黒翼の赤龍帝   作:挫梛道

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因みに前回のラスト、警察に通報していたのは茂っさんでした(笑)
 



逃亡者(笑)

「いえ、ウチには その様な者は…

無関係者ですね。」

「了解しました。

手間を取らせてしまって、申し訳ありません。」

駒王教会の玄関前で、警察官からの聴取を受けているのは、牧師オットー・スコルツェニーこと、グリゴリ幹部のコカビエル。

銃刀法違反に該当しそうな危険物を、教会関係者な服装の2人組が持って町を徘徊。

当事者と思われる人物をパトロール中の警官が発見するも、その2人は任意聴取を拒み、現在逃走中…という報せで、関連性の確認の為、この教会に警察が訪れたという流れだった。

結局"その2人組"は"この教会"とは、何の関係も無いと警察は判断。

 

「万が一、その彼女達…ですか?

この教会に姿を見せた時は、連絡しますよ。」

「ええ。協力、お願いします。」

この会話の後、2人の警察官は教会から去って行った。

 

▼▼▼

「えぇい!冗談では無いぞ!?」

「うぅ…どうしてぇ…こんな事にぃ…」

一方のイリナ達。

警察官からの追随を逃れ、宿泊先のホテルに戻ろうとするも、既に其処にも数台のパトカーと警察官が待機。

間違い無く自分達に用事が有ると察した2人は「やば…」と ばかりに踵を返すも それが見つかってしまい、壮絶なケードロの末に再び、時間的に既に誰も居ない駒王学園に入り込み、身を隠していた。

 

「「嗚呼 主よ! これも貴方が我等に与えたもうた試練なのですか?!」」

誰も居ない駒王学園の、更に今は誰も使用していない旧校舎の一室で揃って祈り、神託を求めるが、当然ながら返事は返って来ず。

 

 

ぐっぐぎゅ~~~~…x2

 

 

「「…!!?」」

そして その代わりに響いたのは、

「腹…減ったぁ…」

「も~、嫌ぁああっ!!」

2人の お腹である。

 

「何か、食いに行くか?」

「お金、全部ホテルに置いてるよぉ…」

「仕方無い、手近なコンビニか牛丼屋にでも襲撃を…」

「だ、ダメよ!それは日本じゃニートの仕事なのよ!!」

…断じて仕事では無い。

 

▼▼▼

「お…お前はっ!!!!?」

「あ、貴方?!」

『…こんな時間帯に こんな場所で、何をしようとしているのかな?』

その後、深夜に2人が足を運んだのは、町内の とある仏閣寺。

そして其処で逢ったのは、日暮れ時に遭った、赤髪黒仮面の男だった。

 

『まさか"聖書"の民が、この日本の寺で任務達成の祈願を…

いや、違うね。

賽銭ドロでも、しに来たのかな?』

「「ぅぅっ!?」」

『…まさかとは思ってたけど、図星かよっ?!』

2人の反応に、ついつい突っ込んでしまう、アイザックことイッセー。

 

ヴォン…

 

『止めとけ…それって犯罪だぜ?』

堕天使の光術でなく、悪魔祓い専用の光の剣を出し、その行為をイッセーが止めに入る。

 

「か、関係無いだろう!

どうして お前に、止める権利が在る?」

「そ、そーよ!

もしかして勢力的な問題?

…だとしても、日本神話相手に何したって、堕天使側(アナタ)には関係無いでしょ?」

『大バカヤロー!()として、止めてんだよ!!』

大声で…この様な展開を事前に想定していたのか、予め張り巡らせていた結界の中で再度、盛大なイッセーの突っ込みが入った。

 

◆◆◆

イッセーだぜ!

…って、バカか?!

コイツ等、本当にバカなのか??!

茂っさんも言ってけど、リアルに脳筋なのか?

師匠に言われて2人を見張っていたけど、賽銭ドロって そんな、"聖書"勢力が日本神話に喧嘩売る真似して どーする心算なんだよ?

白音ちゃんが言うには、"悪魔"は日本神話を軽く見ているらしいけど、天界(コイツラ)もかよ!!?

グリゴリ(こっち)は日本と、同盟を組む方向なのに、そんな拗れる様な余計な事、してんじゃねーよ!

現状(いま)なら漏れなく、堕天使も連帯責任で敵認定されちゃうよ!!

それで また、鬼灯さんや そのクラスの人達が出張ってきたら どうするんだよ?!

お陰で影から動向を窺うだけな心算が、ついつい姿を見せてしまったじゃないかよ!

 

『退いてくれないか?

流石に問答無用で"人間"の女を斬れる程、俺は非情じゃ無いんだ。

…それでも、殺る時は殺る!』

「「……………。」」

兎に角 此の場は、お引き取り願わないと!

 

▼▼▼

「お腹空いたよぉ…」

「め…飯ぃ…」

結局はイッセーの必死過ぎる殺気に気圧され、尚且つ、警察に追われる身であった為、目立つ聖剣(にもつ)は潜んでいた駒王の旧校舎に置いてきて丸腰という事もあり、戦闘は回避。

とりあえずは犯罪者となるのは免れたイリナとゼノヴィア。

 

「うぅ…牛丼屋さんも、前払いの食券システムだったしぃ…」

「嗚呼、諸行は、無常だぁ…」

…とりあえずは牛丼屋(こちら)でも犯罪者となるのは免れた2人は がっくしと項垂れ、トボトボと(勝手に)隠れ家とした駒王学園旧校舎に戻ろうとしていた。

 

「はぁーーーい! 其処の お嬢さんズ!」

「こんな時間帯に2人で、何をしているのかな~?」

「今から俺達と、楽しい事しな~ぃい?」

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「「???」」

そんな2人に声を掛けたのは、如何にも…な風貌の、数人の若者達。

                  

「「………………………。」」

そんな彼等を見て、2人は顔を見合わせると どちらともなく頷き合い、満面の笑みを浮かべ、その場で祈り始めるのだった。

                  

「「嗚呼 神よ!貴方に感謝します!

哀れな私達に、()()を寄越して下さったのですね!!」」

                  

▼▼▼

「「きゃっはっはぁーーーーーい!!♪」」

結論。

少女2人が幼少よりの戦士として受けてきた鍛錬は伊達では無く、町のチンピラ相手程度では、例え丸腰、例え空腹で十全に力を発揮出来ない状態でも、簡単に屈伏させる事が出来た。

その後 彼女達は近くのコンビニで、大量の食料(お菓子含む)や飲料水、ついでに歯磨き粉や洗顔料等の生活用品も買い込み、意気揚々と"隠れ家"へと帰還していた。

                  

『…ハァ……帰って寝よ…。』

尚、その一部始終を気配を消して監視していたイッセーが、仮面の下で どん引きな呆れ顔をしていたのは、言う迄も無く。

 

≫≫≫

「いや、まさか校舎内に、こんな立派な浴室が有るなんてな!」

この旧校舎、使用者が居なくなった今も、学園運営管理者の怠慢か、電気ガス水道は未だ生きており、

「冷蔵庫も完備してるし!」

「これで寝室…ベッドが有れば完璧だったが、贅沢は謂うまい。」

…らしい。

 

「兎に角これで、1週間は食い繋げるわ!」

「カトリックの本部にも連絡を入れたから、改めて後日、路銀を届けて貰える筈だ!」

 

▼▼▼

そして翌週の、月曜日の放課後。

 

「グリゴリからの伝達です。

今夜0時、先日予告していた儀式をこの学園の校庭にて、執り行うそうです。

学園は勿論、近辺に迷惑を掛ける様な事は一切有りませんので、ご安心を。

見学は御自由に…だそうです。」

「こ、これは、御丁寧に…ですね。」

学園(ここ)で やらかすって時点で、俺達からすりゃ充分に大迷惑なんだけどな!!」

生徒会室に、グリゴリ所属の はぐれ悪魔祓い・茂部園市が、今回は律儀に事務室で来校手続きをしたのか、来賓プレートを首に ぶら下げて、訪れていた。

 

「但し、邪魔立てするならば即座に戦闘。

因みに今回はグリゴリ本部から幹部も数名、儀式に立ち会います。

故に そちらからも、魔王クラスの実力者を出して来ないと、戦いには ならないでしょう。

しかし そうなれば、今度は その戦闘の余波で この学園は愚か、この町が壊滅等と云う事も有り得ますので…」

「…つまり、邪魔は、するな…と。」

「いぐざくとりーに御座います!」

ソーナの言葉に、肯で応える茂部。

 

≫≫≫

「それでは失礼します…の前に、匙さん?」

「あ!?」

茂部がグリゴリからの言伝も言い渡し、部屋を出る前に、匙に話し掛けた。

 

「ウチの隊長から、悪魔や堕天使組織関係無く、個人としての伝言だそうです。

曰わく、『観覧車は向かい合わせて座るでなく、隣に寄り添って座れ!…ってか、何故に2人っきりな あの場で何もしない? 小学生か お前わ?! このヘタレ!』…だ、そうです。」

「「は…はぃいい~?!」」

この言葉に、匙と…そしてソーナが絶叫。

 

「な、何でアイツが遊園地の事、知ってるんだよ?!」

「隊長も昨日、同じ遊園地で奥様(達)とデートしていて、その時に偶々、匙さんと そちらの お嬢さんを見掛けたそうです。」

「へ~?元ちゃんと会長 昨日、デートしてたんだ~?www」

「「遊園地に行ったんだ~?」」

「「へぇ~~~~~?www」」

「ぃや、それは…ですね…」

本人の自爆を含む、この茂部の暴露で、匙とソーナは その他の生徒会メンバーに、散々と弄られたとか。

 

≫≫≫

そして、深夜0時…

 

「ふむ…邪魔者が居ないのは良い事だが、此処までギャラリーが居ないのも、少し淋しい物だな。

折角 日時を予告してやったのに、この素晴らしい瞬間に立ち会おうとしないとは、愚か者共め。」

 




 
本編では敢えて表現しなかったけど、実は寺に行く前に、コカビーさんの教会に保護を求めていたイリナとゼノヴィア。
しかし銃刀法違反な2人をコカビーさんが受け入れる訳無く。
スマホを取り出し「もしもし?ポリスメン?」した処、2人は逃げ出したとか。
この後、師匠はイッセーに見張りを命じるのでした。
 
Next:『冥府の魔獣』(仮)
 
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