この息が止まるその日まで   作:りんごあめ

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高校編最終話です

第二十五話よろしくお願いします。


第二十五話 「そつぎょう」

「在校生、送辞」

 

ショートカットの銀髪をした生徒が静かに教壇の前に立ち一礼をする。2年生の直樹美紀である。

5人だけで執り行われる卒業式は彼女の送辞から始まった。

 

「月日の流れるのはとても早いものです。先輩たちと会ったばかりと思っていたのに、もう卒業の季節なのですね」

 

原稿をまっすぐ見つめいつもと同じような真面目さを感じさせる声で読み始めた。

 

「この学校の外には大きな未来が広がっています。社会の荒波の中に漕ぎ出していく自分を思うと誇らしさと同時に不安も感じます。

 

そんな私に先輩たちは学園生活部に誘ってくれました。」

 

 

そう言うとさきほどまでの固い声色が少しほぐれ懐かしむように柔らかな声になり読むのを続けた。

 

「そこで私は自分の力を信じ努力すること。

困難に立ち向かう勇気。

どんな時でもくじけない明るい心。

誰かのためを想い歩み続ける優しさを知りました。

 

だからもう、不安はありません」

 

そう言い切ると目に涙をうかべながら声を震わせ、顔を上げ前にいる4人を1人ずつしっかり見つめる。

 

「先輩たちなら、そして私も…学園生活部で得たことを活かせばこれから何があっても立ち向かっていけると思うからです。

ほんとうに……ほんとうにありがとうございました。

 

………在校生代表兼卒業生 直樹美紀」

 

最後に再び一礼をし、温かい拍手に彼女は思わず涙をこぼした。ほんのり笑みをうかべ自分の座席へと戻る。

 

それを確認すると茶髪のロングヘアをしている生徒、若狭悠里が次を読み上げる。

 

 

「続いて卒業生答辞」

 

「はい!」

 

元気よく返事をして歩みだしたのは美紀よりほんの少しだけ長い桃色の髪をした生徒、丈槍由紀だ。今日はいつもと違い髪を2箇所肩の辺りで結んでいる。

 

少し強ばった表情で原稿を勢いよく広げると美紀を見てペコりと頭を下げながら読み始めた。

 

「直樹美紀さん心に迫る答辞をどうもありがとう!

私たちにとってみーくん……美紀さん?美紀、さん、との…」

「みーくんでいいです……」

 

「えへへ……ごめん、じゃあみーくん!」

 

どうも腑に落ちないと言ったように自分の名前を言う由紀に見兼ねた美紀が赤い目をこすりながらふてくされたように返す。

 

そんな2人のやり取りに紫がかった髪をツインテールにしたている恵飛須沢胡桃と5人の中で唯一の男子生徒である明日野光が笑いをこらえようと肩を震わせながら下を向いた。

 

 

それまで笑っていた由紀だったがやがてどこか寂しそうな顔をして答辞を続けた。

 

「…みーくんとの出会いはとても大切なものでした

 

あのね、私たちみーくんがいたから頑張れたんだよ。

他にも、太郎丸やめぐねえとかもいて。いなくなっちゃった人もいるけど………一緒に卒業できて嬉しい…です。これからも…ずっと、ずっと一緒にいま…しょう、

卒業生代表 …… 丈槍由紀」

 

ポタポタと涙を落としていた由紀はそう言うと顔を原稿にうずめた。その様子に彼女達も涙を流しながら駆け寄った。彼女の頭を撫でたり労いの声をかけている中に彼も少し遅れて歩みよる。その時ふと彼女の持つ原稿用紙が見えその中身に驚いた。

 

彼女の持つ髪には何も書かれていなかった。白紙の原稿用紙に書かれている振りをして彼女はいま思うありのままの気持ちを伝えていた。

それも由紀らしいな、と思い笑みをうかべて光は「がんばったな。」と

つぶやいた。

 

 

 

「卒業証書授与」

 

由紀達が落ち着くのを待ってから式は次へと進んだ。

 

さて。と一言つぶやきながら光が教壇に立つ。彼が証書を渡すことになっていたからだ。すると彼は教卓の中をごそごそと探るとある物を取り出しそれを身につけた。

 

 

 

 

「ぷっ、あははは!ひかるくんなにそれ〜!」

 

「お、おまえなにしてんだよ!笑わせんなって!…ははは」

 

「ふ、ふふ…どうしたのそれ?」

 

「何してるんですかまったく………ふっ」

 

3人は思わず吹き出し笑い声を上げる。そんな中美紀だけは呆れたような顔をして光を見る、が口元をむにむにと動かしている。どうやら笑いをこらえようとしているらしい。

 

彼が身につけたのは宴会芸などで使うような丸メガネとヒゲがくっついているものである。それを突然真顔でつけだしたため彼女達は思わず吹き出したのだ。

 

「いや、なんか校長先生感でるかなって思って付けてみた。」

 

「そ、そういうことか。ってかそんなもんどこにあったんだよ」

 

「校長室。昨日掃除してる時見つけた」

 

「ゴルフクラブといい、うちの校長先生ちょっと変わってるわね…」

 

「……まあとにかく始めんぞー最初は美紀だっけか」

 

 

ごほん、と咳払いをして早く始めるよう促す。卒業証書を渡す順番は前日に由紀の提案でくじ引きで決めた。美紀から始まり最後は光ということになっている。

 

「卒業証書 直樹美紀。おめでとう、これからもよろしくな」

 

「……はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

優しげな笑みをうかべ証書を受け取る彼女を見送って次の名前を呼ぶ。

 

「じゃ、次 若狭悠里。」

 

「…はい」

 

「おめでとう。…いつもいろいろと頑張ってくれてありがとな」

 

「ううん、ひかるくんこそいつもみんなのために頑張ってくれてるし、こちらこそありがとう」

 

そう言って笑い証書を手渡した。

 

「次は……丈槍由紀。」

 

「は、はい!!」

 

少しだけいつもより大きな声で元気よく手を挙げ教壇の前に立つ。そんな由紀におもわず笑いをこぼしながらも証書を手渡した。

 

「おめでとう、これからもいままで通り元気よくいてくれよ?」

 

「うん、もちろん!ひかるくんメガネとおひげ似合ってるよ。あ、そうだちょっとお願いがあるんだけどー」

 

「おう……あ、ありがと。お願いって?」

 

「あのね、私もやってみたい!卒業証書渡すの!」

 

「おう、別にいいぞ。じゃあくるみのやつを任せた」

 

「ありがとう〜!じゃあそのメガネとおひげも貸して?」

 

「え…自分で付けといてなんだけどこれ必要か?」

 

「必要だよ!私も校長先生なりたいもん!」

 

由紀が鼻息荒く詰め寄ってくるので身を引きながら付けていたメガネを渡した。満足そうにそれを付けるとにやりと笑う。

 

「じゃあ…ごほん、恵飛須沢胡桃君!」

 

「…はい、なんで君付けなんだよ……。」

 

やれやれ、と言ったような顔をして教壇の前に立つ胡桃。由紀はそんな彼女に何か企んでいるような笑みをうかべていた。

 

 

 

「卒業証書、恵飛須沢胡桃。おめでとう!」

 

「はい、どうも……っておい!引っこめんな、早く渡せ〜!」

 

「ふふーん、引っかかったねくるみちゃん!そう簡単には渡さないよ〜?」

 

「おまえさてはこれがやりたかっただけだな!?あ、ちょ…こんにゃろ、ちょこまかと……!」

 

胡桃が受け取る寸前、由紀が証書を引っこめさらにそれを渡すまいと右に左に揺さぶる。そしてそれを取ろうと必死に腕をバタバタ伸ばす胡桃。そんな2人の戯れに彼らは声を出し笑う。その後数十秒の格闘の末、証書を奪い取ることに成功した胡桃の勝利で決着が付いた。

 

 

 

 

 

「ゆき、おまえ後で覚えとけよ…?」

 

「もう〜そんなカッカしないで〜…シワが増えちゃうよ?」

 

「シワが増えるとしたらそれは一体のせいだろうなぁ〜……?」

 

「う〜…ご、ごめんなひゃい…ひゅみまへんでひた〜!」

 

ニヤニヤと笑っていたが頬をひっぱりぐにぐにされ涙目になりながら謝る由紀にふん、と鼻息を荒くしていた胡桃はその手を離しため息をつく。そうしてからスタスタと教壇に立つと横にいる光を見て言った。

 

「最後はおまえだぞ。ほら、あたしが渡すからさ」

 

「あ、そっかそうだったな。ところでくるみ」

 

「ん?なんだ?」

 

 

 

 

 

「ヒゲとメガネは付けないのか?」

 

「付けんわ!」

 

 

 

 

 

 

「卒業証書、 明日野光。……はい、卒業おめでとう」

 

「はい、どうもありがとうございます……。」

 

由紀の件がなければ食らわなかっただろうチョップでヒリヒリする頭をさすりながら卒業証書を受け取る。不機嫌だった所にさらに油を注ぐようなことをしたのだから仕方ない。そんな光の姿にはぁ、と息を吐きながら胡桃が口を開いた。

 

 

 

「…まぁおまえにはいろいろ感謝してる。世話になった、みんなのことよろしくな。」

 

「……?そりゃもちろん。こっちこそこれからもよろしく」

 

「あぁ、よろしく…」

 

恥ずかしそうに、そしてどこか寂しげな顔をして頬をかく胡桃に笑みをうかべながら席に戻る。全員に証書の授与がされたため式は次へと進んだ。

 

 

卒業式の定番ともいえる歌を最後に歌い、式は終わりを迎えた。皆笑顔で教室を後にしていく中、最後に出ようとした光はふと何気なく後ろを振り返った。

 

 

 

 

そこには満面の笑みで自分達を見送るめぐねえがいた…気がした。由紀でもあるまいしと困ったように1人で笑う。そして前を向き直し教室を出る前に一言、

 

 

 

「ありがとうございました」

 

あの時と同じその言葉をもう一度つぶやき教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「みんな忘れ物はないか?出発してからあったとしても取りには行かないからな。」

 

「なんか前もおんなじようなこと言ってたよな…みんな大丈夫かー?」

 

「私は大丈夫です。ゆき先輩も何回も確認しましたし大丈夫ですよね?」

 

「もう…みーくんが言うから何回も一緒に確認したじゃん…大丈夫だってば〜」

 

「私も大丈夫よ、くるみたちも大丈夫?」

 

「うん大丈夫だ」

 

「俺も。………じゃあそろそろ行くか」

 

 

それが合図となり胡桃がエンジンをかける。そしてゆっくりとアクセルを踏み車は進みだす。

 

 

学校の外の世界へと。

 

彼女達がこれからの話に花を咲かせている中、光は1人助手席から外を眺めながらもう一度改めて胸の内を確認する。

 

 

 

 

外へ出ればこれまで以上に危険が伴うだろう。自分がどうにかしなければ。もしかしたら他の生存者に会うことがあるかもしれない。その時だって争いが起きたりして自分達に危険が及ぶこともあるだろう。どんなに友好的な態度を取ってきても警戒はしなければならない。彼女達以外はそう簡単に信用しない。今ある大切なものを失わないために、その為に自分の考え得る最高最善の判断を下す、たとえそれで自分がどうなってでも彼女達のために動き続けよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この息が止まるその日まで




読んでいただきありがとうございました!

これで高校でのお話は終わりとなり彼らは外の世界へと旅立ちました。
書くのが遅いあまりこの小説を投稿してからほぼ1年経ってしまいました(^^;

自分的にはもう1年かぁ…としみじみと思っております笑
これからも自分なりに頑張っていくので応援よろしくお願いします

ここからは先はオリジナルの展開もあるかも……?(^^;
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