ケルビに転生したのでキリンを目指そう   作:りふれいむ

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みなさん初めまして。
息抜きに書いたので、続くかは未定です。
それでもいいよって方は、タグをもう一度よく読んでから、見ていってください!


第0話   転生

 桜の花はすべて散り、春から夏へと季節が移り替わろうという今日この頃。

 窓は強い風に吹かれてガタガタと音を立て、外からは雨が降る音がザーザー聞こえる。

 外へ出ようにもこの天気では出かける気にならない。

 そんな俺が、今何をしているかというと……

 

 かの有名なゲーム『モンスターハンター』だ!

 

 いくらやっても飽きない、やりこみ要素のあるこのゲームを、俺はここ数日ずっとやっている。

 両親は、なんでも友人の結婚式があるとかで遠くまで旅行に行っていてしばらくは帰ってこないから、やりすぎだと怒られる心配もない。

 睡眠時間を削って、三食のご飯もインスタント食品やおにぎりで済まして、それこそ風呂と寝るとき以外は常にゲーム機を握っているぐらい、ずっとモンスターをハンティングしてる。

 学校は行ってないのかって?

 もちろん学校がある日は毎日行っているし、人間関係もそれなりには良好だ。

 なんなら、俺は今高校生だが、小学校や中学校を含めて、これまで一度も学校を休んだことがなかったりする。

 それなのにこんなに時間が余っている理由は、ゴールデンウィークでただでさえ数日間休みなのに加え、現在猛威を振るっている台風のおかげで、今日は臨時休校になったからだ。

 これはモンハンをするチャンスだと思い、調子に乗って夜更かししまくったせいで、頭はぼーっとして、目も疲れ、適当な食事しかとっていないためお腹もすいている。

 

「眠い……けどこのクエストはクリアしときたいな」

 

 切りがいいので、これだけはクリアしようと思い、睡魔に逆らってクエストを開始したのだが……。

 やはり三大欲求の一つ、睡眠欲には勝てないようだ。瞼が勝手に閉じていく。

 

 意識が落ちる寸前に俺が見たのは、操作主を失って立ち止まったところを、ケルビに突進されてダメージを受けるハンターの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らない天井だ」

 

 目を覚ますと、俺の視界に入ってきたのは一面に広がった白色。

 それを見て、思わずそんなことを口走ってしまった。

 

 「俺の部屋ってこんなところだったっけ!?」

 

 慌てて起き上がって周りを見てみても、あるはずの勉強机やタンスなどが見当たらず、白い壁のようなものが広がっているだけだ。

 それどころか、俺が寝ているはずのベッドすらなく、今の自分は、白い地面に仰向けで寝転がっている状態である。

 

 ……待て待て、どういうことだ?寝る前の記憶を思い出せ、俺。

 確か、祭日やら臨時休校やらで学校が休みだったから、家に引きこもってモンハンしてたんだっけ。

 それで、睡魔に逆らってクエストに出発したけど、うとうとしてケルビに攻撃を喰らって……そこからの記憶はない。

 おそらく寝落ちしてしまったんだろう。で、起きたら知らない部屋にいると。

 

「あれ……?もしかして俺、誘拐でもされたのか?」

 

 そう思った俺は、咄嗟に逃げようとしたが、周りのどこにも出口が見当たらないから、出ることができない。

 いくら楽観的な俺でも、この状況はさすがに焦る。まじでどこにも出口ないし。

 そうして俺が絶望に浸っていると、上の方から光る物体が落ちてきた。いや、ふわふわ浮いてるから、降りてきたという方が正しいか。

 しかも、その物体から声が聞こえてきた。

 

「はっはっは!お主は本当に儂を笑わしてくれるわい!」

 

 おっさんみたいな声が聞こえてきたかと思うと、ついにその光る物体は俺の目線と同じ高さまで降りてきた。

 よく見ると、光の中に人間っぽい影が見える。

 うわ、本当におっさんだよこれ。背中曲がってるし、杖みたいなの持ってるし。

 光に包まれてるおっさんが上からふわふわ降りてくるなんて、ただのホラーだよ。

 

「怖っ……」

「怖いじゃと?まあ、神である儂を畏れるのは当然か。」

 

 おっと。思わず声に出てしまったようだ。

 ていうか、神とか言ってたなこのおっさん。

 あ!もしかして、自分が絶対的な権力を持っていると自惚れているタイプの誘拐犯?

 

「違うわ!全く、失礼な奴じゃ。お主が死んだから、儂が後始末をしないといけないというのに……」

 

 うわ、ナチュラルに心読まれてるんですけどー。

 それよりこいつ今、俺が死んだといったのか?

 んー……でも、現に俺はこうして生きていて意識もあるわけだ。そこんとこを詳しく説明してもらいたい。

 

「だから、お主は死んだから神である儂のところに連れてこられたと言っておるのじゃ。そして、ここは死者の魂を転生させるための部屋だ。つまり、これからお主は強制的に転生しないといけないというわけじゃ」

 

 転生……俺は本当に死んだのか。

 信じたくはないが、現にこの目の前にいる神を名乗るおっさんに、心を読まれているんだし、全部信じるしかないよな……。

 浮いてるのも光ってるのも、マジックか何かだと思ってたが、違ったようだ。

 

「ようやく信じる気になったか。早速だが、転生の手続きをしてもらおう」

「ちょっと待ってくれ、その前に一つ聞いてもいいか?」

「いいぞ。言ってみろ」

「俺の死因はなんだったんだ……?」

 

 そう、本当に死んだのだとしたら一番気になるのがこれだ。

 どうしてモンハンしながら寝落ちしただけで、死ぬようなことになるんだよ。

 

「あぁ、そういえば言い忘れておったな。お主の死因は、ゲームのやりすぎによる過労死じゃ」

「……へ?」

「まあ簡単に言うと、睡眠不足に栄養失調の一歩手前という極限状態のときに、モンスターと戦うという緊張感の溢れるゲームをやり続けたストレスによる、一種の過労死みたいなもんじゃ」

 

 はあぁぁぁぁぁぁ!?まじで!?

 ゲームしてるだけでも人は死ねるのか……初めて知った。

 

「世にも珍しい死に方じゃったから、久しぶりに爆笑させてもらったわい」

 

 おいこら、神だからって、人の死を見て笑うんじゃねえ。

 まあ俺自身、そんな死に方してるやつ見たら笑っちゃうかもしれないが。

 うわー、それってつまり、俺は今頃友人たちにに笑われているってことか……。

 

「なにを馬鹿なことを言っておるのじゃ!今お主の友人たちは、お主の死を知って涙を流して悲しんでおるわ!お主はそんなことも分からんのか!」

「いや、すまない。まだ自分が死んだことに実感が持ててなくてな。軽率なことを考えてしまった」

 

 そうだ、俺は本当に死んだんだ。友人のことを聞いて、改めて実感が沸いた。

 確かに、俺の友人がどんな死に方をしたとしても、自分の前から一生いなくなるのはとても悲しい。

 こんなしょうもない死に方をして、友人を悲しませてしまったことを、とても申し訳なく思う。

 

「分かれば良いのじゃ。次は、悔いが残らないように生きてほしいのう」

 

ありがとう。次は、もっとがんばって生きようと強く思う。

 

「よし、もうその話は終わりじゃ。それで、転生先なんじゃが……モンスターハンターの世界と決まっておる。これをプレイしながら死ぬぐらいなんだからお主もモンハンが好きじゃろうし、選択権がないのは許してほしい」

 

 そういえば転生のこと頭から抜け落ちてたわ。

 前世にはまだまだ未練があるが、死んでしまってはどうしようもないだろう。

 だから、今は次のことを考えよう。

 

「お主は心が強いのう。今まででも、結構多くの者たちが過去に捕らわれ、二度も命を落としたり、精神を病んだりしてきたからの。苦しくても気持ちを切り替えるというのは、生きていくうえでとても大事なことじゃから、忘れんようにせい。まあお主なら大丈夫だとは思うがな」

 

 お、おう。なんかおっさんにめっちゃ褒められた。

 とりあえず、今のは神様の御言葉として、脳内にメモしておこう。

 

 それで、転生先はモンハンの世界かぁ。

 勝手に決まられたけど、もし俺に選択権があってもモンハンを選んでただろうし、何も問題はない。

 だから、転生できるのは純粋に嬉しいんだが、生きていけるか不安すぎる。

 なんたって、古龍とかいう天災そのものがいるような世界だからな。

 

「そこは心配せんでいい。なんせお主は……モンスターに転生するのだからな!」

 

 え……?随分と楽しそうな口調で爆弾発言をしてくれたな、このおっさん。

 

「しかも!お主は、儂を大いに笑わせてくれたし、強い心を見せてくれたから、オマケで転生特典まで付いてくる!」

 

 いや、それは嬉しいんだけれど。嬉しいんだけどね!?

 なんで俺の転生体が、モンスターしか選択肢がないんだよぉぉぉ!

 てっきり人間に転生して、ちまちまとハンターとしての腕を上げていくんだと思ってたわ!

 

「ちなみに転生するモンスターはランダム。転生特典は、儂の独断と偏見で決めた、『成長速度アップ』、『限界突破』、そして最後が、『食べたものの特性を一部吸収』じゃ!ついでに言うと、最後の能力は、食べた量が多ければ多いほど、能力を吸収できる確率が高い。だから、鱗一枚食べただけとかならあまり期待しない方がいいじゃろう。……あ、言い忘れていたのじゃが、一つの能力を吸収できる量には限りあるから忘れぬように。そうしないと、怪力の種などをひたすら食べ続けるだけで最強になってしまうからのう」

 

 ああ、そうかい。もういいや、なんか諦めた。

 俺は、おっさんのドヤ顔を見ながら、そんなことを思った。

 新しい命を授かるだけでもありがたいのに、俺の好きな世界に転生でき、さらには特典までもらったことを、素直に感謝するべきだろう。うん、そうだ。

 モンスターに転生するんだったら、おそらく寿命は長いだろうから、できれば初めは死なないように安全第一で過ごしたい。

 

「心を決めたようじゃの。じゃあ早速じゃが今からお主を転生させる。せいぜい楽しんで来るがいい」

 

 転生するのが急だけど、実は結構ワクワクしている。

 まずは、どんなモンスターに転生するか。とても楽しみだ。

 どんなモンスターに転生したとしても、精一杯生きて、楽しみたいもんだ。

 そんなことを考えているうちに、だんだんと意識が薄くなっていく。

 

 

 でも、――――できれば、古龍種とかになってみたいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

 

 赤ちゃんから始まるにしても、モンスターとしてはあまりにも小さい体。

 俺の周りでは、トナカイともシカともいえないようなモンスターたちが、元気に跳ねている。

 とりあえず、今の俺の気持ちを一つだけ言わしてくれ。

 

 

 

 どれに転生しても頑張ろうとは言ったけど……なんで、ケルビなんだよっっっっっっ!!

 

 




◆は、時間経過または状況転換を表します。
ちなみに、◇は視点変更を表します。(登場するとしたら、おそらく人間サイドへの視点変更)

【過労死】
ゲームしてるだけでも本当に死ぬ場合があるらしいですよ。
みなさんも気を付けてくださいね!

【転生特典】
モンスターに転生する系ではテンプレ王道といってもいいこの特典。
他作品と展開ができるだけかぶらないように、いろいろ頑張ってみようと思います。

【ケルビ】
みなさんご存知の、モンスターというよりは動物って感じのやつら。
キリンの進化前とかいう都市伝説があるけど、確かに形は似てるよね。

誤字・脱字、表現がおかしいところや設定を間違っている箇所があれば、遠慮なくご報告ください。

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