この息が止まるその日まで   作:りんごあめ

31 / 35
最近がっこうぐらしの小説の投稿されている数が増えているような感じがするのは気のせいだろうか…?

第三十話よろしくお願いします。


第三十話 「やくそく」

「はぁ〜……」

 

「ん、お前がため息とは珍しいな。どうしたんだ?」

 

普段は常に明るく元気のある由紀が不満げにため息をついていた。光が訊ねると由紀はその理由を打ち明けた。

 

「お風呂入りたいなーって、やっぱり年頃の女の子としてはそう思うんだよ〜。ね、みーくんもそう思うよね?」

 

「まぁゆっくり体を洗いたいところではありますね」

 

美紀が読んでいた本から目線を上げひと言そう頷いた。

 

「でしょでしょ!ねぇ涼音さーんこの車ってお風呂とかはないんだよね?」

 

「ごめんね、さすがにお風呂はついてないかな〜」

 

運転中の涼音が鏡越しに由紀を見ながら答えた。

 

「お風呂も大事だけどそろそろ洗濯もしないと着替えもないわよ」

 

悠里が続けて声を上げた。

 

「確かにそうだな、どうする?」

 

「……よし!」

 

しばしの沈黙の後、胡桃がバンと机を両手で叩きながら立ち上がる。そのまま運転席の涼音の所まで行き何かを訊ねる。その後涼音がにこりと笑うと胡桃は先程まで座っていた席に座った。

 

「くるみ先輩なにを話してたんですか?」

 

そう問われた胡桃はニヤリと笑い自信ありげに答えた。

 

「ゆきとりーさんの要望が叶えられるいい場所が思いついたんだよ」

 

それから5分ほど経つと車が止まり胡桃は降りるように促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆき、準備はいいかー!」

 

「お着替え完了!準備万端だよ!」

 

「よし!行くぞ〜!」

 

「おお〜!」

 

水着に着替えた2人がかけ声と共に走り出す。

 

 

 

「2人とも元気ね〜」

 

「やっぱくるみもゆきに負けず劣らずアレだよな…」

 

「あの、さすがに今の季節だとちょっと厳しいんじゃ…」

 

「やっぱり若者の発想力ってすごいね〜ちょっと真似できないや…」

 

4人がなんとも言えない目で見守る中、由紀と胡桃は勢いよく飛び込んだ。川に。

 

 

 

 

「冷たああああ!!」

 

水の跳ねる音が聞こえてくるのと同時に由紀の声が響いた……。

 

「ですよね……」

 

「あったかいお茶用意してくるわね」

 

「じゃあ私もタオル取りに戻ります」

 

「あっ!向こうから2人来てるよ!」

 

「今の音に釣られて来たのかもな…。あっちは俺に任せてお前らは車に戻っててくれ」

 

そう言うと悠里達は車へ、光はかれらめがけて駆けだした。

 

 

 

 

 

 

「さすがに川の水は冷たいわよね」

 

「りーさん、そそそういうのはささ、さきに言って……」

 

「はいお茶どうぞ」

「あ、ありがと涼音さん…」

 

悠里に髪をタオルで拭いてもらいながら涼音が渡されたお茶をすすり由紀は寒さに体を震わせる。

 

そんなやり取りを見ながら光達3人は川の水を洗面器に汲み洗濯をしていた。

 

「くるみ先輩は……平気なんですね」

 

「そりゃ鍛え方が違うからな、これくらいどうってことないよ」

 

「鍛え方、ねぇ……。」

 

「なんだよその何か言いたげな目は」

 

「……いや、別に」

 

胡桃から怪訝そうな顔で睨まれながら川の水は思っていたより冷たい、と肩をぶるっと震わせながら光はぼんやりつぶやいた。

 

「まさか川で洗濯、なんてことをする日がくるとは思わなかったなぁ…」

 

「まぁそうだな。昔ばなしではよく聞いたけど実際に自分がやることなんて普通はないもんな」

 

「そうですね。そう考えるとこうやって洗濯するのも案外楽しく思えてきます」

 

そう言いながらクスリと笑う美紀はさらに話を続ける。

 

「なんか久しぶりですよね。こういうの」

 

「こういうのって?」

 

「ゆき先輩が後先考えないで突っ走ってみんなで頭抱えて。みたいな」

 

「言われてみればそうかもな」

 

「ゆき先輩、最近なんていうかその……」

 

「頼れるようになった?」

 

「あ、ひかる先輩それです!」

 

どうやらしっくりきたらしくパッと顔を輝かせ彼を見ると話を続けていく。

 

「頼れるゆき先輩もいいんですけどなんかちょっと物足りなくて」

 

「あんなにゆきのことを否定的だったみきがそんなことを言うとはな。まぁでもわかるよその気持ち」

 

「もう!いつの話をしてるんですか、最初だけですから、今はもう違います」

 

ニヤニヤしながら笑う胡桃に恥ずかしそうに美紀が抗議する。その後にこほん、と咳払いをして話を戻そうとする。

 

「とにかくですね!…大学もいいですけどもう少し、このままでいいかなって思うんです」

 

「先へ進もうと決めたのは俺達だけど確かにそういう気持ちも分かるよ。学校にいた時の方が多少は安定した生活できてたような気もするし」

 

「でもまあ、そうもいかないだろ」

 

洗ってた服をパッと伸ばしながら胡桃が立ち上がる。

 

「こっちがこのままでいたいと思ってもあっちから来たりすんだろ?」

 

「それは……そうですね」

 

 

 

「じゃあ『準備』しとかないとな」

 

そう言って2人を見下ろして微笑む。その時の顔がやけに気になった。

 

 

なにかを決意したようなまっすぐと見つめてくる力のある瞳が。

 

そしてどこか寂しげな儚さを感じさせるような曇りのある笑みが。

 

そんな彼女の顔が彼の頭から離れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くるみ先輩までまともなこと言うなんて……」

「ちょっと待ておまえん中であたしそういうキャラだったのか!?」

 

「ほんと信じられねぇよな…なんかヘンな物でも食ったか?」

 

「おまえもかよ!」

 

光と美紀が笑い出すのに釣られて笑った胡桃の表情はさきほどと違い曇りのない笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その夜、何か物音がしたような気がして彼は目を覚ます。

ぼんやりと眠い目をこすりながらふと窓の外を覗く、直後ベットから飛び起きるとゴルフクラブを取り車を降りた。

 

「あのバカ…!何考えてんだよ!」

 

 

 

 

窓から見えた景色、そこから見えたのは制服姿でシャベルを抱き抱えながらゆっくり遠くへと歩いていく胡桃の姿だった。さらにその先、目に見える距離に3体かれらがいる。にも関わらず彼女は止まることなく歩を進めていた。

 

 

 

 

 

「おいなにしてんだ早く戻れ!くる…み……!」

 

やつらがいる、危ない。そう続けようとしたがそれが彼の口から出ることはなかった。なぜなら目の前で起こったことに驚き声を出すことも忘れたからである。

 

 

 

胡桃が目の前にいる、しかしかれらはまるで気づいていないかのように彼女の横をただ横を通り過ぎた。

 

横を通った瞬間彼女はぴくりと肩を震わせた。襲い掛かってくるかもしれないと身構えたからであろう。しかし何事もなかったかのようにただ横を通り過ぎるかれらに対し今度は大きく肩を震わせた。

 

「待てよ……」

 

力のない声で呼び止めようとする胡桃。しかしかれらには聞こえていない、止まることはなく歩いている。

 

「待てって言ってんだろ!!!あっ…」

 

振り返って背を向けているかれらに対し今度は激怒しているような顔で叫ぶ。と同時に光がいることに気づきしまったと言っているかのような顔でこちらを見た。

 

何か言いたげにこちらを見たままゆっくりと手を前に出した次の瞬間、突然胡桃に背を向けていたはずの彼らが彼女の方へと向き直りうめき声を上げながら襲い掛かった。

 

驚いた胡桃はすぐに後ろへ飛び退く。立ち止まりぼう然と立ち尽くしてい光は頭をぶんぶんと振りすぐに胡桃の元へ駆け出した。

 

 

「バカっ、何やってんだ!」

「ふざけんなバカはお前だ!」

 

かれらへクラブを振り上げながら自分の元へと駆け寄ってくる光へ声を荒らげた胡桃だったががすぐに光に言い返され目を逸らす。

 

「話は後だ!早くこいつらやるぞ!」

 

「わかってるよ!」と声を荒らげながら胡桃もシャベルを握り直し目の前にいるかれらの首元を殴りつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また汚れちゃったな、せっかく洗ったのに」

 

「……。」

 

返り血で汚れた服からジャージに着替え2人は昼間と同じように川で洗濯をしていた。

夜の水に触れるのは昼より冷たく指に痛いと思うほどだ。にも関わらず彼女は気にすることなく水に手を入れ続けていた。

 

 

その時。『冷たい』でふとあることを思い出した。そしてそれを確かめるためタオルで手をよく拭いてから隣りで洗濯を続ける胡桃の様子をうかがう。洗濯に集中してこちらが見ていることに気づいていない、それを確認すると自分の右手で胡桃の頬を触った。

 

 

 

 

 

 

やっぱりか。ひと言、小さな声でつぶやく。

 

何をするんだと言いだけにこちらを見る胡桃に頬から手を離し目を合わせないまま話しはじめる。

 

 

 

「ゆきがお前に触れられた時冷たいと言ったのを思い出した、それで触ってみたら…ほんとに冷たいなお前。さっきやつらが目の前にいたのに素通りしてったし……なあ、本当は薬効いてないのか?」

 

「効いたよ、だからここにいるんだろ」

 

「……。」

 

問いかけに対しふっ、とうっすら笑みをうかべる胡桃。光は何も言わずただ川の水が流れる様を見ていた。

そんな彼を見ていた胡桃は同じように川の水が流れるのを見ながら静かな声で話した。

 

「なあ、あたしがえんそくの時言ったことまだ覚えてるか?」

 

「……感染したら迷わずやれってやつか?」

 

「そ。ああ言ったけどさ結構それって難しいよな。自分でそういったくせにあの時あたしはそれができなかった…大事な人を前にして躊躇っちゃった」

 

腕の傷をぎゅっと押さえそうつぶやく。自分は迷わないでほしい、そう言っておきながらめぐねえを前にして躊躇いその結果傷を負った。そのことを悔やんでいる。彼女の表情や声色からそう言っていると彼は理解した。

 

「おまえには嫌な役目を押し付けちゃったな。みきから聞いたんだよ、めぐねえのとこに行った時、終わらせた時、すごく辛そうにしてたって」

 

「そうか。……何も教えるなって言っときゃよかった」

 

バツの悪そうな顔をしながらつぶやく。それを見て胡桃は軽く笑みをこぼす。

 

「普通はそうなるって!むしろちゃんとできた方がすごいんだ。あたしには絶対できないってわかったから、だから……」

 

「だから?」

 

 

 

 

 

「これから先、もっと体の調子がおかしくなってみんなを危険な目にあわせるかもしれなくなったら……あたしは1人でどこかに行く。そうすればさ…みんな大丈夫だろ?」

「大丈夫なわけないだろやっぱりお前バカだな」

 

「……え?」

 

「そんなのゆき達は納得してくれないだろ、俺も納得する気なんてないけどさ。そんなんだったら俺達は最後まで全員一緒にいるぞ?今更お前1人見捨ててくような白状なやつは誰もいないからな」

 

「そ、そんなのわかんねーよ。本当にそうなったら怖くなって逃げたくなるやつだって…」

 

「いないな。むしろお前を治す方法を死にものぐるいで見つけにいくぞってなるのがあいつらだと思うけど」

 

「……ほんとにそうなのかな…。」

 

「そんなに心配なら本人達に聞いたらいいじゃねえか」

 

「いやさすがにそれはちょっと…」

 

後ろ向きな事ばかりいい続ける胡桃に呆れたように言う。驚いたように目を丸くしながら胡桃は光を見る。

 

「自分で勝手に決めつけてグズグズ言うよりいっそのこと潔く答えを聞いたほうが早いしすっきりすると俺は思うぞ」

 

 

 

「………わかったよ、聞いてみる」

 

心底不安そうな声で頷き体育座りをして顔を伏せる。これでもう1人で出て行こうとしなくなってくれれるだろうか。そう思いながら光も何も言わずに空を見上げた。

 

街灯などはほとんどなくなっているため夜は星がよく見える。学校にいた時から考え事などをして眠れない時は1人で抜け出してはこうして星を見ていたことを思い出した。そんなことをしているうちに思い出す。刺々しい言い方ばかりをしていたが本当に言いたかったこと、少し恥ずかしくなり言えなかったことがなんとなくだが今なら言える気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこにも行かないでほしい…」

 

「え?」

 

「勝手にどっか行ったきり帰ってこないなんてことしてほしくない。誰も欠けることなく最ごまで、みんなで俺は一緒にいたい」

 

そうつぶやく彼の声は自分でも驚いてしまうほど弱々しく消えてしまいそうなくらいか細い声だった。当然胡桃も驚いたような顔で光の方を向いていた。

 

「なんていうかその……おまえらしくないな。

大丈夫、みんながここに居ていいって言ってくれるんならどこにも行くつもりないよ」

 

「つもり、じゃ駄目なんだよ行くなって言ったんだ」

 

「……わかったよ」

 

少しの静寂の後、胡桃は観念したように笑みをこぼした。

 

 

 

「約束、だからな忘れるなよ」

 

「ああ、わかった約束な……仕方ない、大事な友達の頼み、聞いてやる!ほら指切り!」

 

暗い顔をしていた光の手を無理やり取り指切りをして胡桃はにっこり笑った。一瞬また顔を曇らせたがそんな彼女の答えを聞きふっ、と笑みをうかべながら立ち上がった。

 

 

 

 

「…そりゃありがたいな、約束だぞちゃんと守ってくれよ?………もう夜も遅いしそろそろ戻るか、りーさんにバレたら面倒だしな」

「こんな夜遅くに誰にバレたら面倒なの?よく聞こえなかったわ」

 

「り!……さん」

 

突然聞こえた悠里の声にぎょっとしたような声を上げ胡桃はゆっくりと振り返りながら上を見る。そこには光の背後に笑顔で仁王立ちをする悠里の姿があった。無論その笑顔からは優しさや暖かさなどは感じられずむしろ冷たさや恐怖を感じる笑顔である。

 

「あれ、こんな時間にどうしたんだ?俺達はこれから車に……」

「座りなさい」

「……。」

 

車に戻るところだ、と言う前に冷たく遮られる。一瞬黙りこみ口元を引きつらせながら口を開く。

 

「…こんなとこにいたら体冷えるぞ?…だから〜ほら、早く車にもど…!」

「座りなさい」

「はい。」

 

さすがにもうダメだと観念し今度はすんなりと腰を下ろす。声の冷たさからご立腹であることがわかる。とてもじゃないが顔を直視できなかった……。

 

「2人とも何か言うことはあるかしら?」

「「すいませんでした」」

 

悠里がそう問いかけた瞬間2人は同時に頭を下げる。それを見た悠里は呆れたのように息を吐きこちらを見下ろした。

 

「まったく!こんな時間に何をしてたの危ないでしょ!?」

 

 

 

ガミガミと叱りつけてくる悠里に光に安堵したような顔で彼女には聞こえないような小さな声で胡桃に話しかける。

 

「こんなにも真剣に怒ってくるようなやつがお前のこと簡単に見捨てると思うか?」

 

「いや、そうじゃない…と思う。うん、そうだよなあたし、気にし過ぎてた。みんななら心配いらないよな!」

 

そう言って笑顔になる胡桃に安心したように光も笑う。

 

「ちょっと!聞いてる!?」

 

その後もしばらくの間説教は続いたが光も胡桃も話の内容はあまり覚えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ようやく説教から解放されベッドに戻った後、右手を顔の前に持っていき彼は先程のことを思い出す。

 

 

自分達の元から姿を消さない、そう約束して指切りした時の彼女の指。やはり人の体とは思えない冷たさをしていた。

 

彼女達を守る、そのために自分はこんな世界でも生きることを選んだのに守りきれなかった。その罪悪感が自分の持ち帰った薬により彼女が回復したことで薄れようとしていた。しかし実際はそんなことはなかった。まるで既に死んでいるかのような体の冷たさ。それを知り彼は薄れかけていた罪悪感が戻りはじめ、自分の無力さに胸を締め付けられる感覚に苛まれたその夜、彼はすぐには眠ることができなかった。

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました!

絶賛テスト期間中で忙しくなかなか書けなくて…続きを待っていた方がいたら遅くなってしまいすみません(^_^;)次のお話もテストが終わり次第取りかかりますのでしばしお待ちを(T_T)

今回は原作6巻にあるお話でした。ここを読んだ時くるみちゃん大丈夫なの…?とめちゃくちゃショックだったのを覚えてます笑
次回からしばらくは原作にはないお話をしようかと思っております。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

感想とかお気に入りもよろしければぜひ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。