「ふむ…興味深いな…色々な意味で。」
「…色々…ですか?」
冥界に在る、堕ちた天使達の中枢、『グリゴリ』の拠点本部の一室で、2人の男は渡された資料に一通り目を通して呟いた。
「兵藤一誠。"あの"駒王町に在住していた中学生の子供。
天使共に、内に宿すドラゴンの存在を見抜かれ拉致られ、無理矢理に"転生"天使…とでも言うのか?に、させられた…か。」
「しかし、その直後に堕天、ドラゴンの力か或いは、転生とやらで得た(堕)天使の力か…を暴走させ、地上に在った天使の施設を破壊。
逃げ出した処を、偶々に その地域の偵察に出向いていたレイナーレ達に保護された…ですか…。」
「まぁ、殆どが あの小僧…兵藤一誠の供述だけどな。
だが、嘘じゃあ無ぇっぽいしな。
少なくとも…チィッ、アイツに宿る"アレ"は本物だった。」
「はい。しかし、彼の話からすれば、人間を…いえ、恐らくは人間に限らず、様々な種を天使に創り変えるなんて…」
「あぁ。間違い無く そのカードとやら、悪魔共の"駒"の技術を何処からか盗んだのだろうが…
くくく…、
せっかく見つけ出した、あの"赤い龍の帝"が、
その辺り、どー思うよ?シェムハザ?」
「そうですね…あくまでも、私的意見になりますが…」
グリゴリの総督と副総督の会話は、この先も続いていった。
≪≪≪
…時は、少し巻き戻る。
人間界の天使の
更には記憶障害なのか、自身が堕天使という自覚も無い様に見受けらる少年。
とりあえず、何時迄も"裸コート"な服装は色々とヤバいので、少女達は各自、自分の私服の中から、男子が着ても無難な物を持ち寄せ、着用させた。
そして報告の意味で、少女達の直属の上司に当たる、幹部の1人に合わせるのだった。
「…分かった。ご苦労だったな、朱乃。
とりあえず この少年は、アザゼル達の所に連れて行く。」
▼▼▼
「…………あ、あの~?」
「良いから黙って着いてこい。」
「は、はい…」
話が見えない儘に、堕天使幹部の男に連れられるイッセー。
カチャ…
「失礼する…。
アザゼル、例の少年を連れてきた。」
「おぅ、御苦労だったな、バラキエル。」
連れられた部屋は、机から応接ソファーから、見るからに高級そうな家具で飾られた部屋。
「成る程…この小僧が…か…」
「???」
その部屋の主らしい男が、イッセーを見て、1人納得した様に頷く。
カァッ…
「「「??!」」」
そして その時、イッセーの左腕が赤く光ったかと思えば、次の瞬間、その左腕は、金属質な赤い籠手に覆われていた。
「な、何じゃあこりゃあ~?!」
いきなりの、またもや自身の常識の外な出来事、現象に驚き戸惑うイッセー。
そんなイッセーを無視するが如く、籠手の甲に埋め込まれている翠色の宝玉が点滅する様に光り、その宝玉から、低い男の声が発せられた。
『久し振りだな? 確か…【
「止めれーーーーーーーーーーっ!?
その名前で呼ぶなーーーーーーっ!!!!」
▼▼▼
バキィ!
「ぐゎぁああっ!?」
どん!!
「ぐ…ぐぐ…」
…そして再び時は現在。
堕天使総督アザゼルと副総督シェムハザとで会話が為されていた頃、グリゴリ本部の訓練室の一角では、話に登っていた件の少年・兵藤一誠が訓練相手の強烈な蹴りを胸元に喰らって吹き飛ばされ、その部屋の壁に背中を痛打していた。
「…今日は、此迄だ。」
「ぅす…あざっした、師匠…」
「ふん…」
ウェーブの掛かった黒い長髪。
肌の色は、病的に迄な白。
耳は長く上方に尖り、赤く血走った眼は鋭く。
イッセーに蹴りを放ち、『師匠』と呼ばれた この長身の男は、片膝を着き、胸を押さえながらの弟子の一礼に、僅かに口元を緩め、鮫か鰐かの如くな牙の様な歯を一瞬見せると、この場から立ち去って行く。
タタタッ…
「「イッセー君!」」「イッセー!」
そして同時に、未だ立ち上がれないイッセーの傍に駆け込む、3人の少女。
「だ、大丈夫?イッセー君?」
「あ痛ててて…だ、大丈ば…ないかも…」
「コカビエル様、手加減てもん、知らないッスからね~。」
「はい、じっとしてなさい。少し染みるわよ?」
「ぅげゃーーーー?!染む、染むぅ!?」
▼▼▼
…あの日、朱乃達に保護された後、堕天使組織【
自身に起きた出来事を、自身が理解出来ている範疇で洗いざらい話すと、その話に様々な意味で驚くアザゼル達だが、その背に生えている漆黒の翼は、紛れも無く自分達と同じ物。
故に、イッセーを同胞としてグリゴリに迎える姿勢を見せた。
イッセー自身も攫われる際に両親を殺害され、住んでいた家も破壊されるのも見ている。
そして自身の背に生える、人が持つ筈の無い、異形の黒い翼…
既に人間界には自分の居場所が無い事は理解。
その誘いを受け入れ、組織内施設の一室に住む様になった。
但し、只の居候となる訳には往かず、今後はグリゴリの戦士として生きる事に。
さしあたっては戦闘面に関して、堕天使幹部の1人である、コカビエルに師事する事となっていたのだった。
尚、自身を保護した朱乃、レイナーレ、ミッテルトとは殆ど年が変わらず、しかも現在の組織内には同じ年代の者が居ないからか、直ぐに仲良くなり、何時も訓練後は、コカビエルに全身ボコボコにされた身体を治療して貰っていた。
因みに現在…
イッセー……15歳
朱乃…………16歳
レイナーレ…15歳
ミッテルト…14歳
▼▼▼
「ありがと、朱乃ちゃんレイナちゃんミッテちゃん。
さて…っと…」
ガバ…
「修行パート2、逝きますかね!」
朱乃達による治療が終わると、そう言って立ち上がるイッセー。
「ちょ…もう大丈夫なの?」
「修行…は止めませんけど…」
「もう少し、休んでからのが良ッスよ?」
3人娘が心配そうな顔になるが、イッセーは そんな彼女達に笑顔を向け、
「大丈夫だよ。
それに、俺は早く強くならないと、総督や師匠に申し訳無いし…それに…」
其処迄言うと、左腕を前面に出す様な戦闘の構えを取る。
そして、
「ブーステッド・ギア!!」
『Boost!!』
その掛け声に呼応する様に左手から発せられる電子音の様な雄叫びと共に、左腕に…肘から爪先まで覆う様な…赤い籠手を出現させた。
「今日も頼むぜ!ドライグ!!」
『応よ、相棒!』
「今日こそは、禁手に至ってやる!」
『ふっ…気持ちは解るが、焦る必要性は無い…ってゆーか、とりあえず相棒は、基本を身に着けるのが先決だ。』
「ああ、分かってる、解ってるさ…」
ドライグと言う呼び掛けに、籠手の宝玉が光を放ちながら応える。
▼▼▼
「せぇえぃやあっ!!」
ドッゴォ!
「「「「「「おぉお~~っ!」」」」」」
訓練ルームの片隅で、掛け声と共に繰り出される、空手流の左正拳突き。
同時に その拳から、赤い魔力の弾が撃ち出され、その一撃で離れた場所に設置されていた、数体の訓練用ダミー人形が跡形も無く消し飛んだ。
「凄っス!」
「い、イッセー君てさ、つい3日前迄は、本当に何の訓練もされてない、ごくごく普通の人間の男の子だった…のよね…?」
「う…うん…」
同室内で訓練していた堕天使達や、心配そうに見学していた朱乃達も、その様に思わず驚きや感心の声を上げる。
『もっと集中だ!
より濃く、より強くイメージしろ!!』
「応よ!!でぇぇぇいやっ!!!!」
しかし、そんなギャラリーの歓声は、籠手に宿る赤き龍のアドバイスに従い、修行に集中するイッセーには聞こえない。
強くなる…
今の俺には、それしか出来ない。
強くなって…
父さんと母さんの仇…
天界の奴等だけは、皆殺しにしてやる!!
次回:『はじめてのじっせん(仮)』