スターみかんです。
本年も皆さんに楽しんでこの作品を読んでいただければ幸いです!
今回いつも以上に時間を空けてしまってすいません!
いつも以上のボリュームになっておりますのでお待ちいただいた方々に届けば嬉しく思います。
それでは後書きにて。
「ほう…。魔法…か。また随分と面白いものを見つけたものだね。」
「それで受け入れてくれる父さんにはびっくりだよ。」
元々クセ毛気味の髪がいつも以上にクシャクシャになったエイジは、父親である宗正に連絡を取りながらこの親にして自分がいるなとつくづく実感していた。
「息子が伝えてくれることを嘘だと決めつける父親ではそれはもう親子とは言えないだろう。
それにエイジとアンク君で集めてくれたこの興味深いデータもあるんだ。疑いようもないだろう。」
宗正の手元にあるPCにはカンドロイド越しに撮影したなのはと名乗る少女の写真や動画、その直後に現れたユーノと呼ばれた少年の記録データが転送されていた。
「それにしても大変だったようだね。」
テレビ電話越しに見てもエイジは珍しく疲れが目に見えていた。
「まあね。結構こっちも追い回されたからねー。」
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「魔導士?」
オーズは目の前のなのはと名乗る少女の言う聞き慣れないワードを繰り返した。
宙に浮いたり、金ピカの砲台のように変形する杖を持っていたりと気になるとこだらけだが、一番驚くべきことは一つだ。
こんな小さな少女が一撃でヤミーを倒したことだ。
一体どういう原理なのか、頭の中を整理しているとなのはが口を開いた。
「あのー?」
「ん?えっと…高町なのはちゃん…でいいんだよね?さっきのあのぶっといピンクの光は一体何かな?」
とりあえず展開していたトラクローを閉じつつも、目の前の脅威に警戒は保ちオーズは尋ねた。
「えっと…なんと言いますか…。私の…魔法ですかね。」
「ま、魔法!?」
彼女もまだ自分の力をどう紹介すべきか慣れていないのか、歯切れが悪くも〈魔法〉というファンタジー味溢れる言葉で説明した。
「君は魔法使いさんなのかな?」
「ま、まあ何と言いましょうか?とりあえずそういうことになりますかね…。」
「へぇー、白いドレスに金色のイカしたカッコいい杖…おまけに可愛らしいお嬢さん、絵にかいたような素敵な魔法使いさんだね!」
「いやーそんな…。」
「Thank You」
「おおー!杖さんも話せるんだ!すごーい!」
思いの外ストレートな言葉を投げる相手に思わず赤面するなのはと彼女の相棒でもある愛機〈レイジング・ハート〉に興味津々のエイジだった。
様子を伺うに、どうやら彼女はまだこの力を手に入れて日も浅く、鍛練を重ねる身だと彼は分析した。
そして一つの考えが浮かんだ。
だが浮かんだそれを考える前になのはは話を続けた。
「あのー私もお聞きしたいことがあるんですが。」
「ん?」
「このメダルについてなんですが…。」
手の平に乗せた、銀色に輝くセルメダルを見せてなのはは詳細を尋ねた。
「私はこのメダルみたいに人に危ないことをするかもしれないものを回収して安全に管理してる時空管理局っていう所のお手伝いをしているんですが、えっと…お兄さん…でいいんでしょうか?
このメダルのことやさっきの生き物ともご関係がありそうなのですが、詳しくお話をお聞き出来ないですか?」
管理局?という聞いたことも無い組織の名前や今まさに目にしている魔法など逆にこっちが聞きたい内容だらけだが、真っ直ぐに、嘘偽りの無い、強くて優しい眼を向ける少女にエイジは興味を抱いた。
だが…
「悪いけど、これに巻き込む訳にはいかない…かな。」
その言葉と同時にすぐ脇の路地影に身を潜めていたアンクはオーズの前に飛び出し、二人の足下にまともに直視すれば目が痛くなるほどの目映い火球を放った。
「あ!待っ…きゃー!」
なのはが止める間も無く、光に包まれたオーズは腕状態のアンクを抱えて高く跳躍した。
「おい!情報引き出すならもっと時間を短くしろ!」
「そんな急かすなよ~。」
一体どういう原理や働きであそこまでの力をあの小さな少女が発揮するのか興味を持ったエイジは情報を引き出そうと色々とお喋り…もといコンタクトを取った。
二人の回りにはアンクが起動したタカカンドロイドが数機、随伴するように周囲を飛んでいた。
索敵やデータ収集が得意なこの機体にどうやら記録を取るつもりだったようだ。
別空間に飛ばされているようだが、姿の見えないはやても一緒に飛ばされたかもしれないと彼女を探しつつ、アンクのお小言を聞いていた。
「でも色々知れたからOKでしょ。」
「全然足んねえだろ!データを取ろうにもさっきの砲撃と空中浮遊だけでどうしろって…」
家やビルの屋根を跳び次いでいた二人の真下から突然、黄緑の光を放つ光の鎖が勢いよく飛び出してきた。
「まだデータはいっぱい取れそうだぞ。」
拘束しようとしているのか、巻き付こうとまるで生きているかのように自在に動く鎖をトラクローで捌きつつ、軽い調子でオーズはとぼけていた。
地上を見ると鎖と同じ色の光の輪があり、その中心になのはと同い年ほどの金髪の少年がこちらを見ていた。
「向こうも一人だけじゃないみたいだね。」
少年の近くに降り立ち、追撃してくる鎖をクローで撥ね飛ばし、それをアンクが火球で粉々に粉砕した。
「よ!こんな積極的なはじめましては初めての経験だよ。」
「手荒な真似をしてすいません。ですが僕たちも危険なものを放ておく訳にはいかないんです。」
瞬間、オーズは遠くの方でピンクの光が瞬いたことに気付き、その場から飛び退いた。
すると一瞬前までいたその空間にピンクの輪状のものが現れ、たちまち虚空に消えた。
「うお!?拘束攻撃か?色んな手札があるんだな。魔法って。」
「(馬鹿!気を抜くな!あっち見ろ!)」
何故か声を抑えたアンクが語気を荒げ、警戒を促した。
「Bombard with reduced power in order to secure him.(確保のため、威力を落とし砲撃します。)」
「うん!お願い!」
先ほど、拘束バインドを放ったなのははバインドをかわされることを読み、距離を詰めつつも砲撃の準備を整えて今まさに放とうとしていた。
「これは…ちょっとヤバいな…。」
「(言ってる場合か!)」
「アンク、あのコンボを貸して。」
一瞬渋ったアンクだったが、そのの手にはバッタと同じ色味の二種類のメダルが握られていた。
「(…どうなっても知らんぞ!)」
乱暴に渡されたメダルを受け取り、大急ぎでドライバーの右と真ん中のメダルを変え、スキャンし…
「バスター!!」
ほぼ同じタイミングで放たれた閃光の奔流は目標に直撃し、轟音と共に炸裂した。
「少しやり過ぎちゃったかな?」
高い跳躍力持つ脚も空中では発揮することが出来ないと考え、なのははブラフに拘束魔法のバインドを放ち、かわしたところを砲撃した。
命中する前に何やらベルトを操作しているような素振りをしていたようで、彼は防御の姿勢も見せなかった。
命中地点に急ぎ、金髪の少年ユーノと合流して彼が姿を現すのを待った。
威力を調整したとはいえ、まともにノーガードで受ければ怪我を負わせてしまう可能性もあり彼女は焦った。
「No,it is still.(いえ、まだ終わっていないようです。)」
愛機の言う通り、彼は煙の中から飛び出して来た。
その姿になのはは驚いた。
先ほどまでとは頭からクワガタのような角が生えていることやカマキリの腕を模した鎌が腕に着いて、全身も緑一色になっていたがそれ以上におかしなことがあった。
人数が増えていたのだ。
「いやー、びっくりした!」
「あんな距離からも狙えるとは。」
全く同じ容姿の彼が一人二人ではなく、それこそ何十人と近場のビル屋上に降り立った。
「げ、幻術…いや、これは魔力の気配が無い。まさか全部実体!?」
魔法ではない力でこんなことをやってのけるオーズにユーノは驚愕した。
「そうだよー。さっきのヤバいの防ぐために盾を作ったんだよ。自分を使ってね。」
よく見ると数人のオーズの肘から腕にかけて燻るように煙が上がっていた。
オーズガタキリバコンボ。
昆虫系のメダルのみで組み合わせたこの姿には自身の分身を生み出すことのできる特殊な力がある。
「スッゴーい!そんなことも出来るんですか?」
同系統の生き物で組み合わせたコンボにはこのガタキリバのようにその特性を更に特化させた力を奮うことが出来るようになる。
「まあね。でもさっきのはかなり焦ったよ。まさかあんな距離で寸分狂わず正確にここまで強烈なのを撃ち込まれるとは思わなかったよ。」
分身から一人に戻ったオーズの率直な感想になのはは照れる様子を見せたが、すぐに謝った。
「ごめんなさい。怪我をさせないようにしてたのに調整に失敗して…。」
それを聞いて数秒固まったオーズだったが、唐突に笑い始めた。
「ハハハ!君はスゴく優しい子なんだね!一応俺は正体不明の敵ってことになんだけど、そんな相手を心配してくれるなんてね。ありがとう!俺結構頑丈だから!」
明るい調子でサムズアップを向けるオーズに呆気に取られていたなのはだったが、オーズの明るさに釣られて微笑んだ。
「でーも、このメダルのことに君たちを巻き込む訳にはいかないことは変わらないね。」
「なぜですか?僕たちもあの危険な生物を止めたいんです!このメダルが関係しているんでしょう!?」
とぼけたようになのはたちが関わることを是としない態度にユーノは語を強めた。
「これはあんまり多くの人に知られるべきじゃないんだ。」
オレンジ味がかかった複眼を光らせ、ユーノへ向き直った彼の言葉には何か強い思いと得も言われぬ感情が込められていた。
「知られるべきじゃないって…」
「おっと!悪いけど今度こそそろそろ退散させてもらうよ。」
言葉の真意を確かめようとするなのはの言葉を遮り、オーズは再び数十人に分身した。
「俺の名前はオーズ、仮面ライダーオーズ!それだけは教えといてあげるよ。あんまり会いたくは無いけどまた絶対会いそうだから特別ね。」
そう言ってオーズたちは一斉にその場を跳んだ。
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「てな感じで逃げることには成功したし、色々データも取っといたよ。」
逃げに徹したのは以前はやてに話したように、メダルやヤミーの存在が明るみになるとグリードと結託して良からぬことを企んだり、メダルを危険な方面で悪用しようとする輩が現れることを防ぐため、エイジたちは徹底してどこからの協力も受けないと決めていたからだ。
ガタキリバコンボの力で分身して例の二人の結界から抜け出した。
50人にも分身して分散し逃げるオーズ相手にどれが本物か分からず、追いかけたはいいが確保することは叶わなかったようだ。
ちなみにこのコンボで分身したオーズは偽物などではなく全て実体のある本物のである。
それぞれが考え、行動し、メダルの力を生かして動き、他の分身と連携して逃げるためそれを追いかけるだけでも至難の技となった。
今エイジは結界が張られた時にそのまま元いた場所に置いていかれたはやてを迎えに行き、彼女の家の庭から宗正に連絡を取った。
「なるほど…。ヤミーも現れてることもある。これはもうしばらくそこでのその魔法とやらの調査が必要そうだね。」
「そうだね。それに…ヤツもここに留まってるような気がするんだ。今度こそ俺が…」
一通りのことの経緯を聞き、ある可能性も浮上してきた。
この魔法というものが何らかの形でこの街で観測された現象とも関連があるかもしれないということだ。
あれだけの力だ、メダル以外であそこまでの異常現象はそう起こらない。
そして、それと同じ頃にヤツも…
「…ところでエイジ、一つ聞きたいことがあるんだがいいかな?」
「ん?何?」
いつも朗らかで人懐こく、暖かな目をしているエイジからは想像出来ないほどに冷たく、何かに取り憑かれたような目になっていた彼は唐突な父からの問いで我に返り、普段通りに戻った。
「先ほどからこちらを見ているそのお嬢さんが噂の例の子かな?」
「へ?」
振り向くと後ろの窓でカーテンからひょっこりと見切れるようにはやてが顔を覗かせていた。
「ありゃ。どうしたの?はやてちゃん。」
「あ、お話中お邪魔してすいません。ちょう気になってもうて…。」
迎えに行って戻る最中も彼女はいつもと変わらないように振る舞っていたがやはり怖かったのだろう、エイジたちに会ったときは彼女は震えていた。
「ああ。ごめんね。どたばたしちゃって。あ、そうだ。今こうしてモニターに映ってるのが俺の父さんの黒斗宗正。うちのトップってことになるね。」
気づかれたはやては窓を開け、エイジもはやてに父親を紹介した。
「君が八神はやて君かな?
息子たちがお世話になって大変助かるよ。なんでもお若いのに料理もプロ並み、家事もパーフェクトで、湖のように広い心の持ち主だとそこにいるエイジから聞いてるよ。
それにかなり麗しいお顔をしている。将来はトップモデルも狙えるのではないかな?
その時は是非我が社からもお声をかけたいぐらいだ。」
全てエイジが海鳴に来てから報告の度に話していた事実だがこの正直過ぎる父に頭を抱えた。
「は、はじめまして。なんと言いますか、やっぱりエイジさんのお父さんですね。」
「いやいや!俺ここまでデリカシー無い男じゃないよ。」
褒め言葉の応酬に真っ赤になっているはやてからのキラーパスにエイジは首をぶっ壊れた扇風機のように振って否定した。
「何を言う。君は私と母さんのありとあらゆる良いところを限り無く受け継ぐプァーフェクトな男だ。現にだね…」
「あぁー!ハイハイ!分かった!分かった!そんな素敵な両親を持てて俺も幸せだからー!お口チャックしててこの親バカ親父!!
またかけるからじゃあね!」
「ちょ!?まだ話は…」
親バカスイッチが入ったようで流暢に変なアクセントで話す父を強引に止め、エイジははやての手にあるものに気づいた。
「はやてちゃん、救急箱なんて持ってどうしたの?どっか怪我したの?」
「いや、何言うてるんですかエイジさん!エイジさん隠してる方の腕出してみてください。」
「な、なんのことかな~…。」
「ええからは・や・く!」
「…はい。」
はやての気迫に根負けし、右腕を差し出したエイジの袖を彼女がまくると肘から手にかけて大きな青アザになってそこから血が滴っていた。
その痛々しさにはやては息を飲んだ。
「こんなめちゃくちゃ痛そうやのに、平気な顔して…。」
「よく気づいたねはやてちゃん。何でバレたのかな?」
「エイジさん、不自然に体半分引いて話してはったんで気づいたんですよ。」
「目が良すぎるよー。」
メダルのコンボは強力だ。
ガタキリバ以外にも様々なコンボがあるがどれもこれも特性が違い、場面によってはほぼ敵無しの力を発揮出来る。
なら何故ずっとコンボでいかないのか?
デメリットも計り知れないからだ。
ガタキリバは分身全てが変身している本人であり、実体を持つ。
つまり受けるダメージもしっかりと蓄積される。
これが一人に戻った時に分身していた人数分、倍になって変身者を襲う。
普段負っても何とも無いようなダメージも下手をすれば気が狂うような痛みとなるかもしれないのだ。
何より分身を増やしすぎると脳が複数の自分がいることに耐えれなくなって廃人と化す恐れだってある。
今回のこの怪我はなのはの砲撃を分身が受け止めた時にそれぞれが防いでいたダメージが今こうして現れたものだった。
だが、今エイジはまるで痛みも無いかのように普通に振る舞っている。
そんなエイジの手を取って氷水で冷やしたタオルで優しく腕を包んだ。
彼女にコンボの代償の知識などは無いがこのエイジのボロボロな状態を見て見ぬ振りは出来なかった。
「…いつもこんな怪我するぐらい大変な思いしてはるんですね。」
「まあ、たまにこういう風になることはあるけどアンクも一緒にいてくれてるし、本当にたまにぐらいだよ。
それに俺ね、結構痛みとかには強いんだ。だから大丈夫!」
それを聞くや否や、はやてはその細い人差し指で処置していない方の彼の左腕をコツンとつついた。
最初何をされたか分からなかったようなエイジだったが、思い出したように痛がった。
袖をめくると右腕ほどでは無かったが大きなアザが浮かんでいた。
「やっぱりそっちもですか。もう変に我慢してもっと酷くなったら体に毒ですよ。」
「いてて…。了解です!はやてセンセ♪」
ちなみにはやてにはなのはや魔法絡みのことは伝えていない。
こちらとしても分からないことだらけで整理も出来てないことを伝える訳にはいかないからだ。
「それに!」
「?」
「私もエイジさんが痛い思いするんは見たくないです…。」
少し俯いてそう告げる彼女に微笑を浮かべた。
「大丈夫。俺はね、みんなが笑っていてくれるところのほーんの隅っこにいれればそれだけでスッゴく幸せになれるだ。
だから絶対みんなの笑顔を守るし、俺もみんなに会えるように必ず戻れるようにやってくって決めてるんだ。」
そう言って彼女の頭を優しく撫でた。
その手は大きく、氷のように冷たかったがどこか安らげる暖かさもあった。
「えらいおっきな目標ですね。」
「そう見えて実際は結構ちっちゃいもんだよ♪」
撫でられるのなんて一体いつ以来なのか、はやては照れたが同時に嬉しくなった。
「なんかこうされるとエイジさんお兄ちゃんみたいです。」
「お!それいいね!はやてちゃんみたいな妹は
是非welcomeだよ!」
「アハハ!嬉しいです!というかエイジさん左手はもう自分で冷やしとったんですか。めっちゃ冷たいですもん。」
「あ…。そうそう!さっき水道水でジャバーっとね!」
「また豪快にやりましたね!あ、そろそろこっちは包帯巻きましょか。」
「はいよ。」
右腕を差し出すとタオルを取り、丁寧にはやてが包帯で包んだくれた。
「これ防水なんで反対の腕も巻けたらお風呂どうぞ~。その間にご飯作っときますんで。」
「おおきにね♪」
何も知らない傍目から見ると少しだけ歳の離れただけの仲の良い、笑顔の兄妹がそこにはいた。
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八神家の湯船に浸かりながらエイジは今日あったことを振り返っていた。
ヤミーを一撃で倒し、自分にもコンボを使わせるほどのあの魔法という力。
それを使いこなす少女と少年。
その背景にいる管理局とかいうどんなものかはまだ分からないが、巨大な組織。
「分からないことだらけだな…。」
ただ、それ以外にも引っ掛かることがある。
ヤミーが何故はやての前に現れたかだ。
初めはエイジを狙ってやって来たかと思ったが、オーズに変身した後も逃がした彼女を隙あらば追おうとしていたように見えた。
この間の件ともいい何かおかしかった。
まるではやてに何か狙いとなることがあるようだった。
そんなことを考えて湯船のお湯で顔を洗っていると側に置いておいた携帯端末からメッセージ着信音が鳴った。
相手はアンクだった。
『無茶し過ぎだ、バカ。』
ストレートなお説教かと思ったが続きがすぐに送られた。
『少しは自分の体のことも考えろ。』
彼なりの気遣いなのだろう。
人によってはかーなーりの誤解を生むであろうが、エイジにはアンクの秘めた部分を多少は理解していた。
実際アンクは自分からコンボを使わせてくれない。
「倒れられでもしたら面倒だ」とは本人の談だが、まあそういうことにしておこう。角を立たせても面倒だ。
『気を付けるよ、あんがと。』
そう返すと少し間を置いて返信が来た。
その内容は少し驚くようなものだった。
『あのなのはってガキは今日契約したマンションの近所のケーキ屋の娘だ。今日会ったから間違い無い。
俺は予定通り引っ越したらしばらくヤツを見張っておく。』
えらく近場の意外なところに魔法使いがいたもんだと思った。
声を知られているアンクが大きな声を出さなかったのはそういうことかと合点がいった。
『アンク…やっぱ寄り道してたな?』
『…ふん。』
都合が悪くなるとすぐこれだ。別にいいのに。
だが次のメッセージは意外だった。
『お前ははやてについてろ。』
『やっぱ気づいた?』
『お前より早くからな。』
どうやらアンクも気になっていたようだ。
『一言多いよ。』
『ともかく二人固まっててもしょうがねえからお前はここ、俺はマンションに移る。
それにアイツもお前には随分気を許してるようだからな。』
個人的なことを言えば確かにはやてはエイジにかなり心を許してくれており、エイジ自身も彼女と触れ合うことは正直な話楽しかった。
『でも…俺がいて迷惑じゃないかな?』
『はやてに偉そうに言っといて今度はお前が遠慮しいか?向こうもお前を求めてんだろ。じゃあいいだろ。』
一拍置いてそれもそうかと納得してアンクの提案に乗ることにした。
『分かった。風呂出たらはやてちゃんに聞いてみ…』
そこまでメッセージを入れた時、風呂場に備え付けられたパネルからメロディーが鳴った。
「エイジさーん!アンクさんから聞きましたよ~!是非ここにおってくださ~い!私もおってくれたら嬉しいです!」
「ハン!お前がもたついてる間に俺が通しておいてやったぞ。」
嬉しそうなはやての声と絶対悪い笑顔を浮かべているであろう鶏冠頭の声が風呂場に響き、ここを出たら覚えてろよと心に誓うエイジだった。
とりあえず今は
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします。」
「こちらこそです♪」
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海鳴での最初のヤミー事件現場近くのマンション。
ヤミーの親となった女性の一室にはかねてよりエイジたちが追っているグリードが潜んでいた。
「うーん、ちょっと突っつくつもりだったけど面白いことになってきたなー…。」
部屋に寝転がりながらヌメッとした細い触手だらけの腕を弄り、まるでゲームのレアアイテムを偶然拾った子どものようにこの先のことを考えて楽しんでいた。
その隣にはまるで巨大なイクラやタラコのように水色の卵が壁一面にベッタリと夥しいほどに張り付いていた。
淡く点滅するように発光する卵たちの中心には蜂ヤミー、サイヤミーの宿主となった女性が磔にされるに置かれていた。
項垂れている彼女は意識が朦朧としているのか同じ言葉をぶつぶつと呟き続けていた。
「あの子は、あの子は…」
「心配しなくてももうすぐで会えるよ。それまでしっかりその子たちを育ててあげてね。…フフ。」
楽しそうにそう告げるとグリードは手に持っていたセルメダルをコイントスするように弾いた。
「さあ…。これからもっと面白くなるよ…オーズ…。」
手の中のセルメダルを握り潰し、粉状になったそれを砂時計のようにこぼしながら気味悪く呟いた。
新年一発目いかがでしたでしょうか?
なのはからの逃走…上手く書けているかハラハラですが、皆さんにイメージが伝われば幸いです!
そして蠢く影の次なる手は?
次回もお楽しみください!