黒く染まった太陽   作:ノリの人

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まずこの作品の一夏はヒーローではありません。
どちらかといえば復讐者としての面の方が強いです。
さらにいうなら今回の件で別の不満も結構爆発しやすくなってます。
つまりは後半一夏の愚痴回です。
なので結構雑です。前回と前々回と同じ様なクオリティは期待しないでください。


新生―awaken―

その日、篠ノ之束は人生で初めて織斑一夏からの電話を受けた。その事実に束は喜び、そして何故自分に一夏が連絡を取れたのか疑問に持つがそれは千冬にでも聞いたのだろうと納得し、そこで思考を止めてしまう。

 

「もすもすひねもす〜、いっくんから電話とは珍しいね〜」

 

「あ、束さん?悪いんだけど、白式の事で相談があってさ。ほら、一応二次形態移行(セカンドシフト )機だから改造とか改修とか結構倉持の人達とかでも分からない事が多かったから見てもらえないかなって思って」

 

「ほーほー、白式についてかぁ。いいよ、他ならぬいっくんの頼みだし」

 

「時間もかかると思うから束さんの方から迎えに来てよ。俺がそっちにお邪魔するからさ」

 

後に全ての悲劇の観覧を終えた篠ノ之束はこう語る。この時、自分が一夏をラボに引き入れなければこれ程までの悲劇と地獄は生まれなかったと。

 

「(まどっちがいるけどまいっか。いざとなったら私が止めるし)いいよいっくん。じゃあ1時間後にアリーナで待っててよ」

 

束はここで電話を切り、一夏を迎えに行くためにおきまりの人参ロケットに乗り込む。

 

この時束は2つのミスを犯していた。まず1つはクロエという守るべき人間のいる自分の城へ一夏を招き入れてしまった事。そしてもう1つはマドカの新機体にかかりっきりで箒や一夏の監視を怠った事だ。しっかりと監視をしていれば電話の向こうの一夏の表情を見ることが、彼が自分に電話をしてきた真意を図ることができたであろう。

 

 

通信を挟んだその対岸にある一夏の顔は今までの彼からは想像もつかない程、悪辣で歪んだ嗤いを浮かべていた。

 

 

 

 

__________________________

 

 

 

 

 

約束通りアリーナの中央で待っていた一夏の元に人参ロケットが着陸し、束が姿を現した。

 

「やぁいっくん。臨海学校以来だね」

 

「そうですね。あの時以降は全く会ってませんし、あの時もちゃんと話してなかったのでちゃんと話したのって今までなかった気がします。昔も束さんは忙しそうだったし」

 

「あの頃はISの1号機の製作に忙しかったからねぇ。ま、今こうやって面と向かって話せてるし束さんとしては嬉しい限りだよ」

 

「そうですね。取り敢えず詳しい話は向こうに行ってからしましょう」

 

そうして織斑一夏はIS学園から一時的にではあるが姿を消した。

 

 

 

 

__________________________

 

 

 

 

 

「いっくん、ここが私の今のラボだよ」

 

束は一夏に自慢するように両手を広げ、その大きさと規模を見せる。

 

「これだけの設備と場所よく手に入りましたね」

 

「亡国機業から今は色々と出資してもらってるかねぇ」

 

「…今のは聞かなかった事にしておきますよ」

 

テロリストである亡国機業からの出資。つまりそれは束が亡国機業にその身を置いているという事であり、そんな事が知れれば一大事であるが今の一夏にとってそんな事はどうでもいい事だった。

 

研究所を

 

「それでいっくん、束さんに頼みたい要件って何かな?」

 

「白式いらないんで新しく側だけ作ってください。勿論細部に関しては俺の指示に従ってもらいますけど」

 

「へ?」

 

 

 

「あれ、聞こえませんでした?だから白式の側を新しく作ってくださいって」

 

一夏の口から出た言葉というか一夏の雰囲気の変わりように束は驚きのあまり固まる。

 

「もう一度言ってくれるかな。今なんて言って…」

 

その言葉が受け入れられない束はもう一度一夏に何と言ったか聞く。だが何度聞いても一夏の口から出る言葉は変わらなかった。

 

「だからさぁ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…は?」

 

次の瞬間、束の視界は180°反転する。自らの体に何が起こったのか、天災である彼女でさえそれを理解するのに数瞬を要した。そしてその数瞬で全てが終わる。彼女は頭から地面に叩きつけられ、組み伏せられた。

だが悲しいかな。常人ならば意識を失っているところではあるが彼女の細胞レベルでハイスペックな体がそれを許してはいなかった。彼女は頭と首の痛みにのたうち回りながら組み伏せられ、会話をさせられることになる。

 

「あのよぉ、テメェは多分把握してねぇと思うんだが昨日お前の妹がやりやがったんだよ。俺も俺に被害が向くならいいけど流石にこれは見過ごせないんだわ。だからテメェの妹ぶちのめす為に俺の機体を新しく作れ」

 

「どういう…」

 

記憶とは全く違う口調で、されども記憶にある声でそれは束に対して囁く。

 

「ワカンねぇかなぁ?俺テメェにお願いしてるんじゃない。やれって()()してるんだ。昨日の一件で既にテメェに対する俺の認識は()()()()()じゃなくて()()()()I()S()()()()()()()()にまで下がってんだよ」

 

「分かってないと思うけど束さんは細胞レベルでハイスペッ―」

 

だがそこから先の言葉は続かなかった。組み伏せられた束から一夏が離れた一瞬を見計らって脱出した。しかし今度は身構えていた束を一夏は先程と同じ様に束に何の抵抗をさせることも無く再び組み伏せた。細胞レベルでハイスペックである自分と半年前までただの一般人だった一夏の実力差に束は目を見開いた。

 

「細胞レベルでハイスペック、だっけ?バカかテメェは?今まで何を見てきたんだよ。そもそも何の才能もない奴が1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とかなんて出来るわけねぇだろうが?」

 

そして一夏はある意味残酷な事実を告げる。

 

「テメェは細胞レベルでハイスペックなだけだろ。俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだよ。ぬるい環境で強くなったつもりのテメェや姉と、死ぬレベルの環境を生き抜いて強くなった俺を一緒にすんな」

 

そもそも束と一夏では才能の伸ばし方が全く違う。束はオールラウンダーであり素のスペックでもそこそこ圧倒できる為、殆ど体を動かすことや鍛錬することなく研究しかしてなかった。

それに対して一夏は自分で言った通り、その才能は戦闘特化型。それに加えて亡国機業によるテロなどに対して自らの身を守る為に鍛錬は欠かさなかった。

 

それがこの状況を生み出した互いの差である。どんな玉でも磨かなければ(くす)んでいく。たった半年、たった半年の差がこの現状をうみだしたのである。

 

観念した束は一夏の命令通り機体を作った。一応ISの生みの親ということと一夏の監視、それと美味しい食事のお陰で2週間ほどで機体は完成した。

 

だがその機体はあまりにも異質だった。現行のISのスタイルを遡る様にして出来たそれは一夏の内面を写すが如く、黒く無機質なものだった。

 

「…ねぇ、いっくん。本当にこれでいいの?白式の方がいいと思うけど」

 

「これでいい。というかあの機体を作った奴は馬鹿としか言いようがない。いや作ったというか俺にあてがった奴か。あんなので取れるデータなんざ多分ラファールとか打鉄とかを使って得られるデータの半分を占めてたらいいくらいじゃねぇの。あんなアホな機体作るくらいなら簪の打鉄弐式の製作に人員回した方が効率的なレベルだ」

 

半年の間ではあるが自分の身を守ってきた白式に対して一夏は酷評を下す。そしてそれは止まることを知らず続いていく。

 

「無駄にエネルギーを使う機体で長く戦う為には技術がいる。それこそあんな近接ブレード1本だけの機体なら十分に使いこなせるレベルの技量なんざ国家代表以上。もっというならブリュンヒルデレベルだ。そんなレベルを求める程の機体を初心者にあてがう時点で何も考えてない。"あの姉の弟"="近接だけでもいける"なんざ思考停止を通り越して無能だ無能。中国の空間圧力、イギリスのビット、ドイツのAIC、ロシアのナノマシン。どこもオリジナリティ溢れるとまでは行かなくても相応の見栄はある。それに比べて日本のやったことが他人の猿真似って。アホだろ」

 

その後もしばらく続き、一夏は漸くスッキリしたのか終わる。

 

「コアだけは白式のコアを使うから移植を頼む」

 

束は言われた通りに白式のコアを移植し、漸く完成した。そして一夏はその機体を待機状態にして束と共にロケットに乗り込む。気不味い沈黙の中、一夏は口を開く。

 

「この後俺は箒を含めた5人をぶちのめす」

 

「…うん」

 

「楽しい思い出もたくさんあった」

 

一夏の口から出てきた言葉に束は一瞬驚く。

 

「ISが出来る前、箒とは道場で仲良く剣を交えあった。引っ越す前、鈴とは親友の様に、いや多分親友同士で笑いあった。セシリアとは初めは結構険悪だったけど仲良く飯食ったり、一緒に飯作ったりもした。シャルロットも初めは男として来て、俺以上に家庭のことで悩んでだけど今では笑って過ごしてる。ラウラなんてそれこそセシリア以上に険悪で殺されそうと思ったけど以外といいやつだって分かった。過去は変わらないってよく昔の悪事を咎めるみたいに言うけどさ、変わらないのは楽しい過去もだと思うんだ」

 

「それなら何で?」

 

「俺だって一応情はあった。でもあいつらは超えちゃいけない一線を超えた。それだけさ」

 

その言葉で会話は途切れ、再び沈黙が2人を包んだ。そしてロケットはIS学園に着き、開いたハッチから一夏は出る。その時一夏が小さく呟いた。

 

「ありがとう、束姉さん」

 

「えっ!?」

 

風に攫われたその言葉は束の耳に届くことはなかった。




一夏の愚痴はそのまま作者が一夏本人が置かれた状況に対して思っていることと捉えてもらって構いません。
そもそも一夏に専用機が渡された理由は男性としてのデータ取りの為です。データというのは幅があればあるほど良いものです。にも関わらず近接特化の機体な上に武装は近接ブレード1本で他には何も積めない。こんな機体で取れるデータはスラスターなどの稼働率と近接戦闘くらいです。
まぁ多く動くからこそデータが多く取れるというのもありますがそれでも盾ぐらいは持たせて欲しいところです。

次回は粛清回となる予定です。作者の心が持ちこたえられたら書こうと思います。
一応次回のタイトルだけ。

『捧ぐ―Heart burn―』
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