フレンダ=セイヴェルン生存記   作:大牟田蓮斗

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と、投稿日時間違えてることにさっき気づいたとか、そんなことないんだからねッ!

……申し訳ありません。まさか、うっかりで週一投稿のリズムを失うとは。どうぞ。

※曜日感覚がズレていたようです。まだ毎週投稿でしたね。


成辺るん、誕生

「へえ。大変ですね、この時期に学園都市に来るなんて」

「うん。私もそう思うんですけどね。親に今はむしろ学園都市の方が安全、と言い張られてしまって」

 

 鯖缶料理をせっせと口に運びながら、私と友達――佐天涙子は会話を弾ませる。

 まずは私のバックボーンを紹介。全て捏造した嘘設定だが、こうして何でもないように告げればわざわざ疑いもしないだろう。

 私が監禁治療されている間に、この世界は大きく変わった、というか大波乱が起きたらしい。第三次世界大戦。想像を絶するものだが、なんとたったの十二日で終結を見たそうだ。

 さしもの学園都市もその騒乱の情報を正確には掴めておらず、いまだに嘘か誠かも分からない流説が跋扈している。それはもういっそのこと都市伝説と言っていいほどに実体が分からなくなっているものだ。

 そして、私の脳内での友達ファイルには涙子は都市伝説()であると登録されている。

 

「あ~、確かにそれは言われますね。元々はロシアが学園都市に宣戦布告したのが原因なのは事実ですけど、対国家戦でこの学園都市は大して被害出てませんもんね~」

 

 これは()で一般的に広がっている、これは事実と認められている情報だ。()を知る者からすれば、確実に何かしらの()が隠れていると勘繰らざるをえないが。

 うずうずしているので、涙子に水を向ける。

 

「色々と都市伝説もあるみたいですしね。中々面白いものには出会えませんけど」

 

 涙子は向けられた水を得て、魚のように口を激しく開閉した。

 

「そうなんですよ! 中々サイトを巡っても面白い情報には出会えないしで、もう都市伝説ハンターとしてはつまらないのなんの! 噂では、実はロシアは裏から操られて~、っていう陰謀論が多いんですけど、その黒幕も話によってイギリスだったり、イタリアだったり、フランスだったり、実は学園都市からのマッチポンプなのだ、とかもあって。あ! 面白かったのはあれですね、『キリスト教黒幕説』! 科学を発展させて生命の神秘にも迫る学園都市の技術がトクシン的だー! って理由らしいですけど。でも、第三次世界大戦は本当に短かったのにそういう話(都市伝説)に事欠かないんですよね! 例えば、空に浮かぶ要塞が現れただの、いきなり夜になった、とか隕石がたくさん降ってきた! とか。実際にはどれも証拠が一切ないんですけど。でもそれって逆に怪しいですよね! そもそも都市伝説ってのには生まれる原因があると私は思うんですよ! なのに、その原因すら分かってないのが、正に正統派の都市伝説って感じで! そもそもロシアも学園都市もまだ戦えるのにあんなに短期間で終わったりだとかも怪しさが、こう、ぷんぷんします! さっきの都市伝説が実は真実で、それを隠すために学園都市とロシアは戦争を終えて工作をしたとか。果てにはそもそも隠すことが目的で、戦争はそのカモフラ―ジュだったとか!」

 

 すごい目を輝かせてダラダラと語ってくれる。実際は都市伝説など調べたこともないが、やはり友達は良いものだ、たったのこれだけで大した労力もなく情報を手に入れられた。

 都市伝説には生まれる温床が存在する。それは事実だと思う。学園都市に蔓延る噂の類、それらは基本的に()からほんの少し漏洩したものが原因なのだ。

 例えば、レールガンのクローン。確かに、あんなことをすれば宗教は目くじらを立てもするか。

 さて、対外的には目を丸くして驚きを演出する。

 

「それは面白いですね」

「あっ、すみません。いきなりまくしたてちゃって……」

「いえ、気にしないでください。私も聞いていて楽しかったですから」

 

 頭を掻く涙子に手を振る。

 さて、次に手に入れたい情報は常盤台についてだ。都市伝説とゴシップは似て非なるものだが、どうせ涙子のことだ、ゴシップ面も詳しいだろう。ならば屈指のお嬢様校である常盤台についての情報も持っているはず。特に同じ中学生なのだから、少なくとも興味のなかった私よりはマシなはずだ。

 

「それにしても、物知りなんですね。私なんか最近ここに来たばかりで、本当に何も知らないんですよ。これから自分が入る学校のことすら知らなくて……」

「それは大変ですね。どこなんですか? 確か、三学期から転入って言っていましたけど」

「えーと、常盤台中学校、ってとこらしいです。全寮制の「え、ええええええ!!! 常盤台! 常盤台ですか!?」

 

 ビンゴ。常盤台の名前を出しただけでもこれほどに食らいついてきた。この反応なら一端覧祭でも行って来たに違いない。たとえ外から見ただけの感想でも、十分な情報である。

 

「え、ええ。そんなに有名なところなんですか?」

「そりゃもちろん! 学園都市でもトップ五に入る学校です! その寮も、『学舎の園』っていう男子禁制の区画にあって、世の女子の憧れの的なんですよ! すごいお嬢様学校で―――」

「ええ!? お嬢様学校なんですか!? 私みたいな庶民が入って大丈夫なんでしょうか……」

 

 敢えて言葉を遮って慌ててみせることで、明らかな庶民感を演出する。この、可愛い子ぶった女子のような、でも自然のものだと思わせられるような絶妙なラインの演技をする。

 涙子は指を一本立てて、ドヤ顔をしてみせた。

 

「と、思うでしょう? でも、案外お嬢様学校って言っても普通の人……、普通じゃちょっとないかもしれないけど、良い人がいっぱいいるんですよ? 私の友達にも常盤台の人は何人かいるんですけど、みんな良い人で、すごい頼りになるんです」

 

 おお。これは望外の成果だ。まさか、涙子のような一般人に常盤台の知り合いがいたとは。しかし、これはもっと具体的な生活の中身が聞けるかもしれない。

 

「知り合いがいるんですか、お嬢様学校に。すごいですね。でも、やっぱりお嬢様なんですか? こう、『ですわ』とか『わたくし』とか使うみたいな」

 

 ふんわりとしたブルジョワー、みたいな印象を伝えておくことで、より庶民であることを強調する。

 涙子は少し悩んでから答えた。

 

「うーん……。婚后さんも湾内さんも泡浮さんも白井さんも、言われてみれば……。あ、でも御坂さんみたいな人もいますし、多分全員が全員そういうわけじゃないと思いますよ!」

 

 何、だと。涙子の知り合いとは、まさかレールガンか。というか、やはりレールガンが異端か。

 

「え! 御坂さん、って、もしかしてあの第三位の……?」

「はい、そうですよ。やっぱり、御坂さんは有名だな~、入ってきたばっかの人にもう知られてますし」

「え、ええ。能力開発の極致として紹介されました」

「流石だな~。……って、常盤台に入れるって、能力者なんですか!?」

「ええ、まあ。能力というものがいまだよく分かっていませんが……。一応、レベル三? に分類されたみたいです」

 

 さあ、どこまでならできるか。涙子の性格なら、間違いなく―――

 

「見せてください! 私、能力開発に行き詰ってて、でも何か見たら、こう、インスピレーションがビビッと……」

「来るかもしれない、と?」

「はい!」

 

 ジェスチャーを付けてビビッを表現する涙子。別に私は電波を発するわけではないからそうはならないと思うのだが。あ、AIM拡散力場は放っているか。

 私は右手を上げる。集中する。補助演算機なしでやるのは久し振りだ。あれがないと戦闘などの激しい行動中だったり、遠距離になったり、死角だったりへの能力使用はできないのだが、この程度なら問題ない……はずだ。

 目を見開き、目標物を視認。涙子は目をキラキラさせてこちらを見ている。これで失敗はできない。

 息を吐き、吸うのと同時に能力を使用。クローゼットの上に置いてあった写真立てが、次の瞬間にはトンと私の手の上に落ちた。

 息を吐く。同時にただ一人の観客からパチパチと拍手が上がった。

 

「すごいです! えっと、アポート? でしたっけ」

「はい。ただ、見えている範囲のものでしかできないんですけどね」

 

 苦笑する。それでも涙子は変わらず目を輝かせていた。

 

 (二つ隣の部屋)に帰り、ベッドに身を投げ出す。涙子に手伝ってもらったおかげで、既に諸々の設備は整っている。

 

(やっぱり、心が痛むな)

 

 友達を騙している事実。私の中でキャラを演じることは騙す内には入らない。キャラをインストールした自分なのだから。仮面を着けたところで演者が変わるわけではない。でも、こう思い切り嘘を吐くのは胸が苦しかった。

 あの日、涙子は私のために鯖料理を作ってくれていたはずだ。今日鯖缶に手を伸ばしたのも、そのときに思い出していたのも私のことだ。そんな存在に自らの存在を明かせないのは哀しかった。

 

(ま、友達を売った私が言えることじゃない、か)

 

 後でアイテムに戻るため、一旦生き残ってまた皆に会うためとはいえ裏切ったのは最悪の選択肢だった。あのときは最悪の選択肢しか残っていなかったのだが。

 私は枕に頭を押し付け、どうやって麦野と和解しようか、どうやって麦野から潜伏しようか必死に考える頭を休ませる。

 今は、取り敢えず目先に迫った選択をするとしよう。

 私が悩んでいるのは、帰り際の涙子の言葉だ。

 

『あ、そういえば、名前聞いてませんでしたね』

『あ、確かに、そういえばそうですね。私は成辺るんです。成功の成に、水辺の辺、平仮名でるんです』

『私は佐天涙子、えっと、人偏に左と天空の天で佐天。涙の子で涙子です』

『では、これからご近所さんとしてお願いしますね。冬休みに私が寮に入るまでの付き合いになりますけど』

『こちらこそお願いします。―――ところで、私の友達と会ってみませんか?』

『友達?』

『はい。さっき言ってた常盤台の友達です。そうですね。御坂さんと白井さんのペアか、婚后さん、泡浮さん、湾内さんのトリオか。どっちがいいですか?』

『えっと、御坂さんが第三位の方で、白井さんがテレポーター、婚后さんが風使いで湾内さんが水使い、泡浮さんが浮力使いでしたよね。……うーん。それならまず三人の方から会ってみたいです』

『了解です! 後で予定合わせましょうね!』

 

 というものだ。

 正直、入学前に常盤台に橋頭堡を築けるのはありがたい。しかし、この流れだとすぐにレールガンとも会う羽目になりそうである。

 常盤台における最重要項目はレベル五との非接触だ。レベル五というのは、総じて人間を超えている。能力だけではない、その神に愛されたかのような肉体と精神は要注意だ。一度会っているレールガンは第六感的な何かを働かせて気づいてくるかもしれないし、もう一人は精神感応系の最高峰、記憶を読まれた日には終わる。

 確かな足音を持って近づいてきているような気がする破滅から目を背けて、私は眠った。

 

▽ ▽ ▽

 

「で、ここがフレンダが借りてた倉庫の一つね」

 

 街中にある倉庫群の中、一つの貸倉庫の前にある集団が立っていた。茶髪の美女、小柄な茶髪の少女、そして金髪の青年。

 彼らはかつての仲間、フレンダの遺した私物から二十三か所もの倉庫の利用明細が見つかったのだ。それらはいまだ解約されておらず、費用は口座から自動引き落としされている。

 彼らはフレンダの遺品を探しに、その倉庫を探しに来たのだ。

 一つ目の倉庫が、ここであった。街中に突如現れたように見える倉庫街だが、この学園都市では研究施設やら倉庫やら工場やら、それらが放棄された廃墟などはさして珍しくもない。一本路地に入れば、無計画に見えるほど乱立されたコンクリートに圧倒されるだろう。

 彼らは、そのフレンダが借りていた倉庫の周囲をぐるりと回った。そして、気づく。

 

「あれ? この倉庫、入口が超ないですね」

「確かに妙だな……」

 

 小柄な少女が首を傾げ、青年が同意する。だが、美女は違う反応を見せた。

 

「ええ、そうね。人が通れるような場所はなかったけど、物が通りそうなところならあったわよ」

 

 髪をかき上げて呟く。相変わらずのことで、と青年は苦笑した。

 彼らは最初の遺品探しということで、何があるかは分からないので、預かっている故人の妹は拠点に置いてきていた。そしてその付き添いに二人。彼らは本当にこの人選で良かったのか不思議に思っており、早く用事は済ませてしまいたかった。

 美女の案内で壁を伝って戻る。そしてしばらく行くと、光の加減やらで見えづらくなっているが、確かに開く箇所があった。だが、そのサイズは精々大きめの段ボール箱ほど。小柄な少女でもギリギリ通れなさそうであった。……彼女はそこまで柔らかくないのだ。

 

「超どうしますかね。入り口がここしかないなら、超手詰まりですよ」

「だが、フレンダはどうやってこの倉庫使ってたんだ?」

「そりゃ能力に決まってるじゃない。てか、浜面どいて。穴開けた方が早い」

 

 先程と同じ構図のやり取りがなされ、話の流れから、浜面と呼ばれた青年が脇に避けた。

 茶髪の美女の周囲に光の塊のようなものが浮く。美女が指を振れば、その塊はビームのような軌道を見せて倉庫の壁を突き破った。

 そうして出来た穴から、ずかずかと美女は倉庫の中へと入る。それに浜面と少女も続いた。

 倉庫に侵入した彼女たちを出迎えたのは、一台の機械であった。

 

『倉庫内への入庫者を確認。本日はどうかなさいましたか』

 

 その黒い機体の上部にはディスプレイが存在しており、そこから何やら操作ができるようであった。だが、美女がそれを操作する前に少女が気づいた。

 

「て、それ超血塗れじゃないですか!」

 

 この超は実に意味通りのものであった。本来はただの機械の無機質な鉄色をしていたのだろうに、血に塗れ全体が赤黒くなってしまっているのだ。黒いのは機体ではなく、機体を染めた血であった。

 

「床も、血だらけだぞ……」

 

 浜面が慄く。美女はそれらを眺め、自分たちが入ってきた方向を眺め、例の小さな搬入口と思われる箇所にも内側から血が付いていることに気づいた。また、機械のマニピュレータにも。

 美女は少女の声で一度中断した操作を行う。そして、顔を顰めた。

 

「これ。最後の直接操作履歴が暗部抗争の数日後になってる」

「何!?」

「ちょ、それ本当ですか、麦野!?」

 

 この倉庫、彼女たちですら昨日知ったばかりなのだ。そして、外から中に入れるとはあまり思えない構造をしていた。

 殺害後の操作履歴、血塗れの機械とマニピュレータ。血を垂らしながら進んだ趣きの床。そこから外に出されたのであろう、擦過痕の残る搬入口の血痕。麦野という名前の美女が誇る、その天性の脳を使わずとも自ずから答えは出る。

 浜面が言葉を漏らす。

 

「てことは、フレンダは生きてる……?」

 

 麦野はそれに応えず、床の血痕を辿る。いきなり何も言わずに大股で歩き出した麦野に少女が追従する。浜面は機械を操作し、この倉庫の概要を知ろうとしていた。

 麦野の歩みは、そう長く続かずに終わることになった。血痕が途切れたのである。だが、床の血痕の形が歪であることから、麦野は上を見上げる。

 追ってきた少女は釣られて見上げ、様々な棚に整然と様々な銃火器やら何やらが並べられていることに漸く気づいた。

 

「なッ……」

「―――絹旗、下から四段目、あの棚の端に血が付いてる。あそこまで飛ばしてくれない?」

 

 余りにも冷え切った麦野の声に、少女――絹旗は無言で頷く。

 絹旗は自らの能力を用い、麦野を抱えて、投げ飛ばす。

 麦野は右手で四段目の棚を掴み、片手で自らの身体をその上に引き上げた。そして呟く。

 

「どうやって……? いえ、でも、そんな……」

 

 茫然自失の麦野に、下から声が掛かった。

 

「麦野ー! 取り敢えず、帰るぞ! ここには武器しかねぇ!」

 

 それを聞き、一つ疑問が解消したかのように目を見開き、麦野は棚から下へと飛び降りた。着地の際に真下に能力のビーム(正確に言えば、七面倒臭い能力)を放ち、速度を減衰させて無事に降りる。

 麦野は浜面と絹旗を眺めて言った。

 

「帰ったら、私が知ってるフレンダの情報を全部話すわ。フレンダは、……生きているのかもしれない」




成辺るん、明らかにセイヴェルンからの偽名ですね。因みに、これを決めたのは冥土帰しではなくフレンダです。

それと、フレンダの能力ですが、アポートではありません。空間移動系能力ではありますが、本来ならばレベル四ですし。つまり、あのアポートは能力で可能な範囲の偽装工作ということですね。
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