十亀は廊下に出ると、そのまま高専の出口へ向かった。
どうやら、次の仕事が入っているらしく、彼はそのまま外へと出た。そしてルンルンと鼻歌を歌いながら道を歩き、次の目的地へと向かっている。
そこは、呪霊が確認された病院を一望できる位置にある歩道橋。
今回の病院はそこそこ大きいので、帳はすぐに隠さなければいけないのだが、十亀が歩いている間に帳が下された。予定よりも早いな、と思いながら十亀は呪隠師を嫌っている人物達の顔を思い出していた。
大方、奴らの嫌がらせだろう。
十亀は全力で歩道橋に向かった。
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結局、十亀が歩道橋に到着したのは帳が完全に下された5分後だった。
彼は歩道橋に着くや否や、すぐさま術式を展開した。
『闇より出でし人の蓋、影と等しく人と混ざれ』
しっかりと帳を隠した後、彼は急いで帳の元へ向かった。奴らに文句の1つや2つ言っておきたいのもあるのだが、もし、一般人が帳に近づいてしまったら………
十亀は更に足を早める。
結果として、その心配が杞憂に終わることはなかった。
「ぅ……………ぇ………」
呻きながら道の端でうずくまっている女性が1人。
これが普通の道だったのなら二日酔いでもしているのだろうと放っておくのだが、ここは帳のすぐ近くだ。となれば当然放っておくことなどできず、その女性に近寄った。
「ちょっと、大丈夫ですか?」
その女性は、こちらを振り向くと青い顔をガタガタと震わせて
「へ、変なの。あっちに行ってみたいのに行きたくない。なんなの、さっきの黒いのといい、なんなの!?」
帳の周辺には、人避けの術式が張ってある。理由は至極単純な事で、万が一呪術師が負けた場合に一般人に被害を出さないためである。もし、一般人が無理に近づいた場合は、人よけの術式に背いているのだからそれ相応の反動が襲いかかるだろう。万が一にもそれを起こさないために呪隠師がいるのだが、今回は少しの間帳をそのままにしてしまい、結果この女性はここにいた。
「とにかく、一度落ち着いて。少し歩いて落ち着かせましょう」
と言って手を伸ばした。十亀は彼女を帳から遠ざけようとしたのだが、女性は十亀の手を払い。
「嫌よ!私はあそこにいくの!」
青い顔で必死に言う。それほどまでに彼女の好奇心は強いらしい。いやこの場合は別の物か……
十亀が強制的に連れていくべきか悩んでいるうちに、彼女は奥へと進んでいった。十亀が止めようとするのも虚しく、一歩前に出した瞬間女性はパタンと倒れ、女性の体からナニカがニュルンと出てきた。
「あそこぉぉぉいくぅぅ」
呪いだ。女体をいくも無理やりツギハギで合わせたような呪霊を見た十亀は、その呪霊の階級をなんとなくであるが予測していた。
『帳が放つ呪力は弱い。だが、この女性は帳を見れる程には呪力がある。その上、この土地の龍脈とか諸々考えると、3級くらいか……』
と、十亀が思考していると呪霊が手を伸ばしてきたので、すぐさま攻撃に移る。
『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』
『闇より出でし人の蓋、影と等しく人と混ざれ』
唱え終わっても何も起きない。呪霊は首をかしげるも、尚ゆっくりと手を伸ばしてくる。十亀はそこを一歩も動かず、余裕の笑みで佇んでいた。
「あんまり不用意に近づかない方がいいよ。だって」
そしてその手は十亀に触れるかどうかというところで、見えない
「
十亀はその呪霊に蹴りを放つとさらに続けた。
「見えないから困惑してるかな?まあ、僕達呪隠師は中々戦わないからね」
ま、戦ってたとしても君には関係ないだろうけど、と言い
「この術式の名前は『
十亀は追加で帳を下ろしていく。
『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』
今度は閒を使う事はなく、代わりと言ってはなんだが何回もそれを唱えた。少しした後、呪霊の周りは極小の帳で埋め尽くされていた。
「?????」
いつのまにか呪霊が動ける程の隙間も無くなっていた。身動きが取れなくなった呪霊がオロオロとしている中十亀はトドメとなる帳を下ろした。
『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』
呪霊の頭の上に現れた帳はゆっくりと下りていき、ズブズブと呪霊に刺さっていった。
やがて完全に下りると十亀は帳を解除して呪霊が完全に祓われた事を確認する。と同時に病院の帳に対して発動した閒が解除されるのがわかった。どうやら病院の方も呪霊を祓い終わったようだ。ふう、と安心して女性が目覚めるのを待った。実の所、十亀が呪霊相手に戦ったのは学生時代も含めてこれで5回目なのだ。
板橋区内の廃病院にて出処不明の呪霊を確認
1級呪術師2名、2級呪術師3名を派遣したが
内5名が死亡。
帳を破壊しその呪霊は逃走。
協会はこの呪霊を特級とし、その行方を追った。