「いただきまーす!」
その日の夕食はうどんだった。ついこの間も朝食として食べていたが由紀がうどんがいいと強く推してきたためうどんになった。
「おかわり!」
食べ終えた由紀が元気よく丼を掲げる。
「早すぎだ!よく噛んで食べろよ…」
あまりの早さに胡桃が少し呆れた様子で言う。
「ちゃんと噛んだよ〜」
胡桃からはそう言われたものの由紀としてはちゃんとよく噛んで食べたつもりだったらしい。
そんな様子を見ながら悠里が申し訳なさそうに告げる。
「ごめんね、おかわりはないのよ。取りにいかないと…」
「購買部にか?だったら取ってくるけど。」
胡桃がうどんをすすりながら訊ねる。
「ううん、購買部にはもうないから外まで行かないと」
外まで、そう言われて光は由紀をちらりと覗き見る。
「じゃあめぐねえに聞かないとね」
「そうね、じゃあゆきちゃん聞いてきてくれる?」
「うん!いってきまーす!」
悠里に頼まれて由紀は教室を飛びだしていった。
そんな由紀を見送り胡桃はまたうどんをすすりながら困ったように訊ねる。
「外って……めぐねえがいいって言ったらどうすんだ?」
「ああ、流石に危なすぎないか?学校から出るだけでもかなりキツイぞ」
光も胡桃と同じように思ったため悠里に問い掛ける。
「いつかは出ないとね。足りなくなるのはうどんだけじゃないわ」
そう言うとニコリと笑い鍵を取り出してくるりと回した。見たところ車の鍵だった。
車が使えると分かると胡桃は学校を出る手段があると知り納得したようで
「そりゃそうか」
と軽くげっぷをして答えた。
「行儀悪りぃぞ…」
と光がツッコミをいれるが本人は気にしていないようだった。
車があるから学校を全員で脱出できるし荷物を持って外から学校へ帰ってこれる。それが分かり光は安心したが同時に不安でもあった。校舎から駐車場までは距離がある。確認に1人は危険を冒してまで車まで向かわなければならない。それに由紀のことも不安に思っていた。こうなった世界を今の由紀にはどう映るのか、それでおかしくなったりしないか、不安の方が大きかった。
「ただいまー」
扉が開き由紀が戻ってきた。
「どうだった?」
「いいけどちゃんと文書にして提出しなさいだって、大げさだよね」
どうやら外へと行くことへの許可は降りたらしい。文書にして提出することが大げさだと言う由紀に対して
「いやいや、めぐねえだって職員会議とかあんだろ」
と胡桃が適当なことを言って言いくるめる。
「そっか〜じゃあ準備しないとな。いろいろと」
光がそう言って立ち上がり言葉を続ける。
「じゃあ文書書くのはゆきに任せるぞ。俺は他に考えなきゃなんないことあるし。俺シャワー浴びてくるね」
「そうね、ゆきちゃんに任せるわ。ちゃんとしたものを書くのよ?ゆきちゃん。」
悠里からも文書の作成を頼まれた由紀は
「は〜い!まっかせて〜!」
とやる気満々な様子だった。
外に出るならちゃんとした準備が必要だ。改めて光は考える。車のこと、由紀のこと、全員が無事でいられるために必要なもの。やることはたくさんありそうだ。様々なことを頭に巡らせながら光はシャワー室へと向かった。
就寝時間になり4人はそれぞれの寝床に入り眠りにつく……が数十分後突然由紀が布団から飛び起きた。
「いいこと思いついた!」
大きな声で言ったため隣で寝ていた胡桃は目が覚め眠い目をこすりながら枕元に置いてあるランプを点ける。
「なんだよおい」
「すっごい楽しいことだよ」
「はいはいなんですか?」
胡桃は早く寝たいためかめんどくさそうに由紀に問い掛ける。
「それは……」
じっくり間をとるため胡桃はごくっと息を呑み由紀の言葉を待つ。
「…明日のお楽しみ!」
「ほあちょお!」
由紀の頭に胡桃のチョップが炸裂する
なかなかに痛かったようで頭を抱えその場で悶える。
「…なんだよ、静かに寝かせてほしいんだけど…」
「も〜…2人共どうしたの?」
騒ぎに気づき光と悠里も眠い目をこすりながらむくりと起き上がる。
なぜか頭を抱え悶えている由紀を見て胡桃に
「乱暴はめっ」
と言うがすぐさま胡桃も
「こいつがもったいぶるからさー」と弁明する。
「はいはい、2人ともうるさかったからお互い様な。喧嘩両成敗ってやつだ。」
と胡桃と由紀に対して言う。どうやら2人ともしぶしぶ納得したらしい。
すると由紀が悠里に抱きつき口を開く。
「だってだってほら、今言うより
明日もいいことがあるってほうが楽しみじゃない?」
ははっと胡桃は笑い寝転がる
「わかったからそういうのは寝る前にな」
「まあそうだな、よし!今度こそ寝ようぜ。」
そう言って光も寝床に戻る。
それに続き悠里も
「そうね。おやすみなさい」
と布団をかぶる。
由紀も納得したようでおやすみなさいと挨拶をすると寝床に戻っていく。
さっきとはうって変わり静かになる。
このまま朝までゆっくりと眠れそうだと思う光と胡桃だったが
「くふふっっ」
と由紀が1人で笑う。
「「寝ろっ!」」
光と胡桃の怒号がピッタリ重なる。
数分後ようやく由紀も眠りについたようですうすうと寝息を立て始める。
やっと眠れる……
そう思いながらいつもより遅い眠りにつく光と胡桃であった…
原作のシーンを使って書いてみました。
次回ようやくえんそくに出発します。
次回もよろしくお願いします。
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