リリカルなのは-オーズクロニクル   作:スターみかん

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どうも!スターです!

ヴォルケン組の戦闘力は、原作を見ながら書いててもやっぱり強いな~と思うこの頃です。

戦闘描写もまだまだですが、現在勉強中ですので成長を見守っていただけるとこれ幸いです。

では前回の続きをどうぞ!


第16話「代償と辛き過去と祝福からのエール」

「てめえー!ソイツを放しやがれー!!」

 

戦いの中で進化を果たしたカバカマキリヤミーの左腕目掛け、ヴィータは手にしたアイゼンを勢い良く振り下ろした。

 

並みの一撃では、ましてやオーズ全コンボの中でもトップクラスのパワーを持つサゴーゾの必殺技を受け止める化け物の皮膚だ。

 

だが彼女の力もそんなヤワな物ではなかった。

 

「テートリヒ…シュラーク!!」

 

魔力で底上げしたその打撃は、盾部程では無いにしても高い防御力を持つ表皮を物ともせずに一撃を加え、その腕に挟んでいたオーズを堪らず放り投げた。

 

「よいしょっと!エイジ君大丈夫!?」

 

「ああ、シャマル姉さん。ありがとう、平気ですよ!」

 

投げられた自身をすかさず全身でキャッチしてくれたシャマルと共に勢い余って後ろに倒れ、エイジはすぐさま立ち上がって地に伏せたままの彼女に手を貸した。

 

「本当に大丈夫!?」

 

「ええ。頑丈ですから!」

 

「エイ兄さん!」

 

サゴーゾじゃなきゃどうなってたかと心に思いながら、平気なことを示すオーズのすぐ横にはやては目に涙を溜めて来た。

 

「はやてちゃん、俺は大丈夫だから!アイツ仕留めたらすぐ戻るよ!」

 

彼女は自分のすぐ側まで来てヤミーに向き直って戦おうとするオーズの手を掴み止めた。

 

「あきません!行かんといて!エイ兄さんまで居なくなったら…。」

 

俯いて、彼女が途中まで呟くように言った言葉が聞こえたエイジはその手をほどけなかった。

 

「…!」

 

「ぐっ!コイツ…!」

 

雄叫びも上げず、右手の太刀のように真っ直ぐに伸びた剣を振るうヤミーにヴィータはアイゼンの柄でどうにか捌いた。

 

だがこの動きに無駄の無い、速く重く何より相手の先を常に読んだ上で仕掛けてくるこの太刀筋に覚えがあった。

 

「(ヴィータ!下がれ!)」

 

シグナムの念話での合図と共に思い切り後ろに跳んだヴィータを追うヤミーの真上から、シグナムは急襲をかけた。

 

「レヴァンティン!」

 

「Explosion!(起爆!)」

 

「紫電…」

 

愛剣から薬莢が一つ飛び出し、炎に包まれる刀身を狙いの背へと振り下ろした。

 

「一閃!」

 

「…!!?」

 

炎熱を纏った一撃はかなり効いた様子で、斬り伏せられつつもなんとか立ち止まらずにロンダートの要領で反転し、追撃の太刀を避けたヤミーだがやはり最初の一撃が尾を引くようだ。

 

「上手くいったな。」

 

「ああ。どうやら熱…火に弱いようだな。」

 

「じゃあおめえの出番だろ。今がチャンスだ。」

 

魔法による炎熱変換という炎を自在に扱えるシグナムと火に弱い昆虫系と重量系の合成ヤミーは相性が絶望的に悪かった。

 

「ああ、任せろ。」

 

アイゼンを肩に担ぎ横に控えるヴィータの提案に乗り、再び剣を構えてヤミーへと距離を詰めた。

 

再度炎を纏ったレヴァンティンを振り下ろせば倒せる…はずだった。

 

「いいのか?これで?」

 

「何!?」

 

彼女は驚き、剣を振り下ろさなかった。

 

「シグナムと…同じ声?」

 

「どういうことや?」

 

「…まさか!」

 

驚くシャマルとはやての横で何かを理解したオーズは一目散に駆け出した。

 

ヤミーの間合いで動揺して立ち止まったシグナムを突飛ばし、振り下ろされた太刀を斜め一閃に受けてオーズはその場に崩れた。

 

-

-

-

 

「エイジ!おい!エイジ!?」

 

ヴィータが放った魔力弾で怯んだ隙にシャマルが自身のデバイス「クラールヴィント」から延びる糸で変身解除され、意識の無いエイジを手繰り寄せた。

 

「エイジ君!エイジ君!」

 

「エイ兄さん!起きて!」

 

車椅子から身を乗り出して地に落ちても気にせず倒れ付した彼の左手を掴んだはやてはそれを受け入れまいとした。

 

氷のように冷たいその手から、もうここから彼が消えたように思い、心が張り裂けそうになった。

 

突き飛ばれ、命を助けられたシグナムもそれを見て後悔した。

 

倒れた彼に追撃を加えようとするヤミーに向かい、その剣をつばぜり止めた瞬間、周りの景色が揺らいだ。

 

ヤミーが視線をずらした瞬間、ヤミーの背後から火炎弾が先ほどの癒えていないキズに当たってよろめいた。

 

「おい!お前ら無事か!?」

 

どこからともなく現れたアンクの救援だった。

 

右手を本来のグリードの姿へと変化させた彼の放った火炎弾もこのヤミーには効果抜群のようだった。

 

ぼやけていた景色が完全に晴れるとそこはマンション街ではなく、エイジたちにとってはお馴染みの場所の桜台だった。

 

グリードにここで振り切られたアンクが結界展開後に自分が持ち運んでいたピギカンがタイムリミットを迎えて、元の世界へと戻したのである。

 

すっかり日も落ち、薄暗い中で彼ははやてたちとヤミーの間に立ちはだかった。

 

「…。」

 

シグナム、ヴィータ、アンクに囲まれ、形勢が不利と見たヤミーは再生した羽を羽ばたかせ、夜の空へと高速で消えた。

 

「チッ!逃げたか!」

 

「アンクさん!エイ兄さんが!」

 

取り逃がしたことに悪態をつく彼にはやてが呼び掛けると、アンクはしゃがんで倒れているエイジに詰め寄ってその胸ぐら掴んだ。

 

「おい、エイジ。さっさと起きろ。絶対コイツらの所に帰るんだろ?ならさっさとしろ!」

 

「やめて!アンク!」

 

「お前も嘆く前に手があるだろ!応急処置ぐら…」

 

「やめろ…アンク…そう…怒ん…な」

 

シャマルに怒るアンクに途切れ途切れになりつつ声を発したのはエイジだった。

 

「エイ兄さん!」

 

「はやて…ちゃん…ごめん…ね。泣か…せて。」

 

「うんうん。ええんです。ホンマに良かった…。」

 

「おい、お前このダメージ…。」

 

はやてが安堵する隣で改めてボロボロになった彼を見てアンクはある事を察した。

 

「…てへ♪」

 

イラッときた彼は胸ぐらを掴んでいた手を放した。

 

「ちょっ!乱暴なのは見過ごせないわよ!」

 

「うるせえ。さっさとコイツ運ぶぞ。お前らも付いてこい。」

 

再び気を失った…というよりも眠りについた彼を担ぐとそう言った。

 

「病院行くんとちゃうんですか?」

 

「コイツはオーズ絡みの事情もあってそうはいかないんだ。」

 

「じゃあどこ行くんだよ?」

 

ヴィータの質問に振り向かずに歩みながら答えた。

 

「俺のマンションだ。」

 

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研究拠点兼なのは監視マンション。

 

一先ずの治療を終えたのはヤミーとの戦闘から5時間程経った夜の11時過ぎであった。

 

「これで良し…っと。」

 

「あっお疲れ様です~。コーヒー淹れたんですけど要りますか?」

 

「コーヒー?」

 

「あ~…そうですね…。飲むとスッキリする大人な飲み物ですかね。」

 

「まあ!じゃあいただきます♪ありがとうございます。キリヤさん。」

 

「いえいえ。」

 

ソファーで静かに寝息をたてるエイジの横で治療に当たっていたシャマルとキリヤは安定した彼の容態に一安心していた。

 

「しっかし魔法ってのは本当にスゴいもんですね。あれだけボロボロだったのにもうキズも目立たないぐらいで…おまけにこんなにぐっすり寝ちゃってまあ。」

 

鮮やかな彩り豊かな花柄をあしらったアロハシャツ、ダメージだらけでほとんど足の見えているジーンズを履き、研究者兼医者を務める九野(ここのや)キリヤはエイジの穏やかな寝顔を覗き込み呆れ半分、安心半分で笑っていた。

 

「というかシャマル先生が飛びきり優秀なのかな?」

 

「そんな褒めても~!…オホン、キリヤさんは何をされてる方何ですか?」

 

隣には怪我人とその隣で眠るはやてが居たためボリュームを下げて話した。

 

「自分はここでヤミー、グリードの対策のためにオーズの支援メカ開発に奴らの研究とメダルそのもののエネルギー解析とかが本業で、医者はあくまでも非常時にってとこです。」

 

コーヒーに角砂糖を4個、5個と入れかき混ぜつつ話し、シャマルもそれに倣って同じだけ入れた。

 

「でもすごく手際も良くて、こっちが本職かと思ったわ。」

 

「そりゃありがとうございます。まあこの人の治療に関してはもうそれこそ何度やったか分かんないぐらいですから。」

 

エイジより二つ歳上の彼はこうして幾度となく彼の命がけの戦いを支えて来た。

 

「…いつもこんなにボロボロになってるの?」

 

「ん~。ここまでなのは随分ご無沙汰でしたね。でも」

 

「でも?」

 

「多分皆さんが居たからこんなになったんじゃないですかね?」

 

その言葉に罪悪感を彼女は覚えた。

 

やっぱり私たちが…

 

「ん?ああ!違いますよ!ごめんなさい!いつも自分伝え方が下手なもんで…。」

 

暗い顔になったシャマルに気づいた彼は訂正して謝罪した。

 

「この人いっつもそうなんです。誰かを守りたい、失いたくないって思えば思うほどに平気で無茶して…。はやてちゃんに皆さん…本当に大好きでしょうがないみたいですよ。」

 

「でも…何でそんなに私たちのことを…?」

 

はやてにも言えるが、彼女にしても自分たちに会って間もない自分たちに優しさを持って接してくれるエイジのことが気になった。

 

「まあ自分の口から言うにはちょっと過ぎたこともあるんで詳しくは言えませんけど、皆さんのこと自分と重ねちゃってるんだと思います。」

 

「え?」

 

「昔から何でも出来過ぎちゃって、それで周りから疎まれて孤立して寂しい思いをし続けて、家族や自分みたいな会社の人間以外に心を開かなくなって…。色々あってそれを越えて自分の作ったゲームや医療メカが認められてこれからって矢先にお母さんを亡くして…まあ本当に色々ある人なんですよ。」

 

衝撃的だった。

 

彼からはそんな過去があったなんて微塵も思わなかっただけに。

 

「その時の自分に皆さん重なったんですって。早く終わりたいみたいな目をしてた。もっと幸せになってもらいたい、誰も自分みたいな思いしてほしくないって…話してくれてました。」

 

そこまで彼が話した時、不意にベランダの窓が開いた。

 

「シグナム。…聞いてたの?」

 

「…ああ。盗み聞くまねをしてすみません。」

 

一人夜風に当たっていた彼女は戻ろうとした時から始まったエイジの過去からずっと聞いていたようだ。

 

「いえ。でもさっきの話と合わせて聞いちゃったらしんどくないですか?」

 

「…身から出た錆です。私がこの方を信じていれば良かったものを。」

 

眠るエイジを見て、酷く彼女は後悔していた。

 

自分たちを受け入れてくれ、その幸せすら願ってくれていた人をまるで何か裏があるように疑ったことを。

 

そしてそれをグリードに漬け込まれ、あのヤミーを生み出した現実を。

 

静寂が僅かに流れた後、シグナムは続けた。

 

「…彼は…どうなんでしょうか?」

 

落ち着いた表情で眠るエイジは本当にただ眠っているだけだったが、彼女は不安で堪らなかった。

 

「傷はもう平気ですよ。ただ…コンボを使ったのが痛いですね。」

 

「あの白いやつのことですか?」

 

「ええ。」

 

シャマルの質問に答えるため、彼は詳しく説明を始めた。

 

「コンボは同系統のメダル三枚での組み合わせの姿で、この時ならそれこそ一人で天変地異に立ち向かうことだって可能にするもんなんです。」

 

二人はサゴーゾの時のことを思い出していた。

 

あれだけの力を目の当たりにすれば、それが大げさでは無いとよく分かった。

 

「だけどエイジさんはオーズにこそ変身して戦えますけど、コンボに対しては過去のオーズたちほどの適性は無いらしく、一度でも使用したら体への負荷が半端じゃないんです。」

 

「そんな…。」

 

絶句するシグナムだったが、彼は今回のことを振り返った。

 

「物理攻撃に強い屑ヤミーが大量に現れたと報告にありましたから、恐らくこの人、あの初見殺したちから皆さんを守るために使っちゃったんでしょう。」

 

「「…。」」

 

また流れる静寂に、一口コーヒーを啜ったキリヤはもの申した。

 

「だからこそ皆さんやはやてちゃんと一緒に暮らすことになって自分たちは嬉しかったんです。」

 

「え?」

 

「一緒にいたいと思える人さえいればこの人、無茶こそしますがそう簡単に命は捨てないからですよ。だから今回も大丈夫です♪」

 

エイジのようにサムズアップを送る彼の言葉を二人は頼もしく思えた。

 

「お!や~っとノッてくれた。」

 

何かが吹っ切れたような面持ちのシグナムを見て、上機嫌なキリヤは今度はミルクをコーヒーに大量投入した。

 

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その頃、アンクは逃げたヤミーを相手にヴィータと共闘していた。

 

タカカンたちも出して捜索に当たらせたところ、先ほど発見されて連絡が入った。

 

街中から随分離れた山間の森の中に潜んでいた。

 

ヤミーの抵抗は激しいがヴィータの放つ魔力を付与された鉄球「シュワルベフリーゲン」相手に自慢の鋭い右鎌も相性が悪く、左腕での防御に集中してその場に釘付けになった。

 

「よし、とりあえず予定通りにやれ。」

 

「はい。」

 

「ヴィータ!下がれ!」

 

「おうよ!」

 

同行していたキリヤ以外の研究班メンバーに指示を出すとレンズ部分にピギカンを取り付けた投影機をヤミーの頭上に狙いを定めて起動した。

 

ピンク色のシャボン玉のような光球が発射され、ヤミーの上で割れたそれは眩い光を放ちヤミーを包んだ。

 

「成功です。これでしばらく対象はここに釘付けです。」

 

「あんたらすっげえな。こんな結界みたいな真似を簡単にやるなんて。」

 

「いやー!そんな!というか…」

 

「…エイジの目覚めまで持たせるぞ。」

 

「「「はい!」」」

 

「?」

 

なのはのことはしばらく伏せたままにしておくことにしたこともあり、彼女との交戦で得たデータから作ったなどは当然秘密だった。

 

研究班の口をその眼光で閉じさせたアンクはヤミーを再び人工結界の中へと閉じ込め、オーズ不在の間の足止めを図った。

 

ピギカンも最初に聞いていた極僅かな時間以上の稼働が出来ていたため、急ピッチで用意した増幅機を用いてエネルギー効率を最適化し、単品での稼働の十数倍は展開可能となった。

 

「(さっさと起きて、片をつけろよ。)」

 

研究班の車に積んでいる棒アイスをかじりながらそう思い、ここに来る前の出発前のことを思い出していた。

 

今から三時間程前。

 

眠りについていたエイジの傍らでずっとその手を掴んで心配していたはやても夢の中に行き、騎士3人とアンク、キリヤは状況を整理していた。

 

結論から言うとヤミーはやはりシグナムから作られていた。

 

グリードであるアンクは一目見ただけでもヤミーの親かそうでないかを簡単に識別出来た。

 

だが声まで似て、おまけにその戦い方までを模倣するのは初めてのパターンで、恐らく彼女の欲望が関係しているのだろうとアンクは分析した。

 

彼女の欲望、だがそれを彼女が出来ない理由…彼女たちの過去を聞いてアンクは大層嫌なものを思った。

 

「アンク?」

 

色々と考えている彼をヴィータが呼んだ。

 

「何だ?」

 

「あの人たちがアンクのことをさっきから探してたよ。」

 

「そうか。おい、ヴィータ。」

 

「ん?おっと!あっ!これあの時のアイス!」

 

自分を呼んで研究班の所に戻る彼女を呼び止め、車にあったクーラーボックスからこの間と同じカッブアイスを一つ投げ渡した。

 

「さっきのは上出来だったぞ。」

 

「…そうかい。ありがと!」

 

彼なりの労いに納得して笑うヴィータを見て、彼は現場へと戻っていった。

 

-

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-

 

またいつぞやの時のようにあの夢の空間にいた。

 

夜天の下に、淡い空色の輝きを放つ地面とあの綺麗な精霊さんは変わらず居たが、いつもと違うものが宙に浮いていた。

 

長方形の結晶状のそれはモニターのように機能し、映像が流れていた。

 

そこには険しい表情で並び控え、目の前に立つ絵に描いたように怪しいフードを着込んだ魔導士に頭を下げる騎士たちが映っていた。

 

「これは私が見てきた、騎士たちが過去に仕えてきた主たちの記録だ。」

 

「…こんなのばっかりだったんですか?」

 

「我らは主を選べない。故にどんな望みも叶えられると伝えられてきたこの本を手にした者はいずれも…な。」

 

彼女たちを要が無いときはろくな食事も与えず寒い牢に閉じ込めておいたり、どう考えてもただで済まない危険な戦いに放り込み、自分たちは安全な場所で見ているだけの者と、自分の中で最も嫌う人間ばかりがそこに映った。

 

最後に戦いから傷ついて戻った彼女たちが別の主から罵詈雑言と共に暴行を受けている場面で映像は終わった。

 

何かが自分の中で噴き出して来るのが分かった。

 

怒り?憎しみ?

 

涙と共に溢れたそれは悲しみだった。

 

ずっとこんな仕打ちと境遇で、「家族」と言われても彼女たちは受け入れられるはずも無い。

 

それを自分は…。

 

「何なんこれ…。みんなに何すんの?」

 

後ろからしたその声の主に気づき、精霊さん共々驚いた。

 

自分と同じように涙を流し、別に存在していた結晶に映った彼女たちを平然と傷つける過去の主たちに怒りを顕にしていた。

 

「主!?何故貴女がここに!?」

 

「はやてちゃん!?」

 

「エイ兄さん!私…」

 

そこで彼女は光の粒子となって空間から消えた。

 

「…どうやら夢から目を覚まされたようだ。気を失った君の手を繋いで眠られていたせいでここに来たらしい。」

 

本から外の状況を見ている彼女はそう説明してくれた。

 

「そうですか。」

 

はやてちゃんからしてもこんなにまでみんなが辛い思いをしてきたとは思わなかっただろう。

 

自分も彼女たちの様子から相応のことは察していたつもりだった。

 

だがこんなにも辛いものしか無く、それがずっと続いていた人たちに自分の言葉や行動は余りに軽く思えた。

 

「そりゃ…気軽に家族だ大切なんて言っても信じろなんて…無理な話ですよね。」

 

それを俺は…

 

「そう自分を…責めないでくれ。」

 

自分の行いを恥じて下を向いていたため気づかなかったが、彼女はいつの間にか目の前に立ってその両手を自分の両肩にそっと置いた。

 

「私は嬉しかったよ。主や君が騎士たちを受け入れてくれ、家族とさえ言ってくれて…本当に嬉しかった。」

 

そう告げる彼女の表情は穏やかで、自分の有りのままをそのまま包み込んでくれるような優しいものだった。

 

「確かに今までの過去は辛く、苦しいものでしかなかった。私の運命がそうさせ、彼らには少しの幸せな時も安らぎも与えてやれなかった。それは私の咎だ。」

 

「そんな!」

 

全てを自分のせいにする彼女の言葉を否定したかったが、彼女は首をゆっくり横に振って続けた。

 

「私は闇の書。誰が何時からそう呼ぶようになったかはもう分からない。数多の願いの下、罪を重ね続けて来た私はいいんだ。だがあの優しい騎士たちは望まぬ戦いを求められ、傷つき、幾度と無く散って行った。」

 

紅玉の瞳を光らせ、彼女たちへの思いを吐露するこの人の言葉を黙って聞いた。

 

「まだその時と比べれば僅かかもしれない。それでも主と君が注いでくれた優しさは確かに彼らに届いている。」

 

「だけどシグナムさんは…。」

 

倒れる前に分かった。

 

あのヤミーはシグナムさんから生み出されたものだった。

 

今、彼女たちの過去を知った上でならば彼女の欲望…願い。

 

だからこそ迷った。

 

自分の言葉を彼女が認めてくれるのかを。

 

「フフッ。大丈夫だ。将はあれで心配性なだけだ。しっかり胸の内を打ち明けてあげてほしい。そうすればきっと大丈夫。」

 

「…分かりましたよ。そのアドバイスしっかり生かします!」

 

手を肩から放した彼女にいつものようにサムズアップを送るとまた体が光に包まれ始めた。

 

「ああ、しっかりね。」

 

「はい!あっそれとなんですけど…。」

 

「何だい?」

 

「またお会いするときにはエイジって呼んでもらえると嬉しいです!」

 

宙に浮かび始め、ここから消える前にそれは伝えたかった。

 

「ダメ…ですか?」

 

少し考えた彼女は

 

「次でいいのかい?エイジ。」

 

意外と洒落が利いた。

 

「アハ!良かった!」

 

微笑を浮かべ見送る彼女にサムズアップをもう一度送ったところで、瞼の外に日の温もりを感じた。

 

 

 

 

 

 

 




近頃感想への質問も少しずつ寄せられ、「色々な人に読んでもらえてるんだなあ!」と大変嬉しく思っています!

本当にありがとうございます!

何か気になることなどありましたら、話数を問わずにお受けしていますので是非お気軽にどうぞ感想欄に遊びに来てください!

次回はなかなか話されずにいたエイジのバックボーンをやっとこさ掘り下げます!

そしてシグナムさんはその時とうするのか?

また次回で!
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