第四話よろしくお願いします。
このゴルフクラブを見つけたのはまだバリケードが完成しておらず3階の安全も確保できていない頃だった。この頃の俺はかれらの相手は胡桃に任せて由紀達と共に逃げたり隠れたりするばかりだった。
もう生きていたいなんて思わない、がまだ諦めずに生きようしている人たちがいる中で自分で死ぬなんてことはできなかった。放っておけなかった、ただそれだけだった。みんな死んだら俺も死のう、と思っていたくらい生きることへの執着がなくっなていた。
その日もバリケードを作るために必要な材料を探していた。教室からやつらがいないときを見計らい机を運びだして積み上げていく。
校長室を見に行ってみようという提案をりーさんがしてきた。
「入ったことがないから何があるかはあまりわからないけれどなにか役に立つものがあるかもしれないと思って…どうかしら?」
「確かにそうかもな〜教室ばっかり見るのもつまんないしたまには他の所を探してみるのもいいかもしれない、よし行ってみようぜ校長室。」
胡桃も賛成のようだ。いつもは行かない所を探してみるのも悪くない、校長室は3階だから遠くないしやつらの数も少ないだろう。
そう考えて俺も賛成だと伝える。
「よし!じゃあ今日はみんなで校長室に行きましょう。みんな気をつけていこうね!」
めぐねえが立ち上がって声をあげる。
「めぐねえ今日もすっごく元気だね」
由紀がめぐねえを見上げて言う。
「ええ、やっぱりこんな時だからこそ元気でいなきゃ。それとめぐねえじゃなくて佐倉先生でしょ、丈槍さん?」
「はーい、佐倉先生。」
いつも通りのやりとりをしている、めぐねえって呼ばれるの毎回注意してるけどめんどくさいからもう諦めりゃいいのに、なんて思うけど本人には言わないでおく。こっちのほうが呼びやすいから俺もいつの間にかめぐねえって呼ぶようになってしまった。
そして俺たちは校長室へと向かった。屋上と廊下を繋ぐ階段からそっと廊下を覗く。階段から校長室までは少し距離があるが見たところやつらはいない。やつらに気づかれないようにできるだけ静かに早足で進んでいく。校長室までは無事にたどり着けたし鍵もかかっていなかったため普通に開いた。
「思っていたより簡単に校長室まではこれたわね。さあ、行きましょう。」
りーさんがそう言って入ろうとした時胡桃が何かに気づき口を開いた。
「みんなは先に入ってて。向こうにやつらがいるから行ってくる。」
「本当だ、いつの間に…というか大丈夫か?無理に相手しなくてもいいんじゃねえのか?」
「でも屋上に行く階段の方にいるんだぞ、いまやっとかなきゃ帰る時に鉢合わせになるかもしれないじゃん。」
それもそうだな、と考える。胡桃が今から行こうとしているのは俺たちついさっき通ってきた方だ。校長室で何かしらの収穫があってもなくても戻る時に鉢合わせになる可能性は十分にある。そうなってしまっては危険だ、5人の時より1人でいる時にやってしまった方が楽だろう。
「じゃあ任せるぞ…無理だけはすんなよくるみ。」
「おう!片付いたらすぐ戻ってくるのからな。」
そう言って胡桃はやつらに気づきかれないように慎重に隠れながら近づいていった。
「よし、くるみが戻って来るまでにさっさっと見ちまおうぜ。」
俺はそう3人に言って校長室に入った。
後から考えてみれば自分でも馬鹿だったと思う。俺たちは扉を閉め忘れしかも全開にして校長室に入ってしまっていた。
「へぇ〜!校長室ってこんなふうになってたんだ〜」
由紀が辺りを見回しながら言った。
「そうね、私も校長室に入るの初めてだから知らなかったわ。」
「先生も来たことなかったんですか?」
と、りーさんがめぐねえに訊ねていた。どうやらめぐねえもいままで入ったことはなかったらしい。
校長室の中は他の教室とかよりは荒らされていなかった。手分けして使えそうなものをさがしていく。そして俺は部屋の隅に置いてあった大きなバックに気づいた。
「なんでゴルフクラブなんか置いてあんだ?校長の私物か?」
そうぼやいて俺はゴルフクラブを1本取り出して握ってみる。思ったより持ちやすいな、なんて思っているとめぐねえが何か思い出したらしく口を開いた。
「たしか校長先生、ゴルフが趣味だっていう話聞いたことあるわ。だからきっとそれは校長先生の私物じゃないかしら。」
「ゴルフが趣味だとしても3階のこの部屋までわざわざ運んでくるとか校長どんだけ好きだったんだよ…」
そんなことを言いながらみんなで笑ってると入り口の方から気配がした。胡桃が戻ってきたんだろう、そう思って後ろを振り返った。
そこにいたのは胡桃じゃなかった。
うめき声をあげふらふらとこちらをみて近寄ってくるやつらだった。
みんなはっと息を詰まらせる。
やつらといっても相手は一体。自分なら簡単にやつから逃げることはできるが由紀たちがいる。そう上手くはいかないだろう。
「ど、どうしよう…このままじゃ私たち」
りーさんが怯えた様子でそう呟く。その通りだ、このままじゃ俺たちは助からない。いつもなら胡桃が守ってくれるが今胡桃はそばにいない。
どうすればいいか自分に問い掛ける。何度も何度も何度も…
自分には何ができる、どうすればみんなを救える…
こうしている間にもやつは確実に俺たちの元へと近づいてくる。
その時は俺は思い出す。自分が手に何かを握っていることを。
昔サスペンスドラマかなんかでゴルフクラブで殺害をするシーンを見た事がある。今自分が持っているのはゴルフクラブだ、もしかしたらと思う。仮に殺すことができなくても怯ませることならできるだろう。
やつに向かって歩き出す。後ろからあいつらの声が聞こえた気がしたがはっきりとは聞こえなかった、聞いている場合じゃなかった。
俺しか、俺しかいない…
あいつらを救えるのは俺しかいないだろ…!
心の中でそう叫ぶ。そして力いっぱいやつ目掛けてゴルフクラブを振り下ろす。
やつはたおれていた。頭から血が流れ自分持っているゴルフクラブに目を向けると血がべっとりとついている
倒れたままやつはピクリとも動かない。
やった、頭の中に浮かんできたのはそれだけだった。
俺はみんなを守れたんだ。
廊下からなにか走ってくる。もちろん胡桃だった。
「おい!大丈夫か!?……え?」
胡桃が驚いたように目を見開く。それもそのはず頭から血を流し倒れているやつとそれを見下ろす俺。俺がこんなことをするなんて予想もしていなかったんだろう。
「…こ、これひかるがやったのか…?」
重苦しく胡桃が口を開く。
「…ああ、見りゃわかるだろ」
そう呟き苦笑いを浮かべる。
この日俺は初めて人を殺した
人といっても人だったモノではあるが。
そしてこの時俺の生きる目的が明確に決まった。
ただみんなと一緒に生き死ぬのではなくあいつらを守るために戦い最期を迎えよう。そう心に誓った。
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「そういやそんなこともあったな。あの時はほんとびっくりしたよ。
お前がやってくれなきゃみんな無事じゃすまなかったかもしれないんだよな。」
「まあな、正直あんな上手くいくとは思ってなかったんだよね。自分でも少しびっくりした」
「はは、そっか。まあでも助かってるよ、お前も戦ってくれるようになってだいぶ楽になったし」
「そりゃどうも。役に立ってるようでなによりだ」
そう言いながら立ち上がる。洗濯も終わったしそろそろそろ戻ろうと思い胡桃に声をかける。
「昔話もこの辺にしてそろそろ戻ろうぜ。りーさんが待ってるだろうしさ」
胡桃もそうだなと頷き立ち上がり2人で屋上を後にした。
あいつらを守りぬく。この誓いは何があっても最期まで絶対に貫く
彼女たちを守り続けよう。自分の命を懸けて最期まで
この息が止まるその日まで…
くるみちゃんがシャベルを使っているようにひかるくんにもちょっと変わった物を武器として使わせてたいなと思いゴルフクラブにしました。
そろそろ遠足にも行かせなくては…
次回もよろしくお願いします。
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