校長室
「おぉ、よく来たの!さ、入った!入った!」
脅しといて、よく言うこの白爺、と心の中で呟き、おもむろに、嫌そうに、ダンブルドアの方へ歩く。
もし、この場にマクゴナガル教授がいたなら、とてつもないお叱りを受けそうなほど、ふてぶてしく校長室に入っていく。
「さて、まぁまずは、座るといい。ほれ、レモンキャンデーをやろう」
そんなミーシャの態度に、一切かまうことなく、ダンブルドアは、マイペースにいすと飴を差し出す。
ミーシャは、差し出されたいすに座り、飴を拒む。
「それで、校長先生。合格って何のことですか?そもそもなんで私は、特別レッスンを受けなければならないんですか?」
「それは、君がほうきを壊したから…と言いたいところじゃが、もちろん、ほかにも理由がある。だからそんなにに、睨みつけるでない。」
ニコニコとした相貌は崩さないままだが、笑顔の奥の瞳が一切ぶれることなくミーシャを見つめる。
「君のおばあさんの予言はもう聞いておるの?わしは、あの予言が本物だと確信しておる。じゃから君とハリーは様子を見つつ、この学校で守っていこうと思うとったのじゃが……今回の箒を見て、気が変わった。ミーシャ、君は充分、自衛の技を得ている。それも、恐ろしく威力の高いものをじゃ。学校までの1月弱よほど密度の濃い、効率的な訓練をしたんじゃろう。よぉく、この壊れた箒から伝わってくる。」
ミーシャはここまで聞いて、少しダンブルドアを侮っていたことに気づいた。魔法界とのつながりを絶って生きてきたミーシャにとってダンブルドアというのは、ちょっと有名な爺さんでしかなく、凄い人というイメージがない。
そんなおじいさんの言うことなど、所詮老人のたわごとと思っていたのだが、あの初級魔法ひとつでここまで自分の秘密にしている自衛の魔法のことをいともたやすく見通してきたことに対し、ミーシャは素直に評価を改めた。
「しかしじゃ、その技も闇の魔法使い相手に通じるかといわれると、微妙といわざるをえんじゃろう。そこでじゃ、わしと個人レッスンをすることで、お主の魔法を更に磨いて実用性を高めていこうと思っての、守る体操が自衛ができれば、わしはもっと大掛かりな保護ができるし、もしものときに動ける力は君もほしいじゃろう?」
「それは………」
確かに、ミーシャの魔法はとても高威力。だが、まだ隙や、無駄が多く、学生同士ならともかく、経験をつんだ大人の魔法使い相手、とくに、人を傷つけ楽しむような傷つけることに長けた魔法使いには、まだまだ及ばないのだ。
ミーシャは悩み、いろんなものを天秤にかけた末に、
「ほしいです。力が」
その答えを聞いたダンブルドアは、顔のしわを更に深くすると大仰にうなづき。
「よし、それなら善は急げじゃ!ほれっ!」
ダンブルドアが杖をひょいッと振ると、校長室の本棚が回転し、扉がせり出てきた。導かれるまま扉をくぐると、そこには、だだっ広いスタジアムが存在していた。
あまりの衝撃に、ミーシャが固まっていると、
「製作期間は丸二十年。ここで校長をやる前から作っていた、拡張空間移動扉を利用した特設訓練施設じゃ」
また次登校する時会いましょう