PERSONA5 ORIGINAL ~笑う骸と銀の蝶~   作:ウィーン-MK-シンくん

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7/18 or ?/? 始まりの小雪

 筋肉。それは人間が己(おの)が肉体で作ることが出来る、最高の芸術(アート)だと私は思う。

 特に、十代半ばから二十代の男性が形作るソレは者にもよるが国宝にさえ成りうる。

 

「うん……出来た」

 

 私はそこで一息吐いて、筆を置いた。

 私の目の前には足つきの画板と、それにたてられた一枚の絵画があった。

 

 

 我ながら良いモノが出来た、と私が紙面に再現した芸術に浸っていると不意にその背中から声をかけられた。

 

「小雪」

 

 振り返るとそこには私の同級生兼(けん)仲間の、喜多川祐介(きたがわ ゆうすけ)が立っていた。

 

「喜多川くん、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないだろう。時計を見てみろ」

 

 へ? と私が間の抜けた声を出して時計を見ると、それは18時30分を示していた。

 これには素直に驚いた。先ほど昼食を済ませたばかりだと思っていたらもうこんな時間になっていたとは。

 窓の外に目を向ければ、確かに茜色の空が広がっていた。

 

 

 

「向こうは既に男子二人が着いてるそうだが、どうだ。出れそうか……?」

「だいじょうぶ……って言いたいところなんだけど、私はこの画材道具を片づけたら美術室(ここ)の鍵も職員室に返さなきゃいけないし、もう少しかかるかな。あ、でも喜多川くんはもう出れるんだよね? 待っててもらうのも悪いし、先行って」

「それには及ばない」

「え?」

「此処の片づけも戸締りも、後は俺がやっておこう」

「いいの? でも、やっぱり悪いし」

「まだ集合時間までは幾分かあるし、問題は無い。加えて言えば、男と違って女子の準備は何かと時間がかかるものだろう…せっかくの花火大会だ。余裕を持って行くと良い」

「んー……わかった。ありがとう、喜多川くん。向こうに着いたら何か奢るね」

「おお! それならオジヤを頼む。以前の鍋では食べ損ねたからな」

「うーん、出店にあるかわかんないけど……うん。わかった、探してみるね! それじゃあ、またあとで!!」

「ああ、楽しみにしているぞ」

 

 

◇◇

 

 喜多川くんと別れた私は今、地下鉄の電車で渋谷駅前にある和服レンタルショップへと向かっていた。

 あの後すぐに今回共に参加する女子メンバーの一人である高巻杏から連絡を受け、もう一人の女子メンバーである新島真を含めた三人で浴衣の着付けに行くことになったのだ。

 7時前というこの時間は普段それほど混む時間帯ではないのだが、花火大会の弊害か今日は酷く混みあっていた。

 

 電車が目的地に到着すると、私は人の波に抗いながら保々の体でどうにか無事に電車を降りることが出来た。その後は中央改札を出てブチ公像の前に目を向けるとちょうど今(いま)談笑していた杏と真が自分に気づいて手を振ってくれているのが見えた。

 

「ごめんっ、お待たせ!」

「ううん、私たちもいま来たところだから、気にしないで。ね? 杏」

「そうそう! みんなの集合時間まではまだあるし、こんなの遅れた内にも入らないって」

「……ありがと」

「――それじゃあ、行きましょうか」

 

 

 

 

 

 ――夜7時30分 渋谷駅前

 

「おっせーなー、アイツら。なにやってんだか」

 

 髪は金髪に染め、赤い無地のTシャツを着たいわゆるヤンキー風の少年は溜息混じりそんな愚痴を零した。

 

「そう言うな竜司。女子の準備は時間がかかるものだ」

 

 そう言って少年を窘めたのはしっとりした青髪と浴衣姿の映える日本男児、というかよく見れば先ほど学生服で小雪と別れた喜多川祐介だった。

 しかしそんな祐介の言葉にその少年、坂本竜司は我が意を得たりといった風に顔を輝かせてしまう。

 

「なら少しくらい先に見て周っても良いんじゃね? 俺もう腹減っちまったよ」

「待て。たった今集合時間を過ぎたばかりじゃないか、入れ違いになったらどうする?」

「少しくらいダイジョブだって! ほんの5分だけだからっ、暁! お前も行くだろ?」

「いやー……ハハハ」

 

 話を振られた黒ぶち眼鏡の素朴な少年、来栖暁は苦笑いでやんわり断る。

 

「んだよー、二人ともつれねえなぁ。っとオあアッ!!! 美人なお姉さん方発見ー! スイマセーン!! そこのお姉さんガター!!」

「おい竜司ッ――…… あっ」

 

 二人の男子に同道を断られた竜司は一度は諦めモードに入っていたものの、次の瞬間横目に浴衣美人二人を見つけると声を上げて走り出した。

 祐介は当然これを止めようとしたが此方(こちら)も浴衣美人三人を発見し、固まってしまったためにそれは叶わなった。

 しかし、それは竜司と同じように欲望めいた理由からではなく――もっと別の理由。

 自分が止めるまでもなくあの馬鹿(竜司)を止めるのに一番適した人物を、その中に見つけたからだ。

 また、竜司も次に聞こえてくる声にはまるで瞬間冷凍されたように固まってしまうこととなる。

 

 

  “竜ちゃん……なにしてるの?”

                 」

 

 

 傍(はた)からその声を聞いた祐介と曉は足早に「竜ちゃん」から距離を取り、今しがた到着した女子三人のうち二人の影に隠れると、「竜ちゃん」に声を掛けた最後の浴衣美人が坂本竜司へと迫る。

 そう、「竜ちゃん」とは竜司のことである。これのみを聞けば、世の大多数の男共は羨む状況なのだろう。

 だがもし今の状況だけを見て代わってくれと申し出る男が居れば、竜司は全力でそいつと代わってやりたかった。

 しかし祐介と暁は現状の本質を理解しているため、竜司自身から頼まれてもそれに応じることは出来ない。

 そんな二人が今の竜司のために出来る事と言えば、ただ目を伏せてその姿を見ないようにしてやることだけだった。

 

 

「付き合ってまだ1ヶ月(ひとつき)も経ってないのに、さっそく浮気?」

「こ…、小雪? いやコユキサンっ?! 違うんだ。これは――」

「歯ァ食い縛れ♪」

 

 

 

 ――パーン、パンパーン!!!

 

 

 その後、花火大会は急な大雨で中止となったため打ち上げられたのは三発のみであったという。

 

 

 

 

 

?/?

 

 

「つまり貴方たち怪盗団はメジエドの件とは別に彼女、佐倉双葉の心を救うべく本人の依頼を受けてその心を盗んだということね?」

 

 新島冴検事は自身の尋問に答える目の前の男をまっすぐに見据えながら考える。

 

「(やはり彼がまったくのデタラメを言っているとは思えない。もっと詳細に話を訊く必要があるか)」

 

 今回の取り調べにかけられる時間で次に話す案件は訊く予定になかったのだが、この際少しぐらい長引いてでもこの件を彼がどう認識しているかは訊いておいた方が良い。

 冴はそう考え、さっそく話を切り出した。

 

「それじゃあ次の質問よ。この写真に写る女の子に、見覚えはあるかしら」

 

 冴がスーツの懐から取り出して彼の前に置いた一枚の写真には、艶やかな黒髪をお下げにしたどこか儚げな印象を抱かせる一人の女子高生が写っていた。

 

「織田小雪。元(もと)秀尽学園の生徒で、今は洸星高校に二年生として在学してるけど……この娘も怪盗団の協力者ね」

 

「ッ……!」

 

 確信を持っているように思わせる冴の声音に、一瞬ではあるが彼の体が震えを見せる。

 

「(…この反応を見る限り当たりのようね)」

 

 そう考えた冴は彼との距離を縮めるべく、互いを隔てる机に身を乗り出すようにして問い詰める。

 

「聞かせてもらえる? 貴方たちとこの娘の間に、何があったのか」

 

 ――話しなさい。

 




 この度読者の皆様には突然の失踪でご迷惑をおかけいたしました。ツイッターとも関連付けたかったので一時退会をさせていただいた次第です。

 今まで投稿していた分は今日中に上げますので、よろしくお願いします(´・ω・`)
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