焔千景は日常を謳歌する   作:春囃子風

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特別編第6話です。

何とか今日中に投稿出来ました。


Episode:6 走馬看花(そうばかんか)

 「さて、今日も勇者部の活動始めていくわよ」

 

 「待ってくれ風さん。徹隆さんがまだ来ていない」

 

 私たちがこの神樹様が造った世界に来てから早いもので10日が経っていた。勇者部という名のボランティア部のような活動にも慣れてきたそんな感じの今日この頃、勇者部部長の風さんが部室に集まった勇者部面々に今日の活動内容を話そうとするが、兄さんがまだ来ていないと若葉ちゃんが止める。

 

 「ああ、徹隆なら……」

 

 ガララ

 

 「ワルい、遅れた」

 

 風さんが説明しようとすると同時に兄さんが遅れたことを謝罪しながらドアを開けて部室に入って来た。

 

 「あら徹隆、もう終わったの?」

 

 「ああ、荷物を職員室に運ぶだけだったからな。そんなに時間はかからなかったよ」

 

 「あれ?お兄さん、もう依頼をこなしてきたの?」

 

 兄さんと風さんが会話していると結城ちゃんが聞いてきた。

 

 「いや、依頼というか」

 

 「大量のプリントを運ぼうと困っていた女子生徒が居たから徹隆が代わりに持って行ったのよ」

 

 ああ、なるほど。

 

 「「「「「つまり、また徹隆節をかましてきた訳か」」」」」

 

 私たち西暦2020年組が声を揃えて呆れる。

 

 「徹隆節ですか?」

 

 私たちの1番近くにいた樹ちゃんが訪ねてきた。

 

 「ええ、兄さんの持論から来る恐ろしい天然ジゴロ行動よ」

 

 「徹隆の持論って何よ?」

 

 風さんもこちらの会話に参加してきた。

 

 「『男は格好つけてなんぼの生き物』『女性を泣かす男は万死に値する』『据え膳食わぬは男の恥、暴食為すは(おとこ)の恥』っていうような、兄さんの目指す理想の男性像に成るために貫き通すと決めたことを纏めて徹隆節って言っているんです」

 

 「「へー」」

 

 「そういえば以前徹隆に、いらぬお世話だったかもしれないと私が言おうとしたら自分自身の善行を否定しないでくれと言われたが、あれもその徹隆節というやつなのか?」

 

 今度は棗さんも会話に参加してきた。そういえば兄さんからそんな話聞いたわね。

 

 「ああ、それは『善も偽善も相手をおもうもの』『自身の否定は自身への枷』って考え方ですね。前述は善は()()()()()()()()、偽善は()()()()()()()()()()()()()()()行う行動だから、どちらにしても相手のことを考えて行われるものであるということ。で、後述の方は、人間、悪い行動だと思ったら一瞬かもしれないけど考えちゃうから、なので簡単に言うと『良い行いなのだから次も無意識に出来るように良い評価にしておけ』ってことだと思いますよ?」

 

 「なるほど、そういうことか」

 

 棗さんが私の説明に納得する。

 

 「なんかアレよね。徹隆って歳の割に大人っぽい雰囲気あるわよね。………は~、ウチのクラスの子供っぽい男子も見習って欲しいわ」

 

 「子供っぽいというと?」

 

 「ウチのクラスの男子って休み時間にエッチなサイトや画像なんかを見てるのよね~。徹隆ってそういうことしないじゃない」

 

 「それはただ単に格好つけてるだけですよ?兄さん自身ムッツリで『男はエロい生き物だ』って言ってたし。現に前、事故でユウちゃんのショーツ見てしまって喜んでたし」

 

 「ちょっ、千景⁉お前何言って……」

 

 私の台詞に兄さんが何か言おうとしたような気がしたけど、気のせいよね。

 

 「それでも分別やTPOを弁えているだけまともよ」

 

 風さんがため息交じりに呟いた。うーん、どうやら風さんの中での兄さんへの評価はそれなりに高いらしい。

 

 「……風さん、まさかとは思いますけど、兄さんに対して恋恋慕なんて抱いてませんよね?」

 

 「え?いや、流石にそれほどではないわよ。それに、アタシそこまで安い女じゃないし」

 

 「なら良いんです」

 

 「あ、あの~、聞くってことはそういう人がいたんですか?」

 

 私が懸念していたことを風さんが否定してくれたので安堵していると樹ちゃんが聞いてきた。

 

 「ええ、まあ。さっき言ったような行動でコロッといってしまう人がたまにいるのよ。だから兄さんのファンクラブの会員数は学校全体で4位にもなってたりするし」

 

 「「ファ、ファンクラブ⁉」」

 

 「ええ、ファンクラブ。あ、一応言っておきますけどファンクラブがあること自体はウチの学校の意異名持ちでは当たり前ですからね?意異名持ちは良くも悪くも目立つから、どうしても一定の人たちから偶像化されちゃうんですよ。ねえ?明希さん」

 

 「は、ははは、そうですねぇ」

 

 私に話を振られた明希さんが乾いた笑い声を上げながら目を逸らす。

 

 「あのー、ランさん、反応からして間違いないとは思いますけど」

 

 「やっぱり明希さんもその徹隆さんのファンクラブに入ってるの?」

 

 「入ってるどころか会長よ」

 

 「「ええ!?」」

 

 ランさんが杏ちゃん、雪花ちゃんと何かコソコソと話している。3人の顔からして、恋バナとみた。となると、タイミングからして兄さんと明希さんのことかしら?………ランさん、なんだか兄さんの周りを全員仕掛人にしそうな勢いで仲間を増やしてってるわね。そろそろ兄さんも年貢の納め時かしら。

 

 「会話が聞こえないのに悪寒がする。だけど聞こえないほうが良いような気がする。何故だ?」

 

 兄さんがヒソヒソ話をしている3人を見ながら呟く。聞こえてないようだけど、一応釘を刺しておこうかしらね。

 

 「多分だけど、兄さんのファンクラブについてよ」

 

 「ああ、じゃあ聞かない方が良いな」

 

 「………自分のファンクラブなのに気にならないの?」

 

 私の言葉に兄さんが答えると、郡さんが訪ねてきた。郡さん、なんだかんだで兄さんとよく喋るのよね。郡千景の記憶としては男の人に苦手意識を持っていてもおかしくないと思っていたのだけれど、郡さんの方から声をかけるところをよく見る。うーん、兄さんって人畜無害な雰囲気出してるからそのせいかしら?

 

 「ん?いやいや、気にならない訳無いって。ただ、ウチの学校じゃあ自分自身のファンクラブに対しては絶対不可侵を貫くのが暗黙のルールなんだよ」

 

 「………面倒くさいわね」

 

 「ははは、でもまあ、そうしないと中には自分の私利私欲の為に自身のファンクラブを利用する奴が出てきちまうからな。仕方ないと言えば仕方がないのさ」

 

 「………そう」

 

 兄さんの答えに郡さんが渋々ながらも理解した。

 

 「じゃあ、話が一区切りついたところで部活始めるわよ!」

 

 雑談が終わり風さんの号令で本日の勇者部の活動が始まる。はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「!……皆さん、今新しい神託がありました。どうやら新しい巫女と勇者が呼ばれるようです」

 

 神樹様の巫女であるひなたちゃんが神託で告げられたことを勇者部の皆に伝える。

 

 「ずいぶんいきなりね。ていうか、新しい巫女と勇者って、徹隆たちが呼ばれたのに?残すは高知のみなのよ。なのに何でここに来て神樹様はこんなにも戦力を増加しようとするのかしら?」

 

 風さんが神樹様の神託に疑問を抱く。

 

 「万全を期したいんじゃないか?相手は造反神、神様な訳だし。戦力はいくら有っても多いなんてことはないだろう?いくら神樹様から勇者の力を借りていると言っても俺たちは人間なんだから」

 

 風さんの疑問に兄さんが答える。確かに相手が神様なのだから戦力は多いに越したことは無い。無いのだけれど、

 

 「「「「「「「「「「人間って何だっけ?」」」」」」」」」」

 

 兄さん以外の勇者部全員の声がハモった。うん。そうよね。そう思うわよね。

 

 「兄さん、兄さんの場合は『一応人間』か『まだ人間』って言った方が良いわよ?」

 

 「……焔、自分の兄だから人間と認めたいだろうけど諦めなさい。こいつはもう人外という括りに入れるべきよ」

 

 兄さんへの私の言葉に夏凛ちゃんがツッコんできた。いや、確かに兄だからって考えもあるけれど、一番は兄を人外と認めたら私たちの世界が人外魔境になってしまうじゃない。自分の住んでる世界がそのように認知されてしまったら、流石の私たちも泣きたくなってくるわよ。

 

 「千景、多分もう遅いと思うぞ」

 

 「………そうやって人の心を読むから人外認定されるのよ?」

 

 「妹の心の声1つ聞くことが出来なくて何が兄だ!」

 

 「プライバシーの侵害で訴えるわよ?バカ兄さん」

 

 「ごめんなさい!」

 

 「………コントが終わったようだから、話を戻すわよ?」

 

 「「はーい」」

 

 私たちのコントが一区切りついたのを見計らって郡さんが聞いてきた。なんだかんだ言って実のところ郡さんと1番仲良くなってたりするんじゃないかしら?

 

 「今回の召喚では巫女と勇者2人の計3人が喚ばれるみたい」

 

 「そして、勇者様の方なのですが、どうやら徹隆先輩のような男性の可能性があるみたいです」

 

 水都ちゃんと亜耶ちゃんが今回喚ばれる人たちの詳細を教えてくれた。しかし、男性の勇者か。兄さんだけでもかなりの例外だったのにさらにもう2人も増えるのね。

 

 「まさかとは思うが、俺たちの知人じゃねえよな?」

 

 「……………徹隆さん、それってフラグって言うんじゃないんですかねぇ?」

 

 兄さんの不穏な発言に対して明希さんがツッコミを入れる。と、同時に部室内に光が充満していく。

 

 「神託が来て直後だなんて神樹様もせっかちね」

 

 「チカちゃんたちのコントが結構長かったよ?」

 

 「兵は拙速を尊ぶと言う!勇者もまた然りと神樹様は言いたいのだろう!」

 

 「善は急げとも言うしね!」

 

 「あなたたちってこういう時は本当に兄妹なんだなって思うわ」

 

 風さんが私たちが兄妹である事を急に認めてきた。はて?何故?

 と、私が考えている間にも光は強くなっていき部室全体を包み込むと一瞬躍動するかのように強く輝き瞬く間に収束していく。そして、収束した光が消えた場所には、

 

 「「「ひふみん!?」」」

 

 「フラグ回収早ッ!!ていうか、ひふみちゃんが巫女?」

 

 「ちょっと兄さん、兄さんが変なこと言うからひふみさんを巻き込んじゃったじゃない」

 

 「マジで?俺のせい?」

 

 「………ええと?………あっ!…テッちゃん?………ここ、…どこ?」

 

 状況を掴めず回りをキョロキョロしていたひふみさんが兄さんを見つけて質問してきた。

 

 「伝わるかな?実はな滝本、かくかくしかじかという訳なんだ」

 

 兄さんがこの世界特有の説明の仕方をした。これ、ひふみさんにも伝わるのかしら?

 

 「!?………何故か……解った!?」

 

 「「「「「伝わっちゃった!」」」」」

 

 「便利だな~、これ。っと、すまんが滝本、あと1つ質問したいんだ。もうちょっとだけ頑張ってくれないか?」

 

 「…………うん……良いよ」

 

 よく見るとひふみさんの顔色が少し悪い。周りに知らない人がいっぱい居るからか。ひふみさんには辛いわよね。

 

 「サンキュー。じゃあ、ここに来る時、お前の周りに誰か2人くらい居た?」

 

 「?………ええと、マーちゃん、アッちゃんと一緒に居たよ?」

 

 「あの2人か。ありがとな滝本」

 

 「………ううん、……別に。………ところで、私は…どうすれば……良いの?」

 

 「んー、とりあえずは明希たちと喋って、ちょっと落ち着こうか」

 

 ひふみさんは兄さんの言葉に頷くとフラフラした足取りで明希さんと紺野姉妹のところに向かった。

 

 「ねえ、徹隆。あの子大丈夫?顔色悪いみたいだけど」

 

 成り行きを見ていた勇者部の中の夏凛ちゃんが兄さんに聞いてきた。

 

 「ん?ああ、大丈夫だよ。初対面の人が大勢いたからキャパオーバーしただけだから、少しすれば落ち着くだろう」

 

 「徹!!」

 

 兄さんが夏凛ちゃんに答えているとユウキさんが大きな声で兄さんを呼んだので、そちらを見るとひふみさんが倒れていた。

 

 「どうした!?」

 

 「ひふみんが結城ちゃんと高嶋ちゃん、郡ちゃんを見て気絶した!」

 

 「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」

 

 「…………徹隆、全然大丈夫じゃないじゃない」

 

 「…………ああ、うん、そうだね」

 

 樹海化警報発令

 

 …………うん、ちょっとバーテックス!少し空気読みなさいよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大変です!神託で勇者様お二人が樹海に召喚されてしまったとのことです!」

 

 亜耶ちゃんが焦りながら緊急事態であることを伝える。

 

 「巫女として喚ばれた人が明希さんたちの知り合いってことは勇者の人もその可能性があるってことだよね?バーテックスを見たことが無いからパニックになるんじゃないかな!?」

 

 水都ちゃんが心配そうに聞いてきた。

 

 「んー、俺たちの予想通りのヤツらが喚ばれている場合はパニックってよりギャーギャー騒いでるだろうな。あっ!もし予想通りあいつらが召喚されているなら電話繋がるんじゃね?」

 

 「え、あっ!確かに電話番号を知っているなら繋がるかも!」

 

 「じゃあっと、えー、景友の番号っと、………………あ、もしもし景友?今お前真悟と一緒?……うん…うん、それってカラフルな根っこの世界?………うん……大丈夫。滝本ならこっちに居るから。………そうそう。で、白い白玉擬きみたいな化け物いる?……うん…そう、そのきもちわるいヤツ。……うん…うん……ソイツらの説明は後でするよ。取り敢えずソイツら抹殺して良いから。………ん?ああ、お前ら服装変わってね?……そうそう、そのコスプレみたいなの。で、戦おうって意志さえ示せば自身の手に武器が出るから。………出た?…………うん、好きに暴れて良いから。………うん、じゃあ、こっちの用が済んだら俺たちもそっち行くから。多分30分くらいで行けると思う。じゃ。…………。よし、これでもうほぼ大丈夫だ」

 

 「「「「「「「「「「イヤイヤ、大丈夫じゃないから!」」」」」」」」」」

 

 私たち以外の勇者部全員がツッコんだ。

 

 「兄さん、真悟さんも居るのよね?」

 

 「ああ、居るってよ」

 

 「と言うことは真悟さんと景友さん、お二人が勇者として喚ばれたということですよねぇ?私たちいります?」

 

 「大型は流石に2人だけじぁあ、骨が折れるだろう。特にアイツらは俺と同じでそういうの面倒くさがるし」

 

 「ああ、確かに」

 

 「で、滝本だけを残す訳にもいかねーし、明希と藍子にはワルいが残ってもらって良いか?」

 

 「構いませんよ」

 

 「ひふみんが目を覚まして私たち全員が居なかったらパニクるもんね」

 

 「という訳で犬吠埼、ワルいんだが今回はコイツら留守番で良いか?」

 

 「え、あ、ええ。それは良いんだけど、ねえ徹隆、さっき話てた人ってアンタやユウキくらい強いの?」

 

 ひふみさんが心配なので明希さんとランさんを残したいと訊ねると了解の旨と真悟さんたちについての質問の言葉が風さんから出た。

 

 「んー、景友は俺と同じくらいだな。真悟もいつもはそのくらいだ」

 

 「いつも?」

 

 風さんが兄さんの言葉に疑問を感じ聞き返す。声を発したのは風さんだけだが周りに人たちも疑問を感じていたらしく皆一様に首をかしげていた。

 

 「ああ、まあ滅多に無いことなんだが、真悟がキレると多分ここにいる全員で一斉にかかって漸く良い勝負が出来るくらいじゃないか?」

 

 「「「「「「「「「「……………………は?」」」」」」」」」」

 

 私たち以外の勇者部全員が間の抜けた声を発した。

 




走馬看花……表面だけ見て、本質を理解しないこと。または、物事がうまくいって、誇らしそうにすること。

特別編の投稿は不定期です。次話は今月中には投稿予定です。
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