「続きまして障害物競走です。2年生は全員参加ですので司会の河原さんも参加します。なので代わりにこの方に来ていただきました」
「どうも、生徒会副会長、『
「よろしくお願いします。ところで鹿島さん、この障害物競走のコース上の障害物は毎年生徒会が中心となって決めてきましたが、今回はどのような障害物を用意したのか解説していただいても構いませんか?」
「解りました。ではまず、今回の障害物は全部で4個あります。最初の障害物は皆さんもお馴染みの平均台です。全長5mの平均台の上をピンポン球を乗せたスプーンを持って渡り、もし途中でピンポン球を地面に落としたり本人が平均台から落ちてしまったら最初から再チャレンジしてもらいます。次の第2障害物は大網潜りです。5mの距離を匍匐前進で進んでください。そして第3障害物は高さ1,5m、角度80°の急斜面を縄を使って超えていきます。最後は吊るされたパンを口のみで取ってもらいます。パンを食べ終わらないとゴールテープを切ってもゴールしたことにならないので注意してください」
「解説ありがとうございます。昨年はストラックアウトがありましたが今回は急斜面登りに変わったんですね」
「はい。今回の2年生は血の気は多いので、ストラックアウトの球で場外乱闘始められてもこまりますから」
「「「「「「「「「チッ」」」」」」」」」」
「鹿島さん、正しい判断だったようですね」
「ええ、そのようですね」
「もっとも、狙われる人物は今回の2年生の場合は特定されていたかもしれませんが」
「某文化部に所属している男子生徒たちや、見た目が女子のような男子生徒ですか?」
「はっきりとは言いませんが大体そこらへんだと思いますよ」
「「「「個人が特定できそうな時点ではっきり言ってるようなもんだろ!?」」」」
「では、鹿島さん。外野が煩くなる前に始めましょうか」
「はい、そうしましょう」
1年の短距離走が終わり、2年の障害物競走が始まろうとしていました。
「明希さん、ランさん、頑張ってください!」
「
私とランちゃんがスタートラインの列に並ぶ為に陣地えお離れようとすると、千景ちゃんと友奈ちゃんが激励を飛ばしてきてくれました。
「ええ、頑張って来るわ!それにしても徹君の妹とは思えない可愛さね」
隣でランちゃんが変なこと言ってますねぇ。まあ、お2人が可愛いというのには私も同意しますが。
「ユウキと一緒に私の妹にならない?」
おっと、ランちゃんのエンジンが掛かってきましたよ。彼女、可愛い子見るとたまに少しおかしくなるんですよねぇ。
「ランさんとユウキさんってやっぱり姉妹なんですね。前にユウキさんにも同じこと言われましたよ」
おや、珍しい。ユウキちゃんもそんなこと言ったんですか。もしかしてお2人は魔性なのでしょうかねぇ?
「あら、ユウキがそんなこと言うなんて珍しい。で、答えは?」
「ユウキさんにも同じこと言いましたが私たち兄さんの妹っていうポジション結構気に入ってるんです。だから他の人の妹になる気はありません」
「それでも妹にしたいという場合はお兄ちゃんが付いてきます」
いや、そんな徹隆さんを食玩のオマケみたいに言うのは妹としてどうなんですかねぇ?
「あ、そういうことなら遠慮しとくわ。徹君は明希ちゃんのものだし」
「え!?ちょっ!?ふぇえっ!?」
まさかの無防備な状態で横から急に銃口を向けられて打たれましたよ!?
「
「
「うぇ!?は、はい!?」
え?え!?なんで千景ちゃんと友奈ちゃんも一緒になってサポートアタックしてくるんですか!?
「まあこの話は置いといて、義姉さん、B組の為にも頑張って1位になってくださいね。1位にならなかった場合はこの『義姉さん』呼びを定着させますので」
千景ちゃんが笑顔で恐ろしいことを言ってきました。
「ええ!?なんで!?」
「
小首をかしげながら友奈ちゃんが言ってきました。んー、可愛いですねぇ。じゃなくて!
「まさかの理由無しですか!?」
そして、千景ちゃんと友奈ちゃんはそのまま踵を返して行ってしまいました。
え?え!?ちょっと待ってください!本当に?本気で?ヤバい。これは1位取らないとヤバい!
「ほへ~、流石、徹君の妹ね~」
「ランちゃん!そんなこと言ってる場合じゃないですよ!?あー!ヤバい!これはヤバいです!」
「大丈夫よ。1位取れば」
「………簡単に言いますけどねぇ、私の列にディルさんとフェイトちゃん、そして何より徹隆さん本人がいるんですですよ!勝てると思いますかねぇ!?」
「………ドンマイ!」
「わー!!どうしましょう!?如何すれば良いんですか!?」
「あちゃー、まさかあの3人と一緒の列になるなんて。………………失敗したかな?」
ランちゃんがなんか小声で言っていますが今の私にはそんなことに意識を割いてる余裕はありません。あー、本当にどうしよう。
「まさかランさんに明希さんを煽るように頼まれるとはね」
「お兄ちゃんと明希さんの関係、周りの皆も気にしてたんだね」
「まあ、明希さんなら1位を取るくらい出来るだろうし、本来の目的は明希さんに兄さんを今以上に意識してもらうことだけどね。私たちが変に手を出してややこしくなったり、2人の関係がぎくしゃくしても困るし。まあ、私としては逆に
「まあ確かに、そのまま大胆になってお兄ちゃんに告白でもし…て………。ねえ、チカちゃん?お兄ちゃんの列って何列目に見える?」
「え?えーと、4列目ね。あ、ディルムさんも同じ列なのね」
「じゃあ、明希ちゃんは?」
「えーと、4列目ね。………!?………ユウちゃん、『明希姉さん』で良いかしら?」
「………『明希ねーね』なんてどう?」
「それ可愛いかも。んー、小紅ちゃん風に『明希姉様』とか?」
「あ、それも良いね!……………で、どうしよう?」
「呼び方を?それともこの状況を?」
「どっちもかな?」
「第3列目の結果は1位C組の木之本さん、2位D組の美樹さん、3位E組のバーニングスさんでした」
「最初にパン食いエリアに到達したC組の里見君は惜しかったですね」
「彼が選んだパンは激辛ドライカレーパンでしたが、あまりの辛さに大抵は一口食べてリタイアしてしまうソレを彼は全部食べ切りましたからね。素晴らしい根性です。が、食べ終わると同時に気を失いました。ゴールラインを越えてから食べるべきでしたね」
「生半可な気持ちじゃ食べ切れないと思ったんじゃないですか?一口食べた時に彼の動きが一瞬止まりましたから。ところで加々知先生、今回のパン食い用のランチパックの中身って何なんですか?あれ、毎回少し中身違いますよね?」
「ええ、あのランチパックの中身は毎回、借り物競走のお題と同じく教職員全員で決めていますからね。今回の中身は激辛ドライカレー、餡子、カスタードクリーム、メンチカツ、苺ジャム、ポテトサラダ、チョコクリーム、ツナマヨ、タマゴ、ハムチーズ、ピーナッツバター、焼きそばの12種類です。それと、何処かの職員の悪ふざけで激辛ドライカレーが1つだけハバネロソースになっています」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
「加々知先生、何処かの教員って、ご自身じゃないんですか?」
「ええまあ、正直に言いますとそうです」
「「「「「「「「「「アンタ何やってんだ!?」」」」」」」」」」
「いや、サプライズは必要かな?と」
「………では、残りの2年生の皆さはその1個に自分が当たらないように祈りながら頑張ってください。続きましての第4列目は、焔君とクリューゲル君、テスタロッサさん辺りの意異名持ちが1位の有力候補でしょうか?」
「…………どうやらもう1人ほど1位の有力候補たり得そうな顔つきの人がいるみたいですよ」
パンッ
ピストルのスタート合図と共に一斉に私たちは走り出します。
第1障害物の平均台に着くわずかな距離で予想通りディルさんとフェイトちゃんが私たちとの差をドンドン広げていく。そんなお2人に徹隆さん、私の順番で必死に食らいつく。
普通の競走じゃあユウキちゃんのスピードに付いていけるディルさんや『
最初の障害物の平均台にディルさん、フェイトちゃん、徹隆さん、私の順番で到着する。この平均台では彼らにできる限り離されないようにするのが目標です。え?1人くらい抜かないのかって?ええ、抜きません。というか、抜けません。
「おや、クリューゲルさんがスプーンに乗ったピンポン球を放物線を描くように放り投げて、そのまま平均台を悠々と歩いて、最後にピンポン球をスプーンで見事にキャッチ。そしてその行動で女子生徒の心も見事にキャッチ。そのまま次の障害物へ移動して行きます」
「ピンポン球を地面に落としていませんし、平均台を降りるときにピンポン球がスプーンの上に乗っていて、さらにピンポン球に手を触れていませんのでルール上、何の問題もありませんので男子生徒はブーイングをやめてください」
「テスタロッサさん、焔さん、蓼原さんは上手にバランスを取りながら平均台を難なくクリア。クリューゲルさんの後を追います」
あんな曲芸染みたこと出来るのってあとせいぜいランちゃんくらいじゃないですかねぇ?いやー、ディルさんってすごいですよねぇ。イケメンで、気さくで、女性にやさしい、そして運動神経抜群で成績優秀。この間の中間試験学年で3位だとか。まあ、そんな彼でも欠点がありますが。その欠点を今回の障害物競走では利用させてもらいます。
さて、続きまして第2障害物の大網潜り。ここで出来る限りフェイトちゃんと差をつけますよ!
「現在1位のクリューゲルさんが大網潜りに挑戦です。イケメンは何をやってもイケメン」
「大網潜りが絵になるってすごいですよね」
「さあ、後続の方々も続々と大網潜りに挑戦していきます。おや、テスタロッサさんが悪戦苦闘しています」
「あ、テスタロッサさんの綺麗な長い金髪が網にからまってしまったようです。しかも彼女の髪型、最近ツインテールを下ろしましたから。纏めていたらもしかしたらあそこまで絡まらなかったかもしれませんね」
良し!これで現在3位になりましたよ!フェイトちゃんのあの長くて綺麗な金髪はいつもなら憧れますが、今回は自身の髪を短くしていて良かったと思いますよ。
そのまま、第3障害物の急斜面登りです。ここでは徹隆さんと差をつけられないようにしなくては。
「さあ、トップのクリューゲル君が急斜面を1、2、3、4、僅か4秒で越えていきました」
「歯牙にも掛けないとは正にこのこと。後続の焔さんはやや力任せに、対して蓼原さんは上手く重心を取ってスムーズに登っていき、ほぼ同着で急斜面を超えていきます」
「クリューゲル君と焔君、蓼原さんの差はそこまで広がっていません。これは最後のパン食いエリアで逆転の可能性があります」
さあ、ここで先ほど述べたディルさんの欠点と徹隆さんの似たような欠点を利用させていただきますよ!その欠点とは、運の無さです!……え?ここに来て運任せかよ!?って?イヤイヤ、運も実力の内って言いますからねぇ。それに、彼らの運の無さはかなりのものなのでどんな時でも大抵は計画に入れます。
「さあ、クリューゲルさんが1番にパンに食らいつきました」
「中身はいったい」
「辛っ!?」
「どうやら、激辛ドライカレーに当たったようです」
「ハバネロソースと区別が付くんですか?」
「あのハバネロソースの場合、辛いというより痛い、もしくは言葉を発する前に意識を手放します」
「先生、それ身体に悪いんじゃないんですか?」
「安心してください。死にはしませんから」
「先生、生死等の問答が出る時点でアウトです」
「おや、クリューゲルさんが辛さで悶えてる間に焔さんと蓼原さんがゴールしました」
「露骨に話を逸らしましたね。………ほぼ同着のように見えましたが結果は?………どうやら焔君がパンを食べ終わってなかったようです」
「よって第4列目結果は1位B組の蓼原さん、2位C組の焔さん、3位E組テスタロッサさんとなりました。なお、クリューゲルさんはパンを食べ終わるのが遅く6位という結果になりました」
「明希さん、1位おめでとうございます」
「
陣地に帰ると千景ちゃんと友奈ちゃんが祝福の言葉をかけてくれた。
「ふふふ、ありがとうございます」
「「それからごめんなさい。競技前に変に煽ってしまって」」
千景ちゃんと友奈ちゃんが頭を下げて謝罪してきた。
「ああ、まあ、1位になれたんですから気にしてませんよ」
「………ありがとうございます」
「………
「しかし、なんであんなことを言ってきたのですか?」
冷静に考えてみるとあの行動はなんだかお2人らしくないように思います。
「………実は」
「お帰りなさいランちゃん。それから、今度はお2人を巻き込んだんですか?」
陣地に帰ると明希ちゃんが仁王立ちして出迎えてくれた。
「あはは、千景ちゃんたちから聞いたの?」
明希ちゃんの後ろを見ると千景ちゃんと友奈ちゃんが目を伏せていた。どうやら喋ってしまったことを申し訳なく思っているらしい。
「ええ、そうですよ。は~、まったく今度は年下の子を巻き込むなんて」
「いやー、久しぶりの暗躍だったから張り切りすぎちゃって。千景ちゃんと友奈ちゃんも巻き込んじゃってごめんね?」
「いいえ、私たちはランさんに頼まれはしましたが最終的には自分自身の意思で行動を起こそうと決意した訳ですし」
「それより私たちの方こそランちゃんに何も言わず明希ちゃんに話してしまってごめんなさい」
「え?イヤイヤ、謝らなくて良いから!私が好きでやってることだもの!」
まさかこんなにも良い子たちだったとは。ますます、本当にあの徹君の妹なのか疑わしくなってきたわ。
「このように千景ちゃんたちは良い子たちなんですから、変にランちゃんの暗躍に巻き込まないでくださいねぇ」
「うん、そうする」
「………あのう、さっきから言っているその暗躍っていったい何なんですか?」
友奈ちゃんが私と明希ちゃんの会話が気になって聞いてきた。
「ランちゃんの困った癖は知ってますよね?」
「え?うん。可愛い女の子に抱き着くんでしょ?」
「いえ、そっちではなく
「………え?じゃあ、もしかして」
千景ちゃんが勘づいた。
「そう、ランちゃんは私の困り顔が見たいんですよ」
「明希ちゃん、ちょっと違うわ。私は明希ちゃんの赤らめて困っている顔が見たいのよ」
明希ちゃんみたいなキリッとした見た目の子が頬を赤く染めてテンパっていたりアタフタしている姿に一番萌えるのよ!
「………と、まあこんな感じの子なので彼女から頼まれたことに関してはそこまで深く受け止めなくて良いですからねぇ」
「「……解りました」」
「真悟、景友、ただいま~」
「おう、徹お帰り。で、どうしたんだよ?いつものお前ならパン1つくらい明希より先に食い終わるだろ?」
「ああ、あれの中身がピーナッツバターだったからだよ」
「ん?お前ピーナッツバター嫌いだったっけ?」
「嫌いって程では無いが好きでもないな。バター系の甘いものが得意じゃないんだよ。ちなみに、駅ナカとかでよく嗅ぐ香ばしいバターの香りなんかは1分以上嗅いでいると胸やけ通り越して吐き気を催す」
「え、そんなに?」
「そんなに。あと、藍子のヤツがまた暗躍してたから」
「ああ、なるほど。…………てか、いい加減、明希の気持ちに気付いていないフリやめたら?」
「無駄だよ、真悟。こいつ高校卒業まで彼女作らない気だから」
「そういうこった」
「なら、そう本人に言えば?」
「蓼原みたいな美人を逃すのは惜しい」
「唐変木演じていても逃げられる可能性はあるぞ」
「それなれそれでいいんだよ。俺に愛想が尽きたのならそれならそれで。ただ、自分からモーションを起こして逃げられたら俺は立ち直れない」
「こいつ思った以上にチキンで、最低だ」
「あと、蓼原が右往左往してる姿を健やかな顔で俺は見ていたい。俺が告白したりされたりしたら変に意識して蓼原を健やかな顔で見れなくなるのは当たり前だろ?」
「知らんわ。同意を求めるな。景友、こいつが思った以上に変態なんだがどうする?」
「真悟、もう手遅れだ。俺たちはもうこいつらの行く末に関してはポップコーンを食べながら見守ることしかできない」
「劇場鑑賞気分だな。ドリンクもセットで頼もう」
「じゃあ、俺がハッピーエンドを迎えたら鑑賞料として1人1800円ずつもらうからな」
「やけにリアルな値段だな」
「てか俺と真悟以外運悪いんだけどハッピーエンド迎えられるの?」
「一発で激辛当てた蓮太郎とディルほど俺の運は悪くねえよ」
「てか、由良も運悪いのか?」
「おや、ハバネロソースが当たったのはC組の木戸原さんですか」
「「「「「「「「「「「しゃー!!ざまーみろー!!」」」」」」」」」」
「「「………一番運が悪かったか」」」
後編は来週投稿予定です。