リリカルなのは-オーズクロニクル   作:スターみかん

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どうもスターです!

近頃サウンドステージを聞き漁っているのですが、頭の中で一人一人挙動を考えたりと出来てかなり面白いです!

お気に入りはストライカーズの04でのはやてちゃんとヴィータちゃんのイチャコラです!

この二人の姉妹のような仲の良さは本当に微笑ましいです!

今回からあの人周りの話となります。

それでは本編どうぞ!


第15話「戸惑いと甲冑と進化する欲望」

いつから自分たちが存在するかなど、もう知る由も無い。

 

あるのは幾度となく変わらずある血と火薬の匂いが立ち込める、怨嗟と憎悪の炎に包まれた戦場の記憶だけだった。

 

誉れも武勇も無く、ただ目の前の敵を殲滅することだけを求められ、いくら傷つこうとも倒れないその身は共に同じものを目指す筈の同胞からも忌み嫌われ、必要な時以外は同じ身を持つ仲間と共に暗く、冷たい牢へと繋がれた。

 

そのような仕打ちをする主君も命ある人。

 

主尽きし後、同じく倒れた我らは次の主の下へと現れるまで束の間の眠りにつき、再び分厚く、暗い雲に覆われた戦場へとその身を駆ることを繰り返した。

 

いつか心も体も壊れ、苦しみ消えるのだと思っていた。

 

だからこそ今、夜の闇も星々が明るく空で輝きを放ち、自分たちが人並みに扱われるこの状況にヴォルケンリッターが将である自分は戸惑っていた。

 

「シグナム?ここにいたの。」

 

「シャマルか。いや、ここは星が明るいなと思ってな。空を眺めていた。」

 

「まあ!こんなに沢山の星…私初めて見たかも!」

 

「私もだよ。」

 

庭に出て空を眺めていた自分を探していたシャマルも隣に立ち、同じくこの夜空を見上げた。

 

「主はやては?」

 

「ヴィータちゃんと一緒にお風呂よ。私は夕飯の片付け。ザフィーラはリビングに控えててあのお二人は上の階に居るわ。」

 

「そうか。」

 

「お夕飯美味しかったわよね。」

 

「そうだな。まさかあれほどのものをお出ししていただいた上に同じ卓を共に囲むことを許されるとはな。」

 

「本当よね…。」

 

過去のことを思い出し、しばしの静寂が流れた後にシャマルが切り出した。

 

「…私たち受け入れられていいのかな?」

 

「…それが主の望みであるならば、我らはそれにお応えするだけだ。」

 

「シグナム…。」

 

そう。自分たちはいつだってそうして来た。

 

だから求められた務めを果たすことだけを念頭に置けば良いのだ。

 

…痛みも苦しみも永遠に続かぬように、幸せというものも同じなのだろうから。

 

そう考え込んで視線を空から下げていると背後でリビングのドアが開く音がした。

 

「♪~。あっ!お二人さん丁度良かった!少しお手伝いを頼んでもよろしいですか?」

 

鼻歌交じりにドアを開き、胸の前に大きな箱を抱えた兄上殿は庭の自分たちを見つけて声をかけた。

 

「あっ!はーい!」

 

「どうなされました?」

 

「そこのテーブルの上にこれをそっと置きたくて。ちょっとお手を貸してもらえますか?」

 

小走りで戻ったシャマルと自分は彼を手伝い、机にそれを置いた。

 

「すごく大きいですけど何ですか、これ?」

 

「まだちょっと内緒です♪ああ、そうだ。ちょっとお喋りしません?」

 

シャマルの問いはぼかし、赤いリボンを巻いた箱を机の中心に据えた彼は椅子に座って二人にも座るよう促した。

 

「えっと…。まあ色々あってはやてちゃんのお兄さんってことに俺はなった訳何ですが。」

 

「はい、聞き及んでいます。」

 

「いや、どうもありがとうございます。」

 

照れ臭そうに笑う彼からはやはりただならぬ力をその身から感じた。

 

教えていただいたオーズの力なのだろうか、18の年の割りにしっかりと鍛えられた肉体には戦い続けた戦士の風格とは別のどこか冷えたものを感じていた。

 

「でお話なんですけど…」

 

「はい。」

 

改まって話す彼の様子に背を正して聞いた。

 

「お二方を姉さんとお呼びしてもいいですか?」

 

「「…はい?」」

 

私もだがシャマルも問いの意味が分からず、返事のニュアンスまで被ってしまった。

 

「あの~?どういうことでしょうか?」

 

「なんと言いましょうか。お二人とも素敵なお姉さんで俺はまだまだ若輩者なので、仮にも家族ってことになるとあの兄上殿っていうのはなんか違うかなぁ…思って。」

 

「なるほど。ですがそうなると我らは何とお呼びすれば?」

 

「えっ?普通に呼び捨てでもどうぞ。」

 

さも当たり前のような顔で話す彼に自分は戸惑ったが、隣に座るシャマルがものの数秒でそれを受け入れて「エイジ君」と呼ぶのを見て、本当に彼女の順応性を羨ましく思った。

 

「えっと…。シグナム…さんはどうですか?」

 

「そ、それは…」

 

良いと言いたかった。

 

自分としても家族というものに憧れた。

 

だが認めてしまえば…

 

「おい、エイジ。もう準備出来たか?…何やってんだ?」

 

「ハァ…アンクー、間が悪いよ~。」

 

色々考えていると再びドアが開き、入ってきた彼に兄上殿は間が悪いとため息混じりに文句を言った。

 

「あ?知るか。それより準備しなくて良いのか?もうアイツら出てくるぞ。」

 

「えっ!?もうそんな経ってた?すいません!返事はまた聞きます!あっ!シャマル姉さん部屋の電気消してください!」

 

「えっ?は、はい。」

 

箱のリボンを解きながら頼む彼の言葉通りに、シャマルがスイッチを押し部屋は暗闇に包まれた。

 

「あれ?はやて、電気消えてるよ。」

 

「えっ?ホンマや。みんなどないしたんやろ?」

 

不思議そうに部屋へと入ってくる主とヴィータを見て彼は聞き慣れない言葉を言った。

 

「ハッピーバースデーはやてちゃん!」

 

そう言うと部屋の明かりをつけて拍手をした。

 

「わあ!前話したん覚えててくれたんですか?」

 

「当たり前じゃん♪」

 

「こいつ人の誕生日を一度聞いたら絶対忘れないからな。まあおめでとさん。」

 

「アンクさんもありがとうございます!」

 

兄上殿と彼からのプレゼントを受け取ると状況を飲み込めていない顔をしていたのだろう、私の表情から察した主が説明してくださった。

 

「ああ、シグナムたちは知らんのか。私今日誕生日やってん。」

 

「誕生日?生まれた日のことだよね?」

 

「そ!誕生日ってのは誰かが生まれて来てくれた記念すべき日!だから俺は自分の身近な人たちの誕生日は絶対お祝いすることにしてるんだ!」

 

「そういうもんなの?」

 

「そういうもん!」

 

ヴィータも大分彼になついたようで普通に会話していた。

 

「で、その机の上の箱は何ですか?」

 

「ああ、これはね…。」

 

予め弛めておいたリボンの端を彼が引っ張ると箱の蓋が四方に開き、中からは30センチはあろう大きめなケーキがあった。

 

赤、ピンク、黄緑、白みがかった青のクリームの載ったカラフルなタルト生地の上には彩り豊かなフルーツに囲まれたチョコレートのプレートがあった。

 

そこには

 

はやてちゃん、ヴォルケンのみんな!ハッピーバースデー!

 

と書かれていた。

 

「どう?」

 

「すごいです!でもこれどないしたんですか?」

 

「それは…」

 

「こいつの手作りだ。」

 

自信満々に話そうとして出鼻を挫かれた彼は遮った当人を恨めしそうに見た。

 

ふとケーキに目を向けるとクリームの色に見覚えがあることに気づいた。

 

「もしや今朝、何やらお作りになられていたのは?」

 

「ああ!あの甘いいい香りのしてた!」

 

「ビンゴです!」

 

シャマルの言葉に気を良くした彼は蝋燭を用意してケーキにバランス良く差し始めた。

 

「いや、でも結構大急ぎになっちゃったよ~。

なんせ4人も言うなればまさしく今日が誕生日ってことになるのかなぁっ。なら是非お祝いしたいなって♪」

 

そう笑う彼の顔を見て、酷く自分を恥じた。

 

何故自分はこんなにも自分たちを偽り無く受け入れてくださるこの人を信じられないでいるのか。

 

「(どうした?)」

 

また顔に出てしまっていたのか、嬉しそうにケーキを囲んで蝋燭に火をつけて吹き消す主にヴィータ、シャマル、それを嬉しそうに見ている彼をよそに、ザフィーラが声をかけてきた。

 

「(ああ。…少しな。)」

 

「(…あまり難しく捉えるなよ。)」

 

「(…ああ。)」

 

長い付き合いの彼はそれだけで察してくれ、それ以上は聞いて来なかった。

 

「あっ!お二人もどうぞ。そういえばザフィーラはチョコとか食べても大丈夫ですか?犬がダメだったら狼にも悪いのかなぁって。」

 

「いえ、問題ありません。我らは食物こそ摂取しますが、余程のものでは体への悪影響は心配無いです。」

 

「わお!頑丈で頼もしいです。じゃ切り分けるんでシグナムさんも座って待っててくださいね。」

 

「あっ。はい。」

 

ザフィーラとのやり取りを終えた彼はそう言ってキッチンに入って切り分けたケーキを皿に移した。

 

その後はとても素人のものとは思えない上品な甘さを持つケーキを堪能し、兄上殿たちからのプレゼントに喜ぶ主を見ていた。

 

ゲームソフト?という遊戯道具に、鮮やかな赤色の洒落たハンカチを渡された主は目を輝かせ喜んでいた。

 

ずっと笑顔でいる主を見ているとこちらも心が暖まった。

 

けれど私は…。

 

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-

 

部屋の窓から夜空を見上げるなのはは星の輝きを見ていた。

 

自室に居候していたユーノもつい先程、本局へと出発した。

 

星を見上げながら、この魔法と出会ってからの数ヶ月を思い返していた。

 

月日にしてみれば短いものだったが、彼と出会ってから全てが始まった。

 

魔法や相棒となるレイジングハートとの出会い。

 

そして…大切なあの子との出会い。

 

綺麗で強い、だけど悲しそうな目をしたあの子…フェイトちゃんとこの街で起きた事件の中で出会い、ぶつかって…。

 

それでも話を聞きたくて手を伸ばすことを繰り返してようやく名前を呼んでくれた大切な友達。

 

ユーノと入れ換わるように届いたあの子からの手紙には事件の裁判が始まり、クロノの構想通りにあまり重い判決は回避出来そうとのことだった。

 

それを見て彼女は胸を撫で下ろすような気持ちになった。

 

「また会えるってことだよね。」

 

「Of course.That day will not be far away.

(勿論です。その日は遠くないでしょう。)」

 

「うん♪」

 

相棒とそう話し、寝る準備をしながらあのオーズのことを思い出していた。

 

『巻き込むわけにはいかない』

 

彼のその言葉からは誰も傷つけたくないという強い意思を感じていた。

 

だからこそ気になっていた。

 

あんな怪物たちと身をぶつけて、下手をすれば命を落とすかもしれない戦いを一手に引き受けようとする彼の話を聞きたかった。

 

「It does not recently they appear speaking.

(そういえば彼らは最近現れませんね。)」

 

「うん…。でもなんだろう。すごく嫌な感じがするんだ。」

 

「I think so too,(私もそう思います。)」

 

-

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-

 

それから更に5日経ち、八神家では未だ終わっていなかった新しい家族のための家財道具を揃えるため、何が足りないかをリストアップしていた

 

服は昨日揃えたが、何分1人から一気に5人と1匹、たまにアンクと、大所帯になったので消耗品だけではなく、一部の家電なども買い替えようという家主の提案の下で昼食後に市内の家電量販店に出掛けていた。

 

「にしてもはやてちゃんも豪気なもんだね~。お金は俺出すよ?」

 

「ええんですよ、そんなん。自分の病院以外に特に使う機会もあらへんでしたし、何よりこのお金は両親が私に遺してくれたもんです。家族のためにつこうてもバチは当たりませんよ。」

 

この子は底無しだなと思いつつ、エイジは出しかけていた財布をコートにしまった。

 

「でも本当にピンチには言いなよ。いくらお父さんの知り合いの人が管理してくれていても無限じゃないからね。」

 

「は~い♪でもどれにしましょかね?とりあえずは洗濯機が必要なわけですけど。」

 

「はやてちゃーん!エイジくーん!こっちでーす!」

 

洗濯機コーナーを散策していると、手分けして良さげな物を探していたシャマルが通路から少し入った一角から二人を呼んだ。

 

「どや、シャマル?ええのんあった?」

 

「はい!ご予算以内で多めの洗濯物にも対応出来て比較的新しいもので探してこれがいいんじゃないかと。」

 

「おお~!これええやん!ドラム式の最近CMやってるやつ!値段も…そうやね、予算内でバッチリや!」

 

「しかも!古いものは下取りしてくれて、更に値引きしてくれるそうですよ~。」

 

「よく見てますね~。全然気づかなかった。」

 

持ってきていたチラシをよく見ると確かにあったが、エイジはそこまで気づいてはいなかった。

 

「こういうお買い物とか私好きかもしれないです。」

 

「買い物上手は生きてく上で得ですよ。」

 

「そやで、シャマル。お手柄や。」

 

アンクが指示したという風呂掃除も説明無くそつなくこなし、洗い物や洗濯といった家事も申し分無く、おまけに不審がられないようにご近所様への挨拶もやってのけた彼女のスペックの高さにエイジは素直に感服した。

 

「ありがとうございます♪」

 

「そういえば一緒にいたシグナムさんとヴィータちゃんはどうしたんです?」

 

「ああ、二人なら…あっ!ちょうど戻ってきた。」

 

「あれ?二人ともこっちに合流してたのか。」

 

どうやら目ぼしい商品を見つけたことを伝えるためにはやてを探しに出ていたようだ。

 

「ヴィータちゃんシグナムは?」

 

「ん?トイレだってさ。」

 

留守を預かってくれているザフィーラと、昼過ぎにマンションの方に戻ったアンク以外の面子は全員このショッピングモールにいた。

 

シグナムさんといえばとエイジはあることを思い出した。

 

「はやてちゃん、シグナムさんが朝言ってた服の話ってどうなったの?」

 

「えっ?ああ、あれならちゃんと考えてますよ~。」

 

今朝、シグナムからはやてに頼み事として自分たちの甲冑をイメージして欲しいと要望があった。

 

自分たちは武器こそあれども甲冑は主から賜れなければならないそうで、エイジのオーズとしての戦いの手助けも出来るからとのことだった。

 

はやても、みんなを自分のために戦わせるつもりなど無く、エイジからしても心強い仲間が増えるのはありがたい話だが、気持ち的にはどうにも乗らなかった。

 

だが彼女たちの気持ちも分かるエイジはそれに納得し、はやても無茶なことをしないことを条件に了承した。

 

「なんや鎧とかは詳しく無いですけど、騎士らしい服でもええかシグナムに聞いてみたらOKもらえたんでそれで行きます。」

 

「そっか。ならデザインは問題無さそうだね。なんせはやてちゃんのイメージなんだもん。」

 

「おだてても晩御飯のオカズが増えるだけですよ~。」

 

「じゃあイメージしてくれたやつが出来たらいっぱい褒ーめよ!」

 

「もうヴィータちゃんたら♪」

 

ちなみにその服は、はやてのイメージを元に彼女たち自身の魔力で構築されるため十分な防御力もあるらしい。

 

「じゃあこれ買うてシグナムが戻ったら、そのイメージ探しに行きましょか!」

 

「はーいよ!」

 

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エイジたちが買い物に行っている頃、昼過ぎに彼らと別れて拠点のマンションに戻ったアンクは研究者のキリヤと話していた。

 

帰ってから大分時間も経ち、もう夕暮れが街を照らし始めて部屋の中にもその光は差し込んでした。

 

「へえ!こんな美人さん揃いなんですか!」

 

「先に興味持つのがそっちか、チャラ男。」

 

はやての誕生日風景を撮影した写真に写る彼女たちを見ての第一声がそれでアンクは呆れた。

 

「仮にもお前は研究者だろ。他に思ったことは無いのか?」

 

「冗談ですよ!でも大昔の技術で現代まで存在して、おまけに中のデータにも何の異常も無く機能するとは…。ここまで来ると分かっちゃいましたが魔法って何でもありですね。」

 

冗談と言った後に半分はとボソッと呟くのが分かったが、拾うのも面倒だった彼はスルーした。

 

「まあな。俺にも詳しくは分からんことも多いが、少なくともあの本はその中でも更に特別なんだろうな。」

 

「…あれ?そういえばアンクさん、昔この人たちに会ったことあるんですよね。何でその事を奴さんたち忘れてるんですかね?」

 

研究機材が整頓こそされているが自身の前以外はスペース無く置かれた机の上に写真を置いて、キリヤはそれを挟んだ向かいに座る彼に尋ねた。

 

「さあな。それこそ大昔過ぎて忘れたんじゃないか。向こうからしたら俺みたいなグリードもそう珍しいものでもなさそうだしな。」

 

「そういうもんですかね~。」

 

「まっ、あくまで想像だがな。それとな」

 

彼の机に置かれた写真を機材にぶつからないように向かいから取ると写るヴォルケンリッターを指して続けた。

 

「アイツらも人間だ。データなんかで扱うな。…ってエイジが言うだろうから心掛けとけ。」

 

「あ、そうですね。さっきのは失礼でしたね。」

 

「ふん…。」

 

自身の言葉を訂正するキリヤを横目に、ソファーの上に寝転がった彼は写真を上に掲げてそこに写る彼らの過去を思った。

 

封印の解けた後のヴィータの言葉、穏やかで優しい新しい主のはやてへの戸惑いよう。

 

そして何か思い詰めたような面持ちで笑みも見せないシグナム。

 

「(一体…お前らの過去に何があった?)」

 

そう思うのも束の間、新たな厄介者の羽音を彼は感じ取った。

 

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-

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大方の買い物も済ませ、帰路に着くはやてたち一行。

 

その最後列で一同から少し離れてゆっくりと歩くヴィータは、大事そうに紙袋を抱えそれを見つめていた。

 

不意に前方から視線を感じ、前を見るとシャマルに車椅子を押してもらうはやてと目が合った。

 

にこやかに笑いながら「もう見てもええで」と唇の動きだけで声をかけると嬉しそうに彼女は中身を取り出した。

 

赤くて横に長細い垂れ気味の目に、まるで手術後の縫合のように縫われた口となかなかにハイセンスだが、どこか愛嬌のある白いウサギのぬいぐるみ「のろいうさぎ」をヴィータは抱き締めた。

 

騎士服のデザインイメージを得るため、モール内で色々なお店を巡る中で立ち寄った玩具店で一つだけポツンと残っていたそれにヴィータは一目惚れしてしまったようだ。

 

その様子を見ていたはやてがエイジに頼み、店を出た後に買っておいたのである。

 

すぐに開けてもいいものを、許しが出るまで我慢していたが満面の笑顔でのろうさをその小さな腕で抱く彼女は実に子供らしかった。

 

「はやて!それに…エイジ!ありがと!」

 

二人のところまで駆けて行き、エイジには照れ臭そうにしつつ笑顔でお礼を言った。

 

「ええよ。」

 

「おっ!ヴィータちゃーん今スゴくいい顔してるよ~。」

 

しゃがんで彼女と同じ目線になったエイジはそんな笑顔にサムズアップを送り、自分も負けないくらいの笑みを浮かべた。

 

「ハハ!何だよ、それ?」

 

「あ、知らない?良いものを見せてくれた人にしたりするもの…って言えばいいかな?」

 

「自分もよく分かってないじゃん!」

 

「ま!「いいね!」とか「大丈夫!」ってこと。」

 

「なるほど~!私も使おうかしら。」

 

「いいですね~!シャマル姉さん。そのノリグッドです!」

 

そのやり取りが見ていて可笑しく、釣られて笑うはやてだったが一人浮かない顔をしているシグナムに気づいた。

 

「シグナム。どないしたん?何か考え事?」

 

「…あっ!いえ!大したことではないのですが…。」

 

本当に何か考え込んでいたのだろう、急に話し掛けられたとはいえ絵に描いたような動揺ぶりである。

 

「シグナムは隠し事とかあんま得意ちゃうやろ?何か困ったあるんやったら遠慮なんてせんで何でも言ってや。」

 

「…はい。」

 

その続きを彼女が話そうとした時、彼女含め3人の騎士は異様な殺気を感じた。

 

その答えは今歩いてきた道を戻った先にあった。

 

「エイジ!ヤミーだ!」

 

ライドベンダーでみんなの下まで走ってきたアンクは車体を彼らの側まで寄せて停車した。

 

全員の視線の先にはオープンテラスのカフェで暴れる成体前のミイラヤミーが逃げ惑う人を襲おうとしていた。

 

「あれがヤミー?」

 

「ああ!そうだよ!みんなはここにいて!」

 

初めて見るヤミーを見たシャマルの疑問に答えつつ、エイジは指示した。

 

「私たちも行く!」

 

「まだお前らはダメだ!ここではやてを守ってろ!」

 

加勢しようとするヴィータをアンクが諌め、彼はエイジと共にヤミーへと向かって行った。

 

「そっりゃ!」

 

助走をつけたアンクの飛び蹴りをもろに受けたヤミーは、襲っていた女性を乱暴に投げて転がった。

 

「きゃあ!」

 

「よっと!セーフ…。アンク!もう少しやさしーく助けれない?」

 

地面に叩きつけられる前にスライディングで女性を受け止めたエイジは彼に要望した。

 

「知るか。死ぬよりマシだろ。」

 

「全く…」と救助方法に文句たらたらでいると女性は一人立ち上がってお礼を言い、自分を置いて一目散に逃げた彼氏を追って行った。

 

「何だあれ?」

 

「さあ?まあ彼女置いて逃げるのは信じれんけど。」

 

せめて一緒に逃げろと思うエイジを、今までゆったりとした動きヤミーは突然機敏になってその豪腕の拳で殴りかかってきた。

 

「おっと!?こいつ…。」

 

コンクリートの歩道を軽く叩き割る一撃をギリギリで避け、隙の出来たヤミーの脇腹にアンクが蹴りをかました。

 

「ボサっとすんな!さっさと結界張れ!」

 

「分かってるよ。」

 

道路に横たわるヤミーを結界内で倒すため、懐から取り出した新型のブタ型カンドロイド「ピギカン」を起動しようとセルメダルを投入し始めた。

 

「あのさあ、これでかくて他のカンよりかさ張るし、10枚ってやっぱ多くない?」

 

「言ってる場合か!さっさと…」

 

その時、遠くから投げられた何かがはやてたちの近くに落ちた。

 

まとめて落ちた割れたセルメダルの破片は、瞬く間に屑ヤミーへと変わりはやてたちを取り囲んだ。

 

「アンク!アイツは任せた!」

 

そう話し切るより先に彼は倒れたヤミーの首根っこを持ってはやてたちの方に走った。

 

「何する気だ!?」

 

「屑の相手は知らないと無理だしここじゃ目立つ!お前はアイツの後を追ってくれ!」

 

セルの飛んできた方角を指さし、もがくヤミーを屑の1体にぶつけると最後の10枚目を入れてピギカンを起動した。

 

一瞬カンが光ったと思うと、次の瞬間にはそこにはもうアンクとカンしかいなかった。

 

結界による隔離は成功のようだ。

 

「本っ当に注文多いやつだ!」

 

-

-

-

 

空間内では既にオーズ・タトバコンボとヤミーが戦闘に入っていた。

 

ヤミーは出現当初から変わらず、ミイラのような風貌の未成熟な状態「白ヤミー」の姿でオーズのメダジャリバーによる斬撃を受けていた。

 

「ウゥ…」

 

「不完全なくせに随分と堅いやつだけどこれならどうだ!」

 

よくあるドラマなどで、ヤンキーが乱暴に鉄パイプを振り回すようにただ剣を力任せに叩きつけているようだが、縦、横、刃を返しての斬り上げと不規則に太刀筋を変化させる独特の型に重い一撃一撃を小気味の良いリズムで放つオーズの剣技に反撃の間も無くヤミーはメダルを削られていた。

 

「おお!エイジすげえな!」

 

「ああ、随分戦いには慣れているだな。」

 

豪快だが無駄の無い技を垣間見たヴィータとシグナムは自分たちを取り囲んでいる30は越える屑ヤミーを追い払っていた。

 

二人の手には共に戦場を駆けてきた愛機であるデバイス、「グラーフアイゼン」と「レヴァンティン」が握られていた。

 

長柄の鉄槌を軽々と振るうヴィータの一撃は物理的な攻撃に強い屑相手でも、はやてや自身たちから吹き飛ばすて距離を取るにはもってこいで、シグナムのレヴァンティンによる刃を鞭のようにしならせ延ばした連結刃による攻撃はそれ以上の進行を許さなかった。。

 

「にしてもコイツら手応えはあっても消えないし鬱陶しい!」

 

「だが足さえ止めっておけば良いとの指示だ。我らが主には一歩たりとも近づけさせんぞ!」

 

「おう!」

この自分たち以外誰もいない空間に入ったと同時にエイジは屑ヤミーの性質を簡潔に伝え、一ヶ所に固めておいて欲しいと頼んでいた。

 

「二人もめっちゃ強いな~。」

 

「はい!我らが自慢の将と紅の鉄騎ですから♪」

 

ヤミーたちとシグナムら二人が戦う後ろではやてはその強さに驚いていた。

 

取り零しが来たときに彼女の前に立つシャマルも誇らしげだった。

 

「ハア!ソオォリャ!!」

 

オーズの縦一閃に頭部を叩き割るように入った一撃を受け、後ろに仰け反ったヤミーの体は震え始め異変が生じた。

 

「やっぱり羽有りの虫か。だったら!」

 

ジャリバーの剣先を道路に突き刺して立て、ベルトのネストから白色の三種のメダルを取り出してタトバの三種と入れ換えてスキャンした。

 

サイ!

 

ゴリラ!

 

ゾウ!

 

サゴーゾ…サゴーゾ!!!

 

「白くなった?」

 

「フフン♪それだけじゃないから、みんな何かしっかりしたものに掴まっててね!」

 

先ほどまでの上下三色の姿からカラーリングは体の大部分は白で複眼は赤くなり、全体的にガタイが良く力強い印象を与えるフォルムに変化した。

 

サイやゾウといった重量級の動物たちの力を宿したメダルは、単品でも組み込めば並外れたパワーをオーズに与える。

 

そしてそのコンボ…サゴーゾコンボには更に特殊な力が付与される。

 

「うおおーーー!!!」

 

ゴリラするように胸を激しく叩き始めたオーズを中心に、シグナムたちに吹き飛ばされて転がっていた屑ヤミーの群れやカマキリヤミーへと成長した成体ヤミーに強烈な重圧がかかりその場から動けなくなっていた。

 

「これってまさか重力操作!?それもこんな強力な…。」

 

「これもメダルの力なのか…。」

 

オーズの持つ力の片鱗を目にして驚愕するシャマルにシグナムだった。

 

全員はやての下に戻り、重力場の影響は受けずに済んでいた。

 

「でもすげえな、あれ!結構カッコいいし!ねっ!はやて!」

 

「…。」

 

「はやて?」

 

「えっ!?」

 

戦うオーズの姿に思ったまま話しかけるヴィータの言葉に気づかなかったはやては再度彼女に声をかけられて振り向いた。

 

「どうしたの?何か悲しそうな顔だったけど。」

 

「そ、そうか?ただちょおな…気になってな。」

 

「気になる?何が…」

 

丁度言いかけた時、地面にめり込みつつあった屑ヤミーたちは負荷に耐えきれずに軒並み爆発し、カマキリヤミーも折角生えた羽はメダルへと還元されて飛行能力は喪失していた。

 

「仕上げだ。」

 

スキャニングチャージ!

 

止めのためメダルを再度読み込むとオーズは宙に浮き、勢い良く着地すると先ほど以上の重力場が彼とヤミーの周りの空間を支配し、その足元の道路を粉々にした。

 

だが次の瞬間には道路は元通りの舗装された直後かのように破片が次々と戻って行き、剥き出しになっていた地面の上に足を置いていたヤミーはその足をコンクリートに厚く覆われて身動きが取れなくなった。

 

そして磁石が引かれ合うようにコンクリートを裂きながら、ゴリラの剛腕と頭部のサイの角に力を集中させているオーズの目の前に抵抗も空しく引き寄せられていった。

 

「ハアァー!オッリャアーー!!!」

 

自身のすぐ目の前にまで来たヤミーへとフルパワーの拳と角をぶつけるサゴーゾの必殺技「サゴーゾインパクト」が直撃して爆発を起こした。

 

だがはやてはある違和感を覚えた。

 

セルメダルが散って来ないのだ。

 

まだ成体直後だったこともあろうがヤミーなら倒されればセルメダルを残す筈だ。

 

騎士たちもそれを知らないとはいえ只ならぬ力を感じて身構えた。

 

爆煙が晴れた時、そこには予想もつかなかった事態が起こっていた。

 

「驚いたな…。まさかこのタイミングで…。」

 

ヤミーの左上半身全てが膨れて肥大化し、肘から先は河馬が最大まで口を開いた状態としか言えない盾となり、オーズの頭と両腕はそこに収まっていた。

 

「合成タイプに進化するとはな。」

 

茶色のぶ厚い肉壁となった腕はスライムのように柔軟性に優れ、オーズの脱出を許さなかった。

 

縦に長い盾の端には白く厚いキバのようなものが生えてき、ゆっくりと閉じ始めた。

 

「っ!エイジ!今行くぞ!」

 

誰より早くその窮地を理解したヴィータはアイゼンを片手に駆け出した。

 

だが…

 

バチン!

 

それよりも盾が折り畳まれ、オーズがキバに挟まれる方が速かった。

 

「エ、エイ兄さーーん!」

 

はやての悲鳴が辺りにこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、シグナムさんの話になります。

本編なのはでも描写があったように、ヴォルケンの過去は決して明るいものではありませんでした。

今まで虐げられ、酷い扱いばかりだった彼らからすればはやてちゃんとの新しい暮らしはずっと憧れていたものだったかもしれません。

ですがはやてちゃんがいくら聖人のような子だと言っても、そう簡単に今までを忘れて受け入れられるのか。

ましてやエイジのように正直得体の知れない相手を。

特に責任感の強く、誇りの高いシグナムさんにこそそれを代弁していただきます。

そこをはっきりするためにも必要だと思い、本編でも空白だった4ヶ月にオリジナルの話として盛り込みました。

ではまた次回で。
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