リリカルなのは-オーズクロニクル   作:スターみかん

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第1話「欲望と当選と小さな始まり」

欲望とは何か?

 

人が誰しも必ず持つ、前に進むための活力と言う人も居れば醜く、汚らわしく、自分の中で押さえ込まなければならないものと答える人もいるだろう。

 

だが、いくら無くしたいと宣っても消えないのが欲望。

 

消すことなど誰にも出来はしない!

 

だが無限に増やすことは出来る!

 

かつて一度は自分の中から欲望を失い、無限の欲望を受け止められる程の器を手に入れた男がいた。

 

彼は「世界のどこまででも届く自分の手」を望み、「力」を持たない自分に絶望し、自分の欲望に蓋をした。

 

だが、そんな彼の前に現れた欲望の化身とでも言うべき存在が現れた。

 

それもまた、悠久の時を過ごして来ながらも世界を感じることも出来ない自分に苛立ち、彼の持つ器に「力」を与えた。

 

僅かな時が過ぎ、衝突ばかりしていた彼とそれはお互いに利用しつつ、されつつの仲からいつの間にか、自分の求めていたものを与え合っていたことに気がついた。

 

だけれどそれに取っての求めていたものは「それ」が一人の「彼」として終わることを意味していた。

 

遺された彼はもう一度、彼に会うために「いつかの明日」へと進んでいった。

 

その日は確かに訪れた。

 

そして今度はその大きな器に彼は蓋を閉じた。

 

代わるように残った彼は、今度はもっと違う世界を見たいと思った。

 

これから始まる話はいつかの明日を迎えることが出来た彼と、「彼」を受け継いだ青年たちを取り巻く新たな物語である。

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4月の始まり。

 

まだ冬の寒さが引ききってはいないが、新たな命の芽吹きと暖かな風がこの美しい海沿いの街とそこに住む人々を包み込む出会いの季節、春。

 

ここは海鳴市。

透き通るような綺麗な海と、四季によって覗かせる顔を色とりどりに変える山に囲まれつつも、首都圏に近いその地の利により発展した街並み。

人と自然が共に生きる素敵な街だ。

 

そこに住む人々は誰かと笑い、悲しみ、少し怒ったり、それでも誰かと喜びを分かち合ったりして暮らしている。

 

そんな中、一人の少女はひとりぼっちで日々を暮らしていた。

「もうずいぶん暖かなったなー…。」

小さな子供たちが元気にはしゃいでる公園の脇で小さく、ぼそりとそう呟くと少女…八神はやては一人自分を乗せた車椅子の車輪を前に進めた。

彼女の親はもうこの世におらず、彼女自身も物心ついたときから体が不自由でこうして車椅子を自分で回して日常生活を過ごしている。

 

今日は定期的に通っている病院の診察を終え、帰路についている。

いつもならばそのまま図書館で本を読み耽って、閉館時間まで過ごしているのだが、先日注文した品が届くとあって真っ直ぐ帰っていた。

 

学校にも行けず、友達もいない彼女にとっては数少ない楽しみとも言えるものが届くとあって、久しぶりに気持ちが明るくなっていた。

 

帰宅し、すぐに配達が訪れて受け取り中身を開けると待ちかねていたものを見ると思わず彼女もぱあっと少女らしく笑みを見せた。

先日発売されたばかりの新作ゲームソフト「マイティーアクションX」だ。

 

ピンク色の愛らしい顔つきで一頭身の胴体に短い手足の付いた、お菓子好きの主人公マイティが好物を集めながら冒険をしていくというシンプルながらも、隠し要素などもてんこ盛りで奥が深く、登場キャラクターたちもみんな可愛らしくて男女共に幅広い世代から人気を集めるシリーズの最新作だ。

 

はやては両親が事故で亡くなる前から一緒にプレイして笑い合えた思い出からこのゲームが大好きだったから発売のこの日を楽しみにしていた。

開発会社のサービスの一つに商品アンケートに答えた親子または小学生以下の予約者には必ず発売日に店頭でのお渡しか、配送サービスを手配することになっていたので、人とあまり関わりたくなかったはやては配送でこのゲームが来るのを楽しみに待っていた。

「楽しみにしとったわー。新しい作品でもマイティは可愛いなー。」

 

パッケージのマイティを愛でながらも中身の箱を開けると一通の封筒が床に舞い落ちた。

「なんやろ?これ。」

前の作品にはこんな物は無く、はやては不思議に思って拾い中身の出した。

 

「『当選おめでとう!この度はマイティーアクションXをお手にとって頂きありがとうございます!

今回事前告知無しにランダムにプレゼント引換券を封入させていただいておりました。

つきましてはこの手紙と本封筒に同封しております当選通知を返送していただいた方に心ばかりのプレゼントをお届けさせていただきます。

皆様からのお返事お待ちしております!

byゲンムファウンデーション ゲーム開発部門室長

黒斗エイジ』…ほえーこんなん入れてくれとったんかー…」

思ってもいなかった幸運にはやては嬉しさ半分の不安半分だった。

 

プレゼントは嬉しいがまた知らない人が家に来ると考えると少し嫌な感じもした。

 

悩みながらふと、居間の机の上を見ると彼女にとってもう一つの大事なもの…生まれたときからずっと一緒の古びた本が置かれていた。

 

この本はどうしてか鎖で閉じられていて中を見ることも出来ないがこうして見ているとしゃべりこそしないが、何故か暖かい気持ちにしてくれる素敵な本なのである。

「せっかくご厚意で入れてくれったものやし、ずっとウジウジしてもしょうがないなー。」

そう言って本に微笑みかけるとはやては封筒から通知ハガキを取り出して返事を書き始めた。

 

これが長く、大切な繋がりとなる始まりになろうとは知るよしもなかった。

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岐阜県のとある小さな村。

まだ冬に降った雪が道の脇に所々に小さく積もっている。

 

そこに立つ電柱に気だるそうにもたれながらアイスを舐めている男がいた。

 

「アイツ、また長いな…。」

彼の名はアンク。

こことはまた別に存在する地球で欲望の塊として生まれ、そこで永い時を過ごしてきた者だ。

 

かつて彼の存在した世界では欲深き王が生命の欲望をメダルとして固形化し、そこから人の手で生命を作り出した。

それが「グリード」と呼ばれるアンクたちのことだ。

 

王は彼らのメダルを使い「オーズ」と呼ばれる計り知れない力をその身にまとい、世界の全てを手に入れようとした。

 

だが彼の器ではその力を受け止め切れず、身を滅ぼし、グリードたちも長きに渡る眠りについた。

 

時が経ち、800年後に甦ったアンクは同様に目覚めた他のグリードたちからメダルを奪い、願いを叶えるために

オーズの力を一人の青年に渡した。

 

火野映司…それが「先代」の…仮面ライダーオーズである。

 

アンクと彼は時に利用し、衝突しながらも、協力し、助け合い、友情などでは推し測れない不思議な絆を結んでいった。

 

戦いが激化し、終わりを迎えると同時にアンクは核となる自身のコアが割れ、映司に別れを告げ消滅した。

 

だが、それからも彼はアンクと出会えるいつかの明日を信じ、世界を旅し続けた。

 

それから40年後、それは叶った。

 

だが、それから一緒に過ごせたのはごく僅かな時であった。

 

代わるように映司は安らかな眠りについた。

 

一人行く宛も無く世界を放浪としていたアンクだったがかつて消滅する前、最後の戦いで生じた次元の裂け目が彼の行く先に現れた。

 

そこで過去の映司と未来からの敵を相手に共闘、すべてが終わり彼にとっての現代に戻る裂け目の中、来た道とは違う世界が枝分かれしたように彼の前に現れた。

 

不思議と彼はその世界を始めて見た気にならなかった。

 

彼は待ち焦がれていたようにそこに飛び込んでいった。

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アイツはいつもこうだ。

 

アンクは心の中でそうぼやいた。

 

毎度毎度俺を振り回す。

 

なんで俺はもう4月だというのにこんな寒空の下にいるんだ。

 

半月程前のことだ。

 

?「アンクー!ちょ~っと付き合って欲しいことがあるんだけ「断る!!」…ちょ!?まだ言い切って無いじゃん!」

 

こいつがこんな風に頼みを言ってくる時はろくなことが無いと短い付き合いでももう分かっていた。

 

?「今度出す新作ゲームのキャンペーンでファンの子たちにプレゼントを渡って回んだけど一緒に行こ!」

 

そら見たことか。ろくでもない。

 

「馬鹿か。何で俺まで行く必要が「新作のプレミアムアイス一月分じゃダメ?」何人回る気だ?」

 

こんなことになるならせめてこの時の俺に

「二月にしろ」と言いたくなってきた。

 

まぁ、これはヤツ絡みでもあるから今回は多めに見よう…と思っていたが。

 

「いくら何でも遅い!」

 

かれこれ二時間近くここで待っている。

 

あいつは今俺の向かいにある家のガキに会いに行っている。

 

この村に着いた時に一緒に邪魔するかと聞いてきたが、ここに来るまでの8件は長くても30分ぐらいだったし、ガキの相手もめんどくさいから今回は待つことにした。

 

その結果まさかこんなに退屈になろうとは。

 

寒さはなんてこと無いが、特にすることもなくここまで暇をもて余すことになろうとは考えなかった。

 

そうイライラしているとようやくお出ましだ。

 

「お兄さんこれありがとう!」

 

?「いやいや!こちらこそだよ!お兄さんが作ったゲームでこーんなに笑ってくれて嬉しかったよ!ありがとね。」

 

そう言って玄関の上ではしゃいでる6~7歳ぐらいのガキとその横でお礼を言う母親に嬉しそうな笑顔を見せる小憎たらしいやつが出てきた。

 

どうやらいつもの嬉しがりが発動して話を弾ませていたらしい。

 

ああなるとアイツはめんどくさくて堪らない。

 

「わざわざこんなところまでありがとうございました。

あの、これ隣で和菓子屋を営んでる主人が作ったものなんですがよろしければお持ち帰りください。」

 

?「あ!お気を使わずに!」

 

アイツはこういうのを絶対に受け取ろうとしない。

別に嫌いな訳ではないが。

 

「これ、ボクもお手伝いしたんだー!絶対美味しいよ!」

 

?「そうなんだ!うーん…じゃあせっかく用意していただいたのでいただきます!」

 

やったーと嬉しがる子どもと良かったねと微笑む母親の前のアイツはこちらに軽い調子でとウィンクを向けた。

 

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?「ごめんね。待たせちゃって。あの子が一生懸命に今まで進めてきた進捗見せてもらってたらかなりかかっちゃって…。」

 

「全くお前はこういう時は回りに見境無くなるよな。」

 

?「うぅ…。面目無い。」

 

こいつ…黒斗エイジは今俺とつるんでいるやつだ。

 

ゲーム作りの天才らしく、父親の会社のゲーム部門でトップとして開発しながらも、普段は俺とあちこちに用事に出かける端から見たら「変わり者」だ。

 

「で、これなんだけど…。アンクー、一緒に食べてくれない?」

 

バイクを変えておいた場所に向かいながら、さっき貰った菓子を開けて一つ差し出してきた。

 

「お前も相変わらずだな。」

 

受け取ると作って間もないのか暖かさが残る饅頭だった。

 

「結構暖かいねー…。」

 

頬張ると手作りで中のあんこに手間がかかっているのか

小豆がある程度形を残しつつ食感もしっとりとしつつもしつこくない程よい甘さの饅頭だ。

 

「なかなか美味い。」

 

「満足してくれた?結構いけそうだね。」

 

ニヤニヤしながらエイジも一つ頬張ると残りが入った箱は俺に預けた。

 

「で、次で最後で本題か。」

 

「ああ。今回偶然当選した子が住んでるその街では最近、変な生き物の目撃情報や不審な地震が小規模だけど頻繁に続いてるらしい。」

 

村の入り口に停めておいた自販機…に変形できるバイク、ライドベンダーの所まで辿り着くと真剣な表情でスライド端末を取り出し、情報を表示した。

 

そこには何か巨大な生き物のような影が写った写真が数枚と街の定点カメラが記録した揺れの映像が保存されていた。

 

「それと少ない情報だけど、虫の化け物みたいなヤツがをいたとかそんなことが起きてるみたい。」

 

「なるほどなー。…本当ならば街の近くまで行けばその時点で俺もヤツに気づけるだろうな。」

 

名前まで同じで初めて会った時は少し驚いたが今はこいつが3代目のオーズだ。

こうしてこの世界のどこかに隠れるヤツを二人で探して回っていて、今回はその最中にこいつが作ったゲームの発売キャンペーンに付き合わされたというわけだ。

 

「で、次はどこだ?」

 

そう言いながら俺は姿を人間の姿から小さくして右腕だけに変え、エイジの背負うカバンの中に入った。

 

「海鳴市ってところ。この全国巡り始める前は写真の影の情報ぐらいしかなかったから様子を見てたら結構確信を持てるぐらいの情報が今になって出てきたってわけ。」

 

「はっ!物は言い様だな。」

 

だねと苦笑するとライドベンダーの中央パネルに人差し指を当て、バイクに変えるとメットを被り、エイジは道を走らせた。

 

(それにこの当たったこの子とは少しゆっくり話してみたいと思ったし…。)

 

そう心の中で思いながら。

 

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はじめまして!

今回から始まりました「リリカルなのは-オーズクロニクル」。

いかがでしたでしょうか?

筆者は2ndA'sからなのはさんたちが大好きで、いつか二次創作の中で自分で物語を作りたいと思い、全体を通しての話がこの6年で固まったので、ようやくのスタートを切ることが出来ました。

「ここの設定はこうじゃないか?」、「少しこいつ一強過ぎやしないか?」などといったお言葉やご意見もありがたく思いますので、是非コメント等の形でどんどんいただきたく思います!

また、「良かった!」などの暖かいお言葉は大変励みになりますので、もしありましたらこちらも是非よろしくお願いします!

感想、批評共にお返事などもしたいと思いますのでお気軽に来てください!

では、また次回に。

P.S.はやてちゃんの口調は出来うる限りの研究中です!
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