リリカルなのは-オーズクロニクル   作:スターみかん

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はい!スターです!

お読みいただいている方が多くいらっしゃって、本当に嬉しく思う今日この頃です!

今回は前々から考えていた内容も描きました。

それでは本編どうぞ!


第14話「過去とアイスと親子の思い」

エイジとはやてが買い物に出ている間の八神家。

 

アンクは酷く居心地が悪かった。

 

「…あのなぁ。アイツらが戻るまでそうしてる気なのか?」

 

ソファーに座って頬杖を着く自分のすぐ側ではシャマルがそわそわとしていた。

 

どうやら今までの経験的にもはやてのような主は初めてでゆっくりしててとは言われたものの、何かすることは無いものかとリビングやキッチンをうろちょろしていた。

 

「ええ。いつも目覚めればすぐ新しい主に務めを頂いてものだから、何だか落ち着かなくて…。」

 

「だからってその辺をうろちょろされても鬱陶しいんだよ。」

 

「…申し訳あ…」

 

「ハァ、そんなにやることが欲しいなら付いてこい。」

 

謝ろうする彼女にため息を吐きつつ、アンクはソファーから立ち上がってリビングを出た。

 

何をさせられるのかと彼の後を追った先は風呂場だった。

 

「エイジのやつがいつも掃除してるらしいが、アイツのやることを取るのもそれはそれで愉快だ。

道具はそこの戸棚にあるから好きに使え。

別に急いでる訳でもないから自分のペースでしっかりやりな。」

 

「分かりました。あの…」

 

「アンクだ。あとお前らのその畏まった口調は面倒だからもう少し砕かせて話せ。」

 

「えっと、じゃあ…アンク?」

 

「何だ?」

 

「…私たちと随分昔に会ったことがあるって言ってたけど、あの子にも会ったの?」

 

「…ああ。」

 

二人の頭の中には共通して同じ人物が浮かんでいた。

 

「そういえば何でアイツは出て来ないんだ。」

 

「彼女は闇の書のページが全て埋まれば現れるのだけれど…。」

 

「まっ。さっき聞いた通りだ。

はやてが蒐集を望まないならアイツはそのままってことか。」

 

蒐集とは魔法を使う生物の体内にある魔力の源、

リンカーコアを抜き取り、闇の書の糧とすることである。

 

そうすることで闇の書の空白のページは埋まっていき、その主は絶大な力を得るが、コアを奪われた者は発育途中で再生するならばまだしも二度と魔法を行使出来なくなり、最悪抜き取られる際のショックと激痛で死を招く結果になることもあり得た。

 

その説明を説明を受けたはやてはそれを望まず、騎士

たちへの唯一の禁則とした。

 

「あの本の中に居るなら居るでいい。話はそれだけか?」

 

「え、ええ。」

 

「まあしっかりやれよ。」

 

そう言って彼はリビングに戻った。

 

口は悪いが、実は結構優しかったりするのかなとシャマルは思った。

 

-

-

-

 

二階の窓の外のベランダからぼんやりと街を眺めるヴィータは今朝のことを思い返していた。

 

「魔法の主なんて言われても何してええのかも分からへんし、みんなで平和に楽しく暮らしていければ私はそれが一番。」

 

そう言ってくれたはやての言葉には驚いたが素直に嬉しくもあった。

 

だが…

 

そうこう色々考えていると後ろの窓が開いた。

 

「なんだ。ここにいたのか。」

 

アンクだった。

 

「悪いかよ?」

 

「別に。誰彼構わずガンを飛ばすな。あと口が悪いぞ、チビのくせに。」

 

ベランダに上がり、自分より少し離れた所の柵に肘を立てながら彼は言った。

 

「な!?オメーこそ人のこと言えねーだろ!それにチビでもお前よりずっと年は上だぞ!、たぶん。」

 

「どうだろうな。俺も1000年近く存在してる訳だから実際はそう変わらんかもしれないぞ。」

 

「ぐぬぬ…。」

 

一体自分たちがいつから存在しているのか分からないこの身では反論出来ずに悔しく思っていたが、彼の手元にあるものに目がいった。

 

「それ何?」

 

「ああ?アイスだ。」

 

水色で棒状の冷気を放つそれを口に咥えながら彼が答えたそれに、妙に興味をそそられた。

 

「何だ?欲しいのか?」

 

「べ、別に!見たこと無かったから気になっただけだし!」

 

「面倒なやつだな…。」

 

強がりを言って意地を張る自分に呆れたのか、彼は食べかけのアイスを咥えたまま中へと戻っていった。

 

少々むきになっていたことを悪いなと思っていると彼は

さほど時間を置かずにまた現れた。

 

「ほら、一度食ってみろ。」

 

その差し出された手にはピンクがかった外装のカップと

スプーンがあった。

 

「いいの?」

 

「お前が気に入ればエイジのやつがアイスを買う量を増やすかもしれないからな。

とりあえずのお試し品だ。」

 

下心を隠すことも無く語る彼のことは置いておいても、アイスというものが気になっていたので言われるがまま

ふたを開けて食した。

 

「何コレ!?うっま!!」

 

クリーミーな牛の乳と仄かな酸っぱさを伴う何かの果物が調和し、さらに舌に載せた時の冷たさが心地良く、何よりこんなに甘いものを食べたことは記憶に無い。

 

「…。」

 

「な、何だよ?」

 

「いや、そういう顔も出来るんだと思ってな。」

 

何か言い返そうかとしたが、腑抜けた顔を人に見られた

と思うと徐々に恥ずかしさが込み上げて来て何も言えなかった。

 

熱くなった顔を冷やそうと食べ進める自分の横で別のアイスを食べる彼は、もう最後の一口を口に運んでいた。

 

「…ありがと。」

 

小さい声でしか言えなかったその言葉が聞こえたようで

元々つり目気味のその顔をこちらに向けるでもなく、真っ直ぐ前を見たまま自分の頭の上に2、3回手を置いた。

 

「何を悩んでいるのか…俺の予想が合ってるかは知らんが、とりあえずアイツらは素直に信じてやっていいと思うぞ。」

 

「え?」

 

「あの二人のことだ。もし嘘をつかれてたらどうしようって思ったんだろ。」

 

「それは…。」

 

ずばり図星だった。

 

「俺もはやてとはまだ短い付き合いだが、エイジのバカと同じでそんなに器用な真似が出来る人間じゃない。」

 

「そう…なんだ。…まあこのアイス?に免じて一緒にいてやるよ!」

 

「好きにしろ。」

 

「…あ!そうだ!」

 

「まだ何かあんのか?」

 

中に入ったアンクを呼び止めて、気になったことを聞いた。

 

「あのさ、この赤いつぶつぶは何?」

 

カップの中を指差し、初めて食べた果実の名前を聞いた。

 

「イチゴだ。余程気に入ったみたいだな。」

 

「うん!これ結構好きだ!」

 

「「ただいまー!」」

 

そう返事をするのと間を置かずに彼女の新しい主とその兄となった男と共に帰った。

 

-

-

-

 

「うん!みんなめっちゃええやん!よお似合うとるよ!」

 

「そ、そうですか?」

 

「シグナム見て見て~!このフリフリ可愛いと思わない?」

 

「お前のその順応の早さはなんなんだ。」

 

シグナムたち女性陣3人はリビングにてはやてのコーディネートの下、私服の選定をしていた。

 

小学生とはいえ流行りは頭の中にしっかり叩き込んでいたはやてのセンスと、万人が見て美人と言うお顔と女性が羨むスタイルの持ち主のシグナムとシャマル、子供モデルと言われてもやっていけそうなヴィータの組み合わせでリビングはちょっとしたファッションショーとなっていた。

 

「ヴィータも可愛いよ♪」

 

「へ!?そ、そう…。」

 

赤いスカートに黒地の生地で胸の部分にデフォルメされた可愛らしい文字をあしらった長袖のスウェットシャツの上に羽織ったノースリーブのベストの端を掴んでまじまじと見ていた彼女は照れてはいたが、十分に着こなしていた。

 

黄緑色のふんわりとしたフリルの付いたワンピースを着たシャマルに、純粋な白地に横一閃に青いラインが入ったワイシャツにその長い脚にフィットしたジーンズとシンプルながら逆にそれが映えるシグナムの大人コンビもなかなかのものだった。

 

「はやてちゃん~いいか~い?」

 

みんなが着替える間、アンクと共に廊下で待っていたエイジはドアをノックした。

 

「はーい、お待たせですー!もう入って来てええですよ!」

 

「お邪魔するよー…おお!映えるね~!元の素材がみんな良いからこれはなかなか♪な!アンク?」

 

「…知るか。」

 

部屋のドアを開けるなり3人の姿に感嘆する彼をよそにアンクは短く答えた。

 

「あれ?エイ兄さん、ザフィーラはどないしたんですか?」

 

一緒に部屋から出たメンバーでヴォルケン唯一の男性であるザフィーラの姿が見えないことに、はやてはクエスチョンマークを浮かべた。

 

「それはね…」

 

面白そうに開いたままのドアに寄りかかって視線の先に手招きをすると蒼い毛並みの大きな犬が入ってきた。

 

「え?もしかしてザフィーラなん!?」

 

「こっちの狼の姿の方が本来の姿で、むしろ狼でいる方が楽なんだって。」

 

最初こそ驚きはしたが、昔から犬を飼ってみたいと思っていたはやてからすれば願っても無いことだった。

 

はやての前まで歩むと頭を下げて彼は思念通話をした。

 

「(兄上殿から、主はこちらの姿も気に入っていただけるとご提案いただいたのですがよろしいでしょうか?)」

 

「え?あっ、これも魔法か。全然ええよ!むしろ嬉しいわ。」

 

「(有り難き幸せです。)」

 

「ちょお頭撫でさせてもろうてもええかな?」

 

「(勿論です。)」

 

嬉しそうに彼の頭を撫でるはやてはご満悦だ。

 

「ああ、それとみんな。」

 

一度騎士たちを見回すとはやては続けた。

 

「あんま堅苦しい敬称とか畏まった物言いは無理にせんでええからな。私のことも別に名前で呼んでくれたら嬉しいわ~。」

 

「よろしいのでしょうか?」

 

「ええよ。それともシグナムは嫌なんか?」

 

「いえ!決してそのようなことは!」

 

慌てて否定する彼女を微笑ましく見ていると、その隣で何か言いたげな目で顔を俯かせて小さくなっているヴィータがもじもじとしていた。

 

時折目線をはやてに送っては下げてを繰り返し、胸の前で両手の人差し指同士を小さくツンツンしている様は可愛らしくもあったがどうにもいじらしかった。

 

「ん?ヴィータはどうや?」

 

はやてに見えるよう、ヴィータを指差していたエイジに彼女はその意図を察してヴィータの近くに寄っていった。

 

「…いいの?…家族と思って?」

 

気恥ずかしさや迷いも相まって、一際小さな声で呟く彼女の言葉だった。

 

「ええよ。これからは一緒にみんなと笑顔で暮らしてこ。な♪」

 

「じゃあ…はやて…。」

 

「はい♪ヴィータ♪」

 

頭を優しく撫でられるヴィータも、撫でるはやても見てるこっちも釣られる笑顔だった。

 

-

-

-

 

八神家が賑やかなことになっているのとは反比例するように、ここゲンムファウンデーション会長室ではエイジの父である宗正が書類に目を通していた。

 

医療、ゲームと全く異なる分野で、それぞれの世界で一歩先をリードする巨大企業体であるこの会社の代表を務める彼は日々忙しくしていた。

 

「ふぅ…。今回はいつもより厚いな。」

 

先日あった海鳴のマンションでのヤミー事件の国へ提出する事詳細な報告書の束に目を通して、自分以外誰もいない部屋でぼやいていた。

 

ヤミーの引き起こした事件はその存在が表沙汰にならないよう現場では警察と連携、その後の処理はどうにか事故に見せて誤魔化す形で落とし込んで行い、被害者や周辺の状況などの詳細を国へと提出する流れだ。

 

通常の会社運営に加えて、その最終的な確認を宗正会長がいつも行っているが彼はそつなくこなす。

 

今日も別段問題は無かったが、先日息子と話して報告書では伏せた内容を思い出した。

 

ヤミーが特定の人物…はやてを狙って行動を起こしているという点だ。

 

一度ならヤミー被害者の欲望に巻き込まれたと言えばそうだが三度となるともう偶然では無い。

 

加えて、今朝届いた報せでは以前から観察対象だった本がメダルと同じく異世界の、それも魔導書というものでそこから持ち主に仕える者たちが現れたと言うから大変だ。

 

だが彼の頭の中には、今後の見通しは勿論のこと存在しているが息子がその狙われている子供を家族に迎えたいと言ってきたことが多く占めていた。

 

黒斗姓は有名過ぎるため、日常生活で不便な思いをさせないために敢えて養子に取ることはせずに近くで保護と便宜を図る形を取ることにした。

 

恐らくグリードも何らかの目的があって彼女か本を狙って潜伏していると見て間違いないため、エイジたちが海鳴に根を下ろすのは問題無いだろう。

 

それに聞いている限り、あのはやてという少女は宗正からしても関わらずにいられなかった。

 

ゲンムがゲームなどのある娯楽やエンターテイメント部門を設けているのは会社創立当初からある理念の下からだった。

 

寧ろ元々はこちらからどんどん派生していき、複合企業体となったと言うのが事実だ。

 

人は自分がしたい、やりたいと思った欲望に準じて行動してそれを可能にするために己の出来ることを増やす。

 

そして増えた分だけその欲望は満たされ更に大きくなり己も成長する…大事なのはしたい思えることがどれだけ大きく、向き合えるかだということだ。

 

ゲームの中だけでも世界を救い、誰かを助けることに意義を持てた子はその心を現実にも向けてくれるかもしれない。

 

命の重さを知った子が仮想ではなく目の前の人間も救いたいと思ってくれるかもしれない。

 

そう信念を持ってゲームを作る人間が集まって妥協を許さない、本物や実物に触れてゲンムのゲームを作っていった。

 

中でも人体や医療、命を扱う題材へのこだわりは並みではなく、現実の医療現場や器具の様子、問題点を研究し続けた結果、遂にはその分野でも結果を出して取り組むようになり現在まで至った。

 

だからこそ、これからの可能性に溢れる彼女を無視出来無かった。

 

椅子から立ち、広い部屋の本棚の前まで行くと彼はある写真立てを手に取った。

 

そこに写る若かりし頃の自分と、その手を繋ぐ幼き息子、その隣で微笑みを浮かべる最愛の女性に彼は語りかけた。

 

「まさか嫁や子供ではなく、妹を連れてくるとは…。我が息子ながら相変わらず予想の斜め上を行くよ。」

 

困ったように語る口振りだが、どこか嬉しそうなのは父なのだろう。

 

「そういえば八神はやて…。あの子の名前どこかで聞いたような…。」

 

何か大事なことを忘れているような気にもなったがこの時はそこまでだった。

 

 

 




アンクとヴィータちゃんに関してはお互い口が悪く、アイス好きと、共通点が少ないながらも描いてみると随分仲良くやれるなぁと思いやってみた次第です。

恐らくオーズ本編をご覧になった方は「アンクはこんなに親切じゃない」など思うことがおありかと思いますが、後々にその理由も明かされます。

そして宗正さん。

彼にもまた動きが…。

次回もまたお楽しみに!
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