この息が止まるその日まで   作:りんごあめ

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遅くなりました、すみません(T_T)

第二十四話よろしくお願いします。


第二十四話 「ぜんや」

「あまり時間もないだろうから今ここで決めたい。これからどうするのか、

 

俺達の『進路』について。」

 

 

 

 

 

光の言葉に真剣な表情で黙りこむ4人。光はさらに続ける。

 

「昨日の雨と大量になだれ込んできたやつらのせいで電気が使えなくなった。水も電動で汲み上げた訳だから同じように使えなくなるだろう。今はまだ非常用電源ってのがあるからそれでなんとかなるけどそれも2日もすればなくなる、正直もうこの学校を出た方がいいと思うんだ。やつらもいつ戻ってくるか分からないし出るなら今しかない」

 

彼の考えを聞き考えこんでいた彼女達であったが胡桃が手を挙げた。

 

「…仮にここを出るとして行くあてはあるのか?確かに電気も水も使えないここでまた大量のやつらに囲まれて暮らすよりはいいのかもしれないけど目的地とかはあるのか?」

 

「目的地なら書いてあっただろ、マニュアルに」

 

そう言うと光はマニュアルのあるページを開き指を指した。

 

「このページに緊急連絡先、それから拠点一覧ってのがあるだろ?拠点のとこにこの学校が書かれてるんだ。電気も水も通っていたここが拠点にされているってことは他の場所も同じように生活できるようになっている可能性がある、それからこの地図なんだけど…」

 

そう言って机の上に地図も広げる。

 

「この地図の2箇所まるで囲ってあるだろ?それにめぐねえっぽい字で避難先って書いてあるんだ」

 

「あっ!たしかにこれめぐねえの字だよ!えっと、聖イシドロス大学…とランダルコーポレーションって所に丸がついてるね、ここに行けばいいってことなのかな」

 

地図の字を確認すると由紀が頷いた。

 

「めぐねえ、ちゃんと私たちの進路考えててくれたのね…」

 

「じゃあこのどっちかを目指すとしてだ…ランダルコーポレーションってのはなんか怪しいなぁ…」

 

「就職か進学か、ですね…」

 

「どちらを目指すとしても俺が心配なことは、仮に向こうに先に避難してる人がいたとして俺達を素直に受け入れてくれんのかってことだ。言葉が通じて頭が働く分、場合によってはあいつらよりも面倒なことになるかもしれない。」

 

光の言葉に胡桃達は「確かに。」と不安げにうつむく中、由紀が口を開いた。

 

 

「私は進学したいなー。就職しちゃったらみんな忙しくなってなかなか会えなくなるかもしれないし。それにもし学校でいじわるされても何回もみんなでお願いしますって頑張れば仲良くできるかもしれないし。私はみんなともっと一緒にいたいな」

 

にこやかな笑みを浮かべながら言う由紀に4人は顔を見合わせるとやがて笑みをこぼした。

 

「ははっ、あたしはゆきに賛成だな。あたしももっとみんなで一緒にいたい」

 

「私もそう思うわ。みんなで一緒にいることが大切だと思う」

 

「私も賛成です。もし上手くいかないことがあったらその時はその時です。5人で乗り越えればいいだけです」

 

そんな4人の答えを聞き光は4人を見ながら言う。

 

「じゃあ目的地は大学、ってことで決まりだな」

 

5人が力強く頷くと突然由紀がぱっと顔を輝かせた。

 

 

 

「じゃあ卒業式、やろ!学校を出て新しい所に旅立つってことは卒業するってことだよね、だからやろうよ卒業式!」

 

「あの、私3年生じゃないんですけど…?」

 

「みーくんは……うん、頭いいし飛び級で卒業!ってことで」

 

「そんなのでいいんでしょうか…。」

 

「まあまあ、あたしはそんな細かいことは気にしなくていいと思うぞ。そういうことでいいんじゃね」

 

「それなら卒業証書とか飾りつけとかいろいろ準備しないとね」

 

「学園生活部最後の部活動、だな。それならすぐに準備始めちゃおうぜ」

 

「「「「おー!」」」」

 

 

 

 

そうして学園生活部最後の部活動を行うための準備が始まった。

卒業式は翌日に行うことになりそれぞれ役割を分担することとなった。

卒業証書を作る者、飾りつけをする者、送辞を書く者、答辞を書く者、学校の掃除をする者、みなそれぞれ明日の準備を進めていった。

 

明日にはもう長く世話になったこの学校を出るというのに誰も寂しそうな素振りは見せず皆笑顔で作業に取り掛かっておりどこか楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日の夜、夕食を済ませてからは特にやることもないし明日に備えて早く寝ようということになりいつもより少し早く就寝することになった。その際少し夜風に当たってくると部屋を後にしまたもや屋上にやって来ていた。ただ何をするでもなく座りこみひたすら夜空を眺めていた。

 

 

ガチャリと扉が開く音がする。誰かと思いそちらを見ると現れたのは胡桃だった。よぉ、と軽く片手を上げるとどこかそわそわしたようにこちらに歩いてきた。

 

「なんだまだ寝てなかったのか。他のみんなは?」

 

「え、あー、多分寝てると思う。おまえの様子を見てくるから先に寝ててって言っといた」

 

そう。と軽く返事をすると光はさきほどから気になっていたことを問いかけた。

 

「入ってきた時から思ってたんだけどどうした?ずっと片腕だけジャージの中に突っ込んで…。何か隠してんのか?」

 

そう言われると胡桃はぴくりと肩を震わせた。1度大きく深呼吸をすると勢いよく光の前へと突き出した。

 

 

 

 

 

 

 

勢いよく自分の前に腕を突き出され彼は驚いて目を見開かせた。正確には彼女がその手に持っている黒く光る物に対してだが。

 

 

 

「じょ、冗談はよしてくれ、なんの真似だぁー……。」

 

 

 

 

「乗らなくていいって!こんなふうに出したあたしがいうのもなんだけど!」

 

両手を上げながら棒読みで言う光の腕を下げさせながら胡桃が言う。

 

「はいはい、ほんとその通りだよ。なんでおもちゃの銃なんか持ってきたんだよ、てかどこにあったんだそれ」

 

「地下の探索してる時に見つけたんだ……ていうかこれおもちゃじゃないぞ」

 

 

「………は、今なんて言った?」

 

おもちゃじゃない、その一言に光は固まり思わず聞き返す。

 

「だから…これ多分本物なんだって。結構重いし、地下には弾もあったし……ほら持ってみろよ」

 

差し出された銃を受け取り光は顔を強ばらせる。

その銃はおもちゃというにはあまりにも重すぎた。地下に弾もあったということからおそらく本物の銃なのだろう。なぜ銃などという危険な物がここにあるのか、様々な考えが頭をよぎる。

 

「やっぱりあいつらから身を守るために置いてあったのかな……」

 

「いや、確実に頭に当てないといけないし拳銃なんて素人には持っていてもあまり意味はない。とすると他の理由で、例えば………」

 

「例えば?」

 

 

 

 

 

 

人間相手に使うため。

これ以上彼女を不安にさせたくなかったため口には出さなかったが彼はそう考えた。人間同士での抗争の際、拳銃を持っているだけでも脅しの道具として効果を発揮する。このような状況では争いが起きないはずがない。感染者の駆除よりもむしろそのためにあるのではないかと彼は考えずにいられなかった。

 

 

「さあ?なんだろうな。とりあえずこの銃だけど……」

 

 

 

そう言ってなんの躊躇もなく後ろに振りかぶると、そのまま校庭の方を向いてぽい、と放り投げた。

 

「あー!なにしてんだよ!?」

 

「いらないだろあんな物。あんなのが無くても俺達は生きていける」

 

「そっか、そうだな……。」

 

拳銃を投げ捨てられ慌てていた胡桃だったが納得したように頷いた…かと思うと今度は不安げな顔でその場にしゃがみこんだ。

 

「なぁ、あたしこれから生きていけるのかな……?」

 

「なんだ、急に心配にでもなったか?」

 

「いままではこの学校であたしたちだけで好き勝手やって生きてたけどこれからはそうもいかないかもしれないだろ?他の生存者と会えたとして必ずしも仲良くやってけるとは限らないっておまえも言ってたろ。そういうこと考えると不安にもなっちゃうよ……」

 

「それでもなんとかしなくちゃいけないだろうな……。」

 

そう言いながら彼女と同じ目線になるようしゃがみこむ。

 

「ここを出ても誰とも争うことなくみんなで生きていけるなんて思っちゃいないさ。どうにか上手いことやって生きなきゃ。俺達は大丈夫だってそう約束もしたし今更後には引けない」

 

「……約束?」

 

「5人で力合わせて乗り越えていくからって俺達は大丈夫だからって、約束したんだ………約束して、俺はめぐねえを殺したから……。」

 

「…っ!殺したって……そんなことないだろあれは殺したとは言わないよ……!」

 

 

「いや、殺しちゃったんだよ。めぐねえのことも、自分自身のことも」

 

そう言って苦笑する光を意味がわからない、と言いたげに険しい表情で見る胡桃をよそに話を続ける。

 

「あの時、めぐねえを終わらせた時、自分の中で何かが無くなったような…上手く言えないけどそんな感じがしてさ。お前が無事に目を覚ました時みんな泣いて喜んだり太郎丸が死んて泣いて悲しんでいた時全く涙なんて出てこなかったんだよ。ちゃんと嬉しいとか悲しいとかは感じたのにな。太郎丸のことに関しては死んじゃったかー、ぐらいにしか感じなかったんだよ。変に乾いちまったっていうのかな…特に誰かが死ぬことに関してはもうほとんど何も感じなくなってるのかもしれない」

 

「そうか……ごめんあたしのせいで…」

 

話を聞いた胡桃が顔をうずくめながら悲しげに言った。

 

「謝る必要なんかないだろ、これはお前のせいなんかじゃない俺がおかしいだけだから」

 

鼻で笑うように彼は否定した。彼女を責める気なんて微塵もない。自分が勝手におかしくなっただけ、ただそれだけのことなのだから。

 

「でも!お前らのことは大切だと思ってる、それだけは絶対に変わらないから」

 

「それはなんかちょっと恥ずかしいな……。嬉しいけど」

 

「お前らがいるから俺はまだ生きようと思ってるんだ。もう俺にはお前らしかいないから、そのためならもうなんだってするだろうな」

 

「それは頼りなるな…ははっ、じゃあこれからもみんなのことをよろしくな」

 

そう言って2人は笑みを浮かべた。それから少しして光がよし、と立ち上がった。

 

「俺達もそろそろ寝ようぜ。卒業式午前中からやるんだし」

 

「そうだなー。ふぁぁ…ちょうど眠くなってきたしそろそろ戻るかぁ」

 

互いにあくびをしながら後にする。部屋に戻ると他の3人はやはりもう眠りについていてすぅすぅと寝息を立てていた。

 

「じゃあおやすみ。」

 

「おう、おやすみまた明日な。」

 

胡桃と挨拶を済ませる布団に潜り込むとすぐにまぶたが重くなってきた。5分もしないうちに彼も寝息を立て始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌朝、制服に着替え全員でいつもの部室でいつものように朝食をとる。

全員の食事を済みほっと一息ついた頃、5人はそれぞれ顔を見合わせてから笑みを浮かべる。そろそろ行こうと立ち上がり昨日のうちに飾り付けも済ませた教室へと揃って移動する。

5つ横並びに並べられた椅子の前に1人ひとり立っていく。

5人全員が椅子の前に立ったのを確認すると悠里が前を向きすぅ、と息を吸う。そして、

 

 

 

 

「それではこれより巡ヶ丘学院高校の卒業証書授与式を執り行います」

 

 

 

 

5人だけの卒業式、学園生活部最後の部活動が始まった。




読んでいただきありがとうございました!

今回はこれからの進路、そして卒業式前夜のお話でした。アニメでは銃は出てなかったけど原作では出てきてるんですよねーいろいろと話は違いますが(^_^;)
次回ようやく高校編最終話です。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m
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