最初の方から読んで頂いている方は次の話で第一部の区切りとなるので、一話から振り返って読んでみるのも良し!
操作ミスで最新話から読まれた稀有な方は素直に一話を読んで頂ければ嬉しいです!
そして今まで言ってませんでしたが、この物語はなのはの映画ベースとなります。
それでは本編へどうぞ!
「…ん。…あれ?ここって…。」
エイジが目を開けると見覚えのあるあの不思議な空間にいた。
見張らせども地に雪のように溜まった淡く光る粒子が辺りを照らしこそしているがどこまでも暗く、寂しい漆黒の空が広がっていた。
そしてやはりと言うべきか、彼女はそこにいた。
それも目の前に。
彼女に気づいて地面に寝転がっていた上体をお越したはいいものの、キョトンとした表情をする彼女と目が合うと暫しの静寂が流れた。
「ええと…。こんにちは…でいいのかな?」
なんだか気まずい、どう切り出すか分からない状況だが挨拶は大事だ。
「…。」
返ってくる言葉は無かった。
何か気を損ねるようなことをしたかとも思ったが、ただじっとその紅の瞳で自分を見つめている彼女からは特別悪いものは感じなかった。
「…すまないな。立てるか?」
何か納得したのか歩み寄ってそう口を開いた彼女はエイジに手を貸した。
「あ、どうも。」
その白く細い手を取り立ち上がると彼女が語った。
「一度礼を言いたいと思っていたのだが、どうやら図らずも貴方の意識をこちらに引き込んでしまったようだ。
申し訳ない。」
「礼?」
頭を下げて謝罪する彼女にエイジは聞き返した。
「主の側にいてくれてありがとう。
あんなに楽しそうなあの方を見るのはこの身が側に控えてから初めてだ。」
顔を上げて優しい微笑みを浮かべ話す彼女の表情は以前見せた寂しげなものではなく、心から嬉しそうだった。
「やっぱあなたがアンクの言ってた本の精霊さんなんですか!?
こっちもまた会いたかったんですよ!」
「精霊か。そんな風に言われるのは初めてだな。」
どうやらここはあの本の中に広がる秘めたる空間で、この女性は例のアンクの恩人のようだ。
「だって佇まいからして綺麗な人だなって思ってましたもん。
でも嬉しいな~。」
「なぜだ?」
「いや、なんというか…人からいてくれてありがとうなんて言われたら単純に嬉しいじゃないですか。」
少々照れ臭そうに鼻の下をかいてはにかむエイジに彼女は柔らかく「そうか。」と言い微笑んだ。
そう話し込んでいるとエイジの体淡い空色の光を伴って輝き、ゆっくりと地面から浮かんだ。
「あれ?もしかしてもうお仕舞いですか?」
自分の意識が戻ることを察したエイジは名残惜しそうに尋ねた。
「ああ、微睡みの時が終わるようだ。」
「もっとお話したいこといっぱいあるのにな~…。
まあ、またお会いできた時の楽しみにしときます!」
「私もそうなれば嬉しいよ。これからも叶う限り主のお側にいてあげて欲しい。」
「もちろん!」
朗らかな笑みでお決まりのサムズアップを作り、上へ上へと浮かんでいくエイジを見送りながら彼女は最後まで自身の大切な主のことを想っていた。
「それから…彼にもよろしく伝えてくれ。」
最後の言葉に彼が返事をしようとしたと同時に彼は光の粒となって霧散し、外の世界へと戻っていった。
見送った後、彼女は目線を下に向けて一言だけ呟いた。
「…やはり…そうなのか。」
呟いた彼女の瞳は水面のように潤んでいた。
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目を覚ましたエイジは林の中に埋もれていた。
どうやら意識を失った時に脇道から坂に転げて、そのまま眠り込んでしまっていたようだ。
「うっわ、草まみれじゃん。」
服にまとわり付いた枯れ草や落ち葉をはたき落としつつ、転がって来た坂を登っているとカンカンとやけにテンポの良い音が聞こえてきた。
「何の音だ?広場の方からか。」
まだ日が少し顔を覗かせている頃合いに一体何だと気になったエイジは元いた道に戻り、昨日自分が通信をしていた広場へと足を進めた。
曲がればすぐ広場の角まで行くとそこには見覚えのある顔の少女がいた。
なのはだった。
目を閉じて利き腕であろう左腕を前に出し、昨日の戦闘でも使用していた桃色の光弾を一つだけ作ってそれを操作し、空き缶を上へ上へと打ち上げていた。
咄嗟に広場へと入りかけた足を戻して、曲がり角の物陰から様子を伺うことにしたエイジは彼女が何をしているのかを察した。
どうやらあの弾を更に精密に操作出来るよう練習しているようだ。
「31…32…33」
傍らのベンチに置かれたレイジングハートが打ち上げた回数を数え、その横には利口そうな一匹のフェレットがちょこんと立っていた。
恐らくユーノであろうとエイジは目星を付けていた。
アンクから「家でやたらフェレットに話し掛けている」というものと、時折なのはと共にいるユーノが突然消えることが多々あると報告を受けていたこと、何よりなのはのコントロールが50回を越えて止まったところにフェレットが彼女に何か喋っているので、ユーノがフェレットになれると考えるのが妥当だった。
会話の内容こそ離れていて聞こえないが、表情からして練習の成果が表れているのだろう、フェレットの姿のユーノと笑顔で話しながら帰り支度をしていた。
努力を惜しまずに研鑽に励むなのはに感心し、その場を立ち去ろうとしたその時エイジの携帯が鳴り響いた。
慌てて物を取り出そうとしたエイジは手を滑らせて落とし、前のめりになった状態で携帯と共に再び落ちていった。
「まさか立て続けにおんなじような所に落ちようとは…。」
鳴り止んだ奇跡的に無事な携帯を拾い上げてまた登ろうと立ち上がるが不運は続いた。
「あのー!大丈夫ですかー?」
よりにもよってなのはに見つかってしまったのである。
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「あの、本当に大丈夫ですか?顔もケガして血が出てますよ。」
「いやいや!本当に大丈夫だよ!」
自力で這い上がったはいいものの、エイジはなのはに物凄く心配されていた。
オーズの時の声は元の声とは少々異なるように聞こえるとはいえ、エイジは内心ではバレないかヒヤヒヤしていた。
落ちる最中に木に当たって顔には一筋の傷がスーッと入り、血が出ていた。
「こんなのほっといても止まるし平気平気。」
「でも…。あ!そうだ。お兄さん少ししゃがんでくれませんか?」
「え?」
言われるがまま彼がしゃがむとなのはは自身の制服のポケットからポケットティッシュを取り出し、ケガをした頬を優しく拭いて絆創膏を貼った。
「はい!これで本当に大丈夫です!」
「あ、ああ…ありがとね。」
唐突な心優しいお節介に少々戸惑いつつもエイジは彼女の優しさを素直に受け止めた。
「いえ!ああっと、ちょっとまだ拭き残しが…。」
やり残しを見つけたなのはの手からティッシュが落ち、しゃがんで膝に載せていたエイジの右手の甲に落ちた。
拾おうとしたなのはだったがエイジの腕時計の時間に驚いて声を上げた。
「あ!」
「あ、もしかして時間押しちゃってた?」
視線の先に気づいたエイジがなのはに聞いた。
「いえ!大丈夫です!」
気を遣って誤魔化すなのはだが朝早くから魔法の練習に出掛けているのは家族に内緒で、もうみんな集まっての朝食の時間までギリギリであった。
「お急ぎみたいだからこれのお礼にお家まで送るよ。
俺バイクあるからさ。」
目に見えて焦るなのはにエイジは絆創膏に触り、そう提案した。
「いいんですか!?」
「もちろん♪」
そう決まった後の二人の行動は早く、なのはの肩に乗っていたユーノは振り落とされそうになり、その後のライドベンダー乗車時は地獄を見て悲痛な鳴き声?を上げていた。
「キュ、キュー!!」
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「たく…。ようやく繋がったと思ったらまた面倒なことをしてくれたもんだな。」
「面目次第。」
昨夜から再三に渡っての連絡を悉く応じずにいたエイジからの連絡にアンクは呆れていた。
八神家のエイジの寝室に腰掛け、足を組んで連絡するアンクはなのはを自宅近くまで送ってこちらに向かっているという彼の話を聞いていた。
「倒れた挙げ句にあのなのはたちとの接触。
自分で気をつけてたことをお前自身が破ってどうすんだよ、バカ。」
「まっこと弁明の余地もございません。」
「とりあえずさっさとこっちに戻れ。
お前が戻り次第で俺もあっちに行くぞ。」
「了解!」
そう言ってエイジは電話を切った。
昨夜なのはたちにも最低限提供出来る情報を渡すことにしたエイジは事件処理を終えた自分と交代で出掛け、今になるまで音沙汰が無かった。
倒れた理由は理由で特殊なため、アンクも言うほど咎めるつもりは無かった。
それでもなのはとの接触は頭を抱えるドジっぷりであることに変わり無いが。
そもそも事情があって昨日の戦闘でなのはたちの力を借りることを提案したのは自分だった。
理由は幾つかあるが利用出来るものは無駄にする手はない。それが彼なりの考えだった。
とはいえエイジたちが殊更慎重に動きたい理由も分かっている。
相手は少なくとも自分が知っている頃よりも更に陰険で執拗、何よりも『何がしたい』のか分からなくなっているからだ。
「アンクさーん、ご飯出来ましたよー。」
下からはやてが呼ぶ声が聞こえた。
「アイツにも伝えてやるか。」
出掛けたまま戻らないエイジのことを心配していた彼女にも面倒だがさっさと教えてやろう。
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「おはようございます、アンクさん。エイジさん繋がりましたか?」
「よう。ああ、ようやく用事が済んでここに戻るだとさ。」
はやてにはなのはや管理局、魔法絡みの情報はこちらとしても分からないことだらけなので、不用意に伝えることは避けていた。
「そうですか~。なんや、えらい長いお仕事明けやったらめちゃめちゃ眠い状態になってるやろうし、ベッドのシーツも新品のもん用意して置いてあげましょ。」
「いや、電話で聞く限りあのテンションで寝かせると昼夜逆転して後で俺たちが痛い目に遭う。
今日はアイツと夜まで好きにしろ。」
はやての用意したアジの開きや手作りの味噌汁、お浸しといった凝った朝食の席に着きながらアンクは言った。
「でもお疲れのところに悪ないですか?」
「アイツは下手に休むよりも好きなことやらせてる方が疲れが取れる質なんだよ。」
「まあ…何となく分かります。」
昨日のドタバタで取り込めなかった洗濯物を丁寧に畳みつつ、はやてはアンクの言う彼の姿を想像して苦笑した。
「それに」
「?」
アジが気に召したのか箸で身を粉削いでは食べつつアンクは続けた。
「アイツ曰くお前と一緒になってゲームを作るのは新鮮な衝撃が多くて楽しくて仕方ないらしい。
だからお前も下手に遠慮するな。」
「え~、嬉しいです!」
「ハッ。俺が言った訳じゃねえよ。」
「あ、アンクさんご飯おかわりですか?」
「…ん。」
ぶっきらぼうに茶碗を差し出すアンクにはやてはそれを嬉しそうな笑顔で受け取ると車椅子で台所へと向かった。
アンクからすればはやては独特な個性と口調だが、決して嫌な相手では無かった。
気も利く上に料理も旨い、おまけに自身を襲ったヤミーやグリードと同じような存在である自分を忌避することも無ければ、差別することも無いその度量の大きさを実は気に入っていたりする。
だが自分は気づいていた。
一見無欲のように見えるはやてだがその胸の内には並以上の欲望が存在することに。
彼女自身がそれを表に出さない限り、グリードである自分には詳細な内容は分からない。
それでもある程度は予想がついた。
そして確証こそ無いが近い内、それが満たされる時が来るであろうと思いあの本に目を向けた。
エイジのやつは会ったらしいが、アイツらはもとより、アイツは…今までのこの永い時をどう過ごして来たのだろう。
「…さ…。ア…ク…。アーンークさーん!」
「…あ?」
「あ?やあらへんですよ。ボーっとしてはりましたけど何か考え事ですか?」
初めの頃に比べて、アンクの柄の悪さにすっかり慣れたはやてには彼の凄みでも全く怯まなくなっていた。
はやてからのおかわりを受け取ったアンクは少し考えてから口を開いた。
「あのなはやて。あの本にはな…」
そこまで話した時、玄関のドアが開く音がしたと思えば次の瞬間にはあのバカが勢い良くリビングのドアを開けた。
「はやてちゃん、アンクただいまー!」
「あ、エイジさんお帰りなさ…ってどないしはったんですか!?
そんなボロボロの切り傷だらけになってもうて?!」
「おい、聞いてたよりも酷い有り様だな。」
白いワイシャツも茶色くなり、コートも土でくすんで皮膚が出ていたところには傷が目立ち、顔には大きめの絆創膏が頬部分に貼られていて、さながら服装だけはいっちょまえのガキ大将の体だった。
「いやもうね、踏んだり蹴ったりで災難だらけと思ったけどまあ良いこともあってね…」
「分かったからさっさと着替えてこい、バカ。」
「何だと!?ちょっとぐらい俺の土産話聞いてくれてもいいだろ!」
「ああもう!その格好で絡むな!メシに砂が入る!」
「と、とりあえずエイジさん落ち着きましょ!ね!」
「あ!はやてちゃん!後でまたちょっと話聞いて!
面白いアイディアが浮かんだんだ…ってその前にごめんね!連絡出来なくて!」
「大丈夫です!でもとりあえずお風呂行きましょ!」
かなりのハイテンションで忙しくアンクにアームロックをかけたり、はやてに連絡出来なかったことを謝るエイジをクールダウンさせつつ、はやては彼をすぐに風呂場まで誘導した。
そのはやての顔は終始楽しそうな満面の笑顔だった。
ようやくのなのはとの対面でした!
次の話で一部も終了です!
物語も大きく進んで行きます!
どうぞまたよろしくお願いします!
それでは♪