お気に入りに登録していただく方もみえるようで、個人的にとても嬉しく思います!
少し無理やりじゃないかとお思いの方も見えるかもしれませんが何事も自分から、そして伝えたいことがあるなら相手にそのままの気持ちをパスすることがお話を信条に自分は描かせていただいていますので、どうぞその辺りをご理解いただきお手に取ってもらえれば幸いです!
今回はあの人にピックアップしていきます!
それでは本編どうぞ!
シグナムのヤミー騒動から一月経ち7月半ば。
早朝の朝焼けが地平線から顔を覗かせ始める頃合いにカザリは桜台の広場脇の木の上でくつろいでいた。
「ちょっとメダル使い過ぎちゃったな~。」
頭の後ろで手を組み、足をブラブラと木から垂らして、そうぼやく彼は少しだけ反省していた。
この1ヶ月、エイジたちの前に姿を現してからも度々ヤミーを作ってはいたのだが、なかなか上手く成長する個体が生まれず、軌道に乗ってメダルを稼げそうになっても回収前にオーズたちに倒されて充分に集まらなかった。
「屑も便利だけど、遊びに回し過ぎたや。」
一度彼も、アンク同様に元の世界では消滅したグリードだった。
それも意思のあったコアメダルが原型も残さずに粉々になるほどに。
だが彼も文字通りグリード、生への執念は並みではなかった。
かつて彼は自分が完全な力を得るために必要な自身のコアメダルの他に、自分以外のグリードたちのコアを執拗に狙い、奪い取ってその力を自分の物とした。
その時に図らずもそれらのメダルに意識が分散する形で宿り、時空の裂け目の中で集まったメダルたちから甦った。
だがイレギュラー過ぎる復活のため復活当初は自我は無く、暴れ回った挙げ句ある一騒動の中で深手を負った結果内包したメダルが暴走し、今の醜悪な姿へと成り果てたのだった。
「楽しみのために減る分にはしょうがないとしても、あんまり減らし過ぎてお小言が鬱陶しいし、そろそろ大きく貯めよう。」
何も知らない、狙っていた人物が近付いて来るのを感じて彼は透過して周囲の木々と同化した。
「さあて…僕の糧をたくさん生んでね、魔法使いさん…。」
楽しそうにそう思うカザリの存在など知る由も無い獲物に、悪意は欲望の結晶を向けた。。
「その欲望。解放しなよ。」
-
-
-
「あら?エイジくーん!」
昼下がりの八神家のリビングで昼食の片付けをしていたシャマルは、拭いていたテーブルに置きっぱなしでメールの受信音のしたエイジの携帯を見つけた。
「はいはーい?」
「誰かからメールよ。」
携帯の持ち主は、二階の自室でシグナムと一緒に本業に取り掛かっていた。
呼ばれて降りてきた彼は、シャマルに礼を言って受け取った黒色の二つ折り携帯のサブディスプレイを見て、自分の失敗を察した。
「おっと!やらかしたや。」
「何かあったの?」
「父さんからです。」
画面は開いて宗正からのメールを見たエイジは、それをシャマルに渡して見せた。
「何も書いてないけど?」
「それはね…」
用件も内容も無い空メールに?マークのシャマルにどういう意味か説明しようとした時、今度は着信が入って鳴り始めた。
「電話する前の前置きってこと。こっちが作業中の時だったりした時の、父さんなりの気遣いらしいんだ。」
「なるほど~。」
納得して手を合わせるシャマルの前で受話ボタンを押すと、いつものようにテレビ電話が繋がった。。
「やあ、エイジ!元気かね?」
「そっちこそ。ごめんね。最近連絡してなかったから、メール見た瞬間にやっちゃったと思ったよ。」
一企業の重鎮らしく襟の正しいスーツを着こなし、息子にも遺伝した少々跳ね気味の髪をキレイにセットした、威厳こそ充分に醸し出しているが愛嬌のある笑みを浮かべた父がそこには映っていた。
「便りが無いのは元気な証拠とも言う。私はただ息子二人と、新しい家族たちが仲良くしているかは気になってね。」
パソコンから通信する彼は机の上で両手を重ねて置き、一月前から新たに家族に加わったはやてと騎士たちとのことを尋ねた。
「めちゃくちゃ仲良くやってるよ。ね!シャマル姉さん?」
「はい♪」
「おお!シャマル君、ご無沙汰だね。」
「お久しぶりです、お父様。」
「「ただいま~。」」
「ただいま。」
「あっ!三人とも!お父様からお電話来てるわよ。」
丁度ザフィーラとの散歩から戻ったヴィータとはやてがリビングへと入ってきた。
「あ!宗正お父さん、お久しぶりです!」
「よ!宗正のおっちゃん!」
「ご無沙汰しております。」
「やあ、はやてにヴィータ!、それにザフィーラも。みんなお出かけだったのかな?」
「はい。ちょおヴィータと一緒にザフィーラの散歩に。」
「結構ザフィーラ、近所の子供に人気だもんな」
「そうか。ご近所付き合いも良好のようだね。」
「はい♪」
カバカマキリヤミーの一件後、ヴォルケンリッターの4人は通信で挨拶をしていた。
最初こそ宗正がエイジの父であるため恐縮していたが、明るく、人によって態度など変えない彼の人柄もあって、今では笑顔で話をし合うほどだった。
「おや?そういえばシグナム君はどうしたのかな?」
「あっ。そうだった。ちょっと待ってて。」
二階に上がったエイジは1分ほど経つとシグナムを連れて戻ってきた。
「お久し振りです。お父上様。」
「やあ久しぶり。なにやらエイジに付き合ってくれていたようだが?」
「はい。彼の仕事の手伝いを。」
「ギリギリチャンバラの最終チェックと、ちょっとした隠し要素としてモーキャプを頼んだんだ。」
手に持っている、球体が先端に付いた半月型のはめ込み装置を見せてエイジは説明した。
「一発もらったらどれだけ進んでてもゲームオーバーのリアルアクションゲーム「ギリギリチャンバラ」の!」
何かのスイッチの入った彼の熱は止まらない。
「リーチの短い鎌を使うプレイヤーからすれば、剣を使うエネミー相手にいかに捌き、隙を見て必殺の一発をお見舞いするかと、反射神経と先を見る力を問われる…。本当に作り応えのある作品だよ。」
「私はその仕上がりの確認を頼まれまして。」
剣の達人である彼女にテストを頼み、エイジはその完成度を磐石の物とした。
「それで?ご感想はいかがだったかな?」
「実に実戦に近い、熱中させてくれるものでした。ゲームというものも中々に良い物ですね。」
「だね!この間のロボットのやつも結構スカッと出来て面白いし、仮想だったら壊しても悪い気はしないからいいよな。」
ヴィータは自身がパッケージデザインに興味を示してテストプレイをした、ロボット同士による己の肉体のみを用いたガチンコバトルゲーム「ゲキトツロボッツ」のことを思い出して話した。
「そうか。最近いつも以上に開発スピードも早く、デバッグチームからも好評だと聞いていたが、こんな喜ばしい事情だったとは。」
とりあえず仲良くやってるようで安心した宗正とは別に、はやてはあることが気になった。
「ん?そういえば隠し要素って言うてたけど、エイ兄さん、シグナムになんか頼んどったん?」
「ああ、隠しステージの裏ボスとして動きのパターンを頼んだの。」
「本気で挑みました!」
ジャージに着替え、モーションキャプチャーを付けて挑んだ彼女の堂々たる太刀筋はまさしく、思い描いた強者に相応しかったとは頼んだ本人の談だった。
「そんなん勝てるわけあらへんって!」
「大人げねえよ…。」
「ま、まあそういう要素も話題になってプラスにはなるから良しとしよう。」
はやての言う通り発売後、あまりの強さぶりに突破出来たプレイヤーは現れず、「クソ難易度ゲーム」として殿堂を飾り、ある意味彼の目論み通り人気を博することになるのだが、この時は誰も知る由もなかった。
「とにかく本業の進捗は期待以上で安心しているよ。」
「もちろん♪過去最高の調子だよ!」
サムズアップし笑う彼はいつも通りだった。
-
-
-
「ああ、そうだはやて。一つ聞きたいことがあるのだけれどよろしいかな?」
「私ですか?」
近況や政府上層部の意見など、一通りエイジと話終えた宗正は1枚の書類を片手にはやてに問うた。
「この間君から送ってもらった諸々の資料の中に何やら気になる名前があったのでね。ちょっとどういう関係か聞きたくてね。」
養子縁組のように本当に娘として扱うことが出来ないということで心ばかりのものとして金銭的な援助を行うため、遠慮しようとするはやてどうにか説き伏せ、必要書類を送付させた宗正だった。
いきなりだったとはいえ、ここまで普通に娘として彼女を受け入れたこの父は流石の度量なのか、はたまた意外と単純なだけなのかは息子であるエイジにも分からなかった。
「このギル・グレアムというのは…。」
「ああ!父の昔からのご友人さんらしいんです。私が物心つく前に両親が亡くなった時からずっと遺産の管理とかしとってくれとるんです。」
「ほう…。なるほどね。」
納得したようにそう言うと書類を机に置き、はやてを見ると意外なことを話した。
「実はね、彼は私とも知人同士なのだよ。」
「え!?そやったんですか?」
「ああ。昔私が若かった頃に一時期イギリスで暮らしていた時のご近所さんでね、彼も忙しくしていてそんなにしょっちゅう会えるものでは無かったが、話すとウマが中々合ってそれこそ時間を忘れるほど話し込んだものだ。」
「あっ。そういえばクリスマスとかによくカード送ってくれてた人にそんな名前の人が居たような…。」
毎年クリスマスシーズン近くになると、やたら凝ったカードを黒斗家に送ってくれる人をエイジは思い出した。
「まさかこんな偶然があるとは私も驚きだよ。」
「ほんまですね~。」
その後、一度連絡したいが通じないという彼に、はやては緊急時のために渡されていた連絡先を伝えて通信を終えた。
「グレアムさんねー…。俺は会ったこと無いし、父さんの知り合いさんってことしか知らないんだけどどんな人なの?」
携帯をポケットにしまいながらエイジは噂の人物に興味を持った。
「うーん…。私も手紙とか電話のやり取りだけで直接会うたことは無いんやけど、一人やった私のことをよお気にかけてくれて子供の私やと難しいこととか肩代わりしてやってくれとったんです。」
「へえー。知り合いの子とはいえ、そこまでしてあげるなんて立派な方もいるもんだね。」
「エイ兄さんがそれ言います~?」
「?どういうことさ?」
一同全員が同意し頷く中、当の本人はどこ吹く風だ。
「…ん?そういえばシグナム。さっきから気になってたんだけど…」
「なんだ?」
「その手に持ったままのリモコンはなんだ?」
リビングに降りた時から彼女が握り締めていたリモコンをヴィータが指摘するのを見たエイジは冷や汗が出た。
「ああー!そうだ!ポーズしてなかった!!」
「ポーズ?」
「ゲームとかを一時停止しておく機能のことや。」
「しまった~…。どこまで保存してたかなぁ。」
きょとんとするシグナムに補足の説明をするはやての隣で項垂れるエイジだった。
どうやら連絡が来た時、停止しておくのを忘れていたために彼女の動きに連動していたリモコンがそのまま機能し、手に持っているだけの状態を記憶してしまっていたようだ。
「げ、元気出して!エイジ君!シグナムならいくらでも協力してくれるわよ。ね!」
落ち込み過ぎて項垂れる頭が床を貫く勢いの彼に、シャマルはその背中を擦り慰めた。
「すまない。私の不手際だった。」
「あ!いや、シグ姉は謝らなくていいんですよ!ちょっとテンション上がってうっかりしてただけなんで!」
謝罪する彼女相手にすぐに背筋を伸ばして否定するエイジの姿を見てはやては微笑ましくなった。
「だが些か興に乗りすぎてしまったのだ。詫びにもう一度取り直させてくれ。」
「まだイケちゃうんですか!?頼もしいですけど…」
「何か問題があるのか?」
「…全然無いです!」
こうしていると中々のコンビである。
「じゃあ第二ラウンドです!」
「ああ!」
「二人ともほどほどの難易度を目指しや~。」
-
-
-
海鳴市中心街。
東京など大都市程では無いが建ち並ぶ高層ビルや行き交う車の量は少なくはなかった。
夕方時ともなると仕事や学校を終えた人たちで喧騒は更に騒がしくなり始める。
そんな人混みの中でなのはは友人たちと塾へと向かう最中だった。
「にしてもなのは。今日は本当に大丈夫なの?」
「へ?な、何が?」
友人のアリサに不意にそう聞かれ、狼狽えるなのはだった。
金髪の頭の後ろで両手を組んで歩く彼女は今日1日何だか疲れてボーっとしているこの友人を横目で見た。
「授業中も上の空みたいだったし、体育のドッヂボールなんてすずかの投げた球を抑え切れなくてへたりこんでたじゃない。」
「ごめんね、なのはちゃん。私が思い切り投げちゃったから…」
謝ろうとするすずかになのはは慌てて手を振って否定した。
「ううん!違うよ!今日みんなと会う前からこんな感じだったの!だから…」
そこまで言った時、なのははそれが失言だったことに気づいたがもう手遅れだった。
「ほら、見なさい!やっぱり平気じゃないじゃない!嘘を言うのは…この口かー!!」
反転して彼女の顔と面を向かわせて怒るアリサは彼女の柔頬を思い切り両側から引っ張った。
「この!この!この!」
「いひゃいよ~!」
「ア、アリサちゃん落ち着いて~!」
すずかの言葉も空しく、アリサによるお仕置きは彼女の気が済むまで続いた。
「いたた…。アリサちゃん痛いよ~。」
「全く!辛いならちゃんと言いなさい!そうやっていつも我慢する気!?」
ようやく解放され、ちゃんと頬がついているか摩るなのはに彼女は続けてもの申す。
確かに朝、いつものトレーニングに桜台に向かってからの記憶がなぜか曖昧で、怠くて体調も優れてはいなかった。
「まあまあ、アリサちゃんも落ち着いて。」
「すずか!でも…」
「なのはちゃんも無理しちゃダメだよ、私たちからもお家と塾には伝えておくから、今日はもう帰ってゆっくりしてて。」
「…そうしなさい。あんたも中途半端にやるのは好きじゃないでしょ。元気になってからいつもみたいに頑張りなさい。」
二人の言う通り、へとへとの今の状態では何をしてもダメだと思って返事をしようと俯けていた顔を上げた。
だがその視界にあるものが入った時、なのはは正面の二人を抱えて道の脇に跳んだ。
「きゃっ!?何よ、あのバイク!?危ないじゃない!」
三人が先ほどまで立っていた場所を一台の原付バイクが走り抜けて行った。
渋滞している車道を避けて余程急いでいるのか、轢きかけた三人に一瞥もくれずに歩道を縫うように走った。
丁度二人の真後ろの段差から歩道に乗り上げたバイクに気づいたなのはは咄嗟に身を乗り出したのである。
「危なかった~。なのはちゃんありがとう。」
「どういたしまして。でも本当に危なかったよ。私が気づけたから良かったけど…。」
すずかとアリサの手を掴んで立たせながら未だに歩道を走るバイクに目を向けた。
「あっ!ダメ!逃げて!」
進行方向には一人の幼稚園児ほどの子供が向かってくるバイクに驚いて固まってしまっていた。
なのはの叫びが響く中、二つの桃色の光球がタイヤを貫き、女の子にバイクがぶつかることは無かった。
「(えっ?今のって…。」
-
-
-
エイジはアンクと共にバイクに跨がり走っていた。
「お前の運転で乗るなんて久しぶりだな!」
「口閉じてろ!舌噛むぞ!」
車道の、それこそ車間の隙間に入り込むように走る彼の運転にエイジは、仮にも警察の立場もある者の運転ではないと心底思った。
ヤミーが現れた一報を受け、シグナムとのモニタリングを丁度終えていた彼は道中でアンクに拾ってもらい、帰宅時間ピークの道路の渦中で絶叫マシンに乗っている気分だった。
「これで昼から数えて三度目だ!今度こそ仕留めるぞ!」
「…。」
「返事は!」
「お前が口閉じろって言ったんでしょうに!」
「何かしらの反応ぐらいしろよ!」
「おい!二人共まだ来ねえのか!?」
アホみたいなケンカを車上で始めようとしていると、ヘルメットに着いているインカムにヴィータの声が響いた。
念話が出来ないこちらと繋げるための一工夫だ。
「ヴィータちゃんどうした!?また手強いやつか!」
「私だ。倒す分ならば我々でも可能かもしれんが、このヤミー。中々に手を焼かせてくれる。」
飛行魔法で空を自由に翔べ、地上の人間に見られないように出来る術を持ち、力もヤミー相手に渡り合えるシグナムとヴィータにピギカンを持たせて先陣を任せ、今まさに接敵していた。
「散ったメダルが球になって突っ込んで来やがるから迂闊に叩けねえんだ!」
「かといって本体を一撃で落とそうにも寸でのところで見切りをつけられ、決定打に繋げられん。」
「チッ!カザリのヤツ、鬱陶しいもん生みやがって!」
かつて先代のオーズが戦った複合型ヤミーに似たタイプのものがいた。
ダメージを与えてメダルを剥がせば剥がすほど、それらをヤミーとして増殖させて攻撃してくるものがいた。
おまけにシグナムの剣速を寸でで飛び回って避けるところから見るに、余程の素早さを持っているのだろう。
ならば取るべき戦略は…
「決まりだね♪」
どうやら同じことを考えていたらしいエイジはミラーに映るように彼の肩にドヤ顔を作り置いた。
「…フンッ。」
「ちょお!?」
ウザく思った彼はアクセルを引き絞り、危うく振り落とされそうになるエイジだった。
-
-
-
「ハア!!」
「タァ!」
結界内で激しく打ち合うシグナムとヤミー。
カラーリングとしては青と白が大半を占め、小刻みに震える薄い羽根を用いて高速で飛び回り、致命傷に繋がる一撃にはまるで予測していたかのように避ける。
恐らくトンボ素体なのは間違い無い。
だがその手に持った杖はトンボの胴体にしてはやたら鋭いデザインの銀色のものだった。
「(何だ?まだまだ荒削りだが、妙に戦い慣れたこの感覚は…。)」
接近戦は不得手なのか鍔迫り合いになることは避け、一瞬でも攻め手と次手の間にほんの僅かでも隙を見つければ途端に間合いを離す。
それの繰り返しならまだ良いが、掠り当たりでも斬ってこぼれたメダルから別種の小さなヤミーになるのだが、これが一段と厄介だった。
「このー!鬱陶しいんだよ!」
飛び散らせた本体が操っているのか、独立した意思を持っているのか分からないが、桃色の光を纏って襲い来るそれは、目にも止まらぬ速さで群れを成して二人の周囲を飛び回っていた。
正体こそ分からないが、今はそんなことを考えれるほどの余裕を作らせてはくれなかった。
間合いを詰めて叩き潰そうにも不用意に突っ込めば群れの餌食になることが見えていたため、ヴィータはヤミーの相手をシグナムに任せて自分は光球の囮を一手に引き受けていた。
飛び回って引き付ける彼女の後方から迫る群れの最後尾が突如電撃に見舞われた。
「お待たせ!お二人さん!」
「エイジ!」
「俺も来てるぞ。」
緑、白、水色と、また初めて見る組み合わせのオーズの声に安心の笑みを見せる彼女の横にはアンクが腕状態で並走していた。
高速で動くとはいえ意識外から放たれたクワガタの電撃を避けることは小型ヤミーには敵わず、敢えなく爆散していった。
「もう何でもありだな…。で?策はあるんだろ?」
苦笑を浮かべつつも、アンクのプランを聞くヴィータはアイゼンで追ってくる先頭集団に鉄球をお見舞いした。
「あのバカに正面切って突っ込め。で俺が合図したら急上昇しろ。」
「またバッサリとした説明だな。あいよ!やるだけやったらぁ!」
一棟の高層ビルを支点にUの字を描くように折り返して、彼女は正面にオーズを見据えた。
「おっ。来た来た。」
スキャニングチャージ!
両腕のゴリバゴーンに力を集中し、吸盤の付いた足のタコレッグを反動を制御するために地面に吸い付かせ、向かってくるヴィータの後ろに広がる群れに狙いを定めた。
「よし!今だ!」
「ウオッリャーー!!」
ロケットパンチの要領で打ち出された両腕の外装は群れの中心を突き進み、回避しようとした個体たちもクワガタヘッドから取り囲むように放たれた電撃から逃れられずに殲滅された。
「ヴィータちゃん!後ろ!」
オーズの言葉に彼女が振り向くより先にアンクが彼女の後ろへと火球を放った。
「おっと!残念。もうちょっとだったのに。」
上昇先で透明になって待ち構えていたカザリは火球に弾かれた自慢の爪を擦りながら地に降り立った。
「まあいいや。目的のセルは取れたしね。」
どうやら倒されたヤミーたちのメダルが散らばる前に、自身と同じく透明にして忍ばせていた触手に回収させていたようだ。
おかげでいつまで経ってもメダルの雨は降り注いでは来なかった。
「カザリ、お前このヤミー…。」
そんなことはどうでもいいとばかりに、オーズは外装が再装填された両腕を構えてカザリに向き直った。
「ハハハ!そりゃ気づくか。何度も見てれば分かるよね。」
向けられる殺気に少しも怯まずカザリは愉快そうに笑った。
「答えろ!何であの子を狙った!?」
「そんなのそこに上質な欲望があったからに決まってるじゃん。」
臆面も無く両手をブラブラと振って、当たり前のことを言うように吐き捨てた。
「それにね、ここまで底無しの欲望は初めてでね。今にも僕の手から離れて暴走するだろうけど、どこまでやるのかそれこそワクワクするよ!」
「こいつ…。!?」
再びゴリバゴーンを放とうとするオーズとカザリの間にシグナムの紫電一閃で手傷を負ったヤミーが落下した。
「マダ…マダ…」
「へえ。なかなか頑張るじゃん…。」
深手を負ったのか、立ち上がることもままならないながら諦めようとしないヤミーの襟首を掴んでカザリは、追撃を加えようとするシグナムから身を守るように手を翳して砂嵐を起こした。
「クッ!」
「もうちょっと暴れさせてみたいからね。今回はここまでにしとくよ。じゃあね。」
嵐が止むとカザリとヤミーの姿はもう無く、結界のタイムリミットを知らせる音だけが、エイジたちが乗り捨てて倒れたライドベンダーから響くだけだった。
なのはさんから生まれたヤミー…カラーリングといったデザインモチーフはもちろん本人に似せていますし、何より行動原理は彼女の根底にある願いを元に活動しています。
ちなみにモチーフですが、今回は皆さんも予想してみてください!
感想コーナーでもお答えお待ちしてまーす!
話題は変わりますがシグナムさん監修のギリギリチャンバラ…やってみたくはありますがクリアは見えません!
それではまた次回♪