この息が止まるその日まで   作:りんごあめ

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今回はいままでよりも長いです。

第七話よろしくお願いします。


第七話 「ひーろー」

 

えんそくに行くため学校から外に出た学園生活部の4人はショッピングモールを目指し車を走らせる。運転しているのは胡桃で助手席には光が座り地図を見ながらモールまでの道を伝えていく。後ろには由紀と悠里が座っている。

 

 

えんそくでいつも以上にテンションが高くなっている由紀がはしゃぐ。

 

「ごーごー!もっととばしちゃえ〜!」

 

「ゆきちゃん、危ないからちゃんと座ってね。」

 

はしゃぐ由紀を隣に座る悠里が注意する。

 

「くるみこれ以上スピードなんか出すなよ?安全運転で頼む」

 

助手席の光が胡桃にそう釘を刺す。

 

「わかってるよ!そのくらい!」

 

慣れない運転に胡桃はイライラしているようでいつもより強い口調で答える。

 

すると胡桃が急にブレーキをかけて車を止める。他の車が止まっていて道が塞がれていたためだ。

 

「ゆき、りーさん後ろ見ててUターンするから。」

 

「また通行止め?なんか今日多いね。」

 

「そうねえ。胡桃後ろ大丈夫よ」

 

「おーらーい」

 

Uターン曲がり角を曲がる時にかれらを1体轢いたが胡桃も光も気にしていなかった。もう既に何度も轢いてしまって見慣れてしまっていた。

 

「また轢いたな。」

 

「そうだなー。」

 

そんなことにはまるで気づかす後ろに座る由紀は窓から目を輝かせて外を眺めていた。

 

「えんそく楽しいねー」

 

「……そうか?」

 

胡桃は疲れた様子で由紀に答える。それを見て光は胡桃に声をかける。

 

「運転代わろうか?上手くできるかはわかんねえけど。」

 

「あ〜頼むぅ…」

 

やはり疲れていたようで胡桃はすぐに光の提案に応じた。

 

 

 

 

光が運転を代わってからしばらく経つ。途中で何度か通行止めになっているところがあったため遠回りにはなっているが順調に進んでいた。ただ1つのことを除けば…

 

「…んで、次はどっちだ?」

光は助手席の胡桃に問い掛けるがなかなか返事が帰ってこない。

 

 

「…えーと次は………」

胡桃は持っている地図をクルクルと回すばかりでなかなか答えない。

胡桃が地図を上手く読めていないのだ。さきほどからこれが何度も続き無駄に時間がかかっていた。

 

(やばい、迷った……)

 

胡桃が心の中でそう呟き焦っていると後ろからおもわぬ救世主が現れた。由紀である。

 

「んーここじゃないかな?」

後ろからひょこっと顔を出し迷わず地図を指さす。

 

「ん?あ…そうかな?」

むぅと地図を睨む胡桃。その様子を見て悠里が由紀を褒める。

 

「すごいじゃないゆきちゃん。地図読むの得意なのね。」

 

「んーそうなのかな?えへへ」

 

褒められて少し照れくさそうに笑う由紀。そんな由紀に対して光が言う。

 

「なぁゆき、ナビゲーター代わってくれるか?」

 

「うん!いいよ〜!」

光の言葉に嬉しそうに頷く由紀。そうして光はかれらがいないところで1度車を止めて由紀と胡桃に席を代わってもらう。

 

 

 

 

 

由紀にナビゲーターを代わってもらうとさきほどとは違いサクサクと進んでいく。思っていた以上に由紀は地図を読むのが得意だった。

 

 

 

そうしてしばらく進んでいると住宅街に入った。由紀のナビゲートに従い車を走らせていく光。しばらくすると突然後ろで窓の外をぼんやり眺めていた胡桃が何かに気づき目を見開き声を上げる。

 

 

「あ!ストップ!」

 

 

いきなり言われたため光は慌ててブレーキをかける。助手席に座る由紀はシートに頭をぶつけて頭を抱えていた。

 

「イテテ…もういきなりどうしたのくるみちゃん?」

由紀は不満そうな表情で胡桃に訊ねる。

 

「あ、いやなんでもない……」

 

「本当に?何か見つけたの?」

胡桃は窓の外をじっと見たまま答える。そんな様子を不思議に思った悠里が胡桃に問い掛けるが胡桃は

 

「いや本当になんでもないから…ごめんな、いきなり止めたりして。」

 

と答える。窓の外を見つめる胡桃の表情はどこか寂しげなものであった。光は胡桃の目線の先にを追い何を見ているのか分かりなぜ胡桃が車を止めたのか理解した。

 

 

 

胡桃が見つめる先には恵飛須沢と書かれた表札のある家があった。そのことに由紀も気づいたようで口を開いた。

 

「ここもしかしてくるみちゃんの家?」

 

「…ああ。」

胡桃は思いつめたように頷く。

 

「顔出してきたら?ずいぶん帰ってないじゃない」

由紀は笑顔で胡桃に提案するが

 

「でもほら、今日帰るって言ってないしさ…」

 

「いーじゃない別に」

 

「……そうだな。ちょっと顔出してくる!」

 

由紀の言葉に心を動かされたようでさっきとはうって変わり笑顔で車を降りようとする胡桃に悠里は一緒に行こうかと心配そうに訊ねるが胡桃は1人でいいと告げ車を降りる。

無理をして笑っている…そう感じた光は自分も車から降りる。由紀と悠里に聞かれないために車のドアを閉めてから胡桃を呼び止める。

 

 

 

「待てくるみ。本当に1人で大丈夫なのか?」

 

「ははっ、さっきも大丈夫って言ったろ?自分の家に帰るだけだしさ。」

さきほどと同じ笑顔で答える胡桃に光は真剣な表情で話を続ける。

 

「確かに家に帰るだけだ。でももしかしたらってこともあんだろ。そん時お前どうすんだ?いつものように躊躇わずにやれるのか?」

 

胡桃は光が真剣な表情で問い掛けてきたためさきほどとは険しい表情で光を見て答える。

 

「そんなのわかってるよ……大丈夫。もし自分の家族がやつらと同じようになってたらちゃんと倒すから。そうなってたらそいつらはもうあたしの家族なんかじゃないから…」

 

胡桃は悲しそうに下を向くがすぐに顔を上げいつもと変わらぬ強気な口調で光に告げる。

 

「だからあたし1人で大丈夫だからさ!心配しないで光も車で待っててくれ」

 

「わかった。じゃあ車で待ってるから」

 

本人がそう言うなら仕方ない、と光は車へ戻る。

 

「ひかるくんーくるみちゃんと何話してたの?」

 

「別にたいしたことじゃないよ。ちゃんとあいさつしてから戻ってこいよーとかそんな感じ。」

 

由紀にはてきとうなことを言ってごまかしておく。

 

「くるみ大丈夫かしら。」

悠里はやはり心配なようでじっと胡桃の家を眺める。

 

「大丈夫って言ってたし多分大丈夫だろ、自分の家に帰るだけだし。」

光はさきほど胡桃が言っていたことを繰り返す。家に誰かいるとは限らないし大丈夫だ。と心の中で言い聞かせる。大丈夫と言われたものの光も心配なままでいた。

 

 

 

10分ほどすると胡桃が家から出てきた。胡桃の姿を確認し光と悠里は胸をなでおろす。

 

「おかえりー」

 

「…おう」

暗い面持ちで胡桃が戻ってきたため家には誰もいなかったのだろうなと光は悟る。

 

「んーおかえりって変かな?家からおかえりって」

 

「いんじゃね。」

胡桃はそう言うと

 

 

 

「ただいま」

由紀に笑顔で応えた。

 

 

「さて、くるみも戻ってきたしそろそろ行きましょ。」

悠里のかけ声で光は車を走らせる。

 

この日はもう既に暗くなり始めていたため近くのガソリンスタンドに車を停め一夜を明かすこととなった。

外ということでかれらから身を守るために由紀以外の3人で交代で見張りをすることになった。

 

 

 

車の中で持ってきた缶詰めで簡単な夕食をとり夜を迎える。

最初の見張りは胡桃だった。胡桃はぼんやりと夜空を見上げていると不意に頬が温かくなるのを感じ空から目線を落とす。温かさの正体はお茶の入った水筒を頬に当てる光だった。その後ろには悠里の姿もあった。

 

 

 

「あれ、2人ともどうしたの?もう交代だっけ?」

 

「ううんまだ。様子を見に来ただけよ。」

 

「そ、なんとなくね」

 

胡桃の質問に2人はそう答えてそっと腰を下ろす。手渡されたお茶を胡桃がすすり少しの間沈黙がおとずれる。水筒の蓋を光に返し胡桃がゆっくりと話始める。

 

 

 

「もしかしてって思ったんだよな。やばいのはさ学校の中だけで外じゃもう救助が始まってるんじゃないか、みたいな」

 

「ええ、私もちょっと思ってた。実際はそんなことなかったけれどね…」

悠里が寂しげな表情で相槌をうつ。

 

「ヘリがさ、ばばばっーて飛んできて自衛隊?とかそういう人がさ

だいじょぶかー?よくがんばったなーみたいな?」

 

「ふふ、そういうのいいわよね。映画みたい」

胡桃の話を悠里は笑顔で聞いて光は相槌などをうちはしないが黙って耳を傾けている。

 

「でもさそんなの甘くないよね、映画のヒーローとかいるわけないし。」

片手を空に伸ばして胡桃は言葉を紡いでいく。

 

 

 

「そんなのまだわかんねーぞ?」

「え?」

 

黙って耳を傾けていた光が口を開きぼんやりと遠くの方を眺めて穏やかな表情で語り始める。

 

「ヒーローの人達もさ、頑張ってんだよ。今は東京とかで救出作戦とかやっててさ

そんで救助した人集めてデカいバリケード作ってそっから遠征隊みたいなのを募っててさ…」

 

「そっかーじゃあヒーローもうちよっとかかりそう」

 

「そうね。ヒーローさんあとちょっと…」

 

妄想の話に過ぎないとわかってはいるが胡桃も悠里もいるかも分からないヒーローに思いを馳せる。

すると突然後ろから新たに声を発する人が現れた。由紀だ。

 

「あっまーーい!」

「えっ?」 「わっ」 「うお」

 

いきなり後ろから大きな声が聞こえたため3人は驚き振り向いた。由紀はなぜか車の上に乗っていた。

 

「ゆき、なんでお前車の上に乗っかってんだ…」

 

「ヒーローなんて待ってるものじゃないよ!ヒーローはなるもんだ!」

 

光の問いかけを無視し声高らかに由紀は3人に告げた。

 

「おまえどっから聞いてた?」

 

「ん?ヒーローが来るとか来ないとか?」

 

「ヒーローなるってどうすんだよ…」

話の後半しか聞かれていないと知ると胡桃はほっと息をつく。

 

 

「人はね誰かのヒーローになれるんだよ!ダリオマンがゆってた!」

「それマンガじゃねえか!」

胡桃は由紀にツッコミを入れるが由紀はまるで聞いていないようで

 

「ねえ、学園ヒーロー部ってカッコよくない?」

「…カッコよくねぇよ!」

 

「学園ヒーロー部はいつでも誰でも困った人のところへ駆けつけるんだよ!」

「だから人の話を聞けぇ!」

 

そんな2人のやり取りを見て悠里と光は笑いだす。なにがそんなに面白いんだと胡桃からは怒られたがそれでさらに笑ってしまった。

 

 

 

 

それからしばらくしてしっかりと交代で見張りを始めた。胡桃が見張りをしている間に光たち3人は眠りにつく。それから数時間経って光は肩を揺すられて目が覚める。どうやら交代の時間になったらしい。

 

 

 

 

 

 

光は車の上に寝転がりさきほど話していたヒーローのことを思い出す。

 

ヒーローは待つのではなくなるものだ。

 

人は誰でも誰かのヒーローになれる。

 

由紀の好きなマンガの話ではあったがそんな考えも悪くはないと光は思う。

 

 

 

 

(自分は多くの人を救うヒーローにはなれないだろうがせめてあいつらの、由紀達のヒーローにくらいはなりたい。いや、なってやる)

 

 

 

「はは、俺らしくはないかな……でも意外と悪くはないかもしれない」

 

満天の星空を見上げながら自分で考えたことに対してらしくないなどと誰かが聞いているわけでもないがあえて口に出し笑いとばした。

 

 

 

 

光はこれからもあいつらのためなら汚れ役でもなんでもしてやる。と1人夜空のもとで改めて誓ったのであった。

 

 

 

 

 

ちなみにこの後見張りの交代の際に悠里に車の上で寝そべっていたことを叱られたのであったがそれはまた別の話……




読んでいただきありがとうございました。

アニメだとくるみちゃんの家に寄ったりヒーローとかの話カットされてたんで絶対書きたいなぁと前から思ってたんです(^_^;

次回はモールでのお買い物回です。
そろそろみーくん出せるかな^^;

次回もよろしくお願いします!

感想や評価、お気に入りなどもよろしければお願いしますm(_ _)m
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