第二十六話よろしくお願いします。
第二十六話 「たびだち」
卒業式を行い学校の外へと旅立った学園生活部の5人。あれから2日ほど経ったが車に乗っているにも関わらず未だに高校からはそう離れていない。なぜなら、
「ここもダメだな、ちょっと戻って他の道探すぞ」
「はいよー……後ろ大丈夫かー?」
「ええ、大丈夫よ。下がっていいわ」
「んーなかなか進めないね」
「はい、乗り捨てられた車や倒れている電柱が多いですもんね、仕方ありません」
地図上では進める道も今はパンデミックにより持ち主のいない車や折れて倒れた電柱によって通れなくなっている場所がたくさんあった。そのため思うように進めずにいたのだ。
「よしよし、この辺りは大丈夫そうだな、おいゆきー次はどっちだ?」
「んーと…三丁目五番地だから多分、次の角右に曲がってー」
「よっしゃ」
道の案内を地図を読むのが得意な由紀に任せ胡桃が指示の通り運転をする。するとそんな中、由紀が声をかけた。
「ねぇ、くるみちゃん」
「んー?」
「卒業旅行たのしいね」
「そうだな……っあ!」
名前を呼ばれちらりと横目で由紀を見ながら角を曲がろうとする。するとちょうど角を曲がったところにかれらが1体現れ慌ててハンドルを切る。キキーッと甲高い音を出しながらなんとか何にもぶつかることなく曲がりきった。胡桃と助手席に座る光は安堵の表情を浮かべる。しかし後ろの方からくぐもった声が聞こえてきたため後ろを振り返ってみると
、
「ゆきちゃん…あんまり運転している人に話しかけちゃダメよ……?」
「う、うん。ごみん………」
「あの、2人ともはやくどいてください、私…つぶれそうです………。」
勢いよく曲がったせいで後ろに座る3人は片方にぎゅうぎゅうと押し込められる形になり美紀がドアと由紀達2人に挟まれ窮屈そうにしていた。本人の言うようにつぶされそうになっている。
そんなトラブルもありながら運転をしているうちにコンビニをみつけ車を停める。胡桃が疲れたようにあくびをしながら腕を伸ばし「今日はここまでだな」と言う。既に夕方になっておりこれ以上動くのは危険だからだ。
車があるため夜でも進むこと自体はできる。しかし暗い夜道ではライトを付けながら走らなければならない。光や音に反応して集まるかれらに対してとても目立ち危険な状態に陥りやすい。そのため日が暮れる前に車を停め翌日に備えるようにしていた。
「そうね、今日はここまでにしておきましょう。くるみお疲れ様」
「今日も車までお泊まりか〜布団が恋しいよぉ…」
「確かに。俺たち5人で寝るには窮屈すぎるもんな」
車で移動するためこれまでのような決まった寝床などなく常に全員で車中泊をしていた。足を伸ばしてゆっくり眠ることができない、学校を出てからというものこれが彼らの頭を悩ませていた。
「まぁ、他に寝るとこなんかないし我慢するしかないって。よし、コンビニになんかないか一応見てくるよ」
「俺も行ってくる。そんな時間かかんないと思うからちょっと待っててくれ」
そう言って光と胡桃がドアを開けようとすると由紀が声を上げ2人を呼び止めた。
「私も行きたいなーねぇねぇ、いいでしょ?」
「いいっていいって。どうせすぐ終わるから」
そう答えて車から降りると由紀もすぐに美紀にドアを開けてもらい車から降りた。
「くるみちゃんたち運転で疲れてるでしょ?一緒に行くよ」
そう言ってなぜか目をキラキラ輝かせじっと見つめてくる由紀。そんな彼女に胡桃が歩み寄ると頬にそっと自分の手をあてた。
「わ、冷たっ!ちょ、くすぐったいよ〜…」
由紀が驚いたように声を上げるとそのまま両手で顔をむにむにとくすぐった。
「ゆきに化けた宇宙人めー本物のゆきはどこだー」
「うう〜…手伝うって言ったのにこの仕打ち…」
「はは……ちなみにゆき、ほんとのところは?」
苦笑しながら光が尋ねると観念したようにえへへと笑いながら言った。
「…コンビニでマンガでも読みたいなって」
「ですよね。」
そんなことだろうと思ったといわんばかりに息を吐きながら歩きだす。そしてそのまま、
「ちゃんと気をつけんだぞ〜」
とあくびをしながら言って中に入っていった。
「あくびしながら入って行くようなやつに気をつけろとか言われても説得力ないんだけど…」
「ほらいいってさ!はやく行こくるみちゃん!」
「わかったわかった」
ご機嫌な由紀に背中を押され胡桃達もコンビニに入っていった。
ライトで照らしながら店の中を物色していく。無論かれらが突然現れたりすることへの警戒も怠らない。
「だいぶ荒らされてるな」
「こりゃダメだな」
店内を歩き回ったがこれといって役に立ちそうな物は見つからなかった。水などの飲食物もほとんどなくなっており他の誰かが既に持ち去ったのかもしれないという結論に至った。
「とりあえずあたし裏を見てくるからここで待ってろよ」
「りょーかい、じゃあ床そうじしとくね」
パタパタと走りだし売り物として出されていたほうきを手に取ると手際よく掃除をしていった。
由紀は少し変わった。これまでのふわふわとした雰囲気が少し落ちつきや余裕があるように感じていた。どうやら胡桃も同じようなことを思っていたのかそんな由紀の姿をまじまじと見つめていた。
「なぁ、おまえ最近ちょっと………」
「美人になったなー?…えへへ、そうかな〜?」
「はあ!?ちがっ…」
胡桃が言いかけると由紀が被せて照れたようにニヤニヤして頭をかいた。
「クールビューティー?」
「クールでもビューティでもねぇよ!」
「わー!ひどいよくるみちゃん、わ、私だってお化粧とかすれば…」
……やっぱり変わってなかったかもしれない。
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「いや〜ここに停めて正解だったな、あたしの目に狂いはなかったわけだ」
「たまたまなのに何言ってんだ、まぁでも本当にここでよかったな。まさか布団があるとは」
コンビニの奥、休憩室などにでも使われていた部屋で5人は久々の布団のありがたさを堪能しながら寝転んでいた。
胡桃が1人で探索に入った部屋、そこはなかなかの広さで仮眠が取れるようにでもしていたのか布団が置いてあったり品出し前の食料などのダンボールまでおかれていた。
「見た感じちょっと大きいコンビニだとは思ってましたけど布団まであるとは思いもしませんでしたね…」
「ええ、久しぶりに足を伸ばせるしゆっくり眠れそうね。掃除までさせちゃってごめんね、呼んでくれればやったんだけれど」
美紀と悠里も満足そうに笑みを浮かべている。そんな中、由紀が突然笑いだす。
「ふふふ、こうやってみんなで眠れるのは私がここをそうじしたからなんだよ?みんな感謝するんだよ〜?」
「え!うそ…」
間髪入れずに美紀から信じられないといった反応をされ半泣きで美紀にをゆさぶる。すると今度は胡桃が、
「なんか最近役に立つよなー」
「くるみちゃんまで!?まるで普段は役立たずみたいな〜……」
「ははは、嘘だよ」
「そ、ずっと役に立ってるって俺達は分かってるから」
べそをかきはじめた由紀にそう笑いかける。由紀は恥ずかしくなったのか布団に潜り込んでつぶやく。
「そ、そうかな?」
「それは間違いありません」
「ゆきちゃんはもう大丈夫ね…」
皆からそう言われ由紀はやはり恥ずかしいのだろう、布団にくるまったまま「…うん」と小さな声で答えた。
「じゃあみんなそろそろ寝ましょうか」
「そうですね、おやすみなさい」
「「「「おやすみー」」」」
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翌日。運転席に光が助手席に由紀が、他の3人が後ろにといったように座りゆっくりと出発する。
「じ、じゃあ音楽かけるね?」
「変なトコ押すなよー?」
「大丈夫だよ!……多分」
胡桃に茶化され不服そうに頬を膨らませてCDを入れボタンを押す。めぐねえの私物であろうCDを車の中で見つけたため気分を上げるためそれをかけようとなったのだ。
ボタンが押されどんな音楽が流れてくるのかと5人は耳を澄ませる。
そんな彼らをよそにスピーカーから聞こえてきたのは、
『ねぇねぇ、誰か聞いてる?
こちらは巡々丘ワンワン放送局!
この世の終わりを生きてるみんな元気かーい?
今日も元気にはっじめるよー!』
聞こえてきたのは歌声ではく活発な印象を抱かせる女性の声だった。
読んでいただきありがとうございました!
前回までで高校編が終わり今回からは卒業旅行編となります。原作の6巻からのところですね。実は高校でのお話よりここからの話を書くのを楽しみにしていました(^^;
書いてみたかった話がいくつかあるので少しでもおもしろいと思ってもらえるよう頑張りますので
次回もよろしくお願いしますm(_ _)m