リリカルなのは-オーズクロニクル   作:スターみかん

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どうも!最近ようやく暖かくなってきたと思って防寒具を片そうとしたらちょっと時期尚早だったと後悔してるスターです!

Detonation…円盤の発売日決まりましたね!

劇場でなかなかの回数観ても飽きなかった上、まだ観足りなくてウズウズしてたこの身にはこの上無い吉報です!

皆様もどちらのお店で買うか悩まれると思いますが、それまでに全力で日々を元気にお過ごしください!

さて、今回はエイジの大まかな過去とシグナムさんとの関わり、そして今まで表には出なかったヤツも…

後書きでまた後程!


第17話「胸の内と家族と強き背」

時計の針は午前5時。

 

6月ともなると日はかなり昇り、街は光を取り戻しつつあった。

 

瞼に感じる日の温もりは兎も角、あの嗅ぐと妙にイライラする芳醇な薫りを煩わしく思い目を開けると、そこには匂いの元を手にした見知った顔が全力の変顔を作って自分を覗いていた。

 

「あっ。おっはようございま~す…。コーヒー飲みます?」

 

「…もっかい寝ます。」

 

「あら、寝坊助さん。今なら良いもの見れるのに。」

 

こんなカフェイン中のド甘党の友人よりも、もう一度あの人に会えるものなら会おうと、淡い期待を抱いて目を閉じようとすると、彼はその良いものとやらの方を目を動かして伝えて来た。

 

右に首を回すとそこには赤面して戸惑うシグナムとシャマルがはやてに押し倒され、その上から二人を泣きながら小さな腕で抱き締める彼女がいた。

 

「ああ~なるほどね~。」

 

「え?エイ兄さん!起きとったんですか!?」

 

「いや、今起きたの。おはよ。」

 

「あっ!エイジ君!あの…これは…。」

 

「事情は察しました。多分起きた直後のはやてちゃんに二人が呼ばれて、そこをいきなりガバッとハグられて本人は何故か泣いてると…。」

 

「おお~、お見事。」

 

キリヤの拍手はスルーし、ソファーに座るとはやての頭に手を置いて撫でた。

 

「お待たせ、はやてちゃん。戻ったよ。」

 

「…もう…ホンマ心配やったんですから。」

 

「ごめんね。でもとりあえず俺もその空間に引き摺り込もうとするのは止めてね。」

 

撫でている手を掴み、自分もそのハグゾーンに入れようとする彼女の企てを見抜き、引っ張られまいと抵抗した。

 

「気づかれてもうたか!」

 

「大体察したよ。それより顔拭きな。美人が台無しだよ。」

 

キリヤから机の上にあった自分のハンカチを受け取り、その涙を拭き取った。

 

「おおきにです。」

 

「まあ…あんなもん見たらそりゃ泣くよね。」

 

「…!まさか?」

 

それだけで何かに気づいたシグナムは自分の顔を見たが、すぐに気不味そうに顔を逸らした。

 

「こーら、シグナム。」

 

「で、ですが。私は一体どんな顔をして…。」

 

「あの…シグナム…さん?それにシャマル姉さんにはやてちゃん?」

 

「は、はい…。」

 

名前を呼ぶとまだ申し訳無さそうな顔をしているが、どうにか顔は見てくれた。

 

「ちょっと昔話してもいいですか?」

 

胸の内に秘めていた自分の過去と理想を話すことにした。

 

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「ヴィータ。エイジのやつ起きたとさ。」

 

「ホント!?」

 

「ああ。で、お前らに話したいことがあるらしいから、ザフィーラと車の所の電話を使え。」

 

「何だろ?」

 

疑問符を浮かべながらも、隔離現場で一晩待機していた彼女は、連絡を受けて応援に来たザフィーラも控える車に向かった。

 

「さて、後どれだけ持つか。」

 

既に6時間以上ヤミーを隔離しているが、正直限界はいつ来てもおかしくは無かった。

 

外部接続によるエネルギー供給で長時間稼働を可能にしたが、想定されていた限界点はとうに越えていた。

 

昨日の戦闘でもそうだったが、研究班が優秀なのは良いが伝えられていた以上の結果を出す物を多く作るので、彼らがテストしているのかアンクには疑問だった。

 

「(さっさと済ませろよ。)」

 

面倒臭い、手の焼ける相棒のことを思い浮かべて彼の帰りを待った。

 

気配を殺し、現場から少し離れた木の上から観察している影には気づかずに…。

 

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-

-

 

昔、ある男の子が産まれた。

 

直前に母子共々危険なハプニングこそあったが、何とか無事にそれを乗り越えて彼は生を受けた。

 

初めは黒かった髪が、徐々に神話に伝えられる幻獣のような銀髪になっていくなどあったらしいが、親バカ全開の両親は「カッコいい!」だけで済ませたそうだ。

 

その後すくすくと成長していった彼は、周囲の人間たちが驚く知識に対する欲と自由で型にはまらない想像力を発揮し、小学校3年生の段階でその頭脳は大学教授の講義内容を理解し、応用出来るほどであった。

 

だがそんな彼が面白く無く、同じ年端の子どもたちは拒絶し、傷つけた。

 

大した理由も無く暴力を振るわれ、大切にしていた私物を壊され、そこに確かに居るにも関わらず空気のように無視された。

 

なぜそんなことをされるのか理由も分からず、塞ぎ込んだ彼を母は力強く抱擁した。

 

「ありのままの自分で、やりたいことに全力で向かい、最後には思い切り笑えばいい!」…母のまだ生きる指針など無かった彼に、母の言葉は強く胸に響いた。

 

それからは吹っ切れたように父の尽力の下、様々なことにチャレンジし、人のためになるものを作った。

 

中でもゲーム作りに関しては、自由な発想に徹底して細部まで掘り下げるこだわりの強さ、プレイする人の感情を良い意味で豊かにするなど、まさに「神の才能」と言われるものがあった。

 

本人はそう言われるのが嫌なのだが。

 

彼自身も、自分の作ったもので人が笑顔になることを嬉しく感じた。

 

同時にその笑顔をこの自分の手で守りたいとも思った。

 

そのために医者にもなり、人のためにやっていこうとした矢先にそれは起きた。

 

母が…亡くなったのだ。

 

新たに発見された未知のエネルギーを持った存在のメダルを研究するため、夫の会社の研究者だった彼女は研究所に運びこまれたそれの調査をしていた。

 

だが突如グリードと化したコアメダルは施設を破壊し尽くし、彼女はそこで帰らぬ人になった。

 

そこで彼…黒斗エイジの時は止まった。

 

-

-

-

 

「…とまあこれが6年前まで、アンクが来る少し前の話かな。」

 

キリヤ以外、その場にいた一同は語を発しなかった。

 

「…そこまで話しちゃって良かったんですか?」

 

「キリヤさーん?どうせあなたがある程度はもう話しちゃってるんでしょう?なら消化不良無しにしとこうと思って。」

 

「胃もたれさせても変わらないでしょ。」

 

多少は気を遣って伏せたところもあるというのにと呆れるキリヤに彼はしてやったり顔だ。

 

「…それにはやてちゃんのことに踏み込んだり、騎士のみんなの過去まで見た俺が、自分だけ内緒話を溜めておくのはズルいでしょ。」

 

自分たちの過去を知ったという言葉に反応したシグナムはハッと驚いた顔をした。

 

「ええ。あの本が教えてくれました。はやてちゃんも見たよね。」

 

傍らで見守るように宙に浮かんでいた本を手に取って、自身の膝の上に置いた彼女は暗い顔で頷いた。

 

「…みんな…ホンマに辛かったやろ…。あんな酷い目におうて来たら、私みたいなん相手にしたらそら疑うわな。」

 

「そんなことないよ!」

 

「そうです!」

 

エイジの携帯のモニターに映るヴィータとシグナムが否定したが彼女は続けた。

 

「ええねん、それで。そんなん当たり前や。ずっとずっと苦しかったんやったら信じることなんて出来んくなってまうわ。」

 

「はやてちゃん…。」

 

「…。」

 

はやての肯定に目を潤ませるシャマルと、その話を黙って聞くザフィーラだった。

 

「せやけどな、これだけは言える。私はみんなとずっと一緒に居たいと思ってる。今までずっと辛い思いしてきたのが嘘やったと思えるぐらい幸せにしたりたいと本気で思ってる!それは絶対嘘やあらへんからな。」

 

そこまで言って、嬉しさで耐え切れなくなったシャマルに今度は逆に彼女が抱きつかれた。

 

「はやてちゃーん!ずっと付いていきます!」

 

「はやて!私もそうしたいよ!」

 

ずっと口にすれば叶わないと思っていた願いと共にヴィータたちは涙を流し、はやても笑顔で一筋の滴を落とした。

 

「…。」

 

「…シグナム。」

 

一人目を潤ませて座る彼女にザフィーラはモニター越しに声をかけた。

 

「もう迷いは晴らしてもよかろう。」

 

「…だが私は…」

 

「シグナムさん?」

 

立ち上がり、彼女の前にしゃがんだエイジはその目を見つめた。

 

「俺の過去なんて、みんなが過ごしたものに比べたら助けてくれる人もいっぱいいたしで、恵まれてる方です。」

 

父や母、会社のみんなに隣のキリヤ、アンクを思い浮かべ、彼は照れ臭そうにだが話した。

 

「だからこそ辛い時や苦しい時、人は誰かと手を取り合わなきゃ前にも進めない。その思いは分かるつもりです。」

 

右手を彼女に差し出し、穏やかだが確かなものを宿した瞳で彼は続きを話した。

 

「シグナムさんが俺を信じれなくても、俺はあなたたちを大切にしたいと思ってます。」

 

それを聞いて俯いた彼女にエイジは笑ってはいたが、寂しそうに出した手を引こうとしたが、その手は止まった。

 

「…姉さん、ではなかったのか?」

 

「…!はい!」

 

凛々しい笑みを浮かべ、彼の手を掴む彼女に迷いはもう見えなかった。

 

「にしても姉さん、力強いです。」

 

「すまん。加減を間違えた。」

 

「あれ~、エイジさーん?もしかして照れてる?顔赤いよ~?」

 

「へ!?て、照れてないし!」

 

からかうキリヤに、慣れないことを言いまくったエイジはもうタコかトマトのように真っ赤だった。

 

「ホンマや!これはちょおええもん見れました♪」

 

「カメラ?でしたっけ、写真に撮っておきましょうか♪」

 

「いいね!撮っとこう!」

 

「ちょ!?ヴィータちゃんまで!」

 

「まあ落ち着けエイジ。」

 

「さっきまでとの切り替え早いです!」

 

八神家女性陣を止めようとするが、シグナムに固く掴まれたその手は解くに解けなく、その赤面は余すこと無く記録に撮られた。

 

だがその直後、ヴィータの側から爆発音が聞こえた。

 

「何だ!?」

 

「多分装置がやられたんだろうけど、うちのチームが側にいてそれは無いだろうから…。」

 

キリヤの推察とエイジは同意件だ。

 

それが現実なら急がねばならない。

 

「私はアンクの所に戻るよ!」

 

「私も参ります。」

 

「分かったよ!絶対無茶はしないでね!」

 

一同全員がお前が言うな状態だが、ツッコんでいる場合では無いのでヴィータは通信を切って現場へと向かった。

 

「さて!俺も…」

 

「あ~…それなんだけどさ…」

 

「止めても行きますよ。」

 

一応エイジと同じく医者のキリヤは危険だとドクターストップをかけるのかと思いきや。

 

「いや。行くのは良いよ。体もシャマル先生のおかげで全快に近いし。」

 

「じゃあ何ですか?」

 

「アンクさんがバイク乗ってちゃったから足が無いんですよ。」

 

それは実に大きな問題だった。

 

「…どうしましょ?」

 

「ここから車とかでも片道小一時間はかかってましたよ。」

 

ならばと、あるものを探そうとリュックに手を入れたが

 

「当分コンボは厳禁なんで、しばらくアンクさんがタトバ以外は預かるそうです。」

 

探し物のホルダーは無く、代わりにタトバ用の3枚のメダルをキリヤから受け取った。

 

「じゃあどうしよ…」

 

「私にお任せです!クラールヴィント、お願い。」

 

「Ja.(はい。)」

 

シャマルが両手を前に出すと、指輪型の彼女のデバイスから光の糸が伸び、円弧を形作ると黄緑色のゲートとなった。

 

「この先はさっきヴィータちゃんと連絡していた場所と繋がっています。使ってください。」

 

「わーお!こりゃすごい!ありがたく使わせてもらいます。」

 

「私も同行する。」

 

もう何でもだなと思いつつ、身支度を整えるエイジにシグナムは付いてくると言う。

 

「自分のケジメは自分でつけたい…そういうことてすよね?」

 

「ああ。」

 

「…結構!はやてちゃん!良いかな?」

 

「…止めても行くんでしょ?みんな絶対怪我もせんと、無事に帰ってきてくださいよ。」

 

「了解♪」

 

「心得ました。」

 

ゲートの前に並び立ち、横を向いて顔を見合わせた二人は一拍笑い、すぐに前を向いた。

 

「じゃあリベンジと行こうか。」

 

-

-

-

 

ピギカンは投影機諸共に無惨に焼け焦げ、辺りの森の中には飛び散った資材が転がっていた。

 

「クソッ!こいつらどっから沸いて来やがった!」

 

大量に出現した屑ヤミーの群れをアイゼンで吹き飛ばすヴィータの装いは普段着とはまた違っていた。

 

袖を出した深紅のゴスロリ風のドレスに、同じく赤地の帽子にお気に入りののろいうさぎの顔を二体あしらったなかなか特徴のある服で、これははやてのヴィータのためにイメージを描いた騎士服であった。

 

一見すると柔地に肌の出ている部分も多く、戦闘には向かなさそうだが、彼女自身の魔力で編み上げられたこれはそう簡単に攻撃は通さなかった。

 

何より本人も結構このデザインを気に入っていた。

 

「こいつら生み出すバカが近くに居るんだ!こっちの隙を狙ってるから、とりあえずはそれを忘れるな!」

 

研究員たちを自分の後ろに集め、素手の格闘で迎撃するアンクは警戒を怠らないよう叫んだ。

 

「(チッ!こいつら逃がそうにも退路も塞がれてる今じゃ無理だ。それに…)」

 

隠れ潜んでいたグリードの攻撃で結界は狙い撃ちされ大破、その爆発でヴィータとザフィーラがやって来ると同時に、彼らを取り囲むように屑ヤミーが出現した。

 

「ハアァ!」

 

「くっ!…のやロー!!」

 

解放されたヤミーが巨大な図体に見合わない俊敏さを以て襲い来るため、一切の隙も許されなかった。

 

「ておあーーー!!!」

 

ヴィータの援護に蒼い騎士服に鋼の籠手を着けた人間態のザフィーラが雄叫びと共に入った。

 

「…!」

 

ヴィータとの鍔迫り合いの最中に、横からカマキリ部分の胴体を殴り飛ばされたヤミーは着地には成功したものの、片膝を突いてその場に固まった。

 

「平気か?ヴィータ。」

 

「あんがと、ザフィーラ!」

 

少しズレた帽子を直し、礼を言う彼女に小さく彼は頷いた。

 

「よっしゃ!今なら…アイゼン!」

 

「Explosion!(起爆!)」

 

レヴァンティンのように内部で魔力カートリッジを爆発させたグラーフアイゼンはハンマー部分を輝かせ、片方の先端を杭状に変化させ、もう片方を三ツ又のブースターへと姿を変えた。

 

空中高く上がり、ブースターの推進力で自身を回転させて勢いを付けてヤミーへと急降下した。

 

「ラケーテン…ハンマーーー!!」

 

ヴィータの強烈な一撃はヤミーの防御のために前に出されていた河馬の口型の右腕を貫き、上顎相当の部分はメダルに還元された。

 

「ただの打撃なら抑え込まれるなら、当てた後にも加速すればいいだけだ!」

 

直撃後に一度はサゴーゾの時のように抑えたようだが、ブースターによる一点突破に耐え切れず、自慢の盾は半壊した。

 

「へん!どんなもんだ!」

 

「!油断するな!下だ!」

 

空中で一回転し、着地した彼女の足元に屑ヤミー数体が飛び込み、気づいたアンクの警告の甲斐無くその場から動けなくなってしまった。

 

「くっ!お前ら邪魔だ!離れろ!」

 

仁王立ちの状態で動けないヴィータはアイゼンを叩き付けて追い払おうとするが、屑相手では効果は薄かった。

 

「ヴィータ!グッ…どけぇー!!」

 

ザフィーラが救援に向かおうとするが屑ヤミーの肉壁が行く先を阻んだ。

 

「ウゥ…!」

 

立ち上がり、先ほどの一撃が響くヤミーは走ることは出来なかったが、左腕の鎌を地面で引き摺りつつヴィータへとゆっくりにじり寄った。

 

地を擦る鎌の先端が小石に当たる度にガキンッと嫌な音を立て、それが彼女の耳には周囲の音よりもよく入った。

 

「(こんなところで…)」

 

いよいよヴィータの目の前に来たヤミーは鎌を掲げ、振り下ろすだけとなっていた。

 

アンクもザフィーラも差し迫る屑の対処に追われ、気づいていながらも助けに向かえなかった。

 

「終われるかぁーー!」

 

最後まで目を開き、生への渇望を捨てない彼女へ振り下ろされたその腕は…突如彼女のすぐ脇から飛んできたメダジャリバーによって弾かれた。

 

「全く…剣を投擲に使うやつがあるか。」

 

間合いを一気に詰めて、後ろに大きく仰け反ったヤミーを蹴り飛ばし、白とピンクのカラーリングの西洋風の陣羽織の騎士服に身を包んだシグナムは炎剣による斬撃でヴィータの足元の屑ヤミーを一掃し、彼女を解放した。

 

「シグナム?」

 

「待たせたな、ヴィータ。平気だったか?見たところ少々ピンチだったようだが。」

 

「!うっせーな!!これからってとこだったんだよ!」

 

「そうか。それはすまなかった。」

 

地面に刺さったジャリバーを抜き取りながら謝る彼女は、自身が斬り開いた道を走って来た剣の持ち主にそれを渡した。

 

「いやー!サンキュ、姉さん!」

 

「それはいいが、剣を扱う者がそれを投げるのは些かどうかと思うぞ。」

 

「ごめんなさい。結構慣れちゃってるもんでつい…。」

 

その図はヤンチャな弟がしっかり者の姉に叱られているようだった。

 

「ハッ!少し見ない間に随分と打ち解けたようだ…なっと!」

 

「そのようだな。」

 

屑ヤミーを殴り飛ばしながら言うアンクの言葉にザフィーラも同意した。

 

「ヴィータちゃんもありがとね!アイツの後はこっちに任せて。ヴィータちゃんはアンクと屑たちの相手、頼んでいいかな?」

 

「りょーかい。そっちもしっかり仕留めろよ!」

 

「あっ!それと!」

 

「ん?」

 

早速頼んだ仕事を実行しようとする彼女を呼び止め、エイジは話した。

 

「その騎士服良く似合ってるよ!すごく可愛いよ!」

 

「だろ♪」

 

サムズアップで感想を伝えた彼にヴィータは気を良くして行った。

 

立ち上がろうとするヤミーに向かい、エイジとシグナムは肩を並べて立った。

 

「さってと、今度は終わりにしてやる。一緒に頼みますよ、シグ姉。」

 

「シグ姉?」

 

「シグナム姉さんだと戦ってる最中だと伝達遅くしちゃうかなと思って。嫌でした?」

 

「フッ。いや、そんな風に愛称を付けて呼ばれたことが無く、慣れていないだけだ。好きに呼べ、エイジ。」

 

「…!はい!」

 

名前を呼ばれ、嬉しくなったエイジはドライバーを巻きつけてメダルを装填した。

 

「じゃあやりますか!」

 

「ああ!」

 

「変身!」

 

タカ!

 

トラ!

 

バッタ!

 

タ・ト・バ!タトバ!タトバ!!

 

タトバコンボに変身したオーズはメダジャリバーを構え、バッタの力で一気に間合いを詰めた。

 

「そら!」

 

「グウ!」

 

一瞬の内に目の前に来たオーズの斬撃を難なく鎌で受け止め、半壊した右腕で撲打すべくそれを掲げた。

 

「ふん!」

 

後ろに回り込んでいたシグナムの炎剣による痛烈な一撃を受け、苦手とする炎に残った河馬の下顎部も維持し切れずにメダルへと還った。

 

「おー!近くで見てるだけでも熱いや!」

 

右足のバッタレッグをヤミーの腹に押し当て、その反動で後ろに跳んで一度距離を取った彼は未だ炎に喘ぐ相手を見て率直な感想を言った。

 

「随分と余裕そうだな。」

 

同じく一度下がってレヴァンティンへカートリッジをセットするシグナムはオーズに話し掛けた。

 

「姉さん居てくれてますから。」

 

「そうか。気を抜くなよ。」

 

「もちろん!」

 

ヤミーの真っ正面から突っ込んで鍔迫り合いに持ち込んだシグナムが作ってくれた隙を見て、肉の薄いカマキリ部分の脇腹をジャリバーで切り裂いた。

 

「ハッ!セイヤ!」

 

「ウグルワァ!?」

 

「させん!」

 

拮抗が崩れ、自身から受けた一太刀をこらえて右腕を裏拳の要領でオーズに叩き付けようとするヤミーの先を読み、シグナムは胴を斜めに斬ったその刃をそのまま僅かに左に反らし、縦一閃に左足に刃を立てた。

 

「ヴァ!?」

 

両足はカマキリ素体のままだったため、バランスを失ったその巨駆は大地へと転がった。

 

「ナイスです!…危ない!」

 

今だと狙いを見極め、カートリッジをロードしようとした瞬間にオーズが勢い良く飛び、シグナムを押し倒した。

 

直後、彼女の立っていた場所には先端に鋭利な突起物の付いた、黒く細い触手が突き刺さった。

 

「あ~あ、惜しかった。殺れたと思っただけどな~。」

 

姿を現した声の主は伸ばしていた自身の頭部の触手を戻し、残念そうに頭を掻いた。

 

「何だアイツ?普通にしゃべってやがる。アンク、あれもヤミーなのか?」

 

片っ端から屑ヤミーを自分の鉄球で作った穴にザフィーラと共に叩き込んだヴィータはそこに火球を放とうとするアンクに聞いた。

 

「…随分とあっさり出てきたなあ。鬼ごっこは飽きたのか?」

 

穴底に発射された火球は巨大な火柱を上げ、屑ヤミーたちを一片の割れたゴミにし尽くした。

 

「気をつけろヴィータ。そんな気色悪い奴でも一応はグリード、ヤミーよりも上だぞ。」

 

さながら地獄の業火の如く上がる火柱が、その歪な顔を照らし上げた。

 

「随分見るに堪えなくなったなぁ。カザリ。」

 

上半身の背中からは蛸の触手を生やし、肩には節足動物と同じ足が成形され、顔は亀裂が入ったようにひび割れたグリード…カザリがそこにはいた。

 

「久しぶりだね、アンク。それに…」

 

自身の背を向けていた彼に首だけを傾けて一瞥すると、表情は変わらないが心底楽しそうな声で呼び掛けた。

 

「オ~ズ~。こうして顔を合わせるのは6年ぶりだね。」

 

「ああ、結構開いたな。で?わざわざ挨拶だけしに来たのか?この性悪野郎。」

 

あからさまに嫌悪感を醸すオーズはシグナムの手を取り、立ち上がらせながらもカザリと相対した。

 

「まあいい。とりあえず話せ。何が目的ではやてちゃんを狙う。」

 

「君ならもう気づいてるでしょ。」

 

「…あの本だろ?」

 

そこにはもう辿り着いている。

 

あの本にはそれこそ魔法を扱う世界でならば、一体どれだけの力があるのかエイジには推し測れない。

 

だが目の前のグリードにしてもそれは同じはずだ。

 

「あれ?そこは分かるのにその先は分からないんだ。これは面白いね!もしかしたらと思って出てきて正解だったよ。」

 

「お前…。」

 

頭を抑えて笑うカザリにアンクは食って掛かろうするが、彼は空いている手をかざして制した。

 

「待った待った。あわよくば一人殺しちゃおうと思ったけど、別に今日は戦いに来たわけじゃなくて本当にただの挨拶に来たんだよ。」

 

そう言って彼は一同にふてぶてしく頭を下げた。

 

「初めまして、お人形さんたち。ああ、そこのお姉さんは別にそうでも無いね。なんたってあんなくだらない欲望でこんな上等なヤミーを生んでくれるなん…」

 

シグナムを見るやそう語るカザリは、最後まで言い切る前に迫ったオーズとその手の爪で鍔迫り合いを起こした。

 

「戦うつもりは無いって言ったんだけどなー。」

 

「おい、3つ教えてやるよ。1つはみんなをお人形なんて言うな。」

 

「は?」

 

「2つ目は!」

 

彼が何を怒っているのかまるでさっぱりな様子のカザリにお構い無しとエイジは続けた。

 

「俺の家族を馬鹿にするな!」

 

「ほう…で?3つ目は?」

 

一段と冷たい声になったエイジはその問いに答えた。

 

「お前は俺が今度こそ砕いてやるよ。」

 

「…やっぱり君は面白いね♪」

 

切り結んだクローを敢えて自らメダルへと還し離れたカザリは木の上へと跳んだ。

 

「今回はここまでにするよ。次も楽しませてね。」

 

空を切るように手をかざし、自身の周りに砂嵐を発生させてその場から離脱した。

 

「…。」

 

「エイジ。」

 

ジャリバーを握る手を震わせ、カザリがいた場所を見つめる彼にシグナムは呼び掛けた。

 

「…フゥ…。大丈夫。まだやれますよ。」

 

「そうか。ならば行くぞ!」

 

ダメージを回復し切れず、ただ立ち上がることしかヤミーに二人は向き直った。

 

スキャニングチャージ!

 

「Explosion!」

 

「紫電…一閃!!」

 

弱った敵をそう何度も逃がすような二人ではなく、オーズが力を溜める間にシグナムは烈火の勢いで駆け抜け、ヤミーが防御のために前に出していた右腕の肩から先を切断した。

 

「(これでいい…。私は主はやて、そして…)」

 

背後ではもう必殺の攻撃を防ぐ手立ての無くなったヤミーがオーズのタトバキックを受ける寸前だった。

 

「オッリャーー!!」

 

「(エイジたちを信じる!)」

 

そう誓う彼女の表情は凛々しくも、清々しい微笑を浮かべていた。

 

傾けていたベルトを水平に戻すと、オーズは一瞬の内にエイジに戻り、その顔にはいつもの笑顔があった。

 

「お疲れさんです♪」

 

「ああ、お前もな。」

 

「おい。いい感じに余韻に浸ってるところ悪いが、そろそろまずいぞ。」

 

一戦終え、見事な初連携をして二人とも晴れやかな気分になっていると、アンクの呼び掛けであることを彼は思い出した。

 

「あー…結構派手にやっちゃったもんね。そりゃ山の中でも来るの速いよね。」

 

遠く聞こえてくるサイレンに困り顔のエイジだった。

 

「さっさとずらかるぞ。俺は疲れたからお前がバイク使え。こっちは車に乗る。」

 

「えー!俺も怪我上がりなんだからそっちがいい…って置いてくなよ!」

 

気づくと周りにはもう彼と私服に戻ったシグナムだけで、全員車とライドベンダーを停めておいた道路へと走っていた。

 

「こっちのワゴンはもう定員だ!お前はシグナムとバイクで帰れ!」

 

「わーたよ!さっ!帰りますよ、シグ姉!」

 

「…ああ。」

 

自分の手を取り走るその背に、彼女は悪い気はしなかった。

 

「おっ!いい笑顔♪」

 

「お前も似たようなものだぞ。」

 

 




ドタバタとしていましたが、何とかエイジを心から受け入れて一歩進んだシグナムさんでした。

ヴォルケンのみんなの過去からすれば、そうそう簡単に得体の知れない力と素直な気持ちも悪く捉え、拒絶するまではいかなくとも勘繰りや疑念は抱いて当然だと思って描きました。

これにてヤミーはどうにか一件落着ですが、肝心のヤツ…カザリが現れたので話はまた進んでいきます!

また次回もよろしくお願いします!
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