近頃ジオウも盛り上がりに盛り上がっていますね!
特に昨日放送のアギト編…アギトのジオウ編と言っても差し支えの無い、放送当時のワクワク感を思い出させてくれる、自分にはとても胸に響く内容でした。
平成ももうじき終わりますが、これからの仮面ライダーの道も期待が膨らみます。
そして来週にはあの方も…。
それはそうとこちらも切迫した事態です!
前回の続きをどうぞー!
今よりずっと小さい頃の夢を見た。
広い家のリビングにあるソファーに一人で座る私。
家には自分以外誰も居なくて、生活感を感じさせない程に静かだった。
今座っているソファーには本来、お父さんがお母さんと座っているはずだった。
そのお父さんは今は病院のベッドの上にいた。
お母さんたちも側にいてあげるために行っていたけど、私は怖くてしょうがなかった。
あんなに元気だったお父さんの目は固く閉ざされていて、そのままもう開かれることは無いかもしれないと思えてしまったからだ。
そんなことになるのは嫌だった。
でも私には何も出来ずにただ泣いていることしか出来なかった。
自分以外の誰か、ましてや家族が苦しんでいるのに手すら伸ばせなかった自分が心底嫌だった。
だから…
「でも君は力を手に入れても何も救えなかった。」
冷たい、だけどどこか楽しそうな語調の声が、なのはのすぐ後ろから不意に話し掛けてきた。
声が夢の中に響くと空間に亀裂が走ってガラス細工のように割れた。
今まで過去の高町家のリビングだった空間は無くなり、
代わりに禍々しい色をした泥のようなものが辺りを満たした。
「だ、誰?」
背後に感じた声の主の異質な気配にすくみ、振り返れず聞く彼女の言葉を無視してそれは続けた。
「フフ、困っている誰かを救えるだけの力が欲しいねぇ…。でもさ、本当にそんなこと出来ると思ってるの?」
「何でそんなことが…」
気を振り絞った彼女が振り返ると、そこには周囲の泥と同じ色をしているなのはが立っていた。
「分かるよ。だって君は救いが必要な場面にいることさえ出来なかったんだから。」
輪郭だけだが、紛うことなき彼女と同一のそれは、辛うじて怯まずに強い目線を向けるなのはに嘲笑混じりに語った。
「っ!」
それを聞き目を見開いた彼女の脳裏には、焼き付いていたその場面が広がった。
大切な人が、遥か遠く所へと行ってしまうのを、悲しい顔で届かない手を伸ばすしか出来ない少女がそこにはいた。
ゆっくりとこちらに振り返ったその子の顔は黒い影がかかり、表情は分からなかったが、足元に溢れる彼女の涙は血のように赤かった。
心の奥に刺さっていた棘を、更に奥へと捩じ込まれた彼女はその場に崩れた。
「アハハ!所詮君が望んだ力なんてそんなもんなんだよ!それぽっちのものじゃああと一歩どころか、身を乗り出しても誰かの手なんて掴めないよ。」
さぞ楽しいのだろう、彼女を見下しながら幻影は微睡みの中から愉悦の声と共に消えていった。
「私は…。!待って!」
俯いていた顔を上げると、金色の髪の少女は消えていった大事な人の後を追い、同じ奈落へと落ちようとしていた。
「っ!ダメ!!」
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真っ直ぐに伸ばした手は、見慣れた天井へと向かっていた。
「ハァ…ハァ…あれ?何で私休憩室に?」
覚えている最後の記憶では、お姉ちゃんとあのお兄さんが話している場面で途切れていた。
翠屋の二階の休憩室。
お父さんとお母さんが休憩時間に仲良く並んで座るソファーで寝ていた体を起こし、辺りをキョロキョロと見回したが部屋の中には自分以外誰もいなかった。
「…うん。もうちょっとかかりそうなんだけど…ごめんね、今日の夕飯は俺の番なのに。
…ありがとう。その代わり明日は気合い入れてとっておき作らせてもらうよ!
…あはは!ほいじゃあまた後でね~。」
オレンジ色の日が部屋の窓に色濃く差し込む中、誰かとの電話を終えた彼はドアを開けて入ってきた。
「おっ。起きたかい。気分はどう?」
「え?…えーっと…」
目を覚ました自分と顔を合わせた彼は嬉しそうな笑みを浮かべて尋ねてきたが、いまいち状況が続き掴めていない私は答えに戸惑った。
「大分しんどそうだったからね。お父さん方もお店混んじゃってて大変そうだったから俺がここで診察させてもらったんだ。
あっ。これでも医者なんだぜ。」
「そうだったんですか。助けてもらってありがとうございます。…えっと…」
そういえば、このお兄さんに会うのは二回目だったけど、まだ名前を聞いていなかった。
「ん?ああ!そういや名乗ってなかったね。
俺の名前は黒斗エイジ。よろしくね、なのはちゃん!」
差し出された大きな右手での握手に応じた。
「はいエイジさん!こちらこそよろしくお願いお願いします。あれ?アンクさんと同じ名字ということは…」
「んー。義理ってことになるけどね、あの妖怪アイス喰らいは俺の兄だね。」
「にゃはは。アンクさんアイス大好きですもんね。」
初めてお店に来てからというもの、余程気に入ってくれたようで来店する度にお父さんの考えたアイスケーキを試食してくれていた。
彼のアイスへの的確なアドバイスと素材の特徴をよく理解した確かな舌を相手にお父さんは燃えに燃えた。
その甲斐あってか夏本番の今、翠屋のバリエーション豊かかつもう一度来たくなるようなアイスケーキがこの頃の売りだ。
「うちのお店もかなりお世話になってます♪」
「こっちこそありがとうだよ。アンクも結構ここに通うの楽しそうみたいだからね。
まあとりあえずアイツのことは置いといて、どう?平気かい?」
「はい。なんとかお陰様で。」
気を失う前の辛さは残ってはいたが、一番辛い時よりかは幾分楽になった体をどうにか起こしてお礼を述べた。
だけれど彼は浮かべていた微笑みを薄めて、下顎に手を当てた。
「あの~…エイジさん?」
「うーん。体は症状の割りに思いの外簡単な処置だけで済んだんだ。」
真っ直ぐで力強いけど、どこか優しい印象を与える紅の瞳を向けて彼は続けた。
「なのはちゃんね、最近心に来るようなキツイこと…あった?」
「…え?」
まるで首筋に突然冷たいものを当てられたような驚きが心に走った。
「ど、どうしてですか?」
「ちょっとうなされてたみたいだったからさ、気になったんだ。」
ソファーのすぐ横にしゃがみ、私の目線よりもやや下に来た彼の顔には笑みが戻っていた。
「たださ。寝言でね、「待って」とか「ダメ」って言ってたんだ。」
さっきまで見ていたあの夢のことを思うと心は締め付けられる苦しさを感じた。
「ちょっと…嫌な夢を見ました。」
「…少し聞かせてくれないかな?そのなのはちゃんが抱えてるもの、一旦話してみるのも大事だよ。」
少しの間どう話そうか考えて彼に話した。
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当初から少々躊躇いは覚えていたが、この子の周りを調査すること早数ヶ月。
魔法という未知の力を扱うとはいえ、いたいけな一般人の女の子の来歴に足を踏み入れるのは些か気が引けたが
、断片的にでも魔法について知るためにと割り切った。
家族にも魔法のことを内緒にしていることや彼女自身、学習中である様子を見るに生まれた時から魔導士だったわけでは無いようだが、それ以外は分からず仕舞いで終わった。
だが調べる中でどうにも気になることがあった。
そもそも魔法云々以前に、なぜこの子は力を求めるのだろうか?
大切なものを守りたい?
もちろんそれもあるだろう。
そこがヤミーの誕生に繋がった欲望だ。
だが彼女の持つ優しさだけがその答えなのだろうか。
俺は彼女のその根本を知りたくてここに来た。
そけだけだと自分の頭によく言い聞かせて。
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「なるほどね…。昔の自分の姿を見ていたと思ったら偽物の自分が出てきて、そいつの言葉に返せずにいると大切な友達が…っと。
そっかぁ、なかなか堪える夢を見てたね。」
さっきまで自分が見た夢を、そのままの流れで彼に説明した。
お医者さんということもあるのだろうけど、話すことを真っ直ぐに受け止めてくれるエイジさんにはとても話し易かった。
「はい…。ちょっとキツかったですけど、それも私への罰なのかなって思いました。」
「罰?そりゃまた何で?」
「…私、最近は昔出来なかったようなこともちょっとずつなんですけど出来るようになってきたんですよ。
でもそんな自分に変な自信が付いちゃってたのかな。
届かせた手よりもっと先にいた、その手の子が大切だったことには手すら伸ばせずに終わっちゃって…。」
フェイトちゃんの手は確かに掴むことが出来た。
お話だって出来て、友達にもなれた。
でもフェイトちゃんがそれを受け入れてくれても、彼女が本当に欲しかったもの…お母さんとの未来はもう手に入れることは出来なかった。
あの時、沈んでいく庭園の駆動炉を止めるのに手間取らなければ。
私がもっと速くにあの場所に行けていたら。
フェイトちゃんと一緒にプレシアさんの手を掴んでいれば…。
未来は違ったものになっていたかもしれない。そう思えてしょうがなかった。
「それなのに私はそのことを忘れたように進もうとしてたんです…。だから…。」
膝にかかったエプロンを握り締める手の甲に涙を落とし、今まで溜まっていたものを彼に話した。
「俺さ、人って大変な生き物だなぁってよく思うことがよくあるんだ。」
少しの間を置いて穏やかにゆっくりと、だけど少し困ったように彼は切り出した。
「俺もさ、どうしても何かを選ばなきゃっていう場面にかち合うことがあるんだ。
片方を救うならもう一方は諦めろ…なんてことにね。
何回見てもいい気はしない場面だよ。」
それまで傍にしゃがんでいた彼は立ち上がり、窓の外に広がる街並みを眺めているのだろうか、背を向けて話した。
「そういう時は…どうしてるんですか?」
後ろ手に手を組んで振り返った彼の表情は日に重なり、はっきりとは分からなかったけど、どこか寂しげなものを感じた。
「両方とも助ける!…って言うは簡単だけどね。
何せ自分だけが辛いならってやっても、巡り巡って誰かにツケが回って、結局その誰かを苦しめることだってあるんだ。」
お医者さんをやっていると言った彼の詳しい過去こそは分からない。
けれどその言葉を語るその声は、どこか重く、決して軽いものでは無いということは伝わってきた。
「で、なかなか踏ん切りがつかなくて何時までも悩んじゃうのがいつもなんだ。」
恥ずかしそうに頭を掻き、窓からずれた彼の表情はどこか照れ臭そうな顔だった。
「多分ね、なのはちゃんは忘れようとしてたんじゃなくて、その手を伸ばせなかった昔の自分より強くなろうともがいてるだけなんだよ。
ダメだって思った自分を心に留めて、乗り越えようとする…それは強い人間が出来ることだよ!」
また目線が同じ高さになるようしゃがんでくれた彼の胸の前には、大きな手で作られたグーサイン?が作られていた。
「出来なかった昨日から逃げない、それが出来れば君の勝ちだよ。」
「…フフ。そう言ってもらえるとなんだか少し、気持ちも楽になりました。ありがとうございます。」
「そいつは良かった♪」
そこからは昔海外に留学していたというエイジさんの過去にあった面白いエピソードや、私の学校であったこととか家族のお喋りをして盛り上がった。
剣術とか武道にもちょっとだけかじっているというエイジさんはお父さん達とは気が合うような気がした。
ひとしきり話終える頃には不思議と体の辛さはもちろん、心の栓が詰まっていたように息苦しかった気持ちもキレイに無くなった訳では無いけれど、少なくとも大分気持ちは落ち着いていた。
「まあなのはちゃんはちょっと気を詰め過ぎるとこがあるみたいだから、吐き出したくなったら俺で良ければ何時でも受けて立つから。これ良かったらどうぞね♪」
懐からメモとペンを取り出してささっと筆を走らせ、渡された紙には連絡先が書かれていた。
「ありがとうございます!でもいいんですか?そんな私なんかの相談なんて…」
「ダーメだよ、そんな「なんか」なんて言っちゃあ。
それに俺もなのはちゃんとお話するの楽しかったし、今はこの後用事があるから行っちゃうけど、今度またゆっくりお話したいしさ♪」
アンクが夢中のアイスケーキってのも気になるしと、イタズラっぽくちゃっかり別の目的も溢す彼にクスリと笑えた。
「じゃあ…今度会ったときもお話してください!」
「うん!何時でもいいよ!またね♪お母さん達にも俺から言っとくから今日はゆっくりしときなよ。」
サムズアップと教えてくれた手をまた作り、部屋から出た彼の背中はとても大きく見えた。
「…カッコいい人だなぁ。」
気さくだけど、芯の通った強くて優しい人だなっと思った。
少し間を置いて下のみんなの所に行こうとドアに向かった時、窓の外から何か重いものが弾け飛んで地面に落ちる重低音が聞こえた。
まさか…
「レイジングハート!?」
「No magic reaction.(魔力反応無し。)」
「もしかして…またヤミーの仕業!?」
「It is its potential size.(その可能性大です。)」
窓から見える黒煙はそれほど遠くは無い。
だがその方角には人が多く行き交う大きな道があるはず。
そんなところで暴れられたら誰かが…。
出来なかった昨日から逃げない。
なら私のやるべきことは…
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エイジが出払っている八神家では、アンクとアタッカーのヴィータ、シグナムでの作戦会議が彼不在の部屋で行われていた。
「この間までの打ち合いであのヤミーの大方の手札は分かってるし、その特性の元も目星はついた。」
アンクと彼女達の前に置かれた最新式タブレット画面には青いトンボと、細長いフォルムに鋭い尖った口を持つ魚が映し出されていた。
「攻撃を寸前で回避するあの敏捷性は、このシオカラって種類のトンボの特性だな。
後ろまで見えているように感じたのはこいつの複眼によるもんだろ。」
「なるほど。あの小刻みに動いていた羽根で何時でも動けるようにしといて、その目の良さを生かして避けてた訳か…。
つーか本当に後ろも見えてたのかよ。」
「そんな生き物がこの世界にいることも驚きだが、こっちの魚は何だ?」
トンボそのものを知らなかった二人は、その生態や複眼のメカニズムを簡単にキリヤがまとめた資料に目を通していた。
「ああ、ダツっていうライトや金属が反射した光に反応して、鋭利に尖った嘴を生かして突進してくるっていう習性を持ってるやつだ。」
資料にも船のライトや船体、はたまたこの魚にやられたであろう人が負ったケガの写真もあった。
「あのヤミーとやり合った時の様子を記録していたタカのカメラをスローにしたらな、あの光球の正体がそいつを模したヤミーってことが分かった。」
肉眼では追い切れず、目標との激突と同時に散るため実態が掴めずにいた光球だったが、タカの目は誤魔化せなかった。
アンクの出身世界にある鴻上ファウンデーション製のカンドロイドにもここまでの機能は本来無かったのだが、機械を弄らせると止まらないキリヤとエイジの魔改造を織り込まれ、一台一台の個々の性能は格段に上がっていた。
「おおー!すげぇ、しっかり映ってる!」
「なるほど。やたらと私やヴィータの武器目掛けて飛んできたのは反射する光や炎に集まったからか。」
映像に目をやる二人は技術に驚いたり、そこから得られた分析を口々にした。
鋭く尖った口に、シャケヤミーと同様に白く白濁した死んだ目をしたヤミーは彼の説明通り、甲冑の金属部分やデバイスに集中して狙っていた。
「シグナムの言う通り、強い光を優先して飛んでくる訳だがそこは奴らにとっても弱点になる。」
「…ああ!相性が悪いんだ!」
カバカマキリでもカマキリ部分には炎がかなり効いていたことや、それ以降現れた別のヤミーでもそれぞれ違う弱点があったことをヴィータは思い出していた。
「そうだ。中々個体としては力も能力も強力だが、こいつも同様に炎に対して弱い上、複合しているヤミーのタイプ的にも致命的なレベルでの話だ。」
分類的にはカザリの猫系以外の3タイプは高熱や眩い光と異なる意味合いでだが、炎に対してはそこまで強くない。
今回にいたってはそれこそカモだった。
「あのなのはの様子では流石に出ては来れないだろうから、シグナムとヴィータも今回はアイツのサポートに回ってくれ。
特にシグナム。お前の技はアイツにとってかなり痛手になる。当てにさせてもらぞ。」
「心得た。」
ちなみに多彩な属性を操るオーズにも炎を扱えるクジャクメダルはある。
強烈な火炎弾を放つことの出来るそれは貴重な遠距離武器になるのだが、飛び道具の扱いが絶望的なエイジには残念な相性だった。
「にしても人助けが目的のヤミーなんているもんなんだな。」
海鳴近辺では近頃、光球の映っていた映像のように車やバイクのタイヤが突然爆ぜたといったもの、それより酷いものとなるとひったくり犯の足に直接当たったと思われるような行き過ぎたものもあった。
アンクが警察に報告が上がっていたものを洗い、カザリ本人も認めたなのはから作ったという点から、ヤミーの目的は絞り出せていた。
「珍しくはあるが、正義感ってのもある意味立派な欲望の一つだ。向かわせる方向を今回みたいに間違わせると他同様、ただの暴走した力だ。」
「そうだな。ましてやそれが正しいと信じて疑わなければなおたちが悪い。」
どこか思うところがあったのか同調するシグナムを横目に、アンクは立ち上がった。
「で、言ってるそばからヤミーだ。」
そこまで話していると、丁度件のヤミーがアンクの感知に引っ掛かった。
「よっしゃ!行くか!」
「ああ。エイジにも…」
立ち上がって出発寸前だった一同の真ん中に置かれた端末にウワサの男から連絡が入った。
「エイジ、ヤミーだ。すぐに…何!?」
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「へぇ…。たまに見ちゃいたけど、なかなか速いし重いもんだね。でも…」
「はぁはぁ…」
「そんな状態じゃ僕にはキズも付けれないよ!」
「っ!きゃあっ!!」
サイや象といった重量のある動物の力を宿した足の一撃を受け、なのはは大きく吹き飛ばされてブロック塀に激突した。
「れ、レイジングハート、大丈夫?」
「No problem.(ご心配無く。)」
優秀な愛機の加護の甲斐もあり大きなダメージにこそ繋がらなかったが、ヤミーに魔力を半ば寄生され吸われている彼女は万全の状態とは言えなかった。
「It apparently than it seems he is not the only person.
(それよりも、どうやら彼はただ者ではない無いようです。)」
「うん…。」
水棲生物、特にタコやイカといった軟体動物の触手が全身に生え、硬い装甲に覆われた脚部の隙間からは虎柄の模様が見え隠れし、頭部は猫を模したような顔にはヒビが入っていた。
そんな醜悪な姿の相手から放たれる、気だるそうな態度の中から覗く得体のしれない嫌悪感と強い殺気を彼女はひしひしと感じた。
爆発現場で目撃し、相対したカザリをユーノの見よう見真似の結界に閉じ込めることは出来た。
だがそれだけだった。
アンバランスな見た目にそぐわない俊敏さと手数の多い攻め手相手に、あるだけの力を振り絞ったなのはの砲撃はすこぶる相性が悪く圧される一方だった。
「一度君と遊んでみたかったんだけど、ちょっとヤミーに吸わせ過ぎちゃったなぁ。
まっ、弱い者いじめってのも嫌いじゃないけどさ。」
「ヤミー…?あなたがオーズさんの言ってたグリードなの?」
「へぇ、僕のこと隠そうと躍起になってる彼にしては珍しいなぁ。
当たりだよ。僕はカザリ、まずは初めましてかな。」
立ち上がって自身を見据えるなのはから出た言葉に、少し意外そうにし飄々と彼は名乗った。
「…いや、そうでもないか。だって夢で会ってるもんね。」
「!…あれはあなただったの?」
あの夢を思い出し、動揺する彼女にカザリは続けた。
「そうだよ。君から作ったヤミーは結構特殊でね、君の欲望通りに動くのと同時に君から魔力を吸い上げて更に進化する。
だから君との繋がりも一際普通に作るより強く、その繋がりを利用して僕も君の中を覗いた訳だけど…。
フフッ…ハハハ!みんなを守りたいねぇ…、フフッ。」
額に手を当てて体を捩り、心底楽しそうに笑う彼になのはは困惑と同時に怒りも覚えた。。
自分の根底にあるものを見られたことに対してもそうだが、それを嘲るこの態度にだ。
「な、なにがそんなにおかしいの?」
「あれ?夢の中でも言ったよ。君のその中途半端な力じなーんにも守れないって。
所詮君は見えるものしか見えてない…自己満足に浸ってるだけなんだから。」
また脳裏に甦る、大切な友達の辛い場面。
振り返った彼女の顔には悲しみと後悔の想いが張り付き、それを思い出す彼女は杖を握り締める拳を震わせた。
「…確かに私は中途半端。少しでも強くなれれば何にでも届くって簡単に信じて、失うことがどれだけ怖いことか、目を背けて見ないようにしてた。」
「ほら、認め…」
「でも!」
カザリの嘲りは彼女の気迫の前に遮られた。
「出来なかった昨日から逃げない、もう二度と、私は誰にもあんな想いはさせたくない!
例えそれが今は目の前の、手の届くところまででも、絶対に繋ぎ留めてみせる!」
握られた愛機も呼応するように紅玉を煌やかに輝かせ、再び砲口に光を灯らせた。
「強情だねぇ…へし折り甲斐があるけどね!」
向けられた輝きを横目にその場で舞い落ちる木葉のように小さく揺れたと思いきや、次の瞬間には自慢の爪の間合いに踏み込んでいた。
「お前の鼻っ柱のことか?」
「何!?」
真上から突如放たれた鞭に寸でで感知し避けたはいいが、それを読んだように続けて放たれたもう一撃にバランスを崩した。
「ほい!今だよ、なのはちゃん!」
「っ!はい!」
態勢を崩し、砲口の目の前に無防備に出たカザリを逃さず、彼女の放った一撃に堪らず吹き飛ばされた彼は無人のビルに突っ込み、崩落した建物の下敷きになった。
「はー…痛そ。随分と思い切りの良い一発だったね~。っとと!大丈夫?」
「にゃはは。ちょっとくらっと来ちゃいました。」
「ヤミーにやられてるその体でよくやるよ。
俺が来て無けりゃまたどうなってたことか…。」
彼女のすぐ側に着地したタカウバの亜種姿のオーズは、渾身のディバインバスターを撃って立ち眩むなのはの肩を受け止めて苦言を呈した。
「私信じてましたから。オーズさん、困ってる人はほっとけない人だって。この場所さえ分かってれば私のことも助けてくれるって♪」
「…フッ、お見事な読みだよ。」
一本取られたとばかりに彼は首をすくめた。
「あっ、それとさっきの言葉。あれ中々染みたよ。
ほんっと、君は強い子だね♪」
「え!?そんな前から見てたんですか!?」
「ごめんね。少し聞き入っちゃってね。」
「うぅ~…意地悪です。」
そうこう話していると瓦礫の山が吹き飛び、土煙からカザリが再びその姿を見せた。
「やってくれたねオーズ。不意討ちとは汚い真似してくれるじゃないか。」
「抜かせ。お前こそほんっとに陰湿な真似しかしないな。」
「趣向を凝らした面白い遊びだと思ってよ。」
頭に手を当て宣う異形にオーズは呆れも混ぜて続けた。
「遊びに随分なご様子なこった。
いつも引っ込んでる癖にボロボロになったもんだな。」
「ふん!こんな中途半端な一発大したこと無いよ。
グッ!?何だ!?」
体に付いた煤を払いつつ迫るカザリだったが唐突に苦しみ始めた。
バスターが直撃した腹部から零れ始めたメダルを押さえその場に彼は突っ伏くした。
「分からない?さっきの一撃、お前完全に油断してたけどなのはちゃんはもうとっくに全快してたんだよ。
どう、なのはちゃん?ご気分は?」
「…あれ?何か体が軽いし、力も!」
「どういうこと?何で…」
「さあ♪でーもこれで分かった?この子の強さが。」
「は?」
「この子の一撃には口だけの我が儘でも、ただ望みを押し通す力だけでもない。困ってる人を助けるために両方を持った強い心だ!
…とんだ欲張りさんだけどね。」
何も知らないはず、だが強い一喝と共に放たれたその言葉に不思議な力と共にどこか頼もしさを含んでいた。
隣にいるなのはに送る視線には、表情こそ見えなかったが言葉と裏腹に暖かいものが込められていた。
「…にゃはは。」
「笑いこっちゃ無いよ、全く…。」
今度こそ困った子だとばかりに向けられる言葉にも、彼女は少し苦いものがあるが笑顔で答えた。
「馬鹿馬鹿しい…。まっいいや。邪魔だから君たちは片付けちゃうよ。」
問答無用とばかりに触手を伸ばし襲い来る連撃をなのはを抱え、オーズはバッタレッグを生かし後方のビルへと飛び上がった。
「ありゃりゃ、随分なやる気だ。」
「オーズさん。お願いがあります。」
「あれ?なのはちゃんも?」
どうやら二人の考えは同じなようだ。
「「一緒に戦って」ください」もらっていい?」
揃ったその言葉にお互い笑みを溢した。
「「もちろん!」」
オーズは中央をトラに、なのはは再度レイジングハートを構え直し、初めて二人は凹凸コンビとして並び立った。
「さあ!終わりにしようか!」
「全力全開で行きます!」
なのはさんのことは今まで自分も作品に触れてくる中で、これほど他人に真っ直ぐな思いを持ちつつ、なんて自分への扱いは歪な子なのだろうと思っていました。
ある原作者様のインタビュー記事を読んで以来、自分なりに彼女のことを考え、もう少し自分を大切にして欲しいと思った時に本編オーズの火野映司さんとその姿が重なって見えました。
この物語を進めていく中でそのことにも触れていくのも一つの着目点となりますので、その辺りも考えて描いていく所存です。
話的にはカザリとの直接対決!
次回の激突をお楽しみください!