この息が止まるその日まで   作:りんごあめ

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お久しぶりです。一応生きてました。

第二十話よろしくお願いします。


第二十話 「せんぱい」

「もしあたしが感染しても迷わないでほしい。」

 

「わかった。」

 

 

「その代わりお前も約束してくれ、

俺が感染した時にも迷わない…って。」

 

 

「…ああ、わかった。じゃあさ、ゆびきり。」

 

「おう」

 

ーーーーーーーーー

「おまえやりーさんにしか頼めないから。」

 

 

「…ああ分かってる。お前も俺がそうなった時はよろしく頼む、俺だってお前らにしか頼めない。」

 

「私もちゃんと約束は守るわ。」

 

「「ああ、約束な」」

 

 

 

 

ショッピングモールでの話、夕日に照らさた車の中3人で誓った約束をふと思い出した。あの時はわかった、たいして躊躇うこともなく頷いた。だがそれはそんなこと起こるはずがない、自分達に限ってそんなことはありえない。そう思っていたからであろうと今は思う。しかしそれは起きてしまった。あの日の約束を果たさなければならない時が来てしまった。けれども苦しむ彼女の姿を見てその思いは揺らいでしまった。自分は約束を果たせるのだろうか、自分は、自分は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あぁあああぁぁあ!!」

 

「……っ!!」

 

耳の中に響き渡った叫び声に光はびくりと身体を震わせ顔を上げる。状況が飲み込めず瞬きしながら辺りを見回す。手錠をかけられ真っ白なシーツを全身に被せられて悲痛な叫びを上げもがき苦しむ胡桃。そしてその前で耳をふさいで力なくへたり込む悠里の姿。カタッと小さく音を立てながら座っていた椅子から立ち上がるとその音に気づき悠里がゆっくりと振り返ってこちらを見上げた。

 

「あ、ひかるくん起きたのね。」

 

「あぁ………やっぱり俺寝てたのか…」

 

「ええ、すごく顔色が悪くて今にも倒れそうだったから少し休んだ方がいいって言ったのだけど…覚えてないの?」

 

そう言って首をかしげる悠里だったが疲れきった顔やその顔色の悪さから見て彼女の方がよっぽど今にも倒れそうだと光は思った。自分もこんな感じなのだろうか。

 

「そういやゆき達は?」

 

「ゆきちゃんは部室にいるんじゃないかしら。みきさんは……薬を取りに行ったわ」

 

「…?薬って…くるみ治せるのか!?というか、そんなのどこにあったんだ?」

 

光は驚いたように悠里に詰め寄る。

 

「マニュアルに書いてあったのよ。地下の避難区画にあるって……」

 

「……は?」

 

悠里に言葉にぴたりと動きを止める。そしてすぐに

 

「1人で行かせたのか……?」

 

「偵察に行ってくるだけだって言っ…」

「くるみだってそう言って!!」

 

声を荒らげ悠里の言葉を遮る。悠里は肩をビクリと震わせ黙り込む。そして少し間を空けて答える。

 

「私も最初は同じように止めたわよ…でも相手がめぐねぇだったからこうなったんじゃないかって。自分ならめぐねぇを知らないから大丈夫だって…そしたら言い返せなくて…あなたはどうなの?相手がめぐねぇでもいつも通りできるの?」

 

そうまっすぐ光の目を見つめ問いかける。光は黙り込む。

確かにそうだろう。胡桃はいままで何度もやつらを仕留めてきた。そんな彼女がそれをためらい逆に深手を負ってきたのだ。理由などそれくらいしか考えられない。自分だったらどうか。相手は苦楽を共にした大切な人、彼女がいたから今自分達はこうして生きている。そんな恩人の息の根を止めることなどできるのか。

 

 

 

 

 

ふぅ、と大きく息を吐きぽんと悠里の左肩をたたく。そして彼女の横を通り過ぎ答える。

 

 

そんなもの決まっている。迷うことなど何もない。

 

「できるさ。相手が誰だとしても躊躇わないよ、ずっと前に決めたことだから。というか…助かるかもしれない命ともう助からない命だったらさ、助かるかもしれないほうを取るに決まってんだろ。」

 

そう言ってぎこちなくだが笑みをうかべる。

 

「そう…あなたも行くつもりなのね。」

 

「もちろん。お世話になったやつらが誰も行かないで面識のない後輩1人に見送りを任せるとかあの人に申し訳ないじゃん?だから行ってくる。みんなの分もまとめて俺が伝えてくるから。」

 

「ええ、じゃああなたに託すわ。よろしくね……」

 

わかった。そう言おうとしたその時だった。

 

 

 

 

 

「いやあぁぁぁあ!!」

 

突然部屋の外から聞こえてきた悲鳴に2人は驚く。今の声は間違いなく由紀のものだった。

 

「……ゆきちゃん!?」

 

「俺様子見に行ってく………!?」

 

そう言いかけて部屋を飛び出そうとした光だったが目の前に現れたソレに息をのみ言葉を失う。

 

そこに現れたのは本来ならこの階からは排除されいるはずのないかれらであった。しかも1体などではなく複数である。

 

すぐに扉の近くにいたものをクラブで転ばせ扉を閉め鍵を掛ける。大きな音を立て閉めたため複数のかれらが扉をドンドンと叩く。

部屋の奥まで下がり2人は様子をうかがう。

 

「うそ…どうしてここにあいつらが…もしかしてバリケードが壊された……?ゆきちゃんは……?」

 

「まじかよ、こんな時に…これじゃ外に出られねぇ…!」

 

2人は息をひそめ外にいるかれらがいなくなるのを待つ。途中胡桃が叫びだすこともあってなかなか静かにならなかったが10分ほどすると扉を叩く音は聞こえなくなった。

 

 

 

 

「だいぶおとなしくなったな、行くなら今かもしれない。」

 

「そうかもね…でも気をつけて近くにはいるはずだから…」

 

「そりゃあね。無事に部屋から出られればそれでいい、俺が出たらすぐに鍵閉めてくれよ。」

 

「えぇ…。信じて待ってるから…ちゃんと美紀さんと2人で無事に帰ってくるって。」

 

「当たり前だ、必ず薬も持って帰ってくるから………じゃ。」

 

そう言って扉に手をかける。

 

 

 

 

 

 

「いってらっしゃい。」

 

扉を開ける寸前そう悠里から声をかけられる。はっ、と小さく息を吐き出し動きを止める。それからそっと後ろを振り返り

 

 

 

 

「いってきます。」

 

そう笑顔で返し光は扉を開いた。

 

 

 

 

 

「……行こう。」

 

部屋から出てそう小さくつふやく。カチャリ。と鍵のかかる音がした、もう後戻りはできない。周りにかれらがいないのを確認し大きく深呼吸をする。

まずは美紀と合流しなければ。悠里の話では彼女は1人で地下に向かったと聞いた。おそらく胡桃のシャベルか何か武器になる物は持っているだろうが心配だ。まだ地下には行っていないはずだし彼女を探すことに専念しよう。そう決めて走り出す。階段の近くにさしかかるとこちらに向かい迫ってくるかれらが2体、そのうちの1体の足に横殴りでゴルフクラブを打ちつける。そうして転ばせた所でそのまま棒立ちになっているもう1体の後ろまで走り抜けそのまま頭に重い一撃をくらわせる。一撃で仕留め、転ばせた方の頭も殴り叩き割る。

 

階段を降り廊下に出ると複数のかれらが集まっている場所を見つける。よく見るとそこにはかれらに今にも囲まれそうになっている美紀の姿があった。

 

「あ、見つけた…!」

 

すぐに彼女を助けるため走りだそうまだこちらには気づいておらず背を向けているかれらを背後からなぎ払っていく。彼女の元へ早く駆けつけるのが目的のため正確さは求めずかれらを転ばせることのみを狙い続けた。

 

 

「みき大丈夫か!?」

 

そう言ってかれらを蹴飛ばしたりクラブで殴り倒しながら駆け寄った。

 

「え……先輩どうしてここに!?」

 

美紀は突然現れた光に驚き目を見開く。

 

「来ない訳にはいかないだろ。走れるか?こいつらどうにかして早く地下降りるぞ!」

 

「は、はい!もちろんです!!」

 

光は美紀の問いかけなどお構いなしにかれらに向かっていく。それにつられ美紀も走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

「なんとか地下まで来れましたね。私1人じゃダメだったかも…先輩ありがとうございます。…………先輩?」

 

 

「………ん、あぁ。俺も1人だったらこんな上手くいかなかったと思う。」

 

合流した2人は手際よくかれらから逃げ延びて目標としていた地下の避難区画までたどり着くことができていた。しかし地下へ続く階段が見えた頃から彼の様子がおかしいと気づいていた。話しかけても少し遅れて返事が帰ってきたり、先程までとは違う雰囲気で顔がこわばっているようであった。まるで恐怖を感じているかのような顔つきだった。地下に降りた2人は辺りを見回す。そこはあまり広くはなく、奥にはシャッターが中途半端に開いておりそこからさらに道が続いているようだ。

 

「あ、先輩床に血が…。これって……」

 

「くるみのだろうな。シャッターの辺りからずっと血が続いてるし多分あのシャッターの先に…」

 

そこまで言うと光は言葉を詰まらせる。額からは汗が流れごくりと息を呑む。背中にも汗が流れとても気持ち悪い。バクバクと先程までより早く心臓が脈打ちその音がうるさいくらい耳の中で響く。もう何も聞こえないしあの半開きになったシャッターしか目に入らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

いるのだ。あの向こうに『あの人』が。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思えば思うほど心臓が早く脈打ち息が荒くなる。汗もダラダラと流れ手足が震える。

 

いるんだ、あの向こうに。

怖い、怖い、怖い。会いたくない、会いたくない、会いたくない。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せんぱい。」

 

「……っ!」

 

やわらかな声が耳の中に流れる。そして手にも暖かな温もりを感じる。ゆっくりと下に目線を落とす。それは自分の手をやさしく包み込む美紀の手だった。目線を上に戻すといつもとは違うやさしさを感じる美紀のやわらかなほほ笑みがあった。そしてそのままやさしい声でゆっくりと語りかける。

 

 

「大丈夫ですか?先輩ものすごく具合が悪そうな顔してます。ちょっと落ちついて考えてみましょう。どうしていまここにいるんでしたっけ?」

 

「……くるみを、治すために薬、を取りにきた……。」

 

「そうですね。ちゃんと覚えてましたね、私たちはくるみ先輩のために薬を取りにきたんでしたよね。じゃあもう1つ質問です。」

 

光はぷつぷつと言葉を途切れさせながら答える。そして美紀は笑みをうかべ頷いて続ける。

 

 

 

 

 

 

「あなたは今1人ですか?それとも誰かと一緒にいますか?」

 

「……え?」

 

思いがけない質問に光はぽかんと美紀を見る。しかし美紀はじっと光を見つめ答えを待つ。

 

「ひとり、じゃない。……2人、みきが一緒にいる」

 

「そうです!私がいます。先輩はひとりじゃありません。私がついてます。私がそばにいます。だから大丈夫です、先輩みたいに役に立つかはわかりませんがちゃんとそばにいます。だから一緒にいきましょう、2人で行けばきっとなんとなかります。だからできる限りいつも通りいつもと同じようにいきましょう。そうすればきっとうまくいきます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美紀の言葉を聞き美紀の手の温かさを感じると次第にあれほどうるさく鳴っていた心臓はいつもと同じようにゆっくりと鳴り耳の中からも消えた。そして自然と笑みがこぼれた。

 

「ふふっ、落ちつきましたか?」

 

それを見ると美紀も満足そうに笑い返した。

 

「あぁ、ものすごくな。ありがとな、みき。もう大丈夫だ。」

 

「いえいえ、お役に立てたようでよかったです。」

 

「……行こう。早くみんなを安心させてやらないと。」

 

「はい。」と頷き美紀は握っていた手を離し床に置いていたシャベルをぎゅっと握りしめる。2人はゆっくりとシャッターをくぐりその先へと足を踏み入れた。




読んでいただきありがとうございました!

3ヶ月ぶりの更新になってしまいました…待っていた方がいたらほんとごめんなさいm(_ _)m大学ってすごい大変だなって、家帰ってきてからも小説書く元気や時間がなかったりして…やっと書けました(^_^;)

今回のお話ですがみーくんと光くんが地下に薬を取りいく話でした。
本当ならみーくんこういうことしないかもしれないけれどこういう優しいみーくんが見たくてこんな展開にしてみたんですがいかがでしたか?次回いよいよめぐねぇとの対面です。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m
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