう。

 

「ダイスケェ!!もっと腰入れろ!」

 

…努力は絶対実ると信じて。

 

――――――――――――――

 

朝に詩織さんと挨拶を交わし、昼にいつものメンツと駄弁り、放課後に部活動を勤しむという生活は生活のルーティーンとなっている。明日も明後日もこの日常が続くと思っていた。

ただ、今日だけは違った。

 

「…あの…」

 

「?」

 

朝の挨拶を交わすだけだった詩織さんと初めて挨拶以外の言葉をかけられた。この手は逃すまい。私はそのあとに続く言葉を待った。

 

「海は好きですか…?」

 

私の初めてはそんなここ(沖縄)にいればなんとも思わない普通の内容だった。その問いへ私は緊張で少し震えた声を抑えて答える。

 

「海、好きですよ。小学生の頃に毎日泳ぎに行ってました。」

 

満足のいく回答だったのか、それとも同志を見つけたのか、詩織さんの目は今まで見たことのないほど輝いていた。

 

「私も、海、好きなんです…ずっと見ていると心が落ち着くんです。」

 

「私もですよ。特に夕暮れ時のビーチは見ていて引き込まれるものがありますよね。」

 

「ですよね…海いいですよね…」

 

ここまで興奮して話す詩織さんを初めて見たというのもあるが、海のこととなると本当に楽しそうに話す。

今この瞬間から私たちは朝の10分だけ話す仲となった。

 

話す内容といてもそこまで多くない。どの海が奇麗か、どの海ではこんな特徴がある。近くの漁港では何が釣れる。

ただそんな他愛の無い詩織さんの話。そんな朝を私は大事にしていた。

 

――――――――――――――

 

ある日、といっても土曜日の休日なのだが、私の趣味であるゲームを今日はゲームセンターで過ごそうと考えていた。

実際今日は午後5時までゲームセンターに入り浸っていた。朝10時から居座っていたものとしてはなかなかの長さを過ごしたのだろう。帰宅しようにもどうにもその気分にはならない。そしてふと思い出す。

 

「海、行ってみようかな…」

 

自転車をこいで20分。私たちの学校に近いビーチ、近くに漁港もあり、その場にいるのは釣り人のおじさんか観光客ぐらいだ。この時期だと人はもう少し多いのだが、今日に限ってそこまで人が多く感じない。

中学生以降釣り以外で訪れることのなかった海だが、夕日が海に映る光景を久しぶりに観たとき、心の底からリラックスした。光景一つでここまで落ち着けるなんてどんなに心がすさんでいたんだ俺と落胆しながら海を見つめていた。

 

どれほどまでにこの光景を見ていたのだろう。気が付けば日も落ち、周りには何もなく、さざ波が耳に聞こえる。帰宅すべき時刻なのだろう。だけれど、今の私はこの雰囲気にのまれていたい。余韻を楽しんでいたい。それほどまでに心を奪われていた。

やっとの思いでこの幻想空間から抜け出せたとき、隣にいる存在に今やっと気が付き、思わずしりもちをついた。

 

「ふふっ、あなたも海、観に来たんでしょ?」

 

最近朝だけ話すようになった仲の詩織さん。まさかずっと隣にいたとは気が付かなかった。

 

「えぇっと、こ、こんばんは。」

 

「ええ、こんばんは。」

 

私だけが謎に緊張した挨拶をしてしまったが、詩織さんは薄く微笑みながら挨拶を返してくれた。それでもまずは疑問をぶつける。

 

「いつからいましたか?」

 

そう、これに尽きる。夕方から日が落ちるまで軽く1時間半はあるはずだ。故にいつから私を見つけたのかが気になる。

 

「今来たところよ」

 

詩織さんは冗談っぽく微笑む。これは誰でも嘘だと気づくが、詩織さんは教える気はないのだろう。そんな彼女の返答に私も苦笑いで返す。そこから先はずっと静かな時間を過ごした。何か話すことはあったのだろうけど、今は全て海に任していた。

 

「ねえ。」

 

沈黙に耐えられなかったのかそれともただ話したいからなのか詩織さんから話しかけてくる。もちろんそれを聞き逃すような馬鹿ではない。

 

「なんですか?」

 

先ほどからお互いを見ずに話しているために感情は声からしかわからない。だけど、少し期待しているような怖がっているような二つの感情がせめぎあっているように感じた。。

 

「その…友達になってくれませんか?」

 

最初は何を言っているのだろうと思っていたが、詩織さんの境遇を考えれば妥当だった。

高嶺の花扱いされて男はもちろん、女子からは少し近寄りがたい雰囲気から遠めから見られていた。故に高校に入ってからは友達と言える友達はいなかったのだろう。なら、私がその初めてになるのもうれしいものだ。だが、普通に返してしまっては面白くない。少し意地悪気味に言うとする。

 

「え?私たちって友達じゃなかったんですか?」

 

首をかしげて何を言っているのかというように言葉をぶつける。

 

「……」

 

何も返事がなくふと詩織さんの顔を見てみると頬を一滴の雫がつたっていた。これにはさすがにぎょっとした私はどこか痛いところがあるのかどうか聞いてみた。いや、本当に大変なことが起きてしまったら目も当てられない。少し焦っていると、彼女から話をしてくれた。

 

「違うん、です。いま、まで…そういってく、れる人がいなかった、ので、うれしい、です。」

 

顔を真っ赤にしながら涙を流し感謝を述べる詩織さん。もうここで私は特攻ダメージをくれってしまったのだろう。心の中に何か来るものを感じながら、気にしないで、と声をかける。友達なら迷惑をかけるのは当たりまえだ。少しばかり行き過ぎたそれはいけないことだけれど、友とは敵であり、味方なのだ。

ここまで説明たけれど、あくまで持論だからどう思うのかは人それぞれだよね、と会話をちょん切る。自分には似合わないことばかりさせすぎやしないかと思うが、これも経験ということで割り切っている。

そもそも中二病をとっくの昔に卒業して今もその影が続いている私にはこれほどお手の物なんだ。昔は訳の分からない言葉を適当に並べて自分で納得していたし。うん。

それはそうとしてこれで私は高校生活初の詩織さんの友達となった。

 

――――――――――――――

 

友達になったというものの、急に遊びに行ったりしてはいない。今まで通り朝に他愛のない話をする程度だが、少し内容は変わった。海に関する事柄が多かった内容も今は朝食は何だったか、昨日はこんなことがあった、昨日のテレビは何を見たか、だ。それでも詩織さんはそういう話をしたことがないのだろう。とても楽しそうに話すのだ。これは私だけが持つ特権と思ってもいい。

そういうわけで友達宣言したにもかかわらず、今のままな関係じゃいけないと思い、少し思い切った行動をしようと思う。

 

「し、詩織さん。い、一緒にご飯食べませんか?」

 

そう、お昼ご飯への招待だ。いままではあのオタクが集まるグループに参加させるのは渋っていた。理由は普通に怖いからだ。ただ、詩織さんはそんな私の不安はいらないものだとばかりにすぐにOKという返答を頂いた。それでは行きましょう。その言葉が出たとき、詩織さんは微笑みを浮かべてゆっくりとついてくる。周りでこの会話をたまたま聞いていた生徒たちは唖然としていた。まあ分からないこともないのだが、それはそれ。これはこれ。

何はともあれお昼ご飯。今までのメンツには新ゲストが登場すると伝えていたが、それが詩織さんとは思わなかったようで、少しどことかかなり驚愕していた。ただ悲しいかな。いこのメンツは非常事態に結構強い。すぐにいつものような馬鹿なようで楽しい話へと昇華した。やれ千早さん可愛いだ、やれキミも立派なフレンズだと傍から見れば危険極まりない会話をしてることだろう。それでもこのノリが私は好きなのだ。

ふと詩織さんを見るも口元に手を添えながら笑っているところを見ると大成功だろう。すると一が何か思いついたように話し始める。

 

「そういえば、瀬名さんさ、なんでこんな奴と友達になったん?」

 

わたしをこんな扱いとは全くひどい扱いである。それでもいつも通りなのだが、詩織さんは焦ったように

 

「い、いえ、私からお願いしたので…」

 

少し顔を赤らめて言う詩織さん。これにはメンツもびっくりしたのだろうかそれとも面白がったのだろうか。こちらを一見して詩織さんと見比べる。ふとして漣汰が私に向かって肘を当てる。

 

「一生仲間だと思っていたのに。この裏切り者め!」

 

正直に言うと何を言ってるんだこいつはというやつである。首をかしげてみても漣汰はニヤニヤをやめない。視線に気づいて周りを見ると陽光と一もこちらを見てニヤニヤしている。

 

「だが我々にも未来はある。大介を見習って積極的に行こうではないか!」

 

「「たりめぇよ!」」

 

ほどなくしてオタク同盟(私と詩織さんは除く)が結成された。もちろん私からしたらお前達は何を言ってるんだと言いたい。

そのあとはすぐにオタク同盟は解散となり、また他愛もない話で閉めた後にお昼ご飯組は戦場を後にした。

 

――――――――――――――

 

部活中妙な視線を感じながらラケットを振りぬく。今回はいい感じでできたらしい。相手のコートにちゃんと入った。確認した後に、すぐに二球目へと移る。これもまたうまく返せた。今日は調子がいいのかもしれない。

そう思いながら1セット目を終わる。次の人の為にコートから抜ける。ふと考えればサーブも入るようになってきた。先輩方からは、最近上手くなってきてるぞ、と褒められた。だからと言って私は止まらない。先輩方は先にいるんだから。止まらねぇよ…。

 

部活動も終えていざ帰宅というときにあまり見たことがない同級生数人に絡まれた。話を聴いてみると、なにやら私が詩織さんと話しているのが気に食わないらしい。こちらとしてはいや、何言っているんだろうといったところだが、それでも相手方は止まらない。結構流している話からするに手に入れたいらしい。まあそれはまあなんとも。なら告白すればいいものを。すると逆ギレしてきた。

 

「ああ?なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ?それよりも瀬名さんから離れろや」

 

正直に言って私は小心者なのでいつもなら従ってしまっていただろう。だけれど、ほんの少しだけ勇気が出てきた。それは勇気と言われるものなのか無謀というものなのか、それても別の感情なのか。とりあえず、不愉快だから、それだけで今は頑張れる。

 

「い、いやです。」

 

「は?」

 

「なんで友達と離れないといけないんですか」

 

これが最適かどうかなんて分からない。ただ、分かるのはここちょっとした恐怖。ここ10年の勇気を使った気がする。これには突っかかってきた男子生徒も少しびっくりしたのだろう。何も言わずに去っていった。去って行った後も私は腰を抜かしてしまった。あまりああいう人たちとは関わらないようにしていた分恐怖がかっていた。ただ、今は安堵と少しのしんっぱいが心の中を埋め尽くしていた。

と不安になるようなことを考えていたが、今のところ何も危ないことは起きていない。詩織さんとはいつも通り朝に言葉を交わして、お昼ご飯を一緒に食べる。そういう仲のままだと思う。詩織さんも最初は慣れていなかったオタトークとやらについてこれるようになり、私たちの会話を微笑みをもって参加してきている。もはや日常と化した光景だった。ただ、少し詩織さんの顔が暗いと思う。後で話を聞こうと思う。

 

と思っていたら案の定まずいことになった。あの時に話しかけてきた例の男子生徒達と少し話をして、どこかへ連れていかれた詩織さん。さすがにないと思うが、万が一もある。何よりそういうことじゃなくても嫌なのだ。見てたら胸がキューってなってしまう。詩織さんには悪いが、少し後をついて回った。完全にストーカーと言われても仕方ないのだが。

これが告白だったりしたら私の精神が死ぬのは確かなのだが、まずいことに男子生徒たちはいやらしく詩織さんへと手を伸ばしていた。詩織さんの顔を見る。泣きそうだ。間違いなく我慢している。これはまずい。先生へ報告したいところだが、それでは遅い。致命的に遅い。最近勇気を振り絞った後なのにまた振りしぼれとは神は私を見捨てたのかと嘆きそうになるが、それでも、友が、親愛な友が涙を流すのだけは見たくない。なら、どうする?勇気がない?なら簡単だ。

 

「お、お前たち何してるんだぁ!」

 

命を燃やせ。さして大事でもないただの小童の坊主のたかが1年ぐらいの命の光だ。こんなもん今はいらない。

かなりの大声で突撃をかましたが、最初は驚愕を顔を浮かべていたが、来たのが私だと分かったからなのか、いやな笑顔を浮かべて近づいてきた。

 

「なんだぁ?お前かぁ?今更友達気取りか?瀬名さんはさぁお前とは友達じゃないって言ってたぜ?なぁ?」

 

そんな悪党丸出しのセリフは私に発したあと、その嫌な顔を詩織さんに向けてなぁ?と問いただした。詩織さんはとても苦しそうな悲しそうな顔で首を縦に振った。

 

「ほら、そんなわけだからよぉ。赤の他人はどっか行っててくれね?これから俺たち楽しむからさ。」

 

いつもだったら逃げていただろう。私、いや、俺。ただ、今日は生憎運が悪い。もちろん相手側のことだが。

 

「だから?」

 

そう、俺は今命を燃やしている。普通なら絶対動けない状態であれど今は違う。体を動かしている燃料自体が違う。

 

「俺はまだ詩織さんの口から聞いていないし、そもそも逆にあんな悲しそうな目で友達じゃないって言われて信じ切れると思う?」

 

まあ、俺には無理だな。

 

「そういうわけだ。だから俺は来た。」

 

見栄っ張りでもいいから詩織さんだけは守りたい。でなければ俺がここに来た意味がない。

ま、そんなこと行った時から男子生徒達からは、笑みを消して臨戦態勢に入った。だけれど、俺だって男だ。やってやる。

 

「今日の俺は阿修羅すら凌駕する存在だ!」

 

「消えろ!」

 

俺の戦いはこれからだ。

 

―――――――――――――

 

当たり前だが、惨敗した。それはそうである。どう考えても体を動かしたことのない貧弱な一般市民が明らかに喧嘩慣れした奴らに勝てるというのか。それでも勝てるやつはいるらしいが、一握りの人間か、小説に描かれた人物だろう。

今はあの闘った場所に寝転がっている。隣には少し泣きかけている詩織さん。最近ずっと泣きかけているなぁ詩織さんと思った。

 

「大丈夫ですよ。あまり痛くありませんでしたし。」

 

嘘である。どう考えても倒れている時点で耐久値はもはや20も残っていない。それでも安心させたい。男としての最後のプライドである。

何より収穫があった。これは言わないが、やっぱり私はそうだったんだなと。

 

「それおり帰りましょう」

 

ずっと口を閉ざしている詩織さんはその言葉に小さく頷いて校門へと向かっていく。今日はこんなこともあったのだ。私も体力が限界とはいえ、心にダメージを負ってしまっている可能性がある。というか今の時代にああいう輩がまだ残っていたという事実に少しばかり頭が痛くなる気がした。

無事に家に送り届ける。思っていたよりもというか、初めて知ったのだが、名家の娘さんだったんだらしい。これもあのオタ仲間から聞いた話だが、名家の娘さんは上辺だけの関係が多くて大変らしい。友達はもしかしたらいない可能性もあるとのこと。

ふと詩織さんの家を見る。人間関係って難しいだな。

 

―――――――――――――

 

あれから1年である。光陰矢の如しとは言うけれどこれはあまりにも早すぎると思うものだ。

あれからは少しだけ大変だった。詩織さんの家に招待されたり、一緒に帰宅することが多くなったり、私に向ける笑顔の数が多くなったり。本当に心臓に悪い。だけれど、やっぱりうれしい。周りからはあの事件以来なぜか尊敬のまなざしを向けらるようになって少し困惑気味だ。その縁もあって、同じクラスのみんなとは友達になれたと思っている。もちろん詩織さんも多くの友達を作っていた。

あの同級生たちは流石にやらかしたことが大きかったのもあるが、ほかにもいろいろなことをしていたせいでそのツケが回ってきたらしく、退学させたらしい。自業自得だと思っておく。

部活のことだが、やっぱり私にはあまり向いていなかったのか県大会の団体部門には出られなかった。個人戦には出れたのだが、2回戦負けだ。でも公式戦で一回勝てて私自身の成長を感じた。周りから見たら弱者の遠吠えみたいに聞こえるだろうけど、それでもうれしかったのだ。あとは後輩たちに任せようと決めた。部活のみんなもすっきりした顔をしていた。

それに、私たちは今日で卒業だ。

そう、早くも卒業式だ。実は今日私には一つの試練がある。一年前に気付いたこの気持ちに決着をつけるつもりだ。そして、卒業式が終わって後輩からのアーチを超えた先、そこで合流することになっている。そこで想いを伝えることにした。

例の仲間たちにはもうこのことを話していたりする。あんなに真に迫られたら流石に怖いものがあった。

 

「「「先輩方!ご卒業おめでとうございまあああす!!」」」

 

多くの後輩たちに伝統を残して私たちは学校を出る。後ろを振り返る。涙は流さない。笑顔で去るってみんなと決めたから。

 

さて、残りは私の最大イベント。ラスボスにして目指すべき頂き。歩を進める。そして視界に入る一人の女性。ここ一年は本当に楽しそうな笑顔を浮かべていた瀬名詩織さん。私の姿を確認するや否や手を軽く振って出迎えてくれる。その様子に軽く笑みを浮かべ、私も彼女の隣へ移動する。

 

「もう学校も終わりましたね。」

 

「ええ、そうですね。」

 

「時間が過ぎるのってあっという間ですね」

 

「そうですね。」

 

「…」

 

「…」

 

「詩織さん、私、伝えたいことがあります。」

 

「はい…」

 

「好きです。」

 

考えていた告白文なんて話しかけたとたんに忘れたのだ。でも想いだけは伝えなければと思った結果、先ほどの文なのだ。

ところで返事のほうなんだが、ずっと黙ったままだ。これは振られたと考えてもいいのだろうか。そう思っていた時に彼女の口から小さな声で聞こえたのだ。

 

ごめんなさいという声を。

 

ああ、そうか、振られらのか、残念。でもまあ、そうだよな。当たり前だ。だっていいところのお嬢様なのだから。あ、でも友達ではいたいなぁ。未練がましいかなぁ

 

「そ、そうだよね。こんな私から告白とかされても嫌なだけだよね。ごめんね。忘れて。」

 

結構早口で話してしまったようで、私さえ自分で何を言っているのかわかったもんではない。

 

「でも、さ。こんな私かもだけど、友達のままではいてほしいな。」

 

ああ、これはひどい男だ。だけど、ああ、思考がぐちゃぐちゃだ。泣きそうになる。ふと詩織さんを見る。何やら震えている。

 

「あ、いや、その、そういう意味のごめんなさいではなくてですね。」

 

そのまま私は固まってしまった。詩織さんの顔が、友達になってくださいと言った時と同じ、いや、それ以上に嬉しそうな顔をしていた。

 

「こんな、私、で、よけれ、ば、よろし、くお願い、しま。す。」

 

先ほどまでの自分の失態が勘違いであることであることで言うことに気付いて顔を赤くする。しかし刹那のうちに復活した。それはよろしくお願いしますという言葉。その言葉に込められた意味を理解したとき、彼は泣いた。

 

帰り道は言うことはもうないだろう。彼と彼女は手をつないで帰宅し、早くも両親の挨拶に行くほどなのだから。

 

―――――――――――――

 

ここは東京に存在する美代プロダクション本社。日夜アイドルの卵たちが切磋琢磨している。その中に少年からの告白を受けた少女、いや、女性がいた。彼女はこのプロダクションに入った時は友達は少なかったが、時間がたつにつれて、数多くの友達ができた。さらに言えば後輩もできた。

東京に出ていることに以前は不安を感じていたが、今は彼がいる。それが何よりも安心を与えてくれた。彼には話しておいた私のちょっとした力。話している相手の考えが感情として理解してしまうというもの。これがどうしても人とのつながりを拒否させてしまった。裏が見えてしまうのだ。少しばかり私自身私が怖った。でも、彼との出会いで変わった。

あそこまで裏表があまり見られない人は初めて見た。すこしばかり裏はあったが、その裏はなにより、私を心から好き好んでいた感情。今まで性とかそっちばかりの目線しかなかった私の心は彼にべったりとなってしまった。さあ、帰ろう彼の待つ家へ。きっとケーキを買っているだろう。だって彼が記念日を大切にする男だと知ったのだから。

 

「ただいま。」

 

「おかえり。」

 

「あら、今日も買っているのね」

 

「だって、ほら、今日って付き合い始めて一年でしょ?ケーキだけじゃなくて食事も少し凝ってみたんだ。さあ食べよう?」

 

「そうね」

 

「「頂きます。」」

 




ドルフロでカーチャンが来ねぇ!
スタリラで星4来ねぇ!
FGOは星4すらでねぇ!
最近あたり運が悪かったりする。

星4交換は賢王様にしました。
流石ですギルガメッシュ様


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