黒翼の赤龍帝   作:挫梛道

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殆んど説明と伏線…
 


戦後処理

 

時は16世紀。

奴隷の骨を身体の端から1本ずつハンマーで順番に砕き、奴隷が何時、その口から発する台詞が「助けてくれ」から「殺してくれ」に変わるかを賭け合う。

…そんな遊戯(ゲーム)が、当時の貴族達の間で流行っていたと云う。

 

▼▼▼

「頼む…もう、こ…殺してくれ…」

「無理だね。俺だって直ぐにでも、貴様をぶっ殺したいってのが本音だ。

…が、残念だが上から、好き勝手に痛め付けるのは構わんが、()()()()()()…と、言われている。」

 

ベギィッ!

 

「ぎゃあぁぁぁぁあぁぁああぁッ…!」

冥界グリゴリ本部の最下層で、イッセーの振り降ろした巨大ハンマーが、ミカエルの左の鎖骨を粉砕した。

今は術式による拘束で身体の自由を奪われ、天井から延びる鎖で吊らされている、嘗ての天使長の嘆願は、この赤い鎧を纏った断罪人に届く事は無かった。

 

「…ミカエル、お前『籔蛇』って言葉を知ってるか?

()()()()()()()()()()()()結果が、今の お前の その有り様であり、この度の戦争の結末なんだよ!」

 

ドガッ!

 

「うがぁぁぁ…!?」

12枚の白い翼を誇っていたのも既に昔。

1枚の…片翼の()()羽しか持たぬ この男の、左肩胛骨を砕かれての苦痛の叫び声が、地下室に木霊した。

 

◆◆◆

バイサーだ。

あの駒王での戦闘から既に5日が過ぎた。

我が主であるイッセーが今、()()()()()なので、僭越ながら私が主に代わり、あの後の、私が知り得る語り得る限りの事を、話させて貰う。

先ずは天界。

ギリシャ・北欧・インドの侵攻は、連中からすれば全くの不意打ちだった様で、この3神話からしても、それと云った抗いも無い儘に、呆気無く事が終わったそうだ。

そして敗戦勢力として、その中でも最も罪が重い(…とされる)ミカエルとウリエルの熾天使(セラフ)2人が、グリゴリ側に送獄される事になった。

因みにミカエルは、駒王学園から直送だ。

そして この2人には、天使からすれば最大罰であろう、"堕天"の洗礼が成される事に…

その方法は…まぁ、その…()()だ…。

その執行役の座を巡り、一部の女堕天使達による凄絶な『熾天使(セラフ)DT争奪戦』が繰り広げられた…と言えば、もう説明は要らぬだろう?

参考迄に、その勝利者の1人、カラワーナが言うには、

「あ~、もう駄~目駄目の全っ然、駄目。流石に ン1000年…ン10000年?のDTは無かったわ~。小さいし柔かったし10秒も保たなかったし、ついでに被ってたし。

小・柔・速・被の4重奏? 本来なら(年齢的に)守備範囲外なんだけど、イッセー(ボーヤ)で味直ししても良いかしら?」

…らしい。

言う迄も無いが、このカラワーナの主云々に対する申し出は、皆で速攻で断った。

尚、()()が原因・きっかけだったとは、確と明らかには されてないが、その後にカラワーナとタバネルが、下級から6枚翼の上級堕天使に昇格。

これは以前、朱乃が主のDT液を己の胎内に受け入れて、中級堕天使に昇格したのと同じパターン…との見解を示しているのはコカビエル殿だ。

そして この2人、アイザック隊を離隊し、それぞれがバラキエル殿及びマユリエル殿指揮下の新設部隊の隊長となるのが内定した。閑話休題。

次に、悪魔領の話だな。

エジプトの先代主神で在らせられるラー様による、悪魔領全土を隈無く照らす強力な太陽光照射から始まった、此方の侵攻。

基本的、陽の光が弱点である悪魔からすれば、これは広範囲の無差別テロにも等しく、グリゴリが駒王学園で行使した"弱体化の術式結界"と同様な効果を齎した。

更に この光によって出来た影の中から、ケルト主神スカアハ殿の眷属である、"影の兵士"が大量に出現し、領土全体を"数の暴力"で攻め寄せる。

魔王も駒王学園を戦場にする考えは有ったが、天界同様に まさか、しかも他の神話勢力に自陣が攻め入られる発想は無かった様で護りも薄く、その後の対応が遅れたのも幸いだった。

前々から悪魔領に潜んでいた、シェムハザ殿配下の諜報部隊改め、特殊工作部隊が大きかった。

更には、崑崙の仙道達の活躍。

伏犠と女媧なる仙道が中心となり、大公アガレス家が治める空中都市アグレアスは、あっさり落ちたらしい(墜ちてはいない)。

続いて大王バアル領。

私が以前、転生悪魔として仕えていた この地を攻めたのはエジプト神のアヌビス様、そしてバステト様。

この2柱の兵が、そしてバステト様御自身も御身の前身である狂雌獅子(セクメト)へと変化し、領内の者、貴族・兵・民を問わずな大虐殺を敢行。

バステト様からすれば、バアルの者は己が眷族である"人獅子族"を滅ぼした…正確に言えば、私が転生悪魔から帰還したので、完全に滅亡した訳では無いが…それ故に特に大王家の者への慈悲等は皆無に等しく、当主であった大王夫妻を真っ先に噛み殺したとか。

その後、バアル次期当主を名乗る者が、自らの首を差し出す事での、降伏と民の安全を持ち掛け、その申し出にアヌビス様が頷き、バアルは陥落。

更には首都リリスも落ち、そして魔王ルシファー並びにレヴィアタンが、普段構えている都市ルシファードとリバイアス…此れ等も当時、その魔王が不在だった為、簡単に制圧出来たそうだ。

これ等の主要都市を手堅く抑えた時点で、既に結末は決まったと云えたのだろう、冥界に居た、残り2人の魔王が降伏宣言をしたとか。

私的見解だが、悪魔も天使も本当に、危機感が無さ過ぎると云うか、グリゴリ込みで他の勢力を舐め過ぎている気がする。

何しろ堕天使領では、魔王が駒王で仕掛けるのを見越し、同時に此方にも攻撃を仕掛けてくるのを想定して、シェムハザ殿指揮の下、迎撃体勢を敷いていたのだからな。

結論から言えば、全くの肩透かしだった訳だが…。

 

◆◆◆

初めまして…で良いですよね?

私、堕天使組織【神の子を見張る者(グリゴリ)】の副総督の位置に就かせて貰っている、シェムハザと申します。

此の度の戦争終結に際してですが、戦争なる物、片方が白旗を上げ、それを もう片方が受け入れて終わる程に、簡単な物では無く。

寧ろ この後、勝戦国…我々の場合は、勝戦勢力とでも云うべきですか?

その勝戦勢力として、敗戦勢力に対して政治的処置や、今回の場合、協力して戴いた同盟勢力に対しての対応等、今からが特に、忙しくなる訳でして…

後日、悪魔と天界は、我々と同盟神話勢力を交えての、戦争裁判に赴く訳ですが…

私共は勿論、他勢力の方々も、彼等には色々と言いたい事が有るみたいですから、荒れるのは必至でしょう。

とりあえずの制裁として、天界側はミカエルとウリエルを、強制的に堕天させた上で、"地獄の最下層(コキュートス)"での永久冷凍執行が確定。

…と云うか、既にウリエルは刑が執行されており、ミカエルは裁判にて色々と話して貰った後に…となりますね。

今は…イッセー君の、所謂()()()()の対称となって貰っていますが。

本来ならは、即死刑となるのを()()()()で済ませるのですから、我々も甘くなった物ですよ。

それから悪魔側は…天界に比べたら、被害が大きいですからね。

特に大王バアル家は、新しく当主となった者を除いて皆殺し。

残りの貴族達の責任追求に対しては、裁判にて…ですね。

現在での決定事項は、悪魔領は勿論の事、天界も堕天使(われわれ)の属国ならぬ、属勢力という位置(ポジション)に。

尤も、あからさまな支配隷属等でなく、其々の地に幹部・部隊長クラスの者を派遣して、その最終的管理を取り行う形になりますが。

 

 

カチャ…

 

「失礼する…って、シェムハザしか居ないのか?」

「コカビエル…。」

 

≫≫≫

「お疲れ様でした。」

「いや、別に疲れる程の任務(しごと)じゃ無かったぞ?」

コーヒーを差し出すと、それを啜りながら、コカビエルは軽く笑って応えます。

彼には会談(せんそう)の翌日から、バラキエルと共に部隊を引き連れ、悪魔領辺境、"旧魔王派"と呼ばれる者が住んでいる地域の制圧に行って貰っていました。

これは捕虜として捕らえたカテレア・レヴィアタンからの情報を元に、"テロリスト討伐"の名目で、です。

 

「バラキエルは?」

「報告を全部 俺に押し付け、自宅直行だよ。

本来なら夏休み初日に、ガキと遊園地に行く約束らしく…『速く戻らないと、口を聞いて貰えなくなる』…ってな。」

「ははは…お父さんですね。」

「それと、『(しゅり)にシバかれる』とも。」

「あっはっはっはっは!」

「ぎゃーっはっはっはっはっはっは!!」

報告書(レポート)に目を通しながらの談笑。

レポートによると、旧ベルゼバブ、旧アスモデウスの当主は現地での戦闘で死亡。

"旧レヴィアタン(カテレア)"の一族を保護すると同時に、抵抗を止めようとしない残りの者を相手に掃討戦にて任務終了…ですか。

 

「それと事後報告になるが、カテレアの口から出ていた、例の逃げていた"内通者"な、そいつも現地に居たから一緒に殺しておいたぞ。」

「…そちらは、出来れば生かして、捕らえて欲しかったですね?」

「どうせ、あのガキの『家』の者は、何も知らなかったのだろ? ガキの眷属さえも。

独断行動の末だ。別に殺しても、何の問題も無い。」

「無くは無いですよ…。」

私達はカテレアからの証言により、現悪魔政権内でテロリスト禍の団(カオス・ブリゲード)に内通している者の情報も得ていました。

そして その内通者の中には、有力悪魔貴族の次期当主の名も!

これの件はサーゼクス・ルシファーに直ぐに報せ、対処を依頼したのですが、結果から言えば、その時には その者は既に自分の眷属さえも置いて、何処かへ消えていたとか。

恐らくはカテレアを捕らえた時には、もう逃げていたのでしょう。

以前、イッセー君から聞かされていた話も気になりますから、残された"彼女達"は後日 改めて、事情聴取する必要性は有りますね。

 

「…で、アザゼルは?」

「…………………………………。」

「…そ、そうか。やれやれだな。」

 

▼▼▼

2日後。

 

「もう いい加減、拗ねてないで出てきて下さいよ~、アザゼル総督~!」

 

◆◆◆

コカビエルだ。

1週間後に、天界及び悪魔連中と、グリゴリ並びに同盟勢力との戦争裁判(OHANASHI)が行われる事が、正式に決まった。

そして その前に明日、これも急な話なのだが、日本神話…高天原のアマテラスを基とする日本神話全体との会談を、妖怪勢力の仲介で行われる事が決まったのだが…

 

「アザゼル、お前が引き籠ってどうするのだ?!」

「研究予算、アップしてあげますから!」

『さっさと出てこい! 閃光と暗黒の(ブレイザーー・シャイニング・)龍絶剣(オア・ダークネス・ブレード)!!』

「………………………………………。」

アザゼルが あの会談の後、例の【閃光と暗黒の(ブレイザーー・シャイニング・)龍絶剣(オア・ダークネス・ブレード)】が原因で、MP(メンタル)が0に。

これから高天原に出向くってのに、それこそ神話の中に在るアマテラスの逸話の如く、天岩戸宜しく私設研究所に引き籠り、其処から1歩も外に出ようとしねぇ!

現在 皆で説得中なのだが…

とりあえずドライグ、お前は黙れ。

 

「…こうなったら、仕方無いですね。」

「応。最終手段だ、宴会するぞ!

おいイッセー、綺麗処の女堕天使、20人位呼んでこい。」

「………!!

(かっしこ)まりましたぁっ! 師匠!!」

 




 
①かなりダークサイド化してるイッセー。
大丈夫、次回(…てか今回のラストで)は、元に戻っているから!
 
②カラワーナさんの"守備範囲"は『同盟の成果です!』の後書き参照。
 
③「逃げた内通者」…察する人は察せた筈。
次回以降で詳しく触れます。
 
 
次回:『妖艷なる美女達の舞!』(仮)
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