焔千景は日常を謳歌する   作:春囃子風

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第7話です。

久々の本編でキャラ同士の距離感に少し困惑しました。


あきらめ

 皆さん、いかがお過ごしですか?お久しぶりです。宮沢中学1年の焔千景です。

 

 「………ねえ、ユウちゃん?私たちって()()1()()()よね?」

 

 「え?うん、そうだよ?どうしたの?」

 

 「いえ、なんか()()()()2()()()()()()()()()ような気がして。…………何でかしら?」

 

 「?……もしかして、チカちゃん寝惚けてる?」

 

 そうなのかしら?意識ははっきりしているのだけど、それとも憶えてないけど朝見た夢の内容が2年生みたいな内容で、ふと思い出してしまったとか?

 

 「なんだ千景、眠いのか?」

 

 「まあ、5月の中旬になって日差しが気持ち良い暖かさになったからな」

 

 「春眠暁を覚えずってやつだね~」

 

 美姫ちゃん、小紅ちゃん、まゆらちゃんが会話に参加してきた。

 今、時間は昼休み中で私たちは天気が良かったので皆で屋上で昼食を取っていた。大抵の学校では屋上は立ち入り禁止なのだが、なぜかウチの学校は禁止されていない。そういえば、以前兄さんに理由を知っているか訪ねたら

 

 「加々知先生が学生時代に数人と一緒に解放させたらしい。『アーカイブ』が話していたから信憑性はそれなりにあると思うが、先生自身に聞くと、若気の至りとしか言わんから実際何があったかは知らん」

 

 て言ってたわね。……『アーカイブ』って人、意異名から解るけどかなりの情報通のようで。……意異名ってカタカナあったのね。

 まあ、そんな訳で天気が良い日は屋上でお昼を食べる生徒が多い。宮沢中学のお昼は給食ではなくお弁当なので仲の良い人たちとグループを作って好きな場所で食べる。……今世、友達いて本っっっっっ当良かった!ぶっちゃけ、今世にもしユウちゃんと兄さんが居なかったらと思うとゾッとするわ!あ、ちなみに私たちが教室でお弁当を食べないのは

 

 「ねぇ、千景?なんだか今度は顔色が悪くなってきてない?」

 

 「……ちょっと怖いことを想像してしまっただけだら大丈夫よ。心配してくれてありがとね、ラティナちゃん」

 

 私の顔色をラティナちゃんが心配してくれた。そう、違うクラスの娘とも一緒に食べているからである!うふふ、友達多いわ!

 

 「今度はニヤニヤし出したけど、本当に大丈夫?」

 

 「…………コホン、大丈夫よ。問題無いわ」

 

 「ところで、どんな怖い想像したの?」

 

 赤みがかった長い茶髪をポニーテールしている女の子が聞いてきた。彼女は松岡江(まつおかごう)ちゃん。女の子なのに男の子みたいな名前をしていて、本人がもの凄く気にしているので皆はコウちゃんまたは、シエちゃんって呼んでる。

 

 「いや、もしユウちゃんと兄さんが居なかったら私、学校で一人ぼっちだったな~と思って、想像したらちょっと怖くなって」

 

 「千景ちゃんが一人ぼっち?そんなことあるわけないよ」

 

 「ずいぶんはっきり言うわね、愛子ちゃん」

 

 黄緑に近い色(あれ地毛かしら?)のショートカットのボーイッシュな女の子が即答で否定してきた。彼女は工藤愛子(くどうあいこ)ちゃん。コウちゃんと合わせて2人とも水泳部に入部して美姫ちゃんと仲良くなって紹介された。

 

 「だって、()()()()()()()()()()()()()()()()んだから」

 

 「そうだよ!チカちゃんが友達になったんだよ。そこに私とお兄ちゃんは関係ないよ」

 

 「おっと、友奈ちゃんとも友達になったんだから、関係無いは悲しいな~」

 

 「え?あ!ご、ごめんね愛子ちゃん!」

 

 「あはは、冗談だよ。友奈ちゃんは本当に可愛いね。ねえ?千景ちゃん」

 

 「……そうね、愛子ちゃん」

 

 ふふふ、本当に彼女たちは私には勿体ないくらい良い友達ね。

 

 「………なあ、そのお弁当って、部長が作ってるんだよな?」

 

 小紅ちゃんが私とユウちゃんのお弁当を見ながら聞いてきた。

 

 「ええ、そうよ。兄さんが毎朝朝食と一緒に用意してくれるのよ。…どうかしたの?」

 

 「あ、いや、いつも思っていたんだが、完成度高いな~と」

 

 確かに男子が作ったと考えるとかなり完成度の高いお弁当である。栄養バランスもしっかり整えられているかのように総合的に煮野菜、生野菜、肉料理、魚料理が一対一対一対一になるようになっている。毎回思うけど、ウチの兄は女子力高過ぎよね?

 

 「………でもまあ、兄さんだし」

 

 「うん、お兄ちゃんだし」

 

 「まあそうか、部長だもんな」

 

 「だよね~」

 

 「部長だからね。今更だよ」

 

 「………前々から思ってたが、お前ら自分の部活の部長に対して酷くないか?」

 

 「「「「「え?そう?」」」」」

 

 「………………うん、もういいや」

 

 美姫ちゃんが何か言ってきたが私たち文芸部の答えに何だか諦めたような雰囲気になる。

 

 「それにしても、ホント凄いわよね。……つくね1個ちょうだい?」

 

 コウちゃんが聞いてきた。

 

 「良いわよ。はい、あーん」

 

 「あーん。……んん♪美味しい~。へ~、柚子皮が入れてあるんだ!」

 

 「ええ、しかも、ササミが使われているからカロリーが低いし、軟骨も入っているから堅い歯応えで食べ応えもある。さらに1度蒸してから焼くことで中がフワッとしているわ」

 

 「ん~♡相変わらずのお兄ちゃんクオリティー」

 

 流石兄さん。ぶっちゃけ、一介の男子中学生が1から作るお弁当のおかずじゃないわ。本当にご飯と無駄なことに対してだけは有り得ないほどの心血を注ぐわね。

 

 「………ねえ、ふと思ったんだけど、2人とも自分のお兄さんに女子力負けてない?」

 

 愛子ちゃんが(えぐ)るようなことを聞いてきた。

 

 「私は大丈夫。何故なら、お菓子作りなら兄さんより上だから。特に洋菓子は」

 

 「Je fais la cuisine.(料理は苦手だな。)

 

 ユウちゃんがどこぞの蟹みたいなことをフランス語で言ってきた。………これ、普通は兄さんが取り扱っているネタじゃない?ユウちゃんが兄さんにかなり影響を受けてきた?うーん、悪影響になる前に1度兄さんを絞めとこうかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、いたいた。おーい、妹+α!」

 

 私たちが昼食を終えて自分たちの教室に戻ってきたら教室の扉の前に博斗君とはじめ君がいて、博斗君が話かけてきた。

 

 「あら、はじめ君に元小田原現蓼原弟君、どうかしたの?」

 

 「俺の呼び方長くね!?」

 

 「ええ、長いわね。よく噛まずに喋れたと自分自身を褒めてあげたいわ」

 

 「スゲー自己中心的なマッチポンプ。てか月城、さっきから俺の頭触りたそうにしてんじゃねぇっての」

 

 博斗君が頭に触りたそうにしていたユウちゃんを止める。部活に来た初日に博斗君の頭を部員全員で撫で回したときに気に入ったらしい。え?何で部員全員で撫で回したかって?いやー、あのジョリジョリした独特な手触りに惹かれて。最初は明希さんだけが撫でてたんだけど、手触りが気持ち良いと言われて私たちも撫で始めて、そしたら兄さんが『女子に撫で回されているのを見ていて癪に触ったから俺らも撫で回すぞ』って言ってかなり強めに撫で回されていた。その後、髪が長くなってきてジョリジョリした感触が無くなっても明希さん、ユウちゃん、はやてさんがよく撫でている。最初は博斗君もかなり抵抗していたのだけど、力で負けて撫でられて、口で負けて撫でられて、押しに負けて撫でられて、今では撫でられる前にちょっと抵抗するだけになっている。兄さん曰く『美少女に撫でられて恥ずかしくても嫌な男はいないだろう』とのこと。ただ、ユウちゃん含めて全員可愛い反抗的な弟にするアレであるが。

 

 「………Estーce mauvais?(ダメ?)

 

 ユウちゃんが上目遣いで博斗君を見つめる。

 

 「……頼む月城。それは、それだけは辞めてくれ!!」

 

 「?」

 

 博斗君が懇願するが無自覚で行っているユウちゃんには意味が伝わっていない。…………うん。

 

 「で、何の御用?」

 

 「ここで、本題に戻るのか。流石は部長の妹だな」

 

 はじめ君が私の対応の仕方を見て呟いた。……そうは言うけど、兄さんならもっと話を逸らして下手したら忘れていそうな辺りで唐突に本題に戻るわよ?

 

 「と言うより、アレはあのままで良いのか?」

 

 「ん?別に良いわよ。ユウちゃんが好きでやってることだし。まあ、()()()()()()()()()()()()私と兄さんが死んだ方がマシな目に遭わせるだけだから。で?」

 

 「え?あ、ああ。部長が部室に集まってくれって」

 

 「おい待て!今かなり理不尽な話が聞こえなかったか!?」

 

 私に促されてはじめ君が答えてくれた。どうやら兄さんのお使いだったらしい。

 

 「珍しいわね」

 

 「そうだね」

 

 「ユウちゃんもそう思う?」

 

 「うん」

 

 「え?何が?体育祭の準備で放課後部活が無いから今喚んだんじゃないの?」

 

 コウちゃんが聞いてきた。いいえ、違うわ。確かに2週間後の体育祭に向けて放課後の部活動は今日から原則中止になっているけど、()()()じゃないの。私とユウちゃんが珍しいと言ったのは昼休みに集合をかけたことではなくて

 

 「「兄さん(お兄ちゃん)が私たちへの伝言を男性に頼むなんて」」

 

 「「「「「「「「そこ!?」」」」」」」」

 

 周りの人全員にツッコまれた。いやでも、あの兄さんよ?あの私たちに対しての行動が過保護って言葉じゃ足りないくらいのあの兄さんなのよ?

 

 「ぶっちゃけ、男子に伝言を頼むくらいなら放送室に乗り込んで自分で私たちを喚ぶわよ?」

 

 「「「「「あー、確かに」」」」」

 

 「本当に、あんたらの部長に対するイメージをアタシは聞きたい!」

 

 文芸部員全員が肯定する姿に美姫ちゃんがツッコんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 という訳で昼休みも残り30分を切ったので少し急いで司書室に向かう。美姫ちゃんたちも兄さんの話を聞いて1度会ってみたいということなので一緒に付いてきた。で、私たちが司書室に入ったら中では文芸部員2年生全員とユウキさん、真悟さん、景友さん、由良さん、木更さん、杏子ちゃん、さやかちゃん、そして見たことない女性が5人いた。まあ、司書室は普通の教室くらいの広さで長テーブル6つと十数個のパイプ椅子が壁に立て掛けているだけだから広いので、大所帯で昼食を取れる場所ではあると思う。思うのだけれども、

 

 「おい、ユウキ。てめえ、俺の弁当のつくね全部取ろうとしてんじゃねぇよ。何個あったと思う?4つだよ?4つ。コレ最後の1個、俺まだ1個も食べてないんだよ?なあ?」

 

 「良いじゃない?徹。自分で作ってるんだからいつでも食べれるでしょう?男なんだからそうケチケチしないでさあ。だいたい、こんなに美味しいおかずを作ってくる徹が悪いんだよ?だから、ボクは悪くない」

 

 何故、兄さんとユウキさんが今日のお弁当のおかずのつくねを取り合っているのかしら?というか、2人とも器用ね。あの柔らかい()()()1()()を兄さんは縦に、ユウキさんは横に箸で潰さない力加減で、それで互いに取られないように全力で引っ張りあっている。なんて、なんて無駄に無駄なほど無駄に鮮麗された無駄な力加減なの!!

 

 「なに、ジャンプで人気の負完全マイナス裸エプロン先輩みたいな台詞吐いてんだよ?取りあえず、箸から力抜け」

 

 「ボクはあのキャラみたいに『また勝てなかった』なんて言わないよ?寧ろ『また勝った』って言うよ。ついでに徹、明日から君の制服も裸エプロンにする!」

 

 「俺の裸エプロンって誰得!?」

 

 「……………」

 

 「明希、あんた何『ちょっと見たいかも』みたいな顔してるのよ」

 

 「!?」

 

 「いや、今のはアリサだけじゃなく皆気付いていると思うよ?徹隆以外」

 

 「どうして徹隆君、コレで解らないんだろうね?」

 

 「解る解らないの前に自分に好意を抱いてくれる異性の存在を認識していないんじゃないかな?」

 

 「なのはちゃん相変わらずズバッと言うなー。まあ、簡単に言うて都市伝説状態みたいなものやな」

 

 「つまり、信じてないってことね」

 

 「……取りあえず、あいつの制服が明日から本当に裸エプロンになったらアドレスを消そう」

 

 「待て。アドレスを消したら着信拒否が出来ない」

 

 「景友の言う通りだ。だが、着信拒否だけではいささか不安が残る」

 

 「そうだな。蓼原の反応を見る限りファンクラブにとって、そして、俺らにとっても別の意味で大量殺戮兵器だ」

 

 「いっそ、隔離するか」

 

 「「賛成~」」

 

 外野の人たちはこの光景がさも当たり前のように観戦ムードである。兄さんとユウキさんはつくねに集中していて周りの声が聞こえていない。

 と、そんな中、兄さんとユウキさんに外野から1人の女性が近づいてきた。その女性をよく見るとユウキさんにそっくり、というか瓜二つで違うのは頭に付けてるバンダナが赤色じゃなくて白色であることくらいか。あ、もしかしてあの人が

 

 「あーん」

 

 「「あー!?」」

 

 考えていたら兄さんとユウキさんが取り合っていたつくねを彼女が食べてしまった。

 

 「……ん~。久しぶりに食べたけど徹君の料理、やっぱり美味しい~」

 

 「酷いよー!姉ちゃん!!」

 

 「…はあ~、俺、味見で朝に1個食っただけなのに。……まあ、ユウキじゃなくて約2カ月ぶりの藍子に食われたってことで不幸中の幸いとするか。てか藍子、この箸そのまま使ったら間接キスになるが良いのか?」

 

 「あれ?徹君、そういうの気にするタイプだったっけ?」

 

 「いや、全然」

 

 「じゃあ、別に良いよ。私も気にしないし。友達なんだから、異性でも同性でも間接キスくらいで騒いだりしないよ」

 

 「そうか。……で、俺のおかずを紺野妹がほとんど、最後の1つを紺野姉が食べてしまった訳だが、弁当に1/4ほど残っている白米だけをそのまま食べろと?」

 

 「「……テへ♡」」

 

 「…………おい」

 

 「仕方ねえな。俺の一口ハンバーグ半分やるよ」

 

 「俺からは豚の竜田揚げをやろう」

 

 「真悟、景友、お前ら」

 

 「ちなみに、これは豆腐ハンバーグだ」

 

 「俺のは干し椎茸を使った精進豚の竜田揚げだ」

 

 「まさかの肉じゃねえ!?」

 

 「兄さん、昼休みも後20分切ってるから、コントが終わったのなら本題に行きましょう?」

 

 「あ、千景。それに皆も、来てたのか」

 

 おい、気付いてなかったの?

 

 「何人かはもう察しがついていると思うが、ウチの部員、最後の1人が本日登校してきたので紹介するぞ。藍子、クラスと名前、意異名、好きなジャンルか作品、または作家を言ってくれ」

 

 「うん。2年B組、紺野藍子(こんのらんこ)よ。先日までアメリカに留学していたの。あそこにいる剣道部の紺野木綿季の双子の姉で、意異名は『絶投(ぜっとう)』。んー、好きなジャンルと言うか、ハッピーエンドな作品が好きかな。よろしくね、新入部員の皆。………あれ?ねえ徹君、今期の新入部員って7人だよね?」

 

 「ああ、後ろの3人はウチの部員じゃないな。千景の友達?」

 

 「ええ」

 

 「俺の妹の美姫だ」

 

 景友さんが美姫ちゃんを紹介した。

 

 「豹垣美姫です。兄貴がいつもお世話になってます」

 

 「畏まらなくて大丈夫よ、美姫ちゃん。寧ろ兄さんがお世話されてるから」

 

 「おい」

 

 「それより兄さん、なんでこんな急に藍子さんを紹介したの?明日とか、もう少し時間がある時に紹介すれば良かったのに」

 

 「あ、それは私からお願いしたの」

 

 「藍子さんから?」

 

 「ランで良いよ。えーと」

 

 「焔千景です。よろしくお願いします。ランさん」

 

 「千景ちゃんね。敬語じゃなくて良いから。それにしても徹君にこんな可愛い妹がいたなんて。………えい!」

 

 急にランさんが抱き付いてきた。

 

 「え!?ちょっ、ちょっと!ランさん!?」

 

 「あ~、本当に可愛い~」

 

 え?ちょっ、何なのこの人!?

 

 「始まったよ、藍子の病気が。おい紺野妹、姉を止めろよ」

 

 「無理。ごめんね千景ちゃん。ウチの姉ちゃん可愛い娘に抱き付き癖があるんだよ。後、可愛い娘の困り顔が好きなんだ」

 

 「え!?」

 

 「で、こんな感じの濃いヤツだから早めに紹介しとこうと思ってな。お前ら同じグループだし」

 

 「グループ?」

 

 「そ。ウチの体育祭は1、2、3年生合同のクラス対抗戦なんだよ」

 




人物紹介
紺野藍子(こんのらんこ)
 2年生の文芸部員でユウキの姉。
 意異名『絶投(ぜっとう)』を持つ。
 濃いヤツではあるが実は徹隆グループでは一般人枠。


次回は来週日曜日に投稿予定です。
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