ピュートーンさん!?d×d   作:塩で美味しくいただかれそうなサンマ

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ピュートーンの歴史研究において最大の謎は二つ。一つはピュートーンの死、もう一つはその復活である。この二つの謎は度々学会で取り上げられる。理由としてはピュートーンの心に直結した問題であるからだ。間違いなく言えるのは「エアル」と呼ばれる巫女をピュートーンが溺愛していたということだけであるかな。

ー悪魔歴史家ジタ・バルバトスの言葉よりー



第7話 妄想理想夢幻

あの大戦から2日ほど経っただろうか。

暗い洞窟の中で一休みと一人まどろんでいた。

雫の滴る音を音楽がわりに気持ちよく寝ていたら突如洞窟内に大きな声が響いた。

 

「ピュートォォォン!どこだぁぁぁ!」

 

怒り狂った声であった。

驚いて寝ていたコウモリたちは飛んでいってしまった。

もちろん来るのは知っていた。

まったく、面倒なものだ。

 

「ゼウス…様か…」

 

かつての主神の来訪であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大声から程なくして、ゼウスが目の前にいた。

その形相はまさに雷といっていいだろう。

怒りを露わにした神の存在。

怒りのあまりほとばしるいなづまが辺りを照らす。

並大抵のものならば瞬時に気絶しかねないそのオーラの前でピュートーンは何食わぬ顔で佇んでいた。

 

「ゼウス様、これはこれは。お久しぶりでございます。何用でいらっしゃったのでしょうか?」

「…お主は変わらんな。煽りともとれるそれを真面目にいうところもな。…心配なぞ無用だったか。」

 

と、ゼウスはそう言って気が抜けた顔をしてそこに座ってしまった。

どこか安堵したようだ。

何をしに来たか…は、知っている。

 

「お主ならばまぁ、わしが来た理由もわかるだろう?お主の様子を見て問題ないと理解したが一応警告しておく。力をむやみに使うでない。」

「はい、分かっております。」

「そうじゃろうな…呑気に寝てる姿を見ればわかる。お主がその力を悪用、乱用などせんことぐらいな。それと、敬語は使わんで良い。昔みたいに上下の関係じゃあるまいし。すこし話さんか?」

「ありがとう…分かった。」

 

ゼウスは普段から能天気で温厚な神だ。

そのゼウスがあそこまで怒るならばそれほど危機感を持っていたということだ。

ゼウスなことをむやみに責められないと思う。

俺だって逆の立場ならそうしたからな。

ゼウスは俺が知った無数の運命を俺に命令して一つに変えさせていた張本人である。

まぁ、ゼウス本人も本意じゃなかったようであるが。

俺のあまりに強大すぎる力をどう御そうか考えた結果なのだろう。

それを考えればここに来た理由もわかる。

《運命》をいとも容易く如何様にも変えられる存在が野放しになっているのだ。

これほどの恐怖はないだろう。

まぁ、俺自身はそんなものに興味はないがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お主は知っていることに対して思考がなさすぎんか?さっきも来た理由を知っていたならあんな煽りのような受け答えしなくても良いだろう?」

「まぁ、確かに知っていた。というよりあんな風に答えれば平穏に収まると知っていたからそうした。」

「そうだったな…お主はそんなやつだった。確かにお主の役職からの心労で心が削れたのも分かるしそれはわしの責任でもあるがの、もうちょっと他の物に興味を持て。悪い事は言わない。」

「あぁ…よく分かっているさ。それに…思考ならしてないこともないよ。無駄な思考だけどもな。」

 

ゼウスとの話はかなり盛り上がった。

まぁ、知っていた内容だがな。

だが、一人でじっとしているよりかは大分救われる時間だ。

他の物と触れ合うことの大切さはエアルが教えてくれた。

先ほどのゼウスからの言葉も何回もエアルから言われたものだ。

俺が世界を諦めて、冷たく、傀儡のように生きていたところにエアルは入ってきた。

毎日俺が知っている話を持ちかけ、知っている行動をし、知っている気遣いをする。

俺が何度拒否しても諦めなかった。

最初の頃は何も感じなかったがいつしかエアルを気に入っていた。

俺も自然とエアルに話しかけて、《知っているのに》楽しむようになっていた。

エアルは、俺に《思われる喜び》と、《思う喜び》を。

人間性を、心を、思い出させてくれたのだ。

そんなふうに懐かしがっていると、ゼウスが真剣な面持ちでこちらに尋ねてきた。

 

「なぁ、ピュートーンよ。お主はなぜ、今生きておる?お主はこの世に絶望したはず。エアルというお主を救う運命にあった巫女も死んでしまった。何故?何故今もそう笑って生きている。それが分からんのだよ。それが不気味でならんのだ。」

 

なるほど。

確かにそうであるな。

ゼウスが選んだ運命の筋書きによれば俺は絶望の淵に死に、そして二度と蘇らないというストーリーだったのだろう。

わざと「エアル」という救いの役職を作り、それが目の前で死ぬのを見せつけて俺をこの世から排除したかったのだろう。

確かに俺はこの世にあるには強大すぎる。

まぁ、皮肉なことだ。

今俺が生きている、笑えている理由もまた「エアル」なのだから。

 

「そうだな…ゼウスよ。運命を定めていたあなたなら知っていよう。エアルの最期を。エアルは、最後の言葉を残さず去った。つまり、その言葉はこの世に存在しない。一番大切なその言葉は、俺は知ることができないのだ。…故に、俺は考えた。この世にピュートーンとして生を受けた今までの何よりも考えたよ。その、最後の言葉はどんなものであったのだろう?とな。いろいろなことを考えた。感謝の言葉だったかもしれない。謝罪の言葉だったかもしれない。いろいろな考えが頭をよぎったよ。でもな、いくら考えてもだ。エアルが俺に言う言葉は、どれも俺を励ますような、喜ばせてくれるような、俺を心配するような、そんな言葉しか…浮かばなかったよ。俺の妄信、独りよがりだけどな。それで思ったわけさ。死ぬことが、諦めることが、エアルのためにはならんとな。俺は…信じているのさ。いつかまた、この世にエアルが再来して、優しく声をかけてくれるその日を。頑張ったねと、そう言われる日を夢見ているのさ。…妄想さ。エアルが生き返ることなどない。そう知っているよ。理想だよ。甘くて儚い、幻さ。でも、それでいいんだ。それで…いいのさ…」

 

ゼウスは何も言わなかった。

天蛇の目に涙が浮かんでいるのを見て驚愕していたのだ。

 

結局、天蛇が泣き疲れて眠るまで二人は動かず、話さなかった。

 




フレーバーテキストなくなってお困り中です。
前書きが一番時間かかりました…あまりかっこいいのできなかったけど。
作者は神バハやったことないんです。
でもピュートーンさんはあっちでも残念性能だったみたいですね悲しい。
これからもよろしくお願いします。
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