憑依者がハンターとして生きていく世界   作:晴月

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序章

どうしてこうなったんだっけ。

 

俺の名前は 草薙 透

 

あれは数時間前、学校もバイトも休みで暇してた俺が何か暇潰しできないかと部屋を漁っていた。

 

その時ふと本棚に目が行き、そこに入れてあったHUNTER×HUNTER

のコミックス....ではなく、映画の特典として貰ったクラピカの過去の物語が記された薄い本(健全な方)を読み終えた時、突如としてページが光りだした。

 

そして、気が付くとそこは......

 

「おいどうした....大丈夫か?」

 

「あ、ああ大丈夫だ.....何でもない。」

 

何故か目の前にクラピカが居る。

 

何でだー!?何で目の前にクラピカ(実写)が居るんだよ!

 

「本当に大丈夫なんだな...パイロ(・・・)。」

 

しかも俺、クラピカの親友のパイロになってるし!....いや違うな。

 

これはアレか、....小説によくある展開の、物語の登場人物に憑依するっていうやつか...でも何で俺何だろうか? .....まぁ、今はそれよりも...すべきことがある。

 

今、俺がすべきこと....それは生き残ること。

 

今がいつ頃なのか分からないが、少なくともこの後この村は幻影旅団によって滅ぼされる。

 

そして俺が憑依したパイロは身体が弱く、それを治す為にクラピカが村を出る許可を長老に貰い、医者を連れてくる.....というのが本来の物語の顛末だ。

 

だが、その未来を変える為に先ずは....そうだな、身体を鍛えるかな。といってもやるのは筋トレじゃない、走り込みだ.....といっても筋トレもやるんだけどね。

 

その理由として、この身体は弱いんだ.....だからこそ鍛える。そしていずれはあの幻影旅団よりも強くなるために今の内に鍛えないと!

 

「おーいパイロー?」

 

その時の俺はクラピカの言葉なんて聞こえちゃいなかった為またクラピカに心配を掛けることになった。

 

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その日から俺は毎朝両親よりも早く起き、最低一時間のジョギングを行った。.....勿論、誰にも知られることなく。

 

いやだって、クラピカにバレたら物語が変わってクラピカまで殺されることになるだろ、だからこそこのことは隠しておく必要がある。

 

「さて、これくらいでいいかな...っと。」

 

そして憑依した日から数日がたったある日...俺はあることにに気付いた。

 

それは...

 

「思っていたよりもパイロの身体、病弱じゃなかったな。」

 

そう。パイロといえば病弱で運動が苦手な子供というイメージがつきものなんだが、なぜか病弱ではなかった。

 

恐らくだが、俺が憑依していることが関係しているのではないかと考えている。

 

「もしかして、身体能力は憑依している俺のものをそのまま反映しているというのか?」

 

間違いない、というかもうそれしか考えられない。

 

「ペースを増やすとするか。」

 

この身体の事が分かったんだ、なら次のトレーニングに励むとしよう。

 

まぁ....村の連中には気付かれないように、タイミング良く咳をしたり、うずくまって苦しそうな演技をすることを覚えないとな...。

 

さて、そろそろ皆起きてくる頃だ.....戻ってシャワーでも浴びてベッドに入って寝てたフリしないとな。

 

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数日後、クラピカと森の中で遊んでいると(病弱なフリをしながら)、ある一人の女性が倒れているのを発見した。

 

「この人は....一体?」

 

「それよりもパイロ、この人を洞穴まで運ぶぞ手伝ってくれ。」

 

「え?...あ、ああ。」

 

クラピカの奴、俺が病弱(設定上)だってこと忘れてないか?

 

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女性を洞穴まで運び、その場に寝かせた。

 

というかこの人...なんか凄い格好だな、頭にはハートの付いた耳みたいなの着けてるし。

 

「ん....んん?」

 

あっ、起きた。

 

「クラピカ、起きたみたいだぞ。」

 

「ホントだ。」

 

女性は何かを言っているようだが、何を言っているのか分からない.....と、思っていたが

 

「み...ず」

 

え?....今、水って言った?

 

「な、なんて言ってんのかな?」

 

クラピカは分からないらしく俺に訪ねてくる。

 

「う~ん...もしかして水が飲みたいんじゃないかな?.....水筒持ってるし。」

 

俺は分からないフリをしてクラピカに彼女の言葉を伝える。

 

「分かった...なら俺、川で水汲んでくるよ!」

 

クラピカが走って川に向かった。.....彼女の持っていた水筒を手にして、

 

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「ふーありがと、生き返ったわ。」

 

彼女はクラピカから自分の水筒を受け取ると直ぐに口に運んだ。

 

「何もないけどお礼にそうね....これあげる。」

 

彼女がカバンから出したのは所々ページに付箋が貼ってはる本であった。

 

「何だろ...くれるのかな?」

 

お、てことは俺が言う言葉は...

 

「でも貰ったら外の人と話したことバレちゃうよ。」

 

これで合ってる筈、

 

「ハイハイ子供は遠慮なんかし・な・い」

 

すると今度は川のある場所を聞いてきた。

 

だが俺は分からないフリをするしかないのでクラピカには何も言わない....悪いとは思うがこれも物語を進める為なんだ。

 

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そこから先は本の話通り、クラピカが父親の書斎から辞書を持ち出し彼女と話をすることになった.....そのお陰で、俺も言葉が分からないフリをしなくてすんだ。

 

そして彼女の足が治りこの地を去った後、俺達二人は彼女から貰った本『D(ディノ)・ハンター』を二人だけの秘密の場所に隠し、誰かに後をつけられないよう、悟らせないよう慎重に行動し、毎日辞書を片手に読み耽った。

 

だがある日とうとう長老にバレ、本を没収されてしまった。

 

「試験を受けさせてよ!!...もしそれで不合格ならもう二度と外の世界に行きたいなんて言わないから!!」

 

クラピカは本気のようだ.....まぁその理由は俺が憑依したパイロの身体が理由なんだが、ここはあえて割愛させてもらう。

 

それから試験当日までクラピカは机にかじりついて勉強に勤しんだ.....パイロの為に。

 

まぁ....今言うことでは無いんだが、俺の眼と脚は憑依してる俺の状態を反映してるから別に今は治らなくても構わないんだけどね。

 

そして当日の朝が来た。

 

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結果は皆知っての通り、全て満点の答案を作り出した。

 

後は最後の試験《自己抑制試験》をクリアするだけだ。

 

「パートナーを一人つける...これは何かあった場合、もう一方が連絡係になるためと連帯責任を負うことで私憤を抑えやすくするためのものだ、仮にパートナーが緋の目になってもお主は失格になるから慎重に一人選ぶがいい。」

 

「うーん。」

 

クラピカは悩む。.....それもその筈、自分と相性が悪かった場合自分が緋の目になってアウト、仮に相性が良かったとしてもパートナーが妨害する可能性だってある...というか長老はそれが狙いなんだろうな。

 

全く、頭の硬いジジイだな。

 

「パイロがいい!!」

 

「え?」

 

分かってはいたがやはり驚かずにはいれなかった。

 

「買い物は一族の大量の生活品で力仕事じゃし!パートナーが緋の目になったとしてもお前は失格なんだぞ!!」

 

失格にするつもりの癖に、良く言うぜ。

 

「だからパイロがいいんだ!!...パイロと一緒ならどんな結果でも後悔しない!!」

 

そこまでパイロ()を信用してくれるのか....やべ、泣きそ

 

とうとう長老が根負けして認めた。

 

「ならば二人ともこの薬を目に指すのだ。」

 

「ハイ。」

 

俺はわざと脚が不自由なフリして近付き、そしてわざと薬を棚の下に落とす。

 

「パイロ、俺が...」

 

クラピカが心配して自分が代わりに探すと言ってくれる...だけど、

 

「大丈夫!!一人で探せるよ!...パートナーとして一人で出来ることはちゃんと一人でするよ。」

 

と言いつつ、袖に隠しておいた目薬(緋の目抑制用)を手にし、まるで見つけたかのように振る舞う。

 

「じゃあ先ずは僕から。」

 

そう言って俺は薬を目に差し、クラピカに渡した。

 

クラピカも薬を差して準備は完了した。

 

地走鳥(ピコ)と呼ばれる鳥を三匹貸して貰い、ナンチャ市に向かって走る。

 

さて先に休ませてもらうとしよう。

 

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次の朝、街のデパートへと向かい買い物を始める。

 

っと此処からあのチンピラどもが来るな。

 

あいつらには用心しないと....っていた。

 

俺の方を待ち伏せしてるのか....ったくあの長老(クソジジイ)め、後で覚えてろよ.....まぁ気づかれないようにする方法はあるけどな。

 

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「ふぅ、替えの服を着ておいて正解だったな。」

 

方法というのは別の服を着て、病弱のフリを止めればいいだけなんだけど...それでもあのチンピラ共全く気付かなかったな。

 

「おい、何やってたんだパイロ....ってどうしたんだその服?」

 

「あぁごめん、先に欲しいもの買っちゃった。」

 

実を言うと、今着ているこの服はこの店で買ったものだ。

 

向こうだってズルしてる訳だしこれであいつらには会わずにすむ。

 

.....と、思っていたのに奴ら先に待ち伏せしてやがった。

 

「通行料寄越しな....でねーとここは通れないぜ。」

 

やはりこうなってしまうのか。

 

仕方ない。

 

「警察に電話する...ここを出るのに本当に必要かどうか聞いてみる。」

 

リーダー格の男は冷や汗をかきながらこちらを見ている。

 

「何やってんだあんた達!」

 

チンピラを怒鳴っているのは先程デパートで道を尋ねた人であった。

 

「くそ...とっとと失せろ!」

 

悔しげに俺達を睨む。

 

さて、行くとしようか.....!!?

 

 

何だ?急に脚が....動かなく、

 

「えっ?」

 

その時の俺は何が起こったのか分からなかった。

 

だが直ぐに気付いた....あのリーダー格の男が俺の脚を蹴って転ばせたのだと、

 

「貴様ッ...」

 

「おっと、俺は何もしてねーぜ?」

 

「本当だよ自分で転んだだけ...行こうクラピカ。」

 

クラピカ....怒るなよ。なるべくクラピカの怒りを静める為、俺は笑ってクラピカを見る。

 

「おめぇも大変だなぁポンコツのお守りはよ...生きてて楽しいか?」

 

分かりやすく俺達を挑発する男、だが直ぐに三人共クラピカにボコボコにされ土下座をさせるに至った。

 

だが場所が悪かった。

 

突然、後ろから石が俺達に向かって投げられた。

 

「赤目の化物!!!この町から出ていけ!!!悪魔の使いめが!!!」

 

あんなに優しかったお婆さんが...何故?

 

俺の心は怒りや悲しみよりも疑問という言葉が浮かび上がった。

 

孫と思われる女性が止めに入るが、

 

「これ以上怒らせたら皆殺されちゃうよ!!」

 

その一言で俺の中のナニカガキレタ。

 

「おい....そこのアマ。」

 

「わ、私?」

 

「何故酷い目にあってた俺達(・・)に石を投げる?.....何故子供の俺達がテメェらを殺せると思う?.....何故自分達と少し違うだけでそう人を迫害することが出来る?.....答えろ。」

 

今の俺は冷静であった、冷静でありながら怒っていた。

 

「パ、パイロ?.....少し落ち着けって、」

 

クラピカが止めに入る。どうやら俺の変化に驚いて怒りが鎮まったみたいだな。だが、俺は腹の虫が収まらない。

 

「答えろよ.....なぁ、聞いてんのか!オイ!」

 

「ヒ、ヒィ!!!」

 

女は怯えて何も言わずただ下腹部から暑いものを溢すだけであった。

 

「....ッチ、漏らしたのかよ....たかが子供の剣幕に....ダサっ。」

 

俺はその場で思い付いた出来る限りの侮辱をしてクラピカを連れて村に戻った。.....物語通りに。

 

その後、クラピカは村を出て俺の眼と脚を治せる医者を探しに行った。

 

そして俺も次の日から試験に向けて勉強し、二つ目まで合格した。

 

最後の抑制試験の時は長老に実力が認められている筈なので「合格にしてくれ」と頼んだが、聞く耳を持たなかったので

 

「チンピラ雇って怒らせようとしたこと....村の人全員にバラすよ。」

 

と言って脅したら合格にしてくれた....やったぜ。

 

俺は長老から俺の治療費用と生活必需品を幾つかそしてあの本『D・ハンター』を受け取り、クラピカの後を追うようにして村を飛び出した。

 

......村の皆には悪いが、俺はクラピカ同様生き残る。だが、俺はクルタ族ではなくなる。

 

今日からは名前を変えて生きていこう。

 

「そうだな.....トール・スカーレットとかどうだろうか。」

 

だが、クルタ族であったことは忘れないように名前に緋色(スカーレット)を入れておこう。それなら皆のことを忘れないでいられる気がした。

 

そしてこの5週間後、クルタ族全員が幻影旅団に虐殺されたニュースが流れ、俺は少しだけ後悔したが不思議と怒りは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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