焔千景は日常を謳歌する   作:春囃子風

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第9話前編です。

遅くなりました。
体調が良くなったと思いきやまたぶり返しました。



情熱(前編)

 「さあ皆さん、力を合わせて徹隆君を倒せるように頑張りましょう!」

 

 「榛名先生、あんた何言ってんだ?」

 

 体育祭当日、榛名先生がB組全員の前で大声で打倒兄さんを掲げたので織雅団長がツッコんだ。

 

 「来ましたよ!ついに来ましたよ!今までの雪辱を果たす時が!ふふふ。待ってなさい徹隆君!B組が今日こそ貴方に引導を渡してやるのです!」

 

 榛名先生が壊れだした。………あれ?おかしいわね?榛名先生を見ていると涙がこぼれてきたわ。

 

 「………ふ、仕方ねえ。いいかお前ら!俺らB組はただの寄せ集めの集団じゃねえ!ただの偶然で集まったガキの集団じゃねえってことを他の組の奴らに見せつけてやるんだ‼」

 

 「「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」」

 

 「だが、勝利にストイックにもなりすぎるな。まずは楽しめ!楽しめないヤツは体育祭で勝ったとしても人生で負けだ!だからよ、勝つことよりも楽しめ!!今日はとことんまで楽しむぞ!!」

 

 「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」

 

 織雅団長の言葉にB組の全員が声を上げる。本当に団長、カリスマ性が凄いわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「選手宣誓」

 

 開会式も残すところ選手宣誓だけとなった。進行の教頭先生が宣誓を行う生徒の名前を呼ぶ。あ、そうそう、教頭先生の苗字ね、やっぱりと言うべきか上里だったわ。フルネームは上里維鶴(うえさといづる)だとか。あれよね、校長先生の名前は表彰式等でよく聞くから解るのだけれど、教頭先生の名前って殆ど聞かないから解らないことが多いのよね~。ちなみにこの名前は兄さん経由でまた『アーカイブ』さんから聞いた情報です。

 

 「生徒代表、生徒会副会長保坂」

 

 生徒会副会長の人が壇上に上がり先生側、つまり私たちに背を向けるような姿勢で右腕を上げる。ウチの学校では生徒会長以外の役職にはそれぞれ男女1人ずつ計2人がつく。つまり、現生徒会副会長は女子が撫子さんで男子があの保坂先輩ということになる。それにしても、これまたイケメンですこと。本当にウチの学校、顔面偏差値高いわね。まあ、そのかわり変人の巣窟なのだけれど。………あれ?そういえば意異名が言われてなっかたわね?前に兄さんが生徒会は例外1人を除いて御歴代含め全員が意異名持ちって言っていたような気がしたんだけど。もしかして、あの保坂先輩がその例外、意異名無しで生徒会に抜擢された人物なのかしら?うーん、でも何で意異名が付かないのかしらね?意異名は良くも悪くも目立っている人に付けられる。それはつまり、問題児だけではなく優等生にも付けられると言うことだ。それが生徒会に抜擢される程の人が何故意異名無し?

 

 「宣誓。我々選手一同はスポーツマンシップに則り正々堂々と全力で戦い抜き、素晴らしい汗をたくさん掻くことをここに誓います

 

 ………ん?あれ?今なんか変なこと言っていなかった?

 私が選手宣誓に疑問を感じている間に保坂先輩は踵を返して壇上を降りようとする。そうなると無論私たちの方に正面を向けることになる訳なのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼のジャージのジッパーが全開になっていた。しかも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまりは、

 

 「なんてステキなシックスパック♡」

 

そう、上半身がはだけて素肌が露わになっていた。と言うか今コウちゃんの声が聞こえたような気がしたのだけれど。

 ……………うん。ごめん。ちょっと待って。何ではだけてるの?え?今日は父兄の方々が来ているけど、その中に薙切の一族でもいるの?おさずけされたの?それとコウちゃん、もしかして筋肉フェチ?

 

 「「「「「「「「「「相変わらずきもちわるい」」」」」」」」」」

 

 2,3年生の人たちが一斉に呟いた。ええと、先輩の皆様方はなんだか慣れている御様子。もしかして保坂先輩はいつもこんな感じなのかしら?でも、だからって慣れ過ぎのような気がする。確かに先ほど変人の巣窟なんて思っていたけれどこれは流石に先生方が何か言ってきてもおかしくないと思うのだけれど。

 

 「これにて北岡市立宮沢中学校2019年度体育祭開会式を終了します」

 

 …………うん。先生方は最早スルーですか。ツッコみすら無いとは。どうやら先生方の方が慣れていらっしゃる御様子で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育際のプログラムの午前の部は

●1年の短距離走

●2年の障害物競争

●3年の借り物競争

●男子棒倒し

●女子綱引き

となっている。そしてお昼休みを挟み午後の部は

●応援合戦

●女子球入れ

●男子騎馬戦

●クラス対抗バトンリレー

●3年生による組体操

という流れだ。まあ、普通の中学校の体育祭と同じようなプログラムだと思う。………体育祭って経験したことが無いから解らないのよね。そう考えると人生初というか前世も含めて初めての体育祭となるのか。小学校時は体育祭じゃなくて運動会だった訳だし。なんだかそう考えると感慨深いものがあるわね。

 

 「その感慨深い初の体育祭の開会式がアレというのはどうなのかしら?」

 

 「あはは、で、でも、ウチの学校らしいと言えばらしいよね」

 

 私の愚痴に苦笑しながらユウちゃんが答える。

 

 「確かにそうかもしれないけど、ユウちゃんとの初めての体育祭なのよ?もう少し雰囲気というかムードというか、そういうのを大事にしたかったわ」

 

 「………そっか、そうだね!」

 

 ユウちゃんが笑顔で答えてくれた。ユウちゃんはいつも私に素敵な笑顔を向けてくれる。その笑顔を見ていると心が癒され、元気が出てくる。それはそうか、なんたって世界一大好きな人の笑顔だものね。…………よし!

 

 「くよくよしてても仕方がないわね!ユウちゃんB組優勝目指して頑張りましょう!」

 

 「友奈だけじゃなくてアタシたちもいるぞ!」

 

 「わ、私も運動は苦手だけど、せ、精一杯がんばるぞ!」

 

 「皆で頑張ろう~」

 

 私が気合を入れていたら、美姫ちゃん、小紅ちゃん、まゆらちゃんが声をかけてきた。

 

 「皆………チカちゃん、絶対勝とうね!」

 

 「ええ!」

 

 ユウちゃんが皆を見た後に私の方を向いて言ってきたので力強く頷いた。

 

 「何だ?今年の1年はずいぶんと活きが良いな!」

 

 「伍華先輩」

 

 私たちが騒いでいると織雅団長が声をかけてきた。

 

 「織雅で良いぜ。なんたって俺たちは同じB組の仲間なんだからよ。なあ?」

 

 「解りました、織雅団長。ところで、何か御用ですか?」

 

 「おお、忘れてた。いやなに大したことじゃないんだが、お前ら校内新聞でインタビュー受けてただろ?」

 

 「ええ、それがどうかしたんですか?」

 

 「いや、あの校内新聞な、こういう学校外から人を呼ぶ場合は関連記事は全部入場者に無料配布してるんだよ。で、『アーカイブ』のヤツがちゃんと教えてるのか心配になってよ。後から聞いてないって言われて慌てられても困るからな。まあ、もう配っちまってるからどちらにしろ遅いんだけどな」

 

 「聞いてないぞそんなこと!」

 

 小紅ちゃんが叫んだ。

 

 「織雅団長、手遅れだったみたいですよ」

 

 「ああ、そうらしいな。悪かったな。気遣いが遅れちまって」 

 

 「いえいえ、実際団長が悪いわけじゃありませんし。というより青葉さんが『アーカイブ』だったんですね」

 

 「はあ?あいつ自分の意異名すら言ってなかったのかよ」

 

 織雅団長がため息を漏らす。それにしても、『アーカイブ』の正体が青葉さんだったとは。

 ……………あんまり意外性無いわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えー、テステス。ワレアオバワレアオバ。………良し!さあ、始まりました!2019年度宮沢中学体育祭!実況は私、『アーカイブ』こと新聞部副部長、河原青葉がお送りしまーす!そして、解説はなんとこの御方!」

 

 「どうも、解説をやらさせていただきます。第3学年生担当主任の加々知です」

 

 「パチパチパチパチ~。いやー、解説役は毎年先生方の1人からローテーションで決定しますが、まさか加々知先生が来てくださるとは、嬉しい限りです!」

 

 「そうですか?私はこの学校伝統のハッチャケた解説役ができるほどの面白みのある人間だとは思いませんが」

 

 ((((((((((どの口が言ってんだ!!))))))))))

 

 「多分、貴方のことを知っている人は全員どの口が言ってんだって思ってますよ?」

 

 「河原さん、私、貴女のそのズバズバ包み隠さず言っていくスタイル好きですよ」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「ただ」

 

 「ただ?」

 

 「『口は災いの元』、この言葉を貴女は生きていく上でしっかり心に刻み込んでおきなさい」

 

 「!?は、はい!わかりました!!」

 

 「さて、では最初の競技が始まりますよ」

 

 「え!?あ!で、ではまず最初の競技、1年の短距離走です!」

 

 「この短距離走、障害物競走と借り物競走もですが対象学年の全生徒が参加となります。また、我が校では足の速さ等ではなく完全にランダムでしかも男女混合で順番が決められます」

 

 「ぶっちゃけ、運動が苦手な方にとっては鬼畜の極みじゃないですか?」

 

 「そうは言いますが社会に出ればこれ以上の不条理や理不尽に当たり前のように遭遇します。正直言って私は学生時代に勉学だけではなくそういった社会で生きていくために大切なスキルを身につけてもらいたいのです」

 

 「なるほど。お?どうやら第一列目がはじまるみたいです」

 

 「さあ皆さん。全力で両隣のライバルたちを力でねじ伏せっていってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かなり個性的でぶっ飛んだ実況解説とともに私たち1年の短距離走が始まった。この短距離走では毎列各組から2名が参加し全16列行われる。

 そして、1位になった人の組に12ポイント。そこから順次1ポイント減された点数が会得ポイントとなる。つまり、もし同じクラスの子がワンツーフィニッシュした場合は会得点が23ポイント。逆に同じクラスの子がワーストワンツーフィニッシュした場合は会得点が3ポイントとなる。

 しかも男女混合で順番は完全にランダムと、先ほど青葉さんが言った通りかなりの鬼畜使用となっている。

 で、私は今回小紅ちゃんと一緒に第3列目を走る。ちなみに、ユウちゃんは第5列目、まゆらちゃんが第10列目、美姫ちゃんが第14列目となっている。

 

 「なあ、千景は自信あるか?」

 

 列に並ぶ前に小紅ちゃんが聞いてきた。小紅ちゃんの声は小さくてその姿からも自信の無さが窺える。

 

 「まあ、短距離ならそれなりにね。小紅ちゃんは、走るのは苦手?」

 

 「走るのっていうか運動自体があまり得意じゃないかな。………ははは、ビリ確定だから皆に迷惑かけちゃうな」

 

 小紅ちゃんが自虐的な笑みを浮かべながら呟いた。私たちの順番の第3列目は私と小紅ちゃん以外は全員男子だ。アクシデントやハプニングが無ければ酷いようだが女子でさらに運動が苦手だという小紅ちゃんがビリになるのは確定だろう。

 

 「小紅ちゃん、織雅団長も言ってたじゃない。まずは楽しむ事だって」

 

 「うん、解ってはいるんだけどな………」

 

 小紅ちゃん自身、頭では楽しまなきゃいけないって解ってはいるのだろう。ただ心と体自体が怯えている。もしかしたら優秀な姉と比べられ続けて少し心が卑屈になっているのかもしれない。こういう場合は多分私の言葉じゃ何を言っても効果は薄いだろう。親友のまゆらちゃんや肉親のお姉さんの言葉じゃないと心に届きにくかったりする。自分も兄さんやユウちゃんに支えられてきたからなんとなくだが解る。

 

 「小紅ちゃん、私には多分だけど今の貴女を励ます言葉を言うことは出来ないと思うわ」

 

 「千景」

 

 「でもね、励ます言葉は言えないけど『皆に迷惑をかける』っていう心配ごとを無くすことはできるわ」

 

 「どうやって?」

 

 「私が1位になれば12ポイント獲得できる。そしたらもし小紅ちゃんがビリでも私と小紅ちゃんで計13ポイント獲得できるわ。………ごめんなさいね。こんな脳筋みたいなことしか出来なくて」

 

 「謝らないでいいよ。………ありがとうな千景」

 

 私のかなりアレで脳筋チックな提案を小紅ちゃんは本当に感謝しているみたい。

 

 「小紅ちゃんは優しいわね」

 

 「え?」

 

 「普通、自分が責められたり恥かくのが嫌だったりするのに小紅ちゃんは本当に皆に迷惑をかけることだけを嫌だと思ってるんだもの。優しいわ」

 

 一番に自分ではなく他人を思えるのが小紅ちゃんなのだ。嘘偽りなく他人を思える娘、それが私が友達になった夜ノ森小紅という娘なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、お次は第3列目です。おっと、この列には私がインタビューさせていただきました焔千景さんと夜ノ森小紅さんがいらっしゃいます。彼女たちのインタビューが気になる方は校門で配布されております校内新聞をどうぞ!」

 

 「露骨に宣伝してきましたね。………インタビューによりますと焔さんは短距離には自信があるようですね。対して夜ノ森さんは運動が苦手なようで」

 

 「それなのに同列の人は同じクラスの千景さん以外は全員男子とは、小紅さんにとってはショックでしょうね~」

 

 「いえ、一概にそうとは言い切れないと思いますよ」

 

 「え?何でですか?」

 

 「彼女の顔からは悲壮感や絶望感よりもやる気が見られます」

 

 パンッ

 

 「と、第3列目スタートしました。一気にトップに躍り出たのは千景さん!おお!これは速、…ホント速ッ!?もうゴールテープを切ってしまいました!」

 

 「一緒の列の男子が失意茫然としています」

 

 「そしてその間に小紅さんもゴールです」

 

 「結果トップ3は1位B組、2位C組、3位F組となりました」

 

 「ちなみに小紅さんは7位です。失意茫然として抜かれてしまった男子はご愁傷様です」

 

 「まあ茫然としていたのは焔さんのせいだけではありませんがね」

 

 「ああ、やはり小紅さんのアレも茫然としていた原因ですか?」

 

 「ええ、アレも原因です」

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のもソレが原因ですよね?」

 

 「ええ、間違いなく」

 

 「………男子サイテー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん。小紅ちゃんが運動苦手なのってソレが原因だと思う。いや、本当、すごいのよ。走る度にかなり揺れるのよ。なんかもうスンゴい。

 

 「はあ、はあ、はあ、………ありが……とう…な……千景…。はあ、はあ、おか…げで……7位に……はあ、なれた」

 

 「小紅ちゃん、無理して喋らないほうが良いわよ?それに、小紅ちゃんががんばった結果なのだから私にお礼はいらないわ」

 

 息切れ切れで小紅ちゃんがお礼を言ってきた。

 

 「はあ、はあ、………ふう、でも、私だけじゃ7位は絶対に無理だったよ。だからありがとう」

 

 「………そう、じゃあ一応そのお礼は貰っておくわ」

 

 「ああ」

 

 「Bon travail!(お疲れ様!)

 

 「ユウちゃん」

 

 私と小紅ちゃんが話しているとユウちゃんが順位の旗を持ちながら駆け寄ってきた。って、

 

 「しまった!私としたことがユウちゃんの雄姿を見逃すなんて!」

 

 「あ!ごめん、千景!私が話しかけてたから!」

 

 「いいえ!小紅ちゃんのせいではないわ!私のユウちゃんセンサーが弱いせいよ!くっ、修業が足りないか」

 

 小紅ちゃんが自分のせいだと謝ってきたが、小紅ちゃんのせいなんかではない。全ては私のユウちゃんセンサーが弱いせいだ。と、自分の弱さを悔やむ前に

 

 「ユウちゃんもお疲れ様。応援しなくてごめんね」

 

 「C'est bon.(大丈夫。)

 

 「あれ、ユウちゃん、2位だったの?」

 

 ユウちゃんの持っている旗の順位を見ると2と書いてあった。まさかユウちゃんが2位とは。ユウちゃんに勝ったのっていったい?

 

 「うん。はじめ君に負けちゃった。かなりの接戦だったんだけどね」

 

 「へ~、はじめ君に」

 

 ユウちゃんに勝つなんてはじめ君って運動神経良いのね。ふとA組の陣地を見るとはじめ君と目が合い、勝利のVサインをしてきた。ふむ、

 

 「宣戦布告と受け取った」

 

 「いや、何でですかねぇ?」

 

 明希さんがツッコんできた。

 

 「あら、明希さん。おはようございます」

 

 「おはようございます」

 

 「そういえば博斗君の出番っていつですか?」

 

 「第9列目、次ですよ。ほら」

 

 明希さんの声につられてスタートラインを見ると博斗君が並んでいた。

 

 パンッ

 

 合図とともに一斉に駆け出す。博斗君はトップに躍り出てグングンとスピードを上げていき、そのままゴールテープを切る。

 

 「おお~!博斗、結構速いですねぇ」

 

 「知らなかったんですか?」

 

 「お恥ずかしいことで、この1ヶ月と半月程博斗と色々話しましたがまだまだ知らないことだらけです。女の子の好みのタイプも解りません」

 

 「男の兄弟の好みのタイプは普通解らないと思います。私も兄さんの好きなタイプ知りませんし。あ、まゆらちゃんの番ね」

 

 「シエちゃんとラティナちゃんも一緒みたいだよ」

 

 「あら、そうみたいね」

 

 よく見ると、ユウちゃんの言う通りコウちゃんとラティナちゃんもいた。あ、ちなみに、シエちゃんっていうのもコウちゃんの愛称よ。江だからシエちゃん。

 

 パンッ

 

 一斉に走り出す。

 結果はラティナちゃんが3位、まゆらちゃんが7位、コウちゃんが10位だった。ラティナちゃん結構速いわね。

 

 「水泳部ってたまに陸上競技苦手な人いるわよね」

 

 「コウは元々運動苦手で水泳部でもマネージャー志望らしいぞ?」

 

 コウちゃんを見ながら漏らした呟きに小紅ちゃんが答えてくれた。へー、マネージャー志望だったんだ。

 

 『なんてステキなシックスパック♡』

 

 開会式で聞こえた声の幻聴が聞こえた。………もしかして筋肉を見たくて水泳部に入ったんじゃないわよね?

 ………………うん。考えるのはよそう。

 私が変なことを考えてる間に第14列目、美姫ちゃんの番になっていた。というかもうスタートしてた。

 結果は断トツで1位。美姫ちゃんかなり速い。

 

 「ただいま~」

 

 「おかえり美姫ちゃん。おめでとう」

 

 「おう。ありがとう千景」

 

 「super!(すごい!)美姫ちゃんってすごく速いんだね!」

 

 「まあアタシは兄貴とは逆で運動は得意だからな」

 

 「逆って、じゃあ勉強は?」

 

 「わからん全然わからん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ、1年の短距離走が終わった今の段階でトータルポイントは

 A組192ポイント

 B組213ポイント

 C組208ポイント

 D組214ポイント

 E組211ポイント

 F組209ポイント

となっております」

 

 「今の所1位はD組、2位B組、3位E組となっています。ただまだ最初の競技です。これからどうなるかは、バトンを渡された2,3年生にかかっていますのでがんばってください」

 

 「では、続いての競技は2年の障害物競走です!」

 

 「河原さんも頑張ってきてください」

 

 「はい!頑張ってきます!」

 

 




次話は来週投稿予定です。

今日中に特別編の第6話も投稿予定ですのでよかったらそちらもどうぞ。
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